グローバルミニマム課税ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶGloBE所得の調整・帰属割合・セーフ・ハーバー・令和8年度の見直し
無料の学習ツール「グローバルミニマム課税ラボ」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は基礎編で扱っています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📙 応用 処理早見表
📋 処理早見表 国・グループの姿 × トップアップ税額と課税する国(学習用に要約)| 国・グループの姿 | セーフ・ハーバー | トップアップ税額 | 誰が課すか | ポイント |
|---|
| 連結総収入7.5億ユーロ以上が4年中1年だけ | - | なし(対象外) | - | 毎年、直前4年度で判定し直す |
| CbCRの簡素な実効税率が17%以上の国(2026年開始) | 当たる | ゼロとみなす | - | 選択とGIRへの記載が必要 |
| 実効税率12%・QDMTTなしの国(日本が最終親会社等) | 当たらない | (15% − 12%)× 超過利潤 | IIR(日本) | 帰属割合を掛ける |
| 実効税率12%・適格QDMTTありの国 | 当たらない | 同上 | QDMTT(その国) | 日本のIIRはQDMTT控除後の残りだけ(QDMTTが同額、またはQDMTTセーフ・ハーバー適用ならゼロ) |
| 実効税率10%・人と設備が厚い国 | 当たらない | SBIEで小さく | IIR(日本) | 給与等・有形資産の一定割合を除く |
| 最終親会社等が米国(2026年1月以後開始) | - | 計算はするが | SbSでIIR・UTPRなし | その国のQDMTTは別 |
| 最終親会社等がIIR未導入国 | 当たらない | 残り | UTPR(各国で配分) | 日本は2026年4月以後開始から |
はじめに
応用タブの入口 ── 判定の順番と処理早見表
📍 ラボの場所:応用タブ 冒頭
ハルカ
基礎編で5ステップは分かりました。実務では、どこでつまずくんですか。
先生
早見表を見ると、迷いやすいのは「GloBE所得と対象租税の調整」「誰がどれだけ払うか(帰属割合・UTPR)」「セーフ・ハーバーの細目」「令和8年度の見直し」なんだ。上から順に確かめていこうか。
ハルカ
表の「最終親会社等が米国」の行は、計算はするけれど課されない、なんですね。
先生
そうなんだ。IIRとUTPRはなくなっても、子会社の国のQDMTTは別だから、表を行ごとに丁寧に読んでね。
💡 そうだったのか!
早見表は原則の要約です。
細かい調整や例外は各項目と法令で確かめます。
📙 応用 A-1 ラボの図
応用 A-1
A-1 GloBE所得の調整 ── 会計の純損益から
📍 ラボの場所:応用タブ A-1
ハルカ
GloBE所得は、決算書の利益そのままではないんですか。
先生
出発点は会計の純損益なんだ。図のとおり、費用にした法人税等を足し戻し、一定の株式からの配当(除外配当)や株式の譲渡損益(除外資本損益)を除くよ。グループ内の取引は独立企業間価格に直すんだ。
迷いポイント 子会社からの配当も所得に入る?
ハルカ
孫会社から配当をもらったら、その分GloBE所得が増えるんですよね。
先生
持分10%以上などの株式からの配当は除外配当として除くんだ。国ごとに合計して損失と相殺した額が、実効税率の分母になるよ。
💡 そうだったのか!
GloBE所得は
会計の純損益から調整して計算。除外配当・除外資本損益は除き、国ごとに合計します。
📙 応用 A-2 ラボの図
応用 A-2
A-2 調整後対象租税額 ── 繰延税金と税額控除
📍 ラボの場所:応用タブ A-2
先生
図のとおり、繰延税金は原則として15%を上限に調整して、5年で解消しない一定の繰延税金負債は取り戻すんだ。GloBE損失に係る繰延税金資産などには特則もあるよ。令和8年度改正では、移行前の一定の繰延税金資産・負債をないものとして計算する見直しもあったよ。
迷いポイント 研究開発税制の税額控除は、実効税率に影響しない?
ハルカ
税額控除で税が減っても、国別実効税率には関係ないですよね。
先生
一定期間内に還付される適格還付税額控除は分母の所得に足すけれど、それ以外の税額控除は分子の税を減らすんだ。だから研究開発税制などを大きく使う国は、実効税率が下がりやすいよ。
ハルカ
税額控除って割引クーポンみたいなものですね。使いすぎると15%を下回るなんて、クーポンの罠です。
先生
うまい例えだね。令和8年度改正では、一定の投資税額控除(SBTI)を分子に戻せるようになったんだ。上限は原則として給与等と減価償却費の多い方の5.5%で、5年選択で対象資産(土地等を除く)の帳簿価額の1%にする方法もあるよ。適格要件や選択の手続も確かめてね。
💡 そうだったのか!
