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収益認識ラボ⑤【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ会計と法人税・消費税の違い(単位・時期・金額)

収益認識ラボ⑤【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ会計と法人税・消費税の違い(単位・時期・金額)

無料の学習ツール「収益認識ラボ⑤」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
設例・基礎4の数字(返品権付き販売)
1個の販売単価(税抜)/原価300/180
販売数量/返品の見込み50個/2個
会計:売上高(X1年度)14,400
会計:返金負債/返品資産600/360
法人税:益金(X1年度)15,000
別表四:加算/減算(X1年度)600/360
消費税:課税標準(X1年度)15,000(税額 1,500)
X2年度:返品 2個対価の返還等 600(税額 60)
はじめに

今日の題材 ── 同じ売上を、3つの物差しで測る

📍 ラボの場所:基礎タブ全体・設例・基礎4
ハルカ
先生、収益認識ラボは④編で終わりだと思っていました。⑤編は何をするんですか。
先生
①〜④編は会計の話だったね。⑤編は、同じ取引を法人税と消費税がどう見るかだよ。表の返品の例を見てほしい。会計の売上高は 14,400 なのに、法人税の益金は 15,000、消費税の課税標準も 15,000 なんだ。
ハルカ
会計の売上高と、法人税・消費税の金額が違うんですか。決算書の売上高を申告書に写せばいいと思っていました。
先生
写すだけでは合わないんだ。差の 600 は別表四で加算し、消費税は請求した額で課税する。今日はこの3つの物差しを、上から順に見ていこうか。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 基礎 0 ラボの図
監査対象法人:収益認識基準を適用中小企業:企業会計原則等に従った処理も可法人税:会計の処理を前提に22条の2・基通2-1-1〜の要件で判定法人税:従前の取扱い(引渡基準・割戻しの通達など)によることも可30改正は、改正前の公正処理基準における取扱いを明確化したもので、新会計基準を適用しない場合の収益計上時期を変えるものではない(趣旨説明)。消費税はどちらの会社でも同じ。資産の譲渡等の時期と対価の額で判定する。
基礎 0

このラボの位置づけ ── 会計の収益と、法人税・消費税

📍 ラボの場所:基礎タブ 0
ハルカ
図は、監査対象法人と中小企業で2つに分かれていますね。それぞれの下に法人税の箱があります。
先生
⑤編の入口だよ。収益認識基準を適用する会社では、法人税も会計の処理を前提に、法22条の2と基本通達2-1-1以下の要件で判定する。平成30年度改正で、法人税が収益認識基準の考え方を取り込んだからだね。中小企業は企業会計原則等に従った処理も可能で、法人税も従前の取扱いによれる。消費税はどちらの会社でも同じで、独自の物差しのままなんだ。
迷いポイント 法人税は会計基準に合わせたのだから、もう差は出ない?
ハルカ
通達が会計基準を取り込んだなら、会計の仕訳をそのまま申告に使えますよね。
先生
それが、そうではないのだよ。返品の可能性のように法人税が織り込まないものや、ポイントの前受けのように要件つきで認めるものが残っているんだ。消費税は譲渡等の時期と対価の額という、別の物差しで決まるよ。
💡 そうだったのか!
法人税は収益認識基準の考え方を取り込んだが、税独自の部分が残る。消費税は別の物差し。差が出る論点を知ることが⑤編の目的です。
📝 収益認識ラボ④【基礎編】(工事契約・契約資産・消費税等の表示)記事を読む ▶
📗 基礎 1 ラボの図
会計(基準第29号)法人税(法22条の2・基通)消費税(法28条・消基通)単位履行義務ごと(基準第32項)原則は契約ごと要件を満たせば履行義務の単位も可課税資産の譲渡等ごと(取引ごと)時期支配の移転履行義務の充足時/充足するにつれて引渡し等の日近接する日も可(継続適用)譲渡等をした時引渡日・支払を受けるべき日・完了日金額取引価格変動対価・金融要素・顧客に支払う対価を反映引渡し時の価額(時価)貸倒れ・返品の可能性は反映しない対価の額(税抜)当事者間で授受することとした額会計と同じ要件つきで同じ別の扱い法人税は「要件つきで会計に寄せる」、消費税は「3つとも別の物差し」。これがこのラボの結論。
基礎 1

