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試験研究費ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ専ら従事・国外委託・中小の繰越・OI型・会計との違い

試験研究費ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ専ら従事・国外委託・中小の繰越・OI型・会計との違い

無料の学習ツール「試験研究費ラボ」の読み方ガイドです。ラボの応用タブと会計との違いタブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は基礎編で扱っています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📙 処理早見表
支出会計(研究開発費)税務(試験研究費の額)判断のポイント
研究者(専任)の給与・賞与・法定福利費○○専門的知識をもって専ら従事
研究と他業務を兼務する者の人件費○(配賦)△担当業務の期間に専属的に従事し、従事状況を区分・人件費を適正計算できれば対象
研究部門の事務職員・庶務の給与○になり得る×専門的知識をもって試験研究に従事していない
原材料費・試薬・試作材料○○試験研究のために費消したもの
研究専用設備の取得取得時に全額費用(他目的に使えないもの)減価償却費の損金算入額のみ会計は注解1、税務は資産計上→償却
研究設備の減価償却費・光熱費・賃借料○○経費として
大学への委託研究費○(検収時)○ + OI型30%の対象特別試験研究費。契約書等の要件あり
国外で実施される研究の委託費(委託先の所在地ではなく実施場所で判定)○△ 70→60→50%だけ算入令和8年度改正。国内外で実施なら合理的に区分。医薬品等の臨床試験は除く
量産技術が確立した製品の改良・顧客要望の仕様変更×(著しい改良でない)×双方とも対象外になりやすい
市場販売目的ソフトの製品マスター改良(資産計上)資産研究開発費として損金経理した取得価額なら○税務は「損金経理」が鍵
既存のバグ取り・ユーザーサポート費用(R&Dではない)×機能維持は対象外(通達⒂⒃)
市場調査・デザインの考案××人文・社会科学、性能向上目的でないデザイン
AI・ビッグデータを使う新サービス開発○になり得る4プロセスを満たせば○人件費は情報解析専門家に限る
SaaS提供用ソフトの開発費(研究段階)○(費用)試験研究に当たれば○将来の収益獲得が確実と認められる前
SaaS提供用ソフトの開発費(制作段階・資産計上)資産資産計上した年は×(損金経理分のみ○)会計との違いタブ C4b の判定フロー
他社SaaSの利用料費用試験研究のための利用なら○(経費)通常業務の利用料は×
はじめに

今日の題材 ── 「この支出は入る?」を1枚で

📍 ラボの場所:応用タブ 処理早見表
ハルカ
先生、基礎編で事例Aの 9,000 は出せるようになりました。でも実務では、試験研究費の 100,000 を作るところで毎回止まります。
先生
そこが応用の出発点なんだ。早見表に、支出ごとの会計(研究開発費)と税務(試験研究費の額)の扱いを並べてあるよ。会計は○なのに税務は△や×、という行が何本もあるんだ。
ハルカ
兼務者の人件費、研究専用設備、国外の委託研究…。会計と税務で答えが違う行ばかりですね。
先生
今日はその「ずれる行」と、中小の繰越・OI型・不適用措置、最後に会計との違いを順に見ていこうか。
ラボの応用タブ・会計との違いタブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📙 応用 A1 ラボの図
設計開発試作性能評価・分析A氏(PL)B氏(設計・試作)C氏(開発)D氏(評価)1月2月3月4月5月6月7月8月9月色の部分=担当業務の期間に専属的に従事 → その期間の人件費が対象(従事状況を区分・人件費を適正に計算)
応用 A1

