収益認識ラボ④【設例・契約資産と債権編】|先生と一緒に図で学ぶ設例27〜29 契約資産・返金負債・消費税等・有償支給
無料の学習ツール「収益認識ラボ④」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、契約資産と債権・返金負債・消費税等の設例(設例27〜29)と有償支給取引(応用6)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎2 ラボの画面
前提条件(独自の数値・設定)
- A社は製品Xと製品Yを B社に販売する契約を締結。対価は 800。
- 製品Xを先に引き渡し、製品Yは後で引き渡す。対価は、製品Yの引渡しが完了するまで支払われない(両方の引渡しが条件)。
- 製品Xと製品Yは別個の履行義務。独立販売価格は製品X 300、製品Y 500。どちらも、支配が移転した一時点で充足する。
はじめに
設例27〜29と有償支給 ── 受け取るお金は、どの科目に入るか
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎2 ステップ1
ハルカ
先生、今日は契約資産と債権の設例ですね。基礎編で「権利が無条件か」が分かれ目だと聞きました。
先生
そうだよ。設例27で契約資産と債権、設例28で返金負債、設例29で消費税等、最後に応用6で有償支給取引を見るんだ。どれも、受け取る(受け取れる)お金が収益になるのか、どの科目に入るのかを確かめる設例なんだよ。
ハルカ
金額は小さいのに、科目の名前がたくさん出てきそうです。
先生
金額が小さい分、科目の違いに集中できるよ。ラボのステップで、仕訳を1本ずつ確かめていこうか。
設例・基礎タブの基礎2を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎2 ラボの画面
製品Xの移転時(対価はまだ請求できない:条件付きの権利)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約資産 | 300 | 売上高 | 300 |
製品Xを引き渡して履行義務は充足したが、対価は製品Yを引き渡すまで請求できない。
対価に対する権利が「時の経過以外の条件」(製品Yの引渡し)に依存している → 顧客との契約から生じた債権ではなく、契約資産(基準第79項)。
○
履行義務を充足したか製品Xの支配は移転した → 収益 300
×
対価に対する権利は無条件か製品Yの引渡しが条件 → 契約資産
🧾 仕訳で確認
製品Yの移転時(両方を移転して無条件の権利に)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売掛金 | 800 | 契約資産 | 300 |
| | 売上高 | 500 |
設例27
契約資産から債権へ ── 製品Yを渡すまで、権利は条件付き
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎2 ステップ3・4
ハルカ
製品Xを渡したので、Xの分 300 は売掛金ですね。
先生
判定の2行目を見てほしいんだ。製品Xの履行義務は充足したけれど、対価は製品Yを渡すまで請求できない。時の経過以外の条件が残っているから、300 は契約資産なんだ(基準第79項)。
迷いポイント 製品Yを渡したら、契約資産 300 はどうなる?
ハルカ
製品Yを渡したら、Yの 500 を売掛金にして、契約資産 300 はそのまま残るんですか。
先生
製品Yを渡すと 800 全額を請求できるようになるから、契約資産 300 を売掛金に振り替えるんだ。仕訳では、借方が売掛金 800、貸方が契約資産 300 と売上高 500 だよ。
ハルカ
契約資産は、製品Yが来るまで駅で待っている待ち合わせの人みたいですね。Yが着いたら、2人そろって売掛金という電車に乗る。
先生
待ち合わせが済むまでは、まだ乗車券がない状態なんだ。
💡 そうだったのか!