3つの物差し ── 単位・時期・金額

📍 ラボの場所:基礎タブ 1
ハルカ
3×3の表ですね。縦が単位・時期・金額、横が会計・法人税・消費税。緑と黄と赤に塗り分けてあります。
先生
色が答えなんだ。緑は会計と同じ、黄は要件つきで同じ、赤は別の扱いだよ。会計は「履行義務・支配の移転・取引価格」、法人税は「契約・引渡し等の日・時価」、消費税は「譲渡等・譲渡等をした時・対価の額」で測るんだ。
迷いポイント 法人税と消費税の列は、同じ色の並びになる?
ハルカ
同じ税務なのだから、法人税と消費税は同じ答えになりそうです。
先生
並びが違うのが、この表の見どころだよ。法人税の列は黄色が多い。会計に合わせる条件を満たせば同じになるんだ。消費税の列は赤が多い。会計がどう処理しても、譲渡等の時期と対価の額で決まるからだよ。
ハルカ
法人税は会計と手をつなぎたがっているのに、消費税は腕組みをして離れたところに立っている感じですね。
先生
消費税は手をつながない代わりに、ぶれないんだよ。
💡 そうだったのか!
法人税の列は黄(要件つきで同じ)が多く、消費税の列は赤(別の扱い)が多い。3つの物差しは多くの取引で同じ答えになり、差が出る論点を知っておくことが要点です。
📗 基礎 2 ラボの図
契約履行義務:商品の販売履行義務:保守サービス会計:履行義務ごとに収益(第32項)法人税:原則は契約ごと(基通2-1-1)法人税基本通達2-1-1:履行義務の識別の要件により区分した単位(商品と保守など)を収益計上の単位とすることが「できる」。同時またはほぼ同時に結んだ複数の契約を結合して初めて単一の履行義務となる場合は、結合した単位にできる。消費税:契約や履行義務ではなく「課税資産の譲渡等」ごと。商品の引渡しと保守の役務提供は、それぞれ譲渡等の時期で判定する。
基礎 2

単位 ── 契約か履行義務か

📍 ラボの場所:基礎タブ 2
ハルカ
①編で、商品と2年間の保守をセットで売ったら履行義務を2つに分ける、と習いました。法人税も同じですか。
先生
よく覚えていたね。法人税の原則は契約ごとなんだ。ただし、一の契約に複数の履行義務が含まれるときは、履行義務ごとの単位で収益を計上できる(基通2-1-1(1)ロ)。図の3段目のように、消費税は契約でも履行義務でもなく、課税資産の譲渡等ごとに判定するよ。
迷いポイント 履行義務に分けたら、消費税も同じ単位になる?
ハルカ
商品と保守に分けたら、消費税もその2つで課税時期を見るんですね。
先生
結果としてはそうなるけれど、理由が違うんだ。消費税は「商品の引渡し」と「保守サービスの提供」という取引ごとに、譲渡等の時期を別々に判定する。会計が分けたから分けるのではなく、もともと取引ごとに見るんだよ。
💡 そうだったのか!
単位は、会計が履行義務ごと、法人税は契約ごとが原則(履行義務ごとの単位も可)、消費税は譲渡等ごと。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「単位」のシミュレーションを開く(基礎6の数字:消化仕入)
  2. 右の「会計上の判断」を 「本人 → 総額」 に変える

👀 会計の収益が 3,000 → 30,000 に変わります。それでも利益は 3,000 のままで、法人税の所得も 3,000、消費税の課税売上げ 30,000・課税仕入れ 27,000 も変わりません。単位の違いが出るのは「売上高の額」です。