A1 人件費の「専ら従事」要件 ── 兼務者はどこまで入るか

📍 ラボの場所:応用タブ A1
ハルカ
設計部のBさんは、普段は量産品の設計で、研究プロジェクトには3か月だけ入っていました。Bさんの給与は入りますか。
先生
図のガントチャートを見てごらん。色の付いた部分が、担当業務の期間に専属的に従事しているところなんだ。プロジェクトに組み込まれ、設計や試作のように欠かせない業務を、おおむね1か月以上担当して、従事状況と人件費を区分できれば、その期間の人件費が対象になるよ。
迷いポイント 兼務者の人件費は、全部ダメ?
ハルカ
研究専任でない人は、まるごと対象外だと思っていました。
先生
それが、そうではないのだよ。担当フェーズに専属で入った期間は対象になり得るんだ。逆に、研究と営業を毎日行き来していて工数記録がない人は、全額が対象外になる。分かれ目は記録で区分できるかなんだ。
ハルカ
Bさん、3か月だけ研究者に「変身」していたんですね。変身の証拠は日報、と。
先生
そう、変身ベルトの代わりは工数データだよ。会計と税務の金額差が一番大きく出るのが、この人件費なんだ。
💡 そうだったのか!
兼務者でも担当フェーズに専属的に従事し、従事状況を区分できればその期間分が対象。記録がなければ全額対象外です。
📙 応用 A2 ラボの図
令和8年度70%控除対象に算入できる割合令和9年度60%控除対象に算入できる割合令和10年度以降50%控除対象に算入できる割合国外で実施される委託研究費 100 のうち控除対象になる額:70 → 60 → 50(実施場所で判定。医薬品等の臨床試験の委託は除く)
応用 A2

A2 国外委託試験研究費の段階的縮小(令和8年度改正)

📍 ラボの場所:応用タブ A2
ハルカ
海外子会社に研究を委託しています。令和8年度改正で、何か変わったんですか。
先生
国外で実施される研究の委託費は、控除対象に算入できる割合が下がっていくんだ。図のとおり、令和8年度は70%、令和9年度は60%、令和10年度以降は50%。事業年度の開始日で決まるよ。
迷いポイント 国外委託かどうかは、委託先の所在地で判定する?
ハルカ
日本の会社に委託していれば、国内委託ですよね。
先生
判定は試験研究を実施する場所なんだ。国内の会社に委託しても、実際の研究が国外で行われる部分は国外委託試験研究費になる。国内外で実施するなら合理的に区分するよ。医薬品等の臨床試験の委託だけは縮小の対象外なんだ。
ハルカ
縮小された分は、増減試験研究費割合の計算からも外すんですか。
先生
増減割合は、縮小前の1欄の金額で計算するよ。縮小が効くのは6欄の「控除対象試験研究費の額」だけなんだ。
💡 そうだったのか!
国外委託は実施場所で判定し、算入割合は70%→60%→50%。縮小は6欄(控除対象額)だけに効き、増減割合は1欄で計算します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクからシミュレーションを開く(国外委託 20,000 がある事例Gが入っています)
  2. 「事業年度の開始日」を R9.4.1〜R10.3.31 に変える

👀 控除対象試験研究費の額は 94,000(20,000 の70%)→ 92,000(60%)に下がり、限度額は 12,784 → 11,408。この会社は上限の 9,000 で止まるので、控除額は変わりません。

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📙 応用 A3 ラボの図
当期:限度額 > 控除上限控除しきれない額 1,030 が発生繰越翌期以降3年試験研究費が前3年平均を超える年に控除その年の上限の残りまで(別表六(十)23〜27欄)条件:繰越控除をする年の試験研究費の額 > 比較試験研究費の額(増加していない年は使えない)
応用 A3

