【IPO資本政策研究】ノバレーゼ(9160)|PEファンドが9割超を保有する公募ゼロの再上場

株式会社ノバレーゼ(証券コード9160、現・株式会社オンザページ)は、ブライダル(結婚式場)事業を手がける企業で、2023年6月30日に東証スタンダード市場へ上場しました。

同社の有価証券届出書では、PE(プライベートエクイティ)ファンドを中心にVC・投資ファンド比率が93.2%にのぼり、収録の中で最上位級(上位約1%)です。上場は公募を伴わず、ファンド等の保有株式の売出しが中心で、海外販売を含むオファリングとして実施されました。

本稿はIPO準備会社のCFO・管理部門と、支援する会計税務専門家向けの実例研究です。誰がいくら得をしたかではなく、PEファンド主導の株主構成と、公募を伴わない売出し中心の上場がどう開示されているかを、有価証券届出書の記載に基づいて整理します。同社の株主構成・価格情報は、当サイトのIPO資本政策データベースの個社カルテでも確認できます。

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この記事でわかるのは、

  • PEファンドが9割超を保有する構成
  • 公募を伴わない売出し中心の上場
  • 海外販売を含むオファリング

の3点です。

※同社は過去に上場していた企業で、PEファンドによる非公開化を経て2023年に再上場したものです。本記事は2023年の再上場時(東証スタンダード・証券コード9160)の届出書記載に基づくスナップショットです。同社はその後、2024年12月に株式会社ティーケーピーの子会社となり、会社の公表情報によれば2026年4月1日に株式会社エスクリとの経営統合に伴い株式会社オンザページへ商号変更しています。最新の資本構成・商号は会社の適時開示等でご確認ください。

目次

IPOサマリー

項目内容
上場日/市場2023年6月30日/東証スタンダード
公開価格(仮条件)600円(仮条件550〜600円)
初値590円
公開価格ベース時価総額約150億円(=600円×発行済25,000,000株。公募を伴わないため発行済は不変)
公募・売出し公募なし/売出し10,881,500株(国内8,308,000+海外2,573,500)/オーバーアロットメント1,632,200株
主幹事野村證券
監査法人有限責任 あずさ監査法人

初値は表中の事実として記載しています(本文では論評しません)。

この会社の資本政策 3つの注目点

  1. PEファンドが9割超を保有
    出書記載時点の筆頭はポラリスの投資事業有限責任組合(70.04%)で、次いで海外PEファンド(23.11%)。VC・投資ファンド比率93.2%は収録387社で最上位級(上位約1%)です。
  2. 公募を伴わない売出しのみの上場
    新株発行(公募)がなく、上場によって発行会社に入る資金はありません。オファリングの構成上、既存株主(ファンド等)による保有株式の流動化・投資回収の性格が強い上場です。
  3. 海外販売を含むオファリング
    売出し10,881,500株のうち2,573,500株が欧州・アジアを中心とする海外市場(米国・カナダを除く)に販売されました。

1株当たり価格指標の推移──SO行使価額と公開価格

同社は上場前の株式移動・第三者割当記載がなく、時系列で比較できる取引価格はSOの行使価額が中心です。

時期主なイベント1株当たり価格指標(分割調整後)
2017年・2019年SO行使価額250円
2023年5月株式分割(1株→200株)
2023年6月公開価格(初値590円)600円

SOの行使価額(分割調整後)は250円で、公開価格600円を下回る水準です。上場直前の2023年5月に1株を200株とする株式分割を行い、上場に適した株式数へ調整しています。潜在株式比率は6.86%です。

※各価格は株式の種類、取引条件、評価目的、付与対象、時点等が異なるため、単純に同一条件の株価推移を示すものではありません。本表では株式分割調整後の価格指標を整理しています。

ストックオプションの設計

SOは2回号と回号数は少ない一方、行使価額(分割調整後)は250円、潜在株式比率は6.86%で、収録387社の中央値7.9%に近い水準です。

少数の回号にまとめてインセンティブを設計した事例として捉えられます。

行使価額と公開価格の関係や、税制適格・非適格の別は、届出書の記載だけでは判断できず、各回号の付与契約時株価との関係を含めて個別に確認する必要があります。SOの付与時期・行使価格の全体傾向は、387社のSO付与時期と価格設計の記事で扱っています。