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📝 収益認識ラボ①【基礎編】(5ステップ・履行義務・一定の期間か一時点か)記事を読む ▶
📗 基礎 3 ラボの図
法人税法22条の2:益金に算入する事業年度(資産の販売等)引渡し等の日に「近接する日」引渡し等の日それより前それより後① 原則引渡し等の日の属する事業年度② 近接する日に収益経理(出荷日・検収日・検針日など)→ その日の事業年度でよい③ 申告調整で近接する日経理していなくても申告書で近接する日の事業年度にできる会計の収益認識の日(支配の移転・履行義務の充足)は、多くの場合「引渡し等の日」か「近接する日」に当たる。だから会計どおりに経理していれば、法人税も同じ事業年度になる。ただし、いったん選んだ収益計上の基準は継続して適用する。期末の取引だけ検収日に変える、といった恣意的な変更は認められない(法22条の2②③、趣旨説明)。
基礎 3

時期 ── 引渡し等の日と「近接する日」

📍 ラボの場所:基礎タブ 3
ハルカ
図の真ん中に「引渡し等の日」があって、左右に出荷日や検収日が並んでいます。法人税はどの日を使うんですか。
先生
原則は引渡し等の日だよ(法22条の2①)。ただ、公正処理基準に従って出荷日や検収日のような近接する日に収益経理していれば、その日の事業年度の益金でよいんだ(同②)。経理していなくても、同③により申告書で近接する日の年度に算入することもできるよ。
迷いポイント 期末の大きな売上だけ、検収日に変えて翌期に回してもよい?
ハルカ
期末に大きな出荷があったら、その分だけ検収日にすれば翌期の利益になって助かりますね。
先生
それは認められないんだ。選んだ基準は継続して適用する。趣旨説明にあるとおり、引渡し等の日や近接する日で既に経理した収益を、申告調整で別の日に変えることもできないよ。
ハルカ
期末の売上だけ検収日に、は無理なんですね。「今日だけ特別」が通用しないのは、ダイエットの計画と同じです。
先生
計画は続けてこそ、だね。基準も同じなんだよ。
💡 そうだったのか!
時期は引渡し等の日が原則。出荷日・検収日などの近接する日も継続適用なら可。期末だけ変える、経理した日を申告調整で変える、は不可。
📗 基礎 4 ラボの図と設例・基礎4の画面
顧客と約束した対価 10,000 に 15% のリベートが付く場合(イメージ)約束した対価 10,000(請求額)会計:取引価格 8,500(変動対価を見積って減額)返金負債1,500法人税:3要件を満たせば 8,500(基通2-1-1の11)満たさなければ加算消費税:課税標準 10,000(収受すべき対価=ここでは請求額)会計は「権利を得ると見込む額」、法人税は「引渡し時の価額(時価)」、消費税は「対価として収受し、又は収受すべき額」。同じ取引で3つの金額が並ぶ。法人税は貸倒れと返品(買戻し)の可能性だけは織り込まない(法22条の2⑤)。変動対価は要件つきで会計に合わせる。
会計:売上高 = 300 × (50 − 2) = 14,400 返金負債 600 返品資産 360
法人税:売上高 15,000・売上原価 9,000 → 加算 600・減算 360
会計
X1年度:50個の販売(返品見込み 2個)
借方金額貸方金額
現金16,500売上高14,400
返金負債600
仮受消費税等1,500
X1年度:売上原価と返品資産
借方金額貸方金額
売上原価8,640商品9,000
返品資産360
法人税
X1年度:法人税で経理したとみなす仕訳
借方金額貸方金額
現金16,500売上高15,000
仮受消費税等1,500
X1年度:売上原価(法人税)
借方金額貸方金額
売上原価9,000商品9,000
別表四(留保)
項目加算減算
返金負債(返品の可能性は収益の額に反映しない:法22条の2⑤)600
返品資産(返品見込み分の原価)360
消費税
消費税の計算(▲は返還等・課税仕入れ)
区分課税標準税額
課税売上げの対価(販売額の全額)15,0001,500

