国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(令和8年9月、軽減税率・インボイス制度対応室)の17問を、①図解と解説 → ②先生とハルカの会話の2部構成で解説します。まず問ごとに結論と図で全体像をつかみ、根拠を文章で確かめたうえで、迷いやすい点を会話で腹落ちさせる、という順番で読めます。
⚠ このQ&Aは「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日閣議決定)の内容で、法案が国会で可決・成立した場合のものです。国税庁は今後も問の追加・改訂を予定しています。本記事の図と数値例はQ&Aの記載をもとにしています。
①図解と解説で読む ── 17問を1問ずつ
17問を章ごとに上から順に並べています。各カードは 結論 → 図 → 解説 → 注意 → 根拠 の順。根拠チップは 改正案(今回のQ&A・大綱。法案成立が前提)と 現行法(すでにある条文・通達)を色で分けています。カード下の「💬 会話で読む」で、同じ論点の「②先生とハルカ」へ飛べます。
1章引下げの概要(問1-1〜1-6)
問1-1消費税率引下げと特例の全体像
対象は「飲食料品の譲渡」と「保税地域からの引取り」です。週2回以上発行される定期購読契約の新聞は対象外で、8%のままです。
引下げに合わせて、次の特例等が設けられます。いずれも「飲食料品の譲渡を行う事業者」が念頭に置かれています。
| 特例等 | 要点 | 問 |
|---|---|---|
| 経過的な取扱い | R9.1.1前の定期供給契約・通信販売の条件提示に基づく一定の譲渡は8%のまま(1%前提の契約等を除く) | 問1-6 |
| 課税事業者選択届出の特例 | R9.4.1の属する課税期間中の届出で、その課税期間から課税事業者になれる | 問3-2 |
| 簡易課税選択不適用届出の特例 | R9.4.1の属する課税期間中の届出で、その課税期間から一般課税。2年継続要件も適用しない | 問3-5 |
| 簡易課税の計算方法の特例 | 飲食料品(1%)の売上税額と同額を仕入税額とみなす(業種区分を問わない) | 問3-6・3-7 |
| 中間申告の特例 | 前期の飲食料品に1%(終了時は8%)が適用されたものとした税額で仮決算による中間申告ができる | 問3-8 |
| 総額表示義務の特例 | 税率変更の前後2か月ずつ、困難な事情と誤認防止措置を条件に他方の税率での総額表示を認める | 問3-9 |
問1-2税率1%の対象となる「飲食料品」の範囲
酒類、外食、ケータリング、医薬品・医薬部外品等は従来どおり標準税率10%です。テイクアウト・出前、一定の一体資産、有料老人ホーム等での一定の飲食料品の提供は対象です。
問1-3引下げの適用時期と、深夜営業の締め時刻
営業時間が午前9時〜翌1時で、日々の売上を午前1時で締めて集計している事業者の例です。事業者が継続して適用している売上計上基準に従って3月31日分の売上として計上する場合、その時間帯の飲食料品の譲渡は3月31日時点の税率(8%)を適用して差し支えないとされています。
- 3月31日までに締結した契約に基づく譲渡・仕入れでも、4月1日以後に行われるものは、経過的な取扱い(問1-6)の対象を除き1%です。
- 3月31日までに行った仕入れ(8%)は、その商品を4月以後に販売しても8%のままです。
問1-4売り手と買い手で計上基準が違うとき
売り手が出荷基準(出荷3月30日・8%で請求)、買い手が検収基準(納品4月2日)の例です。インボイス制度の下では、買い手はインボイス等に記載された税率・消費税額等に基づいて仕入控除税額を計算するため、この場合は8%で控除します。
問1-53月に売った商品の、4月以後の返品
見るのは「いつ返されたか」ではなく「いつ・何%で売ったか」です。3月31日以前の販売に係る売掛金等が4月1日以後に貸倒れとなった場合も同様に8%で計算します。
問1-6経過的な取扱い(定期供給契約・通信販売)
| 区分 | 8%になる要件 | 1%になる例 |
|---|---|---|
| ⑴ 定期供給契約 | R9.1.1前に締結した定期供給契約(不特定多数の者に週・月・年などの周期でおおむね規則的に供給)に基づき、R9.4.1前に対価を領収している、同日以後の飲食料品の譲渡(領収済み部分に限る) | 契約に「R9.4.1以後の販売は1%による」「R9.4から月額10,100円(1%税込)」等の定めがある/R9.1.1以後に契約金額を変更する契約を締結 |
