試験研究費ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ研究開発税制の控除率・控除上限・別表六(九)
無料の学習ツール「試験研究費ラボ」の読み方ガイドです。ラボの制度の推移タブと基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
事例A X社・大企業(単位:千円)
| 当期の試験研究費 | 100,000 |
| 前3年の試験研究費(前期・2期前・3期前) | 90,000/85,000/80,000 |
| 売上金額(当期・前3年とも) | 1,000,000 |
| 調整前法人税額 | 30,000 |
| 事業年度の開始日 | 令和8年4月1日〜令和9年3月31日 |
はじめに
今日の題材 ── 研究開発を増やしているX社
📍 ラボの場所:制度の推移タブ・基礎タブ
ハルカ
先生、研究開発税制の担当になりました。研究開発費の1割くらいが税金から戻ってくる制度、という理解で合っていますか。
先生
大まかにはそうなんだ。ただ「1割」は毎年動くし、法人税額で頭打ちにもなるよ。今日は事例AのX社で考えようか。前3年平均 85,000 に対して、当期は 100,000 まで増やした大企業だよ。
ハルカ
100,000 の1割なら 10,000 ですね。もう計算できました。
先生
事例Aの答えは 9,000 なんだ。どうして 10,000 にならないのかが、今日の中心だよ。表を手元に置いて、ラボの「制度の推移」と「基礎」タブを順に読んでいこうか。
ラボの制度の推移タブ・基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📜 制度の推移 H0 ラボの図
推移 H0
H0 変遷の全体像 ── 何がいつ変わったか(マトリクス)
📍 ラボの場所:制度の推移タブ H0
ハルカ
前任者の引継ぎメモに「研究開発税制は毎年変わるので注意」と書いてありました。本当に毎年なんですか。
先生
図のマトリクスを見てごらん。平成27年度から令和9年度以降まで、控除率・控除上限・中小・OI型・対象費用の5項目を並べてあるんだ。どの年度も、どこかの行が変わっているよ。
迷いポイント 毎年変わるなら、全部を覚え直すしかない?
ハルカ
毎年ぜんぶ変わるなら、毎年ぜんぶ覚え直しですね…。
先生
変わらない軸もあるんだ。控除上限の25%、中小の12%〜17%、OI型の30%・25%・20%は、ずっと同じだよ。動き続けているのは一般型の控除率カーブで、方向はいつも「試験研究費を増やした会社ほど率が上がる」形なんだ。
💡 そうだったのか!
変わり続けているのは
一般型の控除率カーブ。上限の軸25%、中小の12〜17%、OI型の30/25/20%は変わっていません。
📗 基礎 ① ラボの図
基礎 ①
研究開発税制とは ── 3つの型と全体像
📍 ラボの場所:基礎タブ ①
ハルカ
研究開発税制には、いくつも型があるんですよね。どれを使えばいいんですか。
先生
図のとおり、柱は3つなんだ。一般型と、中小企業者等が選べる中小企業技術基盤強化税制は、どちらか一方を選ぶよ。大学や企業との共同研究に使うオープンイノベーション型(OI型)は、別枠で上乗せできるんだ。
迷いポイント 研究開発税制は、所得から引く制度?
ハルカ
試験研究費を損金に足して、所得を減らす制度ですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。試験研究費は普通に損金になったうえで、さらに一定割合を法人税額から直接引くんだ。だから「税額控除」と呼ぶよ。
ハルカ
「オープンイノベーション型」って、名前だけで研究がもう半分終わった気がします。
先生
名前で控除額は増えないよ。契約書や相手方の確認がそろって初めて使える型なんだ。
💡 そうだったのか!