A3 中小企業者等の判定と3年間の繰越控除

📍 ラボの場所:応用タブ A3
ハルカ
資本金5,000万円の子会社は、中小企業技術基盤強化税制を使えますか。
先生
資本金1億円以下でも、資本金1億円超の大規模法人に発行済株式の1/2以上(複数の大規模法人の合計なら2/3以上)を持たれていると、中小企業者等に当たらないんだ。前3年の平均所得が15億円を超える適用除外事業者も外れるよ。当たれば、控除率12%〜17%・上限最大35%の中小の制度を、一般型と選べるんだ。
ハルカ
図に「控除しきれない額 1,030」とありますね。これ、前にやった外国税額控除の限度超過額みたいに、3年繰り越せるんですか?
先生
そう、よく覚えていたね。令和8年度改正で、中小の制度にも3年の繰越ができたんだ。ただ、外国税額控除と違って、使える年には条件があるよ。
迷いポイント 繰り越した額は、翌期に必ず使える?
ハルカ
翌期になったら、繰り越した 1,030 をそのまま引けばいいんですよね。
先生
使えるのは、その年の試験研究費が比較試験研究費を超えている年だけなんだ。しかも、その年の上限の残り(別表六(十)23欄)までだよ。研究開発を減らした年には使えないんだ。
ハルカ
研究開発を減らした年には出番なし…。繰越さん、ずいぶん気難しいですね。
先生
気難しいというより、研究開発を増やす会社を応援する仕組みだからなんだ。期限の3年も、年度ごとに数えて管理するよ。
💡 そうだったのか!
中小の繰越は3年。使えるのは試験研究費が前3年平均を超える年だけで、その年の上限の残りまでです。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションを開く(中小企業者等の事例Dが入っています)
  2. 「使う制度」を一般型に変える

👀 中小の制度では控除額 3,500(上限35%)でしたが、一般型にすると 3,000(上限30%)に下がります。中小の制度で生じた繰越 1,030 も、一般型では生じません。

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📙 応用 A4 ラボの図
30%特別研究機関・大学等との共同・委託試験研究25%スタートアップ等との共同・委託試験研究(経産大臣の証明書)20%その他の民間企業等との共同・委託、中小企業者の知財使用、技術研究組合、高度研究人材、希少疾病用医薬品等控除上限は法人税額の10%(一般型・中小とは別枠)。OI型に使った費用は一般型の対象から外す
応用 A4

A4 オープンイノベーション型 ── 類型・控除率・手続

📍 ラボの場所:応用タブ A4
ハルカ
大学との共同研究費は、OI型にした方がお得ですよね。30%ですから。
先生
相手先で率が決まるんだ。図のとおり、大学・特別研究機関は30%、研究開発型スタートアップは25%、その他の民間企業などは20%。契約書に研究の内容・費用分担・成果の帰属などを定めて、相手方の確認や証明書を添付するのが要件だよ。
迷いポイント OI型に回しても、一般型の試験研究費にも入れられる?
ハルカ
OI型で30%を引いて、同じ費用を一般型の 100,000 にも残しておけば二重においしいですね。
先生
二重には使えないんだ。OI型に使った特別試験研究費は、一般型の「特別試験研究費以外の額」から外すよ。そしてOI型には、法人税額の10%という別枠の上限があるんだ。
💡 そうだったのか!
OI型は30/25/20%で、上限は法人税額の10%(別枠)。OI型に使った費用は一般型から外します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションを開く(大学 10,000・スタートアップ 5,000 をOI型にした事例Fが入っています)
  2. 「うち大学等との共同・委託(30%)」を 10,000 → 20,000 に変える

👀 OI型の限度額は 4,250 → 7,250 に増えますが、上限は法人税額の10%の 3,000 で変わらず、控除額は 3,000 のまま。一般型と合わせた控除額も 12,000 で変わりません。

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📙 応用 A5 ラボの図
資本金1億円超の大企業で、①②③の3つすべてに該当 → 研究開発税制を適用できない(1つでも満たせば適用可)① 所得金額が前年度より増加黒字拡大の年② 継続雇用者給与の増加率 1%未満(2,000人超等は2%未満)③ 国内設備投資 ≦ 償却費の30%(2,000人超等は40%)かつかつ判定は別表六(七)。該当すると別表六(九)・六(十二)の「特定税額控除規定の適用可否」が「否」になる
応用 A5