| ⑵ 通信販売 | R9.1.1前に販売条件の提示(新聞・テレビ・チラシ・カタログ・ネット等の媒体。訪問面談は含まない)が行われ、R9.4.1前に申込み(ネットや口座払込みを含む。訪問面談は含まない)を受けた、同日以後の飲食料品の譲渡 | 販売条件に「1%へ変更された場合は10,100円」等、1%前提の提示をしている |
- 「販売条件の提示」には、カタログ等の印刷物の作成が完了するなど「いつでも提示できる状態」にある場合も含まれます。
- 所得税法上の現金主義の小規模事業者(消法18①)や国・地方公共団体等(消法60②③、消令74①②)について、資産の譲渡等の時期の特例によりR9.4.1以後に行われたとされるR9.4.1前の譲渡も8%です。
2章インボイスとの関係(問2-1・2-2)
問2-1税率1%の取引に係るインボイス・帳簿の記載
税率1%の対象である飲食料品は、軽減税率の対象品目でもあります。そのため「軽減税率の対象品目である旨」を記載すれば足りるとされています。
インボイスの記載事項(消法57の4①)は、①発行事業者の氏名・名称と登録番号、②取引年月日、③取引内容(軽減税率対象である旨)、④税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率、⑤税率ごとに区分した消費税額等、⑥交付を受ける事業者の氏名・名称です。変わるのは④と⑤の中身だけです。
問2-28%と1%が混在する請求書(15日締めなど)
毎月15日締めの卸売業者の令和9年4月分請求書(3/16〜4/15)には、3月分(8%・10%)と4月分(1%・10%)が混在します。方法Bでは、3月分小計・4月分小計を分けた上で、末尾に1%・8%・10%の3区分ごとに対価の額と消費税額を書きます。
いずれも、税率ごとに区分した対価の額・適用税率・消費税額等が読み取れることが要点です。
3章特例(問3-1〜3-9)
問3-1免税事業者が還付を受けるための手続
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者(消法9①)は、納税義務が免除される代わりに、仕入れに係る消費税額の控除も還付も受けられません。
課税事業者になる方法は2つです。①「消費税課税事業者選択届出書」の提出(原則は課税期間の初日の前日まで。今回、問3-2の特例あり)、②インボイス発行事業者の登録に係る経過措置(問3-4)。課税事業者になれば、課税期間ごとの確定申告で、売上税額よりインボイスに基づく仕入税額が多ければ差額が還付されます(消法45①)。
問3-2免税→課税事業者になる届出の特例
原則では、課税事業者を選択しようとする課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります(消法9④)。特例では、飲食料品の譲渡を行う免税事業者がR9.4.1の属する課税期間中に届出書を提出すれば、その課税期間から課税事業者になれます。「適用開始課税期間」欄にはR9.4.1の属する課税期間を書きます。法案成立後はR9.4.1前でも提出できる予定です。
個人事業者・12月決算法人の場合、課税事業者になるのは令和9年1月1日からです。1〜3月の飲食料品の譲渡は8%で申告することになります(令和11年も続ける場合、4〜12月も8%)。
やめるとき
選択後は原則2年間継続が必要です。やめるには、課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出します(消法9⑤⑥⑧)。例ではR10年中に提出すればR11年から免税に戻れます。課税期間の特例(問3-3)を併用し、税率引下げが終了するR11.3.31までに提出する方法も示されています。
- 課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に開始する課税期間中に、調整対象固定資産(100万円(税抜き)以上の棚卸資産以外の固定資産)の課税仕入れ等を行い一般課税で申告すると、その課税期間の初日から原則3年間は免税に戻れません(消法9⑦)。高額特定資産(1,000万円(税抜き)以上の棚卸資産又は調整対象固定資産)も同様です(消法12の4①②)。
- 免税→課税の切替えの期首に持つ棚卸資産のうち免税期間中の仕入れに係るものは、課税事業者となった課税期間の仕入税額控除の対象とみなされます(明細書の保存が必要、消法36①②)。逆に課税→免税のときは、直前の課税期間に仕入れた棚卸資産の税額を控除に含めません(消法36⑤)。
問3-3課税期間を短縮して早く還付を受ける手続
個人なら1〜3月・4〜6月・7〜9月・10〜12月(または各月)、法人なら事業年度の初日から3か月(1か月)ごとの各期間が1つの課税期間になります。年や事業年度の途中から適用する場合、初日から適用開始日の前日までが1つの課税期間とみなされます(R9.3.31に届出→1〜3月が1つの課税期間)。