研究開発税制は
法人税額から直接引く税額控除。一般型と中小は選択、OI型は別枠で上乗せです。
📗 基礎 ② ラボの図
基礎 ②
税額控除の算式 ── 限度額と上限の小さい方
📍 ラボの場所:基礎タブ ②
ハルカ
さっきの 10,000 と 9,000 の差は、どこで生まれるんですか。
先生
図の2本の棒を比べてごらん。1本目は試験研究費 100,000 × 控除率 13.6% = 13,600。これが税額控除限度額だよ。2本目は調整前法人税額 30,000 × 30% = 9,000。これが控除上限なんだ。控除できるのは小さい方の 9,000 だよ。
ハルカ
これ、前にやった外国税額控除の「器」と同じ考え方ですか? 器より多くは引けない、という。
先生
そう、ちゃんと覚えていたね。法人税額で決まる上限に収まる分だけ引ける点は同じなんだ。ただ、外国税額控除のようにあふれた分を3年繰り越せるのは、研究開発税制では中小企業技術基盤強化税制(と令和9年度からの戦略技術領域型)だけで、一般型は切り捨てになるよ。
迷いポイント 試験研究費を増やせば、控除額は必ず増える?
ハルカ
じゃあ、試験研究費をもっと増やせば、控除ももっと増えますよね。
先生
事例Aは上限の 9,000 で止まっているから、試験研究費を増やしても控除額は増えないんだ。法人税額が大きい年なら、限度額の 13,600 まで届くよ。
💡 そうだったのか!
控除額は
「試験研究費×控除率」と「法人税額×上限割合」の小さい方。事例Aは上限の 9,000 で頭打ちです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(事例Aが入っています)
- 「調整前法人税額」を 30,000 → 100,000 に変える
👀 控除上限は 9,000 → 30,000 に広がり、控除額は限度額の 13,600 まで増えます。今度は限度額の方が小さい方になります。
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📗 基礎 ③ ラボの図
基礎 ③
試験研究費の額の範囲 ── 5つの費目と「損金算入」
📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
試験研究費の 100,000 は、会計の研究開発費の金額をそのまま使えばいいですか。
先生
図のとおり、試験研究費の額は5つの費目で決まるんだ。原材料費・人件費・経費・委託試験研究費・技術研究組合の賦課金で、しかも損金に算入されたものだけだよ。
迷いポイント 会計の「研究開発費」の残高=試験研究費の額?
ハルカ
研究開発費の勘定の残高をそのまま別表の1欄に書けば、5分で終わりますよね。
先生
そこが実務家でも間違いやすいところなんだ。人件費は「専ら従事する者」に限られるし、研究専用の設備は取得価額ではなく減価償却費だけが入る。会計の残高から、税法の要件で集計し直すんだよ。
ハルカ
正直に言うと、5分どころか、3分で終わらせるつもりでした。
先生
その2分の差が、税務調査で一番聞かれるところだよ。集計の手順は「会計との違い」タブにまとめてあるんだ。
💡 そうだったのか!
試験研究費の額は
税法の5つの費目と要件で再集計した金額。会計の研究開発費の残高とは一致しないのが普通です。
📗 基礎 ④ ラボの図
基礎 ④
「試験研究」に当たるか ── 新たな知見・自然科学・含まれないもの
📍 ラボの場所:基礎タブ ④
ハルカ
「試験研究」って、白衣を着て実験しているイメージです。工場の改良も入るんですか。
先生
入るんだ。図のとおり、新たな知見を得る活動だけでなく、今ある知見を新しく応用する活動も試験研究になる。現に生産中の製品の製造方法の改良も含まれるよ。ただし自然科学に係るものに限られるんだ。
迷いポイント 新製品でなければ、試験研究にならない?
ハルカ
既存製品の改良なら、量産のための試作も入りますよね。
先生
量産方法が技術的に確立した製品の量産試作は、通達で含まれない例に挙がっているんだ。品質管理、製品検査、性能向上を目的としないデザインの設計・試作も同じだよ。技術的な不確実性があるかどうかで線を引くんだ。
💡 そうだったのか!