製品Xの 300 は、Yを渡すまで
契約資産。両方を渡して請求できるようになったら、800 全額を
売掛金にします。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「契約資産・債権・消費税」のシミュレーションを開く(基礎2の数字)
- 右の「製品Xの独立販売価格」を 300 から 400 に変える
👀 製品Xの収益(契約資産)が 300 → 356、製品Yの収益が 500 → 444 になります。独立販売価格の比率で配分し直しても、売掛金は 800 のままです。
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📘 設例・基礎3 ラボの画面
取引価格(1個あたり) = 減額後の単価 170
収益 = 170 × 8個 = 1,360
遡及的な値引きは変動対価。減額すると見込むので、減額後の単価で取引価格を見積る(基準第50〜54項・②編)。
単価の差 30 × 8個 = 240 は、顧客に返金する(請求額を減らす)と見込む額。
🧾 仕訳で確認
製品 8個の移転時| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売掛金 | 1,600 | 売上高 | 1,360 |
| | 返金負債 | 240 |
🧾 比較:数量値引きの条件を満たさないと見込む場合(元の設例とは異なる仮定)
製品 8個の移転時| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売掛金 | 1,600 | 売上高 | 1,600 |
元の設例(40個を超えると見込む)では、売上高 1,360・返金負債 240 を計上します。この仕訳は、仮定を変えた場合の比較です。
設例28
返金負債 ── 遡って下がる単価の差額 240
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎3 ステップ2〜4
ハルカ
②編の数量値引きの設例で、遡って下がる単価の差額は返金負債だと習いました。設例28も同じ話ですか。
先生
よく覚えていたね。同じ考え方だよ。40個を超えると単価が 200 から 170 に遡って下がる契約で、超えると見込むなら、取引価格は 170 で見積るんだ。8個なら収益は 1,360、請求した 1,600 との差額 240 が返金負債だよ(基準第53項)。
迷いポイント 請求額 1,600 のうち、収益にならない 240 は契約負債?
ハルカ
収益にならない 240 は、前受けのようなものなので契約負債ですよね。
先生
返金負債なんだ。契約負債は、財・サービスを移転する義務。返金負債は、受け取った(受け取る)対価を顧客に返す義務だよ。売掛金 1,600 は請求できる額なので、そのまま債権に計上するね。
ハルカ
返金負債…。「まだ返していないけれど、返すつもりの気持ち」に名前が付いているんですね。
先生
気持ちではなく、見積りに基づく義務なんだ。見込みが変われば、累計の差額を収益で調整するよ。
💡 そうだったのか!
遡って下がる単価の差額は
返金負債。契約負債とは区別し、売掛金は請求できる額で計上します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「契約資産・債権・消費税」のシミュレーションを開く(基礎3の数字)
- 右の「移転した数量(第1四半期)」を 8 から 40 に変える
👀 売掛金 8,000、売上高 6,800、返金負債 1,200 になります。41個にすると、減額の条件を満たした後の時点になるので、ラボは入力エラー(⛔)で止まります。
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📘 設例・基礎4 ラボの画面
×
消費税等は A社が権利を得る対価か国に納付するために顧客から預かる額 → 第三者のために回収する額
消費税等は取引価格に含めない収益は税抜の 250
🧾 仕訳で確認
商品の販売時(税込で現金を受け取る)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 現金預金 | 275 | 売上高 | 250 |
| | 仮受消費税等 | 25 |
設例29
消費税等 ── 275 を受け取っても、売上は 250
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎4 ステップ2・3
ハルカ
税込で 275 受け取りました。売上は 275 で、消費税は後で租税公課ですか。
先生
判定を見てほしいんだ。消費税等の 25 は、国に納付するために顧客から預かる額。第三者のために回収する額なので、取引価格に含めないよ(基準第47項)。売上は 250、25 は仮受消費税等なんだ。
ハルカ
③編の他社ポイントでも、第三者のために回収する額は売上から除いて未払金にしました。同じ考え方ですね。
先生
そう、つながっているね。預かったお金は、名目が何であっても自社の収益にはならないんだ。
迷いポイント 消費税等を売上高に含める税込方式は、今も選べる?
ハルカ
昔の決算書で、税込で売上を出している会社を見たことがあります。
先生
収益認識基準の適用後は、税込方式は使えないんだ。消費税等は取引価格に含めないよ。
💡 そうだったのか!
