収益認識ラボ⑤【設例・時期編】|先生と一緒に図で学ぶ設例 基礎5・応用3〜5 商品券・入会金・工事
無料の学習ツール「収益認識ラボ⑤」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、収益の「時期」の設例(基礎5・応用3・応用4・応用5)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎5 ラボの画面
前提条件(独自の数値・設定)
- 企業Bは1枚 1,000 のギフトカードを 300枚、合計 300,000 発行した。過去の実績から 10%(30,000)は使われない(非行使部分)と見込む。
- X2年度に税込 110,000 分(110枚)が商品と引き換えられた。消費税率10%。
- 法人税:原則どおり引換え時の益金(発行年度ごとに区分管理)。
📎 実務で確認する資料- 商品券の発行規程(有効期限・換金の可否)と発行年度ごとの区分管理の台帳
- 未引換残高の推移と非行使割合(回収率)の見積り根拠
- 10年経過日等の管理(発行年度・有効期限・継続適用する基準)
- 引換え時の売上データ(消費税の課税標準)
はじめに
設例・基礎5/応用3/応用4/応用5 ── 「いつ収益にするか」が三層でずれる4つの設例
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎5 ステップ1
ハルカ
先生、今日は「時期」の設例ですね。商品券、入会金、工事契約。どれも会計では収益を後ろに送る取引です。
先生
そう。会計が後ろに送った収益を、法人税がいつ益金にするか、消費税がいつ課税するかは、取引ごとに違うんだ。商品券は原則そろう、入会金は原則ずれる、工事は消費税だけずれる、と覚えておくと見通しがいいよ。
ハルカ
前提に「10%(30,000)は使われない」とあります。③編の非行使部分ですね。
先生
そのとおり。まず基礎5で商品券の原則を、応用3で発行時に一括益金にした場合を見て、入会金と工事に進もうか。
設例・基礎タブの基礎5を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎5 ラボの画面
非行使部分 = 300,000 × 10% = 30,000 行使が見込まれる部分 = 270,000
行使割合 = 110,000 ÷ 270,000 = 40.7% → 非行使部分の収益 = 30,000 × 110,000 ÷ 270,000 ≒ 12,222
商品の売上高 = 110,000 × 100/110 = 100,000
会計
X2年度:税込 110,000 分の行使(非行使部分は行使割合 40.7% で収益に)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約負債 | 122,222 | 売上高 | 100,000 |
| | 仮受消費税等 | 10,000 |
| | 雑収入(非行使部分) | 12,222 |
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)| 区分 | 課税標準 | 税額 |
|---|
| 課税売上げの対価(引き換えた商品) | 100,000 | 10,000 |
| 非行使部分の収益(雑収入)は対価ではない → 不課税 | — | — |
消費税:商品券の発行は不課税で、商品と引き換えた時に課税売上げ。非行使部分の収益(雑収入)は資産の譲渡等の対価ではないので課税標準に入らない。
会計:非行使部分は、顧客の権利行使のパターンと比例的に収益にする(適用指針第54項)。
法人税:非行使部分の対価に権利行使割合を乗じた額から既に益金にした額を控除する方法で益金にできる(基通2-1-39の2)。会計と同じ。
消費税:引き換えた商品 100,000 が課税売上げ。非行使部分の収益(雑収入)は対価ではないので不課税。
設例・基礎5
X2年度 ── 行使 110,000:売上 100,000、雑収入 12,222、課税売上げは 100,000
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎5 ステップ3
ハルカ
X1年度の発行時は、会計は契約負債 300,000、法人税も同じ、消費税は不課税でしたね。X2年度に 110,000 分が使われました。
先生
会計は、商品の売上高 100,000(税込 110,000 の 100/110)と、非行使部分の収益 12,222 を計上するんだ。③編で習った、行使割合 40.7% に比例させる計算だね。法人税も基通2-1-39の2で同じ方法を認めるので「同左」だよ。
迷いポイント 雑収入 12,222 にも消費税がかかる?
