この記事で判断できること:台湾関係(相互免除法)の特例の概要
国税庁タックスアンサーの「No.2890 外国居住者等所得相互免除法による課税の特例の概要(台湾関係)」について解説します。
解説動画
台湾の会社にソフトウェアの使用料を払う、台湾在住の株主に配当を払う。相手が英国や中国なら租税条約の届出書(No.2888)ですが、台湾との間には租税条約がありません。代わりに国内法の「外国居住者等所得相互免除法」が、条約と同じ役割を果たします。国税庁タックスアンサー No.2890 の内容を、「誰の・どの所得が対象か」「届出書はいつ・どこへ出すか」「間に合わなかったときは誰が還付を請求するか」の3点に絞って整理します。
この記事の結論
台湾に住所を有する個人・台湾に本店等を有する法人等(台湾居住者等)が受ける一定の国内源泉所得は、外国居住者等所得相互免除法により課税の軽減または非課税になります。手続は租税条約と同じ形で、「相互免除法に関する届出書」を源泉徴収義務者を経由して税務署に出します。間に合わなければ源泉徴収義務者が還付を請求します。
届出書が支払日の前日までに出ていない
国内法の税率で源泉徴収(後日、支払者が還付請求)
所得の種類に合う届出書が提出済み
相互免除法の軽減・非課税で源泉徴収
- 1対象は平成29年1月1日以後に支払を受けるべき所得。根拠は相互免除法第2章で、台湾側にも同等の取扱いがあることが前提の相互主義です。
- 2届出書は所得の種類ごとの様式で、支払日の前日までに支払者経由で支払者の所轄税務署長へ。要件を満たす支払者なら電子データでの提供もできます。
- 3届出書がなく国内法の税率で納付したときは、源泉徴収義務者が届出書と還付請求書を出して差額の還付を受けます。短期滞在者の給与等は本人が申告・更正の請求で還付を受けます。
要点1 台湾居住者等の一定の国内源泉所得が対象。根拠は国内法の第2章
「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律」(昭和37年法律第144号。外国居住者等所得相互免除法)により、台湾に住所を有する個人、台湾に本店等を有する法人等(台湾居住者等)が支払を受ける一定の国内源泉所得は、課税の軽減または非課税の適用を受けることができます(平成29年1月1日以後に支払を受けるべきものに限ります)。根拠法令は同法第2章です。
この法律でいう「外国」は、租税条約の相手国等以外の外国で、日本の居住者等に同等の課税上の取扱いなどが行われるものとして政令で指定されたものです(法2条3号)。第2章の規定は、相手側でも同等または有利な条件で税が軽減・免除されることなどが前提です(法5条)。「相手も同じようにする」ことを条件に国内法で軽減する作りです。
要点2 届出書は支払日の前日までに、支払者経由で支払者の所轄税務署長へ
軽減または非課税の適用を受けようとするときは、租税条約による課税の特例と同様に、所定の事項を記載した「外国居住者等所得相互免除法に関する届出書」(必要な添付書類を含みます)を、その国内源泉所得の源泉徴収義務者を経由して税務署に提出します。様式は所得の種類ごとに分かれ、対象配当は様式1、対象利子は様式2、対象使用料は様式3、人的役務提供事業の対価は様式4などです。使用料の届出書は、最初に支払を受ける日の前日までに、支払者ごとに作成して支払者に提出し、支払者がその所轄税務署長に提出します。記載事項に異動が生じたときも同様です。
支払者が一定の要件を満たす「特定源泉徴収義務者等」であれば、台湾居住者等は届出書等の記載事項を支払者へ電磁的方法で提供でき、支払者はそれを所轄税務署長へ電磁的方法で提出できます。要件は、(1) 電磁的方法による提供を適正に受けることができる措置、(2) 提供をした届出書等提出者を特定するための必要な措置、(3) 電子計算機の映像面への表示および書面への出力をするための必要な措置、の3つを講じていることです。
要点3 間に合わなかったときは源泉徴収義務者が還付請求。短期滞在者の給与等は本人が申告
著作権、工業所有権の使用料など、届出書の提出により軽減・非課税の対象となる所得について、支払時に届出書がなかったため相互免除法を適用しないで源泉徴収し、納付した場合には、源泉徴収義務者は、台湾居住者等から提出を受けた「届出書」とともに「外国居住者等所得相互免除法に関する源泉徴収税額の還付請求書」を税務署に提出することで、納付した源泉徴収税額と相互免除法を適用した後の税額との差額の還付を受けることができます。
ここは租税条約の還付請求(No.2889)と違う点です。条約の還付は非居住者等が請求しますが、相互免除法では源泉徴収義務者が請求します(手続根拠は国税通則法56条)。提出時期の定めはありませんが、納付した日から5年で時効により請求権が消滅します。添付は届出書の正本と、還付の金額が生じた事実を記載した帳簿書類の写し(例:総勘定元帳の「預り金」勘定)です。また、一定の短期滞在者の給与等は、支払時に届出書を提出できず、源泉徴収を行った上で、非課税要件を満たした後に台湾居住者等が申告または更正の請求により還付を受けます。