問3-4インボイス登録の経過措置で、4月1日からだけ課税事業者になる
令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間に登録を受ける場合、登録申請書に登録希望日(提出日から15日以後の日)を記載すれば、その登録希望日から課税事業者になる経過措置があります(28年改正法附則44④、30年改正令附則15②、消基通21-1-1)。
- 登録日の属する課税期間の翌課税期間から、登録日以後2年を経過する日(R11.3.31)の属する課税期間(R11)までは免税に戻れません(附則44⑤)。R12から戻るには、R11.12.17までに「登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します(15日前の日は提出期限ではないため、土日祝でも翌日に延びません)。
- 登録を受けると、課税事業者である取引先の求めに応じてインボイスを交付する義務が生じます(消法57の4①)。
| 比較(個人事業者) | A 課税事業者選択届出書(問3-2) | B インボイス登録の経過措置(問3-4) |
|---|---|---|
| 課税事業者になる日 | R9.1.1(1〜3月は8%で申告) | R9.4.1(登録希望日。1〜3月は申告対象外) |
| 免税に戻れない期間(原則) | R9.1.1〜R10.12.31 | R9.4.1〜R11.12.31(課税期間特例の併用でR11.3.31まで) |
| 戻る手続 | R10年中に選択不適用届出書 | R11.12.17までに登録取消届出書 |
| インボイスの交付義務 | なし | あり |
問3-5簡易課税→一般課税になる届出の特例
原則では、簡易課税をやめる課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出し(消法37⑤⑦)、しかも選択届出書の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出できません(消法37⑥)。
特例では、飲食料品の譲渡を行い簡易課税の適用を受けている事業者が、R9.4.1の属する課税期間中に不適用届出書を提出すれば、その課税期間から一般課税で申告できます。
問3-6簡易課税制度の計算方法の特例
簡易課税は、売上に係る消費税額に業種区分ごとのみなし仕入率(第1種90%〜第6種40%)を乗じた額を仕入税額とみなす制度です(消法37①、基準期間の課税売上高5,000万円以下)。2割特例・3割特例を適用する場合も同じ扱いです。
| 売上(税率) | 売上税額 | 仕入税額(控除) |
|---|---|---|
| 飲食料品の小売 2,000万円(1%・第2種) | 20万円 | 20万円(同額) |
| 雑貨などの小売 300万円(10%・第2種80%) | 30万円 | 24万円 |
| イートイン・外食 100万円(10%・第4種60%) | 10万円 | 6万円 |
| 合計 | 60万円 | 50万円 → 納付税額10万円 |
問3-775%ルールの判定・計算との関係
2種類以上の事業を営み1種類の課税売上高が全体の75%以上なら、その事業のみなし仕入率を全体に適用できます。3種類以上で特定の2種類の合計が75%以上なら、高い方の率をその事業に、低い方の率をそれ以外に適用できます(消法37①、消令57③)。
例では、飲食料品の小売2,500万円を除き、雑貨800万円÷1,000万円=80%≧75%。雑貨(第2種)の80%を、飲食料品以外の課税売上1,000万円(税100万円)に乗じて仕入控除税額を計算できます。
問3-8中間申告制度の特例
直前課税期間の確定消費税額(地方消費税を除く)が48万円超の事業者は、その額に応じて年1回(1/2)・3回(1/4)・11回(1/12)の中間申告が必要です(消法42)。課税期間の特例を適用している事業者は不要です。
⑴R9.4.1以後に開始する中間申告対象期間では、直前課税期間の飲食料品の譲渡・課税仕入れに1%が適用されたものとした消費税額に基づく中間申告税額(国・地方。税額がなければゼロ)を記載した仮決算による中間申告書を提出できます。⑵R11.4.1以後に開始する中間申告対象期間では、逆に8%が適用されたものとして計算できます。
- 中間申告書を期限までに提出しないと原則額で提出したものとみなされるため、仮決算による中間申告書を期限後に提出することはできません。
- 簡易課税の事業者は、⑴では計算方法の特例(問3-6)を用い、⑵では用いません。
- 確定申告が還付になる見込みなら、課税期間の特例(問3-3)の活用も選択肢です。