ハルカ
非行使部分の収益も売上の一種なので、課税売上げに入れますよね。
先生
入れないんだ。非行使部分の収益は、資産の譲渡等の対価ではないので不課税だよ。消費税の列は課税売上げ 100,000・税額 10,000 だけ。商品券は発行時が不課税で、商品と引き換えた時に初めて課税売上げになるんだ。
ハルカ
使われない商品券の分は、会計では収益になるのに、消費税からは「それは売上ではありません」と言われるんですね。収益なのに売上ではない、少し寂しい立場です。
先生
寂しくても、課税標準に入れないのが正しいんだよ。
💡 そうだったのか!
商品券は発行時
不課税、引換え時に商品の対価 100,000 が課税売上げ。非行使部分の収益 12,222 は
対価ではないので不課税。法人税は原則どおり会計と同じです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「時期」のシミュレーションを開く(基礎5の数字)
- 右の「X2年度の行使額(税込)」を 110,000 から 220,000 に変える
👀 行使割合が 81.5% になり、会計・法人税の収益は 112,222 → 224,444、課税売上げは 200,000。非行使部分の収益 24,444 は、やはり課税標準に入りません。
ラボを開く ▶
📘 設例・応用3 ラボの画面
会計の収益 = 売上高 100,000 + 雑収入 12,222 = 112,222 契約負債の取崩し = 112,222 + 仮受消費税等 10,000 = 122,222
法人税:X1年度に税込の全額を益金にしたので、行使時の消費税相当額 10,000 を収益から振り替え(所得 ▲10,000)→ 取崩額 122,222 を減算
会計
X2年度:税込 110,000 分の行使(非行使部分は行使割合 40.7% で収益に)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約負債 | 122,222 | 売上高 | 100,000 |
| | 仮受消費税等 | 10,000 |
| | 雑収入(非行使部分) | 12,222 |
法人税
X2年度:法人税で経理したとみなす仕訳(発行時に税込の全額を益金にしたので、行使時の消費税相当額を収益から振り替える)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 雑収入(発行時に益金算入済み) | 10,000 | 仮受消費税等 | 10,000 |
別表四(留保)| 項目 | 加算 | 減算 |
|---|
| 契約負債の取崩し(X1年度に益金算入済み:行使分の消費税相当額 10,000 を含む) | | 122,222 |
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)| 区分 | 課税標準 | 税額 |
|---|
| 課税売上げの対価(引き換えた商品) | 100,000 | 10,000 |
| 非行使部分の収益(雑収入)は対価ではない → 不課税 | — | — |
消費税:商品券の発行は不課税で、商品と引き換えた時に課税売上げ。非行使部分の収益(雑収入)は資産の譲渡等の対価ではないので課税標準に入らない。
減算を会計の収益 112,222 だけにすると、留保の残高が契約負債の残高より消費税相当額だけ多くなってしまう。取崩額の全額 122,222 を減算して、別表五(一)の残高 177,778 = 契約負債の残高 にそろえる。
発行時に益金算入した契約負債に係る留保は、会計上の契約負債の取崩し(以後の行使、非行使部分の収益認識、10年経過日等での未引換分の収益計上など)に対応して減算し、解消する。税務上の10年経過だけで自動的に消えるわけではない。
消費税は基礎5と同じ:引き換えた商品 100,000 が課税売上げ。
設例・応用3
発行時に一括益金 ── X2年度は取崩額 122,222 を減算する
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用3 ステップ3
ハルカ
応用3は、発行時に 300,000 の全額を益金にした場合ですね。X1年度に 300,000 を加算して、X2年度に減算で戻す流れですか。
先生
そうだよ。注意したいのは減算の額なんだ。会計の収益は 112,222 だけれど、減算するのは契約負債の取崩額 122,222。行使分の消費税相当額 10,000 を含めるんだ。
迷いポイント 減算は、会計の収益 112,222 でよい?
ハルカ
法人税は収益の差を調整するものなので、減算も会計の収益 112,222 だと思います。
先生
それだと留保の残高が契約負債より 10,000 多く残ってしまうんだ。発行時に税込の全額を益金にしているから、行使時の仮受消費税等 10,000 は、法人税では益金にした額から振り替える(所得 ▲10,000)。取崩額の全額 122,222 を減算して、別表五(一)の残高 177,778 = 契約負債の残高 にそろえるんだよ。
💡 そうだったのか!