要点4 軽減後の税率は、配当・利子・使用料が10%
原文に具体的な税率は書かれていませんが、相互免除法15条1項は、外国居住者等が支払を受ける対象配当・対象利子・対象使用料で国内源泉所得に該当するもののうち、相手側の外国でその外国居住者等の所得として取り扱われるものについて、所得税法等の税率を「百分の十」としています(e-Gov法令検索で2026年10月確認)。様式名も「対象使用料に対する所得税の軽減(復興特別所得税の非課税)」で、軽減後は復興特別所得税もかかりません。国内法の税率は、使用料や非上場株式の配当等なら20.42%、利子等なら15.315%、貸付金の利子なら20.42%(No.2884)ですから、届出書の有無で税額は大きく変わります。
「対象使用料」は、著作権、工業所有権、模型、図面、秘密として管理されている生産方式・製造工程などの使用または使用の権利の対価、知識経験に基づく情報の対価をいいます(法2条)。外国の権限のある機関等が受ける対象利子は非課税(15条2項)など、15条には多くの枝があり、税率と要件は所得ごとに条文と様式の記載要領で確認します。
設例で確かめる
| 台湾法人B社に、著作権の使用料に当たるソフトウェアのライセンス料100万円。様式3の届出書が前日までに提出済み | 15条1項の10%=100,000円を源泉徴収(復興特別所得税は非課税) |
| 同じ使用料で、届出書が支払当日に届いた | 間に合っていない。国内法の20.42%=204,200円を源泉徴収して納付 |
| 204,200円を納付した後、B社から届出書を受け取った | A社が届出書+還付請求書を提出。差額104,200円の還付(納付から5年以内) |
| 台湾在住の個人株主に非上場株式の配当50万円。様式1が提出済み | 10%=50,000円(届出書がなければ20.42%=102,100円) |
| 台湾法人の従業員が短期出張で来日し、日本で給与を支払う | 支払時に届出書は出せない。源泉徴収し、要件を満たせば本人が申告・更正の請求で還付 |
| 租税条約の相手国である中国の会社への使用料 | この法律ではなく租税条約の届出書(No.2888) |
1番目と2番目の差は、届出書が1日早いか遅いかだけです。3番目はその差額を取り戻す手続で、請求するのは支払者のA社です。5番目は所得の種類で入口が違う例で、給与等は支払時の届出書では非課税にならず、本人の申告・更正の請求に回ります。
例外と注意点
- 短期滞在者の給与等は届出書で非課税にできない支払時に届出書を提出できず、源泉徴収した上で、非課税要件を満たした後に台湾居住者等が申告または更正の請求で還付を受けます。
- 発行時に源泉徴収される割引債の償還差益は別様式割引債の償還差益の還付請求は様式9で、一般の還付請求書とは手続が分かれています。
- 課税上の取扱いが異なる事業体には追加の添付書類台湾側ではその株主等が納税義務者とされる外国法人などは15条3項以下の適用になり、台湾の法令で株主等の所得として扱われることを明らかにする書類や株主等の名簿(様式10)を添付します。
- 相互主義が前提第2章の規定は、相手側で日本の居住者等に同等または有利な条件の軽減・免除があることなどを条件にしています(法5条)。
よくある間違い
- 台湾にも租税条約の届出書を出してもらっている台湾との間に租税条約はありません。相互免除法に関する届出書(所得の種類ごとの様式)を使います。
- 条約がないから軽減はないと考え、20.42%のまま納めている届出書が支払日の前日までに提出されていれば、相互免除法の軽減・非課税が適用されます。
- 届出書が間に合わなかったとき、相手に還付請求を頼んでいる相互免除法の還付請求は源泉徴収義務者が行います。租税条約(No.2889)とは請求者が違います。
- 短期滞在者の給与等も届出書で非課税にしようとしている支払時の届出書では非課税になりません。源泉徴収した上で本人が申告または更正の請求をします。
- 還付請求に届出書の写しだけを付けている届出書の正本と、還付の金額が生じた事実を記載した帳簿書類の写し(預り金勘定など)を添付します。
実務の確認手順
- 相手が台湾居住者等かを確認する台湾に住所を有する個人か、台湾に本店等を有する法人等か。租税条約の相手国なら条約の届出書(No.2888)。
- 所得の種類と様式を決める配当は様式1、利子は様式2、使用料は様式3など。短期滞在者の給与等は届出書の対象外。
- 支払日の前日までに届出書を受け取る支払者ごとに作成された届出書を受け取り、支払者の所轄税務署長に提出する。電子データなら3要件の体制を確認。