A5 大企業の不適用措置 ── 別表六(七)で先に判定

📍 ラボの場所:応用タブ A5
ハルカ
今期は利益が大きく増えました。研究開発税制も、いつもどおり使えますよね。
先生
大企業は、先に別表六(七)で不適用措置を確かめるんだ。図のとおり、①所得が前年度より増え、②継続雇用者の給与の増加率が1%未満、③国内設備投資が償却費の30%以下。この3つすべてに当たると、研究開発税制が使えなくなるよ。
迷いポイント 3つのうち1つでも当たると、使えない?
ハルカ
所得が増えた時点で、もう危ないんですよね。
先生
3つは「かつ」でつながっているんだ。賃上げか設備投資のどちらかの要件を満たしていれば、適用できるよ。従業員2,000人超などの会社は、2%未満・40%以下で判定するんだ。
ハルカ
利益が出て喜んでいたら、「賃上げは? 設備投資は?」と聞かれるんですね。家に帰ったら親に通知表を確認される気分です。
先生
通知表と違って、1科目でも合格なら大丈夫だよ。結果は六(九)・六(十二)の冒頭の「適用可否」に書くんだ。
💡 そうだったのか!
不適用は①所得増加 かつ ②賃上げ未達 かつ ③設備投資未達の3つすべてに該当したときだけ。1つでも満たせば適用できます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションを開く(不適用措置に該当する事例Jが入っています)
  2. 「大企業の不適用措置」を該当しない(可)に変える

👀 控除額は 0 → 9,000 に戻ります。試験研究費や控除率は同じでも、六(七)の判定ひとつで控除額が変わります。

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📙 応用 A8 ラボの図
法人税調整前 30,000 − 控除 9,000 = 納付 21,000研究開発税制で減る法人住民税(法人税割)課税標準は控除「前」の法人税額 30,000大企業:研究開発税制の分は減らない中小企業者等は、中小企業技術基盤強化税制等の控除後の法人税額が住民税の課税標準になる(地方税法附則8条)
応用 A8

A8 法人住民税・適用額明細書への影響

📍 ラボの場所:応用タブ A8
ハルカ
法人税が 9,000 減ったら、住民税の法人税割も同じ割合で減りますよね。
先生
大企業はそうならないんだ。住民税の法人税割の課税標準は、研究開発税制を適用する前の法人税額だよ。中小企業者等は、中小企業技術基盤強化税制などで控除した後の法人税額が課税標準になるんだ。根拠は地方税法附則8条だよ。
迷いポイント 適用額明細書は、制度ごとに1行でいい?
ハルカ
適用額明細書は「研究開発税制」で1行書けば足りますよね。
先生
条項と区分番号が分かれているんだ。一般型は六(九)33欄で00688、中小の当期分は六(十)22欄で00689、繰越分を使った年は六(十)27欄で00727、OI型は六(十二)11欄で00639。繰越分を使った年は2行になるよ。
💡 そうだったのか!
大企業の住民税は控除前の法人税額で計算。適用額明細書は00688・00689・00727・00639を使い分けます。
🧾 会計との違い C3 ラボの図
120会計上の研究開発費(注記額)▲12− 専ら要件を満たさない人件費▲5− 人文・社会科学、対象外活動▲8− 資産計上(取得時費用の専用設備)等+5+ 損金経理したソフトウェア取得価額100税務上の試験研究費の額例:会計の研究開発費 120 → 税務の試験研究費 100(数値は説明用)
会計との違い C3