発行時一括なら、X2年度の減算は会計の収益ではなく
契約負債の取崩額 122,222(消費税相当額を含む)。別表五(一)の残高は契約負債の残高と一致し、以後の取崩しに対応して解消します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「時期」のシミュレーションを開き、プリセット「応用3の数字(商品券・発行時一括)」を選ぶ
- 右の「X2年度の行使額(税込)」を 110,000 から 270,000 に変える
👀 行使見込額 270,000 がすべて行使され、非行使見込額 30,000 も全額が収益になるので、X2年度の減算が 122,222 → 300,000、別表五(一)の残高は 177,778 → 0。会計の契約負債がゼロになると、留保も消えます。
ラボを開く ▶📝 ③編【設例・ポイントと商品券編】(非行使部分の会計)記事を読む ▶
📘 設例・応用4 ラボの画面
法人税:益金 120,000 会計の収益 40,000 → 加算 80,000(留保)
会計
X1年度:入会金の受取(返金不要・将来のサービスに対応)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 現金 | 132,000 | 契約負債 | 120,000 |
| | 仮受消費税等 | 12,000 |
X1年度:会員サービスの提供に応じて収益| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約負債 | 40,000 | 売上高 | 40,000 |
法人税
X1年度:法人税で経理したとみなす仕訳| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 現金 | 132,000 | 売上高 | 120,000 |
| | 仮受消費税等 | 12,000 |
別表四(留保)| 項目 | 加算 | 減算 |
|---|
| 入会金(取引開始日の益金) | 80,000 | |
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)| 区分 | 課税標準 | 税額 |
|---|
| 課税売上げの対価(返金不要の入会金・入会時) | 120,000 | 12,000 |
法人税:返金不要の支払は原則として取引開始日の属する事業年度の益金(基通2-1-40の2)。会計の繰延べ分を加算(留保)。 消費税:会員資格の付与と引換えに受け取る返金不要の入会金(スポーツクラブ等。消基通5-5-5)は、入会時に課税売上げ。将来の具体的な役務提供の前受金なら役務提供時に課税(消基通9-1-27)。
返金不要の支払は、中途解約のいかんにかかわらず、原則として取引開始日の属する事業年度の益金(基通2-1-40の2)。
消費税:会員資格の付与と引換えに受け取る返金不要の入会金は資産の譲渡等の対価で(消基通5-5-5)、入会時に課税売上げ 120,000。将来の具体的な役務提供の前受金なら、役務提供時に課税(消基通9-1-27)。
設例・応用4
入会金 120,000 ── 会計は3年に、法人税の原則は取引開始日に
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用4 ステップ2
ハルカ
これ、③編の返金不要の入会金ですよね。会計は3年間のサービスに対応するので、毎年 40,000 ずつ収益にするんでした。
先生
よく覚えていたね。法人税の列を見てほしい。返金不要の支払は、中途解約のいかんにかかわらず取引開始日の属する事業年度の益金が原則なんだ(基通2-1-40の2)。だから X1年度の益金は 120,000 で、会計の 40,000 との差 80,000 を加算するよ。
迷いポイント 消費税は、会計に合わせて毎年 40,000 ずつ課税される?
ハルカ
サービスは3年かけて提供するので、消費税も毎年 40,000 ずつですよね。
先生
この設例では入会時に 120,000 の全額なんだ。前提にあるとおり、会員に対する役務の提供を目的とする事業者が会員資格の付与と引換えに受け取る返金不要の入会金は、資産の譲渡等の対価として入会時に課税売上げになる(消基通5-5-5)。会計で繰り延べても、課税時期は変わらないよ。ただし、将来の具体的な役務提供の前受金(会費の前払など)なら、現実に役務を提供した時が課税時期だから(消基通9-1-27)、契約の中身で分かれるんだ。
ハルカ
入会金は、会計ではゆっくり3年かけて収益になるのに、法人税と消費税は入会した日に「全部いただきました」と受付で言い切るんですね。
先生
受付の時点で、税務の方はもう済んでいるんだよ。
💡 そうだったのか!