売出し前の株主構成(届出書記載時点)

届出書記載時点(売出し前)の筆頭株主は、ポラリスの第三号投資事業有限責任組合(70.04%)で、次いで海外のPEファンドであるTiara CG Private Equity Fund 2013, L.P.(23.11%)、以下、役員個人が続きます。

VC・投資ファンドの合計保有比率は93.2%で、PEファンドが実質的に大半を保有する構成です。個人株主は属性表記に匿名化しています(ファンド等の法人・組合名は実名)。売出しにより、これらのファンドの持分は上場時に低下します。

公募・売出しの構成──公募ゼロのファンドExit型

公開にあたっては、公募(募集)は行われず、引受人の買取引受による売出し10,881,500株と、オーバーアロットメントによる売出し1,632,200株が実施されました。売出し10,881,500株のうち2,573,500株が、野村證券の関連会社等を通じて欧州およびアジアを中心とする海外市場(米国・カナダを除く)に販売されています(訂正届出書 S100R0ST の記載に基づく確認事実)。

公募がないため上場による資金は発行会社には入らず、オファリングの構成上、既存株主(PEファンド等)による保有株式の流動化・投資回収の比重が大きい設計です。公募を行わなかった具体的な経営判断の理由までは、届出書の数値だけからは判定できません。

※データベース側のoffering.saleShares(8,308,000株)は国内販売分のみを取得しているため、本記事では海外分を含む売出総数(10,881,500株)を届出書原典から採用しています。

収録387社との比較(2026年7月時点)

指標ノバレーゼ収録387社の中央値等位置づけ
VC・投資ファンド比率93.2%中央値4.8%387社中で最上位級(上位約1%)
公募株数0株公募を伴わない売出しのみ
潜在株式比率(SO等)6.86%中央値7.9%ほぼ中央値並み
公開価格ベース時価総額約150億円中央値約63億円中位〜やや上位

※順位・中央値は、特記のない限り収録387社全体を対象とし、属性が確認されない会社は0%として含めています(VC・投資ファンド比率の中央値4.8%も、ファンドがいない会社の0%を含む387社全体の中央値です)。基準日2026年7月。

PEファンドが大半を保有し、公募を伴わない売出し中心という構成は、クラシコムのような、売出し前株主が個人のみのオーナー保有型とは対照的です。

各軸での位置づけはIPO資本政策データベースで確認できます。

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会計税務の視点

専門家が押さえる論点を、事実・一般論・限界の順に整理します(個別の判断は税理士・公認会計士への相談が必要です)。

まず事実として、PEファンド(投資事業有限責任組合・海外ファンド)大半を保有し、上場は公募を伴わないファンド保有株の売出しが中心です。一般に、投資事業有限責任組合では、所得の帰属各組合員段階での課税関係が論点になります。

海外ファンドが関与する場合には、ファンドや投資家の所在地・法的性質、恒久的施設の有無、株式の保有割合・譲渡割合、国内源泉所得該当性租税条約などを個別に確認する必要があります。

また公募がない場合、上場による調達は発行会社に生じません。届出書の記載だけでは各当事者の課税関係の結論までは判断できません。VC・投資ファンドの保有実態の全体傾向は、387社のVC・事業法人の記事を参照してください。

まとめ

ノバレーゼの資本政策は、PEファンドが9割超を保有する構成のもとで、公募を伴わず、ファンド等の保有株式の売出し(海外販売を含む)によって上場した、という点に特徴があります。

PEファンド保有企業の再上場や、既存株主の売出しを中心とするオファリングを検討する場面で、開示のされ方の参照点になる実例です。

資本政策の型を横断的に俯瞰するにはIPO資本政策の実例387社を全量分析を、外部の法人資本を伴わない対照的な事例としてクラシコムの事例を、あわせてご覧ください。

特定銘柄の投資勧誘・個別の税務助言ではありません。個別の税務・会計判断は税理士または公認会計士にご相談ください。

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