非適格の税額控除は
分子を減らすので実効税率が下がります。令和8年度改正で、一定の投資税額控除は上限(5.5%方式、または5年選択の1%方式)まで分子に加算できます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Aが入っています。調整後対象租税額 720 は税額控除を反映した後の金額という前提)
- 「適格な税額控除等」を 0 → 200 に変える
👀 5.5%方式の上限275の範囲なので200を加算し、国別実効税率は 12% → 約15.3%。トップアップ税額は 154.8 → 0 になります。
ラボを開く ▶
📙 応用 A-3 ラボの図
応用 A-3
A-3 帰属割合と中間親会社 ── 誰がどれだけIIRを払うか
📍 ラボの場所:応用タブ A-3
ハルカ
子会社の株を70%しか持っていないときも、トップアップ税額の全部を日本で払うんですか。
先生
IIRは「残り × 帰属割合」なんだ。図のとおり、持分70%なら70%分で、外部株主の30%分は日本のIIRでは課されないよ。事例Dなら 88.4 × 70% = 61.9 だね。
迷いポイント 最終親会社等の国にIIRがなければ、誰も払わない?
ハルカ
最終親会社等の国がIIRを入れていなければ、IIRは誰も払わないんですよね。
先生
IIRを導入した国の中間親会社が代わりに課すんだ。外部株主が20%超いる被部分保有親会社は、上位の親会社より先にIIRを適用するよ。
ハルカ
妹と半分ずつお金を出して買ったプリンを、妹が70%食べました。私の帰属割合は30%です。
先生
出したお金は半分でも、食べた割合で分けるなら30%だね。帰属割合は持分で決めるから、プリンの世界とは少し違うよ。
💡 そうだったのか!
IIRは「残り ×
帰属割合」。外部株主の分は課されず、最終親会社等の国にIIRがなければ中間親会社が課します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Dが入っています)
- 「帰属割合 %」を 70 → 100 に変える
👀 日本で課される額は 61.9 → 88.4 に増えます。トップアップ税額そのもの(88.4)は変わりません。
ラボを開く ▶
📙 応用 A-4 ラボの図
応用 A-4
A-4 UTPRの配分 ── 従業員数と有形資産
📍 ラボの場所:応用タブ A-4
ハルカ
UTPRは、残りを各国でどう分けるんですか。
先生
図のとおり、UTPRを導入した国々に、従業員数と有形資産の割合を半分ずつ使って配分するんだ。事例Gは、国際的な事業活動の初期段階の適用免除に当たらない前提で、日本の配分割合が30%だから、154.8 × 30% = 46.4 だよ。
迷いポイント 日本のUTPRは2024年から?
ハルカ
IIRと同じで、日本のUTPRも2024年4月以後開始の年度からですよね。
先生
日本のUTPRとQDMTTは令和7年度改正で、2026年4月1日以後開始の年度からなんだ。12月決算なら2027年1月開始の年度からになるね。
💡 そうだったのか!
UTPRは
従業員数と有形資産で配分。日本のUTPR・QDMTTは
2026年4月1日以後開始の年度からです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Gが入っています)
- 「開始月」を 4月 → 3月 に変える
👀 2026年3月開始の年度は日本のUTPRの前なので、日本で課される額は 46.4 → 0 になります。
ラボを開く ▶
📙 応用 B-1 ラボの図
応用 B-1
B-1 セーフ・ハーバーの細目 ── 期間・基準・Once out
📍 ラボの場所:応用タブ B-1
ハルカ
セーフ・ハーバーは、毎年使うかどうかを選べるんですよね。
先生
選択はできるけれど、図のとおりOnce out, always outのルールがあるんだ。ある国で一度適用しなかった年度があると、その国では以後使えないよ。
迷いポイント 基準を満たす年だけ使えばよい?
ハルカ
今年は計算が簡単そうだからセーフ・ハーバーを使わずに、来年また使えばいいですね。
先生
それをすると来年は使えないんだ。事例Cも、過去に使わなかった年度があれば、基準を満たしていても本計算になるよ。
ハルカ
ジムの入会特典みたいですね。一度休会すると、特典が二度と戻ってこない…。
先生
近いね。しかも期限付きで、2027年12月31日以前に開始する年度までなんだ。そのあとはQDMTTセーフ・ハーバーなど、ほかの仕組みを考えることになるよ。
💡 そうだったのか!