返金不要の入会金は、法人税の原則が
取引開始日の益金(会計の繰延べ 80,000 を加算)。消費税は、会員資格の付与の対価なら
入会時に全額課税、将来の役務の前受金なら役務提供時。会計の期間配分とは別に動きます。
📘 設例・応用4 ラボの画面
| 会計の収益 | 法人税の益金 | 別表四 加算 | 別表四 減算 | 五(一)残高 | 消費税 課税標準(課税売上げ) | 返還等・課税仕入れ |
|---|
| X1年度 | 40,000 | 40,000 | 0 | 0 | 0 | 120,000 | 0 |
| X2年度 | 40,000 | 40,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| X3年度 | 40,000 | 40,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 合計 | 120,000 | 120,000 | 0 | 0 | | 120,000 | 0 |
会計の収益と比べて ── 法人税:会計と同じ/消費税(返還等控除後):X1年度 +80,000、X2年度 ▲40,000、X3年度 ▲40,000
契約等の特定期間における役務の提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと認められるときは、特定期間の経過に応じて益金(ただし書)。会計と一致し、申告調整なし。
消費税は、この設例の前提(会員資格の付与の対価)では法人税の扱いにかかわらず入会時に課税。将来の役務の前受金なら役務提供時に課税される点に注意。
設例・応用4
比較 ── 「具体的な対応関係」があれば、法人税も3年に分かれる
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用4 ステップ4
ハルカ
ステップ4の三層の表では、法人税が 40,000 ずつになって加算・減算が消えています。何が変わったんですか。
先生
契約等の特定期間の役務提供ごとに、具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと認められる場合だよ(基通2-1-40の2ただし書)。そのときは特定期間の経過に応じて益金にできるので、会計と一致して申告調整なしになるんだ。
迷いポイント 「サービスに対応する」と社内で決めれば、対応関係ありになる?
ハルカ
会計で3年に対応すると判断しているのだから、法人税も自動的に対応関係ありですよね。
先生
会計の判断だけでは足りないんだ。会計の繰延べは適用指針第57〜59項の判断で、法人税のただし書は役務の提供と対価の具体的な対応を求めている。入会規約で、入会金がどの期間のどのサービスに対応するかが示せるかを確かめるんだよ。消費税は、この設例の前提(会員資格の付与の対価)では法人税の扱いにかかわらず入会時に課税。もし将来の役務の前受金なら、役務提供時に課税される点は忘れないでね。
💡 そうだったのか!
法人税が期間配分できるのは、特定期間の役務提供と
具体的な対応関係が認められる場合だけ。会計の繰延べの判断とは別に、規約で示せるかを確かめます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「時期」のシミュレーションを開く(応用4の数字)
- 右の「会計上、対応するサービス期間(年)」を 3 から 5 に変える
👀 原則のままなら、X1年度の加算が 80,000 → 96,000、X2〜X5年度に 24,000 ずつ減算。別表五(一)の残高が消えるまで4年かかります。「認められる」に切り替えると加算・減算はゼロです。
ラボを開く ▶
📘 設例・応用5 ラボの画面
会計
X3年度:完成・引渡し(残りの収益と請求)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 完成工事未収入金(売掛金) | 9,900 | 工事収益 | 2,400 |
| | 契約資産(振替) | 6,600 |
| | 仮受消費税等 | 900 |
X3年度:工事原価| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 工事原価 | 2,000 | 現金・未払金 | 2,000 |
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)| 区分 | 課税標準 | 税額 |
|---|
| 課税売上げの対価(目的物の引渡しの日) | 9,000 | 900 |
消費税:引渡しの日に工事収益総額の全額が課税売上げになる。会計・法人税の収益は3年に分かれているが、消費税は1年に集中する。
会計・法人税:残りの収益 2,400。契約資産 6,600 を完成工事未収入金に振り替える。
消費税:原則どおりなら、引渡しの日に 9,000 の全額が課税売上げ(税額 900)。会計・法人税の3年分が、消費税では1年に集中する。
設例・応用5
工事 X3年度 ── 会計・法人税は 2,400、消費税は 9,000 の全額
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用5 ステップ3
ハルカ
④編の工事契約ですね。進捗度 20%・73.3%・100% で収益を 1,800・4,800・2,400 に分ける。法人税の列は「同左」になっています。
先生
ちゃんと覚えていたね。会計が進捗度で経理していれば、法人税もその年度の益金なんだ(基通2-1-21の2・2-1-21の7)。前提にあるとおり、会計で進捗計上した工事を申告調整で引渡しの日に変えることはできないよ。差が出るのは消費税の列で、X3年度に9,000 の全額が課税売上げになるんだ。
迷いポイント X1・X2年度の契約資産 1,800・4,800 にも、仮受消費税等を付ける?