- 軽減後の税率で源泉徴収する配当・利子・使用料は10%(法15条1項)。届出書がなければ国内法の税率で源泉徴収して納付。
- 間に合わなかった分は会社が還付請求する届出書の正本と帳簿書類の写しを添えて還付請求書を税務署へ。納付から5年の時効を記録し、次回は前日までの受領を徹底。
根拠と関連記事
結論欄の評価は TaxJudge 編集部の目安です。頻出度=給与・経理の実務でこの論点に出会う頻度(★5:ほぼ毎月〜★1:まれ)。難易度=基礎:原則を知れば判断できる/標準:例外や他の制度との関係まで見る必要がある/応用:個別事情の判断や複数制度の横断が必要。
根拠:国税庁タックスアンサー No.2890 外国居住者等所得相互免除法による課税の特例の概要(台湾関係)(令和8年4月1日現在法令等。外国居住者等所得相互免除法第2章)、国税庁 手続案内 外国居住者等所得相互免除法第2章関係(台湾関係)(所得の種類と様式の一覧、対象使用料の届出、源泉徴収税額の還付請求)、外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律(e-Gov法令検索。2条・5条・15条)、No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率(いずれも2026年10月確認)。先生とハルカは架空の人物で、会話は制度を理解するための学習用です。個別の判断は国税庁の原文と最新の法令で確認してください。
Q&A
読んだ内容の確認用です。質問を押すと答えが開きます(全10問)。
Q1対象となる「台湾居住者等」の定義について説明してください。答えを見る ▼閉じる ▲
台湾居住者等とは、台湾に住所を有する個人、および台湾に本店または主たる事務所を有する法人等を指します。これらの方々が支払を受ける一定の国内源泉所得が本特例の対象となります。
Q2本制度において軽減または非課税の対象となる税目は何ですか。答えを見る ▼閉じる ▲
国税庁No.2890の対象税目は源泉所得税で、本記事はその源泉所得税の軽減・非課税の特例を扱います。なお、外国居住者等所得相互免除法の全体には、所得税・法人税の非課税等に関する規定もあります。
Q3特例の適用を受けるために、原則としてどのような書類をどこに提出する必要がありますか。答えを見る ▼閉じる ▲
「外国居住者等所得相互免除法に関する届出書」に所定の事項を記載し、必要に応じて添付書類を添えて提出します。提出は、国内源泉所得の源泉徴収義務者を経由して、所轄の税務署に対して行います。
Q4「特定源泉徴収義務者等」が電磁的方法により届出を受けるために満たすべき3つの要件を挙げてください。答えを見る ▼閉じる ▲
届出内容の適正な受領措置、提出者を特定するための措置、および電子計算機の映像面への表示と書面出力が可能な措置の3つを講じている必要があります。これらの要件を満たすことで、電磁的方法による届出が可能になります。
Q5短期滞在者の給与等について非課税の適用を受ける場合、その手続の流れはどのようになりますか。答えを見る ▼閉じる ▲
短期滞在者の場合は、支払時に一旦源泉徴収が行われます。その後、非課税要件を満たした段階で、台湾居住者等が確定申告または更正の請求を行うことにより、源泉徴収税額の還付を受けることになります。
Q6本特例はいつ以降に支払を受けるべき所得から適用されていますか。答えを見る ▼閉じる ▲
本特例は、平成29年(2017年)1月1日以後に支払を受けるべき国内源泉所得について適用されます。
Q7支払時に「届出書」の提出が間に合わなかった場合、納付済みの源泉所得税を回収する方法はありますか。答えを見る ▼閉じる ▲
はい、可能です。支払時に届出書の提出がなく通常の税率で源泉徴収された場合でも、後から還付請求の手続を行うことで、過大に納付した税額の還付を受けることができます。
Q8源泉徴収税額の還付請求を行う際、還付される金額はどのように計算されますか。答えを見る ▼閉じる ▲
実際に納付した源泉徴収税額と、外国居住者等所得相互免除法を適用した場合に算出される軽減・非課税後の税額との差額が還付されます。
Q9還付請求を行う際に、税務署へ提出が必要な主な書類を2つ挙げてください。答えを見る ▼閉じる ▲
「外国居住者等所得相互免除法に関する届出書」と「外国居住者等所得相互免除法に関する源泉徴収税額の還付請求書」の2点が必要です。これらに必要な添付書類を添えて提出します。
Q10この特例の法的根拠となる法律の正式名称と、該当する章を回答してください。答えを見る ▼閉じる ▲
正式名称は「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律」です。台湾関係の規定については、同法の「第2章」が根拠となります。