法人税:引渡し時の価額は貸倒れや買戻し(返品)の可能性を織り込まない(法22条の2⑤)。返金負債は加算・返品資産は減算(いずれも留保)。

会計:返品が見込まれる分は収益にせず返金負債に。返品される商品の原価は返品資産(適用指針第84〜89項)。

法人税:引渡し時の価額は買戻し(返品)の可能性を織り込まない(法22条の2⑤)。返金負債 600 を加算、返品資産 360 を減算。所得は会計の利益より 240 多い。

消費税:課税標準は販売額の全額 15,000。

基礎 4

金額 ── 取引価格と「引渡し時の価額」

📍 ラボの場所:基礎タブ 4・設例・基礎4 ステップ2
ハルカ
図は、約束した対価 10,000 に 15% のリベートが付く例ですね。会計は 8,500、消費税は 10,000 で、法人税は「要件つきで会計と同じ」になっています。
先生
そう。金額の物差しは、会計が取引価格、法人税が引渡し時の価額(時価)、消費税が対価の額なんだ。リベートのような変動対価は、法人税も要件つきで会計の 8,500 に合わせる。ところが、その下の返品の設例を見ると、法人税は会計の 14,400 に合わせず 15,000 のままだよ。法22条の2④⑤により、貸倒れや返品の可能性は益金では織り込まないんだ。
迷いポイント 返金負債 600 は、法人税でも売上から引ける?
ハルカ
②編で習った返品権付き販売ですね。返品は実際に起こるのだから、法人税でも 600 は売上から引いていいですよね。
先生
よく覚えていたね。でも引けないんだ。返品の可能性は法22条の2⑤で反映しないと決まっている。会計の売上 14,400 に 600 を加算して益金 15,000。同時に返品資産 360 は減算するから、差し引き 240 が留保の残高になるよ。翌期に本当に返品されたら、そこで取り崩すんだ。
💡 そうだったのか!
法人税の益金は引渡し時の価額。リベートは要件つきで会計に合わせるが、返品と貸倒れの可能性は織り込まず、返金負債は加算、返品資産は減算。実際に返品された期に解消します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「金額」のシミュレーションを開く(基礎4の数字:返品権付き販売)
  2. 右の「返品の見込み(個)」を 2 から 5 に変える

👀 会計の売上高は 14,400 → 13,500、返金負債 1,500・返品資産 900。法人税の益金は 15,000 のままで、加算 1,500・減算 900、別表五(一)の残高は 600 になります。

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📝 収益認識ラボ②【基礎編】(取引価格・変動対価・返品権付き販売・金融要素)記事を読む ▶
📗 基礎 5 ラボの図
会計:変動対価を見積って取引価格に反映(第50〜54項)法人税:3要件のすべてを満たすときに限り反映(1) 明示値引き等の内容と金額(算定基準)が、契約・取引慣行・公表した方針で相手方に明らか、または期末に内部決定(2) 継続的な見積り過去の実績を基礎とする等の合理的な方法を継続して適用し、その見積りで収益を減額・増額(3) 書類の保存(1)を明らかにする書類と、(2)の算定の根拠となる書類を保存返品の可能性と貸倒れの可能性は、変動対価であっても法人税では反映しない(法22条の2⑤)。返品権付き販売の返金負債は加算。要件を満たさない見積りは「過度に保守的・恣意的な見積り」として、公平な所得計算の観点から認めない(趣旨説明)。
基礎 5

