スカイマーク株式会社(証券コード9204)は、航空運送事業を営む企業で、2022年12月14日に東証グロース市場へ上場しました。同社は2015年に民事再生手続を経て、PEファンドであるインテグラル等のもとで再建され、2022年に再上場したものです。
有価証券届出書では、届出書記載時点(売出し前)の株主が投資ファンド4主体と事業法人1社の計5主体に集約され、公募と海外比率の高い大型売出しによって再上場した点に特徴があります。
本記事はIPO準備会社のCFO・管理部門と、支援する会計税務専門家向けの実例研究です。誰がいくら得をしたかではなく、再建を経た企業が再上場に向けて資本構成をどう開示したかを、有価証券届出書の記載に基づいて整理します。
同社の株主構成・価格情報は、当サイトのIPO資本政策データベースの個社カルテでも確認できます。
📈 IPO資本政策データベースβ 新規上場企業の届出書「第四部 株式公開情報」を構造化。資本政策・株式異動・新株予約権・大株主・初値を横断比較 →この記事でわかるのは、
- 投資ファンド4主体・事業法人1社に集約された株主構成
- 公募+海外比率の高い大型売出しの構成
- 再建企業の再上場という論点
の3点です。
IPOサマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上場日/市場 | 2022年12月14日/東証グロース |
| 公開価格 | 1,170円 |
| 初値 | 1,272円 |
| 公開価格ベース時価総額 | 約706億円(=1,170円×上場時発行済60,329,400株。上場前47,286,000株+公募13,043,400株) |
| 公募・売出し | 公募13,043,400株(国内5,217,400+海外7,826,000)/売出し14,746,000株(国内3,397,400+海外11,348,600)/オーバーアロットメント4,168,400株 |
| 主幹事 | 大和証券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券・BofA証券(共同主幹事) |
| 監査法人 | 有限責任監査法人トーマツ |
| 株価算定方式 | DCF法・類似会社比準方式 |
初値は表中の事実として記載しています(本文では論評しません)。
この会社の資本政策 3つの注目点
- 投資ファンド4主体・事業法人1社に株主が集約
届出書記載時点(売出し前)の株主は5主体で、うち4つが投資組合・ファンド、1社が事業法人(ANAホールディングス)です。個人株主やストックオプション(潜在株式)は記載されていません。 - PEファンド主導の再建と事業会社の資本参加
筆頭はインテグラルの投資事業有限責任組合(42.93%)、次いでUDSエアライン投資事業有限責任組合(33.40%)、ANAホールディングス株式会社(16.50%)です。 - 公募+海外比率の高い大型売出し
公募13,043,400株と売出し14,746,000株がほぼ同規模で、海外募集・海外売出しの比重が大きい大型グローバルオファリングです。
1株当たり価格指標の推移──第三者割当価格・公開価格
同社は再建後に株主が集約されており、上場前の株式移動やSOの記載はほとんどありません。届出書に記載された価格指標は限られます。
| 時期 | 主なイベント | 1株当たり価格指標(分割調整後) |
|---|---|---|
| 2020年2月 | 株式分割(1株→25株) | — |
| 2021年9月 | 第三者割当 | 875円 |
| 2022年12月 | 公開価格(初値1,272円) | 1,170円 |
上場前の第三者割当価格(分割調整後)は875円で、公開価格1,170円へと切り上がっています。2020年2月に1株を25株とする株式分割を行っています。
再建後は株主が集約されているため、上場前の取引価格の記載自体が限られる点が、多数の株式移動を経る会社との違いです。
※各価格は株式の種類、取引条件、評価目的、時点等が異なるため、単純に同一条件の株価推移を示すものではありません。本表では株式分割調整後の価格指標を整理しています。
売出し前の株主構成(届出書記載時点)
届出書記載時点(売出し前)の株主は5主体で、うち4つが投資組合・ファンド、1社が事業法人です。筆頭はインテグラル2号投資事業有限責任組合(42.93%)、次いでUDSエアライン投資事業有限責任組合(33.40%)、ANAホールディングス株式会社(16.50%)、Integral Fund II(A) L.P.(4.75%)、インテグラル2号SS投資事業有限責任組合(2.42%)です。