消費税等は
第三者のために回収する額。売上高は税抜の 250、預かった 25 は仮受消費税等です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「契約資産・債権・消費税」のシミュレーションを開く
- 右のプリセットで 「軽減税率(8%)」 を選ぶ
👀 受け取る額が 275 → 270、仮受消費税等が 25 → 20 になり、売上高は 250 のままです。
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📕 設例・応用6 ラボの画面
原材料の消滅を認識する。譲渡に係る収益は認識しないB社が原材料の支配を獲得するので消滅を認識する。ただし、加工後に買い取る一連の取引なので、譲渡に係る収益は認識しない(適用指針第104項)
受け取る 600 を売上高にしない。原材料(帳簿価額 500)は消滅を認識する。
収益も、原材料の消滅も認識しない買い戻す義務があるので、B社は原材料の支配を獲得していない(買戻契約の考え方は③編・第69項)
原材料は引き続き A社の資産として認識する。ただし、個別財務諸表では、譲渡時に原材料の消滅を認識することができる(その場合も収益は認識しない)。
応用6
有償支給取引 ── 600 で売っても、売上にはしない
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用6 ステップ2・3
ハルカ
原材料を 600 で加工業者に渡しています。帳簿価額は 500 なので、100 の利益ですね。
先生
どちらのケースの判定も見てごらん。有償支給取引では、支給品の譲渡に係る収益は認識しないんだ(適用指針第104項)。加工後の部品を買い取る一連の取引の一部だからだよ。
迷いポイント 買い戻す義務があるかどうかで、何が変わる?
ハルカ
収益にしないなら、買い戻す義務があってもなくても同じ処理ですよね。
先生
変わるのは、原材料の消滅を認識するかなんだ。義務がなければ消滅を認識し、義務があれば認識しない。ただし義務がある場合でも、個別財務諸表では譲渡時に消滅を認識することができるよ。
ハルカ
③編の買戻契約で、企業に買い戻す義務があると顧客は支配を獲得しない、と習いました。それとつながっていますか。
先生
つながっているね。買い戻す義務があるから、B社は原材料の支配を獲得していない。その考え方は③編の第69項と同じなんだ。
ハルカ
原材料からすると、「売られたと思ったら、まだ実家の籍のまま」という状態ですね。
先生
その籍を個別財務諸表で抜くかどうかだけ、選べるんだよ。
💡 そうだったのか!
有償支給は
収益を認識しないのが必須。買い戻す義務がなければ消滅を認識し、義務があれば認識しない(個別は認識可)。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて収益認識ラボ④の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
収益認識ラボ④を開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。権利に条件が残っていれば契約資産、無条件なら債権。返す見込みの額は返金負債、預かった消費税等は仮受消費税等。有償支給は収益にしない。受け取るお金でも、収益になるとは限らないんだ。
ハルカ
週末にパン屋さんのレシートを見ていたら、税込の金額の下に消費税の行がありました。前は合計しか見ていませんでしたが、今日の話の後だと、「お店の売上はこの行を除いた分なんだ」と目が行くようになりました。
先生
身近なところで確かめられたのはいいね。お店にとっては、その行は預かっているだけのお金なんだ。
ハルカ
その分だけ、クロワッサンかメロンパンかで迷う15分のうち、1分くらいはレシートの研究に回りそうです。
先生
残りの14分は、ゆっくり迷っていいよ。次の設例・注記編では、開示例1〜3で、収益の分解と残存履行義務の注記を見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(第47・50・53〜55・66・79項)/企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(第69・104・104-3項、設例27〜29)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの設例は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(応用6の有償支給取引は原典に設例がなく独自)。基準確認日:2026年10月2日。
サイト内の関連:【早見表】収益認識基準・適用指針/収益認識ラボ②【設例・変動対価と制限編】(数量値引き・見積りの変更)
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・工事契約編(設例32・原価回収基準)/設例・注記編(開示例1〜3)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。