変動対価の3要件 ── 法人税が会計に合わせる条件

📍 ラボの場所:基礎タブ 5
ハルカ
返品はだめでも、割戻しの見積りは法人税でも認められるんですか。図に3つの要件が並んでいます。
先生
値引きや割戻しは、法人税では「引渡し時の価額をより正確に反映するための調整」と位置づけているんだ。だから3要件を満たせば、会計の変動対価の処理を認めるよ(基通2-1-1の11)。(1) 値引き等の内容と算定基準が相手方に明らかか(または事業年度末までに内部的に決定されているか)、(2) 合理的な方法で継続して見積っているか、(3) その書類を保存しているか、だね。
迷いポイント 要件を1つ満たさなかったら、どうなる?
ハルカ
3つのうち、書類の保存だけ忘れていたら、少しの減額くらいは見逃してもらえますか。
先生
見逃しはないんだ。要件を満たさない見積りは税務上認められず、会計で計上した返金負債は加算して、割戻しを通知または支払をした日の属する事業年度に減額する(基通2-1-1の12)。3つの要件は、社内で確かめられる形で整えておくものだよ。
💡 そうだったのか!
割戻しなどの変動対価は、明示(または期末までの内部決定)・継続的な見積り・書類保存の3要件を満たせば法人税も会計と同じ。満たさなければ返金負債を加算し、通知または支払をした日の事業年度に減額します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「金額」のシミュレーションを開く(基礎3の数字:割戻しを見込む販売)
  2. 右の「法人税:変動対価の3要件」を 「満たさない」 に変える

👀 X1年度の益金が 45,000 → 50,000(請求額)になり、加算 5,000。X2年度は減算 5,000 で解消し、2年間の合計 90,000 は変わりません。消費税の課税標準は 50,000・40,000 のままです。

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📝 収益認識ラボ②【設例・変動対価と制限編】記事を読む ▶
📗 基礎 6 ラボの図
取引の態様例譲渡等の時期(原則)消基通資産の譲渡棚卸資産・固定資産引渡しのあった日9-1-1・9-1-13資産の貸付け使用料等支払を受けるべき日(前受けを除く)9-1-20役務の提供請負(物の引渡しあり)完成して引き渡した日 ※9-1-5・法17条役務の提供請負(引渡しなし)・人的役務役務の全部を完了した日9-1-5※ 法人税で工事進行基準により経理していれば、消法17条の特例で各課税期間に売上処理した部分を譲渡等とすることを選べる。消費税は「課税資産の譲渡等をした時」に納税義務が成立する(消基通9章)。会計が進捗度で3年に分ける工事でも、消費税の原則は引渡しの日に全額。課税標準は「課税資産の譲渡等の対価の額」=対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭等の額(税抜、消費税法28条)。会計の取引価格とは別の数字。
基礎 6

消費税は別の物差し ── 譲渡等の時期と対価の額

📍 ラボの場所:基礎タブ 6
ハルカ
消費税の表には「引渡しのあった日」「支払を受けるべき日」「完成して引き渡した日」と並んでいます。会計の進捗度は出てきませんね。
先生
消費税は収益認識基準の影響を受けないんだ。課税資産の譲渡等をした時に、当事者間で授受することとした対価の額(税抜)で課税される(消費税法28条)。請負は、消基通9-1-5のとおり目的物の全部を完成して引き渡した日が原則だよ。
迷いポイント 工事を3年に分けて収益にしたら、消費税も3年に分かれる?
ハルカ
工事収益を進捗度で 1,800・4,800・2,400 に分けたら、消費税もその年度ごとにかかりますよね。
先生
原則は分かれないんだ。引渡しの日に 9,000 の全額が課税売上げになる。法人税で工事進行基準により経理している工事なら、消費税法17条の特例を選んで、各課税期間に売上処理した部分を譲渡等にすることはできるよ。
ハルカ
会計が3年かけて少しずつ運んでいる荷物を、消費税は最終日にまとめて受け取りに来るんですね。
先生
特例を選べば、消費税も3回に分けて受け取りに来てくれるよ。
💡 そうだったのか!
消費税は譲渡等をした時に対価の額で課税。工事の原則は引渡しの日に全額。消法17条の特例を選べば進捗に応じて課税できます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「時期」のシミュレーションを開く(応用5の数字:工事契約)
  2. 右の「消費税:譲渡等の時期」を 「特例:進捗に応じて課税」 に変える

👀 消費税の課税標準が X3年度に 9,000 の一括から、1,800・4,800・2,400 の3年に分かれ、会計・法人税と同じ年度になります。3年間の合計 9,000 は同じです。