ハルカ
収益を計上しているのだから、X1年度から仮受消費税等 180 を立てますよね。
先生
原則では付けないんだ。請負は目的物の全部を完成して引き渡した日が譲渡等の時期だから(消基通9-1-5)、X1・X2年度は課税売上げなし。X3年度に売掛金 9,900 を立てて、仮受消費税等 900 をまとめて計上するよ。
ハルカ
会計と法人税は3年かけて少しずつ階段を上るのに、消費税は最後の日にエレベーターで一気に上がってくるんですね。
先生
同じ階に着くのは3人とも同じで、着き方が違うだけなんだよ。
💡 そうだったのか!
工事は会計・法人税とも
進捗度で3年に分かれ、消費税の原則は
引渡しの日に 9,000 の全額。進捗度の収益は契約資産で、原則では仮受消費税等を付けません。
📘 設例・応用5 ラボの画面
| 会計の収益 | 法人税の益金 | 別表四 加算 | 別表四 減算 | 五(一)残高 | 消費税 課税標準(課税売上げ) | 返還等・課税仕入れ |
|---|
| X1年度 | 1,800 | 1,800 | 0 | 0 | 0 | 1,800 | 0 |
| X2年度 | 4,800 | 4,800 | 0 | 0 | 0 | 4,800 | 0 |
| X3年度 | 2,400 | 2,400 | 0 | 0 | 0 | 2,400 | 0 |
| 合計 | 9,000 | 9,000 | 0 | 0 | | 9,000 | 0 |
三層とも同じ金額・同じ年度(差なし)
X1年度
会計
X1年度:進捗度 20% に応じた工事収益(消費税は特例で進捗に応じて課税)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約資産 | 1,980 | 工事収益 | 1,800 |
| | 仮受消費税等 | 180 |
X1年度:工事原価| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 工事原価 | 1,500 | 現金・未払金 | 1,500 |
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)| 区分 | 課税標準 | 税額 |
|---|
| 課税売上げの対価(消法17条の特例:当期に売上処理した部分) | 1,800 | 180 |
X2年度
会計
X2年度:進捗度 73.3% に応じた工事収益(消費税は特例で進捗に応じて課税)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約資産 | 5,280 | 工事収益 | 4,800 |
| | 仮受消費税等 | 480 |
X2年度:工事原価| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 工事原価 | 4,000 | 現金・未払金 | 4,000 |
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)| 区分 | 課税標準 | 税額 |
|---|
| 課税売上げの対価(消法17条の特例:当期に売上処理した部分) | 4,800 | 480 |
X3年度(完成・引渡し)
会計
X3年度:完成・引渡し(残りの収益と請求)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 完成工事未収入金(売掛金) | 9,900 | 工事収益 | 2,400 |
| | 契約資産(振替) | 7,260 |
| | 仮受消費税等 | 240 |
X3年度:工事原価| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 工事原価 | 2,000 | 現金・未払金 | 2,000 |
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)| 区分 | 課税標準 | 税額 |
|---|
| 課税売上げの対価(消法17条の特例:当期に売上処理した部分) | 2,400 | 240 |
工事進行基準(法63条)の工事は、消費税でも各課税期間に売上処理した部分をその課税期間の譲渡等とすることができる(消費税法17条、タックスアンサーNo.6161)。三層の時期がそろい、契約資産にも仮受消費税等が付く。
選択制なので、工事進行基準の工事でも消費税だけ原則どおり引渡しの日にすることもできる。長期大規模工事など工事進行基準が強制される会社では、この特例を使うかどうかが実務の選択になる。
設例・応用5
比較 ── 消費税法17条の特例で、三層の時期がそろう
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用5 ステップ4
ハルカ
ステップ4の表では、消費税も 1,800・4,800・2,400 になって「三層とも同じ」と出ています。
先生
法人税の工事進行基準(法63条)を適用している工事は、消費税でも各課税期間に売上処理した部分をその課税期間の譲渡等にできるんだ(消費税法17条)。これを選ぶと、契約資産にも仮受消費税等 180・480 が付いて、三層の時期がそろうよ。
迷いポイント 工事進行基準の工事なら、消費税は必ず特例になる?