試験研究は
自然科学に係る創造的・体系的な活動。既存製品の改良も入りますが、量産試作・品質管理・デザインなどは除かれます。
📗 基礎 ⑤ ラボの図
基礎 ⑤
増減試験研究費割合 ── 前3年平均との比較
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
ハルカ
控除率の 13.6% は、どこから出てくるんですか。
先生
出発点は「前3年の平均と比べて、どれだけ増やしたか」なんだ。図のとおり、前3年は 80,000・85,000・90,000 で、平均の 85,000 が比較試験研究費。当期の 100,000 は 15,000 多いから、増減試験研究費割合は 15,000 ÷ 85,000 = 17.6% だよ。
迷いポイント 比べる相手は前期の試験研究費?
ハルカ
前期の 90,000 と比べて 11.1% 増、ではないんですか。
先生
比べるのは前3年の平均だよ。前期だけと比べると、1年だけ増やして翌年に戻す会社が得をしてしまうからなんだ。もう一つ、売上に対する試験研究費の割合(試験研究費割合)も出す。事例Aは 100,000 ÷ 1,000,000 = 10.0% で、10%を超えたときだけ割増が付くんだ。
💡 そうだったのか!
控除率は
前3年平均との増減割合で決まります。事例Aは 85,000 に対して+17.6%、試験研究費割合は 10.0%(割増なし)です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Aが入っています)
- 「試験研究費の額(合計)」を 100,000 → 85,000 に変える(前3年平均と同じ額)
👀 増減割合は 0%、控除率は 13.6% → 8.5%、控除上限は 30% → 25% になり、控除額は限度額の 7,225 です。
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📗 基礎 ⑥ ラボの図
基礎 ⑥
控除率のカーブ ── 令和8年度・令和9年度以降・中小
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑥
ハルカ
カーブが3本ありますね。事例Aはどれを使うんですか。
先生
事業年度の開始日で決まるんだ。事例Aは令和8年4月1日〜令和9年3月31日に開始する年度だから、令和8年度のカーブだよ。増減なしで 8.5%、+12%で 11.5%、そこから傾き 0.375 で上がる。17.6% なら 11.5% + 5.6% × 0.375 で 13.6% なんだ。
迷いポイント 令和9年度以降も、増減なしなら8.5%?
ハルカ
同じだけ研究開発を続けていれば、来年度も 8.5% はもらえますよね。
先生
令和9年4月1日以後に開始する年度は、カーブの形が変わるんだ。増減なしでは 6.5% で、+3%増やして初めて 8.5%、+15%で 11.5% になるよ。マイナス側は▲10%で 0% まで下がるんだ。
ハルカ
同じ額を使い続けたのに率が下がるなんて…。毎日ちゃんと出社しているのに、褒めてもらえない気分です。
先生
褒めてほしければ、前3年平均より3%増やす。そういう設計の改正なんだ。
💡 そうだったのか!
カーブは
事業年度の開始日で選びます。令和9年度以降は「+3%で8.5%」になり、増やさないと率が上がりません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Aが入っています)
- 「事業年度の開始日」を R9.4.1〜R10.3.31 に変える
👀 同じ+17.6%でも控除率は 13.6% → 12.4%、限度額は 13,600 → 12,400 に下がります。事例Aは上限の 9,000 で止まるので、控除額は変わりません。
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📗 基礎 ⑦ ラボの図
基礎 ⑦
控除上限 ── 25%を軸に20〜35%、別枠10%
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑦
ハルカ
事例Aの上限が 25% ではなく 30% なのは、なぜですか。
先生
上限は法人税額の25%が軸で、増減割合が大きいと上乗せされるんだ。令和8年度は+4%を超えた部分 × 0.625 で、最大+5%。事例Aは 13.65% × 0.625 = 8.5% だけれど、上限の+5%で止まって 30% だよ。試験研究費割合が10%を超えるなら、別の上乗せと比べて高い方を使うんだ。
迷いポイント ベンチャー企業特例なら、上限は40%で止まる?