C3 費目ごとの○× ── 金額がずれる理由

📍 ラボの場所:会計との違いタブ C3
ハルカ
うちの研究開発費の注記は 120 です。試験研究費が 100 になる、という図の説明を聞かせてください。
先生
図は数値例なんだ。会計の 120 から、専ら要件を満たさない人件費 12、人文・社会科学などの対象外活動 5、取得時に費用にした専用設備 8 を引いて、損金経理したソフトウェアの取得価額 5 を足すと、税務の 100 になるよ。
迷いポイント 引くだけ? 足すものはない?
ハルカ
会計の金額より、税務の方が必ず小さくなるんですよね。
先生
足すものもあるんだ。図の+5のように、研究開発費として損金経理したソフトウェアの取得価額は、税務で取得価額に算入されても試験研究費に入る。会計で研究開発費に入れていない製造現場の改良研究が、税務では対象になることもあるよ。
💡 そうだったのか!
会計 120 → 税務 100 は引くものと足すものの両方で動きます。差の最大要因は人件費の専ら要件です。
🧾 会計との違い C4b ラボの図
SaaS提供者(自社開発して外部へ提供)会計サービス提供契約等で将来の収益獲得が確実 → 制作費を資産計上研究段階・著しい改良は研究開発費(費用)税務(試験研究費)試験研究に当たる開発費で研究開発費として損金経理した額 → 試験研究費R3改正:損金経理分は資産の取得価額でも対象社内利用(自社の業務用)会計将来の収益獲得・費用削減が確実 → 資産計上確実でない・研究段階 → 費用税務(試験研究費)同左。業務改善目的でも自然科学に係る試験研究なら対象運用保守・ヘルプデスクは対象外SaaS利用者(他社サービスの利用料)会計利用料は期間費用自社向けカスタマイズは自社利用ソフトとして別途判定税務(試験研究費)試験研究のために使う利用料は「経費」として対象になり得る通常業務の利用料は対象外
会計との違い C4b

C4b SaaS・自社利用ソフトウェア ── 3つの立場と判定フロー

📍 ラボの場所:会計との違いタブ C4b
ハルカ
うちは自社開発のSaaSを外部に提供しています。開発費はソフトウェアに資産計上していますが、試験研究費に入りますか。
先生
図の左の立場、SaaS提供者だね。会計では、サービス提供契約などで将来の収益獲得が確実と認められた時点から、制作費を資産計上する。その前の研究段階は研究開発費の費用なんだ。税務は「試験研究に当たるか」と「研究開発費として損金経理したか」で判定するよ。
迷いポイント 資産計上したソフトウェアも、試験研究費に入る?
ハルカ
試験研究の成果なんだから、資産にした開発費も入れていいですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。会計で資産計上した額は損金経理していないから、その年の試験研究費には入らないんだ。令和3年度改正で加わったのは、税務で資産(ソフトウェアの取得価額)になっても、会計では研究開発費として費用処理した分なんだ。別表四で加算になる金額でも入るよ。逆に、会計でも資産にした分は、改正後も対象外なんだ。
ハルカ
同じ開発費でも、経理の仕方ひとつで税額控除が消えるなんて…。資産計上ボタンを押す前に、深呼吸が要りますね。
先生
深呼吸より、資産計上の開始時点を社内の承認資料で裏付ける方が効くよ。設例11で数字を追えるんだ。
💡 そうだったのか!
SaaSの開発費は研究開発費として損金経理した分が試験研究費(税務上の資産になっても入る:令和3年度改正)。会計で資産計上した制作費は、改正後も対象外です。
🧾 会計との違い C5 ラボの図
① 税額控除限度額(控除対象試験研究費の額 × 税額控除割合)13,600 千円② 控除上限(調整前法人税額 × 上限割合)9,000 千円控除できる額 = ①と②の小さい方 = 9,000 千円(上限が効いている)

🧾 仕訳で確認(例:当期の研究開発費 100,000 千円、法人税額 30,000 → 控除 9,000)

研究開発費の発生(人件費・原材料費・減価償却費・間接費配賦額を含む)
借方金額貸方金額
研究開発費(一般管理費)100,000現金預金・未払金ほか100,000
法人税の計上:調整前 30,000 − 研究開発税制 9,000 = 21,000
借方金額貸方金額
法人税、住民税及び事業税(法人税分)21,000未払法人税等21,000
会計との違い C5