問3-9飲食料品の総額表示義務の特例
消費者向けにあらかじめ価格を表示する事業者(免税事業者を除く)は、税込価格の表示が必要です(消法63、消基通18-1-7・18-1-8)。値札の貼り替え等の事務負担に配慮して、この特例が設けられます。
「困難な事情」とは、夜間の値札の貼り替え作業に対応できない、カタログや商品パッケージ自体に価格が印字されている、といった事情です。誤認防止措置の例として、棚の近くに「この棚の商品は税率8%に基づく税込価格で表示しています。レジでは税率1%で精算いたします」と掲示する方法や、1%表示の値札に「(1%)」と明記する・色を変える・シールを貼る等で区別した上で店内に説明を掲示する方法が示されています。
- 随時貼り替えているのに8%表示を続けるような場合は「困難な事情」に当たりません。
- 税抜価格のみ・「+税」のみの表示は引き続き認められません。
②先生とハルカ ── 迷いポイントを会話で
「質問 → 図の読み方 → 🤔迷いポイント → 正解と理由 → 💡そうだったのか」の順で、つまずきやすいところを会話で確かめます。各節の頭に図を再掲しているので、図を見ながら読み進めてください。
ハルカ(事業会社の経理担当。単体決算はひととおり経験、税務の改正対応は勉強中)が、ギフト用のお菓子も扱う自社の経理の立場で、国税庁Q&Aの17問を先生と一緒に読みます。各節の頭に「①図解と解説」の図を再掲しているので、図を見ながら会話を追ってください。
2年間だけ「1%」── いつから、何が、どこまで
4月1日をまたぐ取引 ── 検収・返品・定期便はどうなる
インボイスはどう変わる ── 変わるのは2か所だけ
還付を受けたい免税事業者 ── 課税事業者になる2つのルート
簡易課税の2つの特例 ── やめる届出と、同額控除
中間申告と値札 ── 前期ベースの罠と、2か月の猶予
今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
| 場面 | 迷いやすいこと | 答え(問) |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 新しい線引きを覚える? | 軽減税率8%と同じ範囲(問1-2) |
| 深夜営業 | 0〜1時の売上は1%? | 継続する締め基準で3/31分なら全部8%(問1-3) |
| 検収が4月 | 1%に引き直す? | インボイスの税率(8%)に従う(問1-4) |
| 4月の返品 | 1%で返還税額? | 売ったときの8%で計算(問1-5) |
| 定期便・通販 | 8%と1%を選べる? | 選択制ではない。3つの日付で8%、1%前提の契約等なら1%(問1-6) |
| インボイス | 「1%対象の旨」を追加? | 不要。税率と税額が1%になるだけ(問2-1) |
| 混在請求書 | 必ず2枚に分ける? | 2枚でも1枚区分でもよい(問2-2) |
| 免税事業者 | 還付だけ受けられる? | 課税事業者になるのが前提(問3-1) |
| 届出期限 | 前年末を過ぎたら無理? | R9.4.1の属する課税期間中でよい。参考事項欄に「飲食料品特例」(問3-2・3-5の届出のみ) |
| 4月からだけ | 方法はない? | インボイス登録の経過措置(登録希望日4/1)(問3-4) |
| 簡易課税 | 飲食料品にも80%? | 売上税額と同額を仕入税額に。75%判定からも除く(問3-6・3-7) |
| 中間申告 | 前期の1/2のまま? | 「1%だったら」の税額で第一表だけの仮決算申告可(問3-8) |
| 値札 | 4/1に全部貼り替え? | 前後2か月、困難な事情+誤認防止措置で猶予(問3-9) |
今日のふりかえり
- 国税庁 軽減税率・インボイス制度対応室「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(令和8年9月)
- 「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日閣議決定)
- 消費税法9条・12条の4・18条・19条・30条・36条・37条・42条・43条・45条・57条の2・57条の4・58条・60条・63条、消費税法施行令57条・70条の11・71条・74条、平成28年改正法附則44条・51条の2・51条の3、消費税法基本通達18-1-7・18-1-8・21-1-1
- 国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」
※ 本記事はQ&Aの公表時点(令和8年9月)の内容に基づく。法案の審議状況・Q&Aの改訂により取扱いが変わる可能性があります。