ハルカ
ベンチャー企業は上限40%、と聞きました。40%が天井ですよね。
先生
40%になるのは上限計算の基準割合なんだ。増減割合による上乗せは、その上に加わるよ。だから最終的な上限は40%とは限らないんだ。
ハルカ
上限さん、年度ごと、会社ごとに違う服を着て出てくるんですね。
先生
中身はいつも「法人税額 × 割合」だよ。服の数より、割合の決め方を見ればいいんだ。
💡 そうだったのか!
上限は
法人税額の25%が軸で、増減割合・試験研究費割合で20〜35%に動きます。ベンチャー特例は基準割合が40%になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションを開く(事例Aが入っています)
- 「ベンチャー企業特例」を該当するに変える
👀 上限割合は 30% → 45%(基準40%+増減の上乗せ5%)、控除上限は 13,500 になり、控除額は 9,000 → 13,500 に増えます。
ラボを開く ▶
📗 基礎 ⑧ ラボの図
基礎 ⑧
申告書の流れ ── 別表六(十一)から別表一まで
📍 ラボの場所:基礎タブ ⑧
ハルカ
計算は分かってきました。申告書では、どの別表から書けばいいんですか。
先生
図の流れのとおりなんだ。大企業はまず別表六(七)で不適用措置に当たらないかを確かめる。次に別表六(十一)で比較試験研究費 85,000 と平均売上金額を出して、別表六(九)で控除率・限度額・上限を計算する。中小なら六(十)、OI型は六(十二)だよ。
迷いポイント 別表六(九)の控除額は、そのまま別表一へ?
ハルカ
六(九)の 9,000 を、そのまま別表一に書けば終わりですよね。
先生
間に別表六(六)が入るんだ。各制度の控除可能額をここに集めて、合計が調整前法人税額の90%以内かを確かめてから、法人税額の特別控除額を別表一へ転記するよ。租税特別措置だから、適用額明細書にも書くんだ。
💡 そうだったのか!
流れは
六(七)→六(十一)→六(九)/六(十)/六(十二)→六(六)→別表一。適用額明細書も忘れずに。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて試験研究費ラボの画面そのものです。制度の推移タブと基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
試験研究費ラボを開く ▶今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。研究開発税制は法人税額から直接引く制度で、控除できるのは限度額と上限の小さい方。控除率は前3年平均との増減で決まり、令和9年度以降は増やさないと率が上がらない形になる。上限は法人税額の25%が軸なんだ。
ハルカ
最初は「研究開発費の1割が戻る」と思っていました。今は、まず上限と比べて、それから前3年と比べる順番だと説明できます。
先生
その順番で考えられれば、事例Aの 9,000 も自分で出せるね。
ハルカ
はい。…ただ、明日から会社の研究開発費の勘定を見るたびに「この数字、税務でも同じ顔をしているのかな」と疑ってしまいそうです。
先生
その疑い方は、応用編でいちばん役に立つよ。次の応用編では、専ら従事の人件費や国外委託、中小の繰越を見ていこうか。
参考資料
租税特別措置法42条の4・42条の4の2、同施行令27条の4、同施行規則20条、租税特別措置法関係通達(法人税編)42の4(1)-1〜(2)-3・(1)-7/国税庁 別表六(六)・六(七)・六(九)・六(十)・六(十一)・六(十二)の様式と記載の仕方(令和8年4月1日以後終了事業年度分)、適用額明細書の記載の手引(令和8年)/経済産業省「研究開発税制を強化しました」(令和8年5月)、「研究開発税制の概要」/企業会計審議会「研究開発費等に係る会計基準」、移管指針第8号・第11号。ラボの数値はすべて独自の学習用です(千円単位・千円未満切捨て、12か月の事業年度、単体申告)。法令・様式の確認日:2026年10月3日。
このシリーズの記事:応用編/該当判定編/設例・一般型と中小編/設例・改正とOI型編/設例・繰越と特殊ケース編
サイト内の関連:【2026年版】研究開発税制の計算方法|控除率・上限とシミュレーター/No.5441 研究開発税制について(概要)/法人税申告書(別表)から探す
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。