インテグラル系のファンドを合わせると約50%で、PEファンドが実質的に主導する構成に、事業会社であるANAが資本参加しています。
個人株主・従業員持株会やストックオプションは記載されていません。売出しにより、これらの株主の持分は上場時に変動します。
公募・売出しの構成──公募+海外比率の高い大型グローバルオファリング
公開にあたっては、公募(募集)13,043,400株(国内募集5,217,400株+海外募集7,826,000株)、引受人の買取引受による売出し14,746,000株(国内売出3,397,400株+海外売出11,348,600株)、オーバーアロットメントによる売出し4,168,400株が実施されました。
海外市場は米国(適格機関投資家向け)を含み、欧州・アジアを中心とします(訂正届出書の記載に基づく確認事実)。公募と売出しがほぼ同規模で、いずれも海外の比重が大きい点が特徴で、新株発行による資金調達と、既存株主(PEファンド等)の保有株式の売出しを併せて行う構成です。
※データベース側のoffering.newShares/saleSharesは国内分のため、本記事では海外を含む総数(公募13,043,400株・売出14,746,000株)を届出書原典から採用しています。
収録387社との比較(2026年7月時点)
| 指標 | スカイマーク | 収録387社の中央値等 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| VC・投資ファンド比率 | 83.5% | 中央値4.8% | 387社で最上位級 |
| 株主数(届出書記載・売出し前) | 5主体(投資ファンド4、事業法人1) | — | 個人株主・SOの記載なし |
| 潜在株式比率(SO等) | 0% | 中央値7.9% | SOの記載なし |
| 公開価格ベース時価総額 | 約706億円 | 中央値約63億円 | 収録387社で大型 |
※順位・中央値は、特記のない限り収録387社全体を対象とし、属性が確認されない会社は0%として含めています。基準日2026年7月。
PEファンド主導で株主が5主体(投資ファンド4・事業法人1)に集約され、SO・個人株主の記載がないという構成は、創業者・従業員・多数のVCが並ぶ多くのスタートアップとは対照的です。
各軸での位置づけはIPO資本政策データベースで確認できます。
📈 IPO資本政策データベースβ 新規上場企業の届出書「第四部 株式公開情報」を構造化。資本政策・株式異動・新株予約権・大株主・初値を横断比較 →会計税務の視点
専門家が押さえる論点を、事実・一般論・限界の順に整理します(個別の判断は税理士・公認会計士への相談が必要です)。
まず事実として、同社は民事再生を経て再建され、届出書記載時点の株主が投資ファンド4主体・事業法人1社に集約されています。一般論として、民事再生等を経た企業では、再生時の資本取引(減増資・債務の資本化等)や繰越欠損金の取扱いが論点になり得ます(本記事は再生計画時の個々の資本取引や税務処理を検証しているものではありません)。
また、投資事業有限責任組合や海外ファンドが株主・売出人に含まれる場合には、組合員段階の課税や、海外投資家に関する所在地・恒久的施設・国内源泉所得該当性・租税条約などの確認が必要です。ただし、届出書の記載だけでは各当事者の課税関係の結論までは判断できません。
まとめ
スカイマークの資本政策は、民事再生を経てPEファンド主導で再建され、株主が投資ファンド4主体・事業法人1社に集約された状態から、公募と海外比率の高い大型売出しによって再上場した、という点に特徴があります。
事業再生を経た企業の再上場や、PEファンド・事業会社が資本の中心となるオファリングを検討する場面で、開示のされ方の参照点になる実例です。
資本政策の型を横断的に俯瞰するにはIPO資本政策の実例387社を全量分析を、PEファンド主導の別の再上場例としてノバレーゼの事例を、あわせてご覧ください。
特定銘柄の投資勧誘・個別の税務助言ではありません。個別の税務・会計判断は税理士または公認会計士にご相談ください。
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