ハルカ
工事進行基準を使っている以上、消費税も進捗に応じて課税されるんですよね。
先生
選択制なんだ。工事進行基準の工事でも、消費税だけ原則どおり引渡しの日にすることもできる。長期大規模工事のように工事進行基準が強制される会社では、この特例を使うかどうかが実務の選択になるよ。選んだら継続することだね。
💡 そうだったのか!
消法17条の特例は
選択制。工事進行基準の工事で選べば、消費税も進捗に応じて 1,800・4,800・2,400 となり三層がそろいます。3年間の合計 9,000 はどちらでも同じです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「時期」のシミュレーションを開き、プリセット「工事・消費税法17条の特例」を選ぶ
- 右の「X1年度の発生原価」を 1,500 から 3,000 に変える
👀 進捗度が 20% → 33.3% になり、X1年度は会計・法人税の収益も消費税の課税標準も 3,000 にそろいます。原価の合計が 9,000 になるので、3年間の利益はゼロです。
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この記事の図は、すべて収益認識ラボ⑤の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
収益認識ラボ⑤を開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。商品券は原則なら三層がそろい、発行時一括なら減算は取崩額の全額。入会金は会計が繰り延べても、法人税の原則は取引開始日、消費税は入会時。工事は会計・法人税が進捗度で、消費税は引渡しの日か17条の特例か。時期のずれは、取引ごとに「どの層が動かないか」で覚えるといいんだ。
ハルカ
④編で工事の進捗度を習ったとき、「これで工事の収益は分かった」と思っていました。今日、消費税だけが最後の年に 9,000 で現れるのを見て、会計で答えが出ても、層ごとにもう一度「いつ」を問い直すものなのだと分かりました。
先生
層ごとに問い直す癖がつくと、申告書の課税標準と会計の売上高が合わなくても慌てなくなるよ。
ハルカ
私はこれから、カレンダーに「会計の日」「法人税の日」「消費税の日」を3色で書き込みます。全部同じ日になる取引は、3色重ね塗りで。
先生
重ね塗りの日が多いほど、楽な決算なんだよ。次の設例・金額編では、変動対価・返品・金融要素で、収益の額が三層でどう違うかを見ていこうか。
参考資料
法人税法第22条の2・第63条、法人税基本通達2-1-21の2・2-1-21の7(請負)・2-1-39・2-1-39の2(商品引換券等)・2-1-40の2(返金不要の支払)、平成30年5月30日付法人税基本通達等の一部改正の趣旨説明、消費税法第4条・第17条・第28条、消費税法基本通達9-1-5・9-1-6、国税庁「収益認識基準による場合の取扱いの例」ケース5(商品券)、タックスアンサーNo.6161、企業会計基準適用指針第30号(第52〜59項、設例)。ラボの設例は国税庁のケース5と同じパターンと独自の設例を、独自の数値(消費税率10%)で組み立てたものです。基準確認日:2026年10月7日。
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このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・単位編(ポイント・消化仕入)/設例・金額編(変動対価・返品・金融要素)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。