移行期間CbCRセーフ・ハーバーは
一度使わないと以後使えません(Once out, always out)。期限は2027年12月31日以前開始の年度まで。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Cが入っています)
- 「過去にこの国で不適用の年度」を なし → あり に変える
👀 簡素な実効税率が17%以上でも使えず、本計算になります。トップアップ税額は 0 → 51.8 です。
ラボを開く ▶
📙 応用 B-2 ラボの図
応用 B-2
B-2 令和8年度の見直し ── SbS・UPE・SBTI・延長
📍 ラボの場所:応用タブ B-2
先生
2026年1月の国際合意(共存システム)を受けた見直しなんだ。図のとおり、SbS・UPE・SBTIの3つのセーフ・ハーバーと、移行期間CbCRセーフ・ハーバーの延長だよ。
迷いポイント 米国が親会社なら、全部の課税がなくなる?
ハルカ
最終親会社等が米国なら、トップアップ税額は一切かからないんですよね。
先生
SbSでなくなるのはIIRとUTPRなんだ。子会社の国がQDMTTを入れていれば、そちらは課されるよ。日本の国内最低課税額もSbSの対象外なんだ。
💡 そうだったのか!
SbS・UPE・SBTIは
2026年1月1日以後開始の年度から。SbSでなくなるのはIIR・UTPRで、
QDMTTは別です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Fが入っています)
- 「最終親会社等の所在地」を 米国 → 日本(IIR) に変える
👀 SbSが使えなくなり、日本のIIRで課される額は 0 → 154.8 になります。
ラボを開く ▶
📙 応用 B-3 ラボの図
応用 B-3
B-3 他の制度とのつながり
📍 ラボの場所:応用タブ B-3
ハルカ
CFC税制と、どちらか一方だけ見ればいいですか。
先生
別の制度だから、両方の判定が必要なんだ。図のとおり、親会社が払ったCFCの税は、一定の範囲で子会社の国の対象租税に配分されるよ。
迷いポイント 日本の会社は、この制度とは無関係?
ハルカ
日本の法定実効税率は約30%なので、日本の会社は関係ないですよね。
先生
税額控除を大きく使うと、日本の構成会社等の実効税率が15%を下回ることもあるんだ。そのときは2026年4月以後開始の年度から、日本自身が国内最低課税額として課すよ。会計では、この制度に係る繰延税金資産・負債は計上しない取扱いだね。
💡 そうだったのか!
CFC税制とは
別の制度で両方判定。日本の会社にも
国内最低課税額があり得ます。
📙 応用 B-4 ラボの図
応用 B-4
B-4 よくあるミス
📍 ラボの場所:応用タブ B-4
先生
図の5つが代表的だよ。法定税率だけで判定する、7.5億ユーロは超大企業だけと考える、税額ゼロなら何もしない、日本の会社は無関係と考える、セーフ・ハーバーを毎年自由に選べると考える。どれも、ここまでの節に出てきた話なんだ。
迷いポイント 円安は判定に関係ない?
ハルカ
7.5億ユーロの判定は、為替が動いても関係ないですよね。
先生
円建ての収入が同じでも、ユーロに換算すると増えたり減ったりするんだ。7.5億ユーロの近くにいるグループは、毎年の判定で当落が動くことがあるよ。
💡 そうだったのか!
よくあるミスは
法定税率での判定・税額ゼロの放置・Once outなど。7.5億ユーロの近くでは
為替にも注意します。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべてグローバルミニマム課税ラボの画面そのものです。応用タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
グローバルミニマム課税ラボを開く ▶今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。GloBE所得と対象租税には調整があり、税額控除の種類で実効税率が変わる。IIRは帰属割合で、UTPRは従業員数と有形資産で配分。セーフ・ハーバーはOnce outに注意して、令和8年度の見直しは適用開始の年度を確かめるんだ。
ハルカ
妹が、こむぎのおやつ代のルールに「米国ルール」を作ると言い出しました。自分が出していれば、私は出さなくていいそうです。
ハルカ
でも、こむぎのおやつ代は、こむぎの国のQDMTTでちゃんと取られるそうです。
先生
QDMTTは別、というところまで押さえられたね。基礎編から読み返すと、5ステップの図の見え方がきっと変わるよ。
参考資料
法人税法82条〜82条の22・150条の3/地方法人税法/国税庁「グローバル・ミニマム課税への対応に関する改正のあらまし」(令和5年4月・令和7年4月)/財務省「令和8年度税制改正の大綱」「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」(令和8年1月23日閣議決定)/ASBJ 実務対応報告第44号。ラボの数値はすべて独自の学習用で、実際の申告額の計算には使えません。
このシリーズの記事:基礎編
サイト内の関連:グローバルミニマム課税とは?わかりやすく|15%と7.5億ユーロの判定/外国子会社合算税制ラボ/外国税額控除ラボ
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。