C5 会計処理と仕訳 ── 発生時費用、注記、税額控除の仕訳

📍 ラボの場所:会計との違いタブ C5
ハルカ
税額控除の 9,000 は、仕訳ではどこに出てくるんですか。
先生
仕訳を見てごらん。研究開発費 100,000 は発生時に費用で、税額控除は研究開発費の仕訳には出てこないんだ。調整前の 30,000 から 9,000 を引いた 21,000 が、そのまま法人税等として計上されるよ。
ハルカ
これ、税効果でやった永久差異と同じで、税負担率を法定実効税率からずらす原因になりますか?
先生
そう、ちゃんと覚えていたね。当期に使う税額控除は一時差異ではないから、繰延税金資産も負債も生まれない。法人税等が直接減るので、法定実効税率と税負担率の差の要因として注記に出てくることが多いんだ。
迷いポイント 繰り越す税額控除も、税効果とは無関係?
ハルカ
じゃあ、中小で繰り越した 1,030 も、税効果とは関係ないですね。
先生
繰越分は話が別なんだ。税効果ラボの繰越外国税額控除と同じで、将来の税金を減らす効果があるから、回収可能性を満たせば繰延税金資産の対象になり得るよ。繰越期間内の法人税額や、試験研究費を増やせるかまで見て判断するんだ。
💡 そうだったのか!
当期の税額控除は法人税等を直接減らすだけで一時差異ではありません。繰越分は回収可能性を満たせば繰延税金資産になり得ます。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて試験研究費ラボの画面そのものです。応用タブと会計との違いタブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
兼務者の人件費は全部ダメ?担当フェーズに専属・区分できればその期間分は対象。記録なしは全額×A1
国外委託は委託先の所在地で判定?実施場所で判定。70→60→50%、縮小は6欄だけA2
中小の繰越は翌期に必ず使える?3年。試験研究費が前3年平均を超える年に、上限の残りまでA3
OI型と一般型で同じ費用を二重に?二重は不可。OI型は30/25/20%、上限は法人税額の10%A4
不適用は1つ該当でアウト?①所得増加 かつ ②賃上げ未達 かつ ③設備投資未達のときだけA5
住民税も控除後の法人税額で?大企業は控除前。明細書は00688・00689・00727・00639A8
会計→税務は引くだけ?足すもの(損金経理したソフト取得価額など)もあるC3
資産計上したSaaS開発費も対象?損金経理した分だけ。資産計上分はその年は対象外C4b
税額控除は税効果と無関係?当期分は一時差異でない。繰越分は回収可能性しだいでDTAC5
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。人件費は記録で区分できるか、国外委託は実施場所、中小の繰越は増やした年にだけ使える。OI型は別枠10%、大企業は六(七)の3条件を先に確かめる。そして会計の研究開発費から、引くものと足すもので試験研究費を作るんだ。
ハルカ
基礎編では計算ばかり気にしていました。応用まで来ると、日報や契約書、資産計上の承認資料みたいな「記録」が税額を決めているんですね。
先生
そのとおりだよ。計算はラボがしてくれるけれど、記録は会社にしか残せないんだ。
ハルカ
明日、研究所に「日報、ちゃんと付けていますか」と聞きに行きます。…研究所の人たちに、税務調査の人だと思われないか心配です。
先生
聞き方しだいだね。次の該当判定編では、迷いやすい支出を一つずつ「入る・入らない」で確かめていこうか。

参考資料

租税特別措置法42条の4・42条の4の2、同施行令27条の4、同施行規則20条、租税特別措置法関係通達(法人税編)42の4(1)-1〜(2)-3・(1)-7/国税庁 別表六(六)・六(七)・六(九)・六(十)・六(十一)・六(十二)の様式と記載の仕方(令和8年4月1日以後終了事業年度分)、適用額明細書の記載の手引(令和8年)/経済産業省「研究開発税制を強化しました」(令和8年5月)、「研究開発税制の概要」(令和4年4月版 p.32〜35:令和3年度改正の損金経理した研究開発費の取扱い)、令和3年度与党税制改正大綱/企業会計審議会「研究開発費等に係る会計基準」、移管指針第8号・第11号。ラボの数値はすべて独自の学習用です(千円単位・千円未満切捨て、12か月の事業年度、単体申告)。法令・様式の確認日:2026年10月3日。
このシリーズの記事:基礎編/該当判定編/設例・一般型と中小編/設例・改正とOI型編/設例・繰越と特殊ケース編
サイト内の関連:【2026年版】研究開発税制の計算方法|控除率・上限とシミュレーター/No.5441 研究開発税制について(概要)/法人税申告書(別表)から探す

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。