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📝 収益認識ラボ④【基礎編】(工事契約・契約資産・消費税等の表示)記事を読む ▶
📗 基礎 7 ラボの図
10,000 の商品を販売(消費税 10%):顧客から受け取る 11,000 のうち収益はいくらか受取額 11,000会計:売上高 10,000(税抜方式のみ:基準第47項)1,000法人税:税抜方式 10,000仮受法人税:税込方式も選べる(売上 11,000・租税公課 1,000 → この設例では所得は同じ)消費税:課税標準 10,000税額消費税等は国などの第三者のために回収する額なので、収益認識基準では収益に含めない(税込方式は使えない)。法人税では引き続き税込方式も認められる(消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて)。この単純な設例では所得は変わらないが、売上高の金額や、交際費等の損金不算入額の計算(税込方式では消費税等相当額を含む)などでは課税所得が変わることがある。
基礎 7

第三者のために回収する額 ── 税抜方式が前提

📍 ラボの場所:基礎タブ 7
ハルカ
④編で、消費税等は第三者のために回収する額だから売上に入れない、と習いました。これは税務でも同じですか。
先生
ちゃんと覚えていたね。会計は税抜方式だけだよ(基準第47項)。法人税は、法人の選択で税抜方式と税込方式のどちらも使えるんだ。図の下段の点線が税込方式で、売上 11,000・租税公課 1,000 になるね。
迷いポイント 税込方式でも、所得は同じ?
ハルカ
売上に 1,000 足して費用に 1,000 足すなら、どちらでも所得は同じですよね。
先生
この単純な設例では同じだよ。ただ、売上高の額が変わるし、交際費等の損金不算入額の計算では税込方式だと消費税等相当額を含めて判定するから、課税所得が異なる場合があるんだ。
ハルカ
消費税は預かっているだけなのに、税込方式だと交際費の判定で「あなたも参加してください」と呼ばれてしまうんですね。
先生
呼ばれる場面があるから、方式の選択は軽く決めないことだよ。
💡 そうだったのか!
会計は税抜方式のみ。法人税は税込方式も選べるが、この設例で所得が同じでも、交際費等の判定などで課税所得が変わる場合があります。
📝 収益認識ラボ④【設例・契約資産と債権編】(消費税等・返金負債)記事を読む ▶
📗 基礎 8 ラボの図
会計の仕訳(決算書)差があれば別表四(所得の計算)別表五(一)加算:会計の利益に足す(返金負債など)減算:会計の利益から引く(翌期の取崩しなど)留保の増減を記録翌期以降に解消消費税申告書課税標準額=課税売上げの対価の合計(税抜)仮受消費税等と突き合わせる翌期以降に解消する留保の差は、税効果会計の一時差異になる。繰延税金資産は回収可能性を判断したうえで計上する。ポイントの契約負債、返金負債、発行時に益金にした商品券などは、翌期以降に取り崩すと減算で解消する。税抜経理で通常の仮受・仮払として処理する部分は所得に影響しない。ただし精算差額や簡易課税による差額は益金・損金になる場合がある。
基礎 8

差の行き先 ── 別表四・五(一)と消費税申告書

📍 ラボの場所:基礎タブ 8
ハルカ
会計と法人税の差は、申告書のどこに行くんですか。
先生
図の真ん中の別表四だよ。会計の利益に、益金になるのに収益にしていない額を加算し、収益にしたのに益金にならない額を減算する。加算・減算のうち留保は別表五(一)に残高として残り、翌期以降の取崩しで解消するんだ。
ハルカ
これ、税効果会計ラボでやった一時差異と同じ考え方ですか。
先生
そのとおりだよ。このラボで扱う、翌期以降に解消する留保の差は一時差異になる。返金負債のような将来減算一時差異の繰延税金資産は、回収可能性を判断したうえで計上するんだ。消費税の差は別表四ではなく、申告書の課税標準に現れるよ。
迷いポイント 消費税の差は、所得に影響しない?
ハルカ
消費税は預り金なので、所得には一切関係ないと言い切っていいですか。
先生
税抜経理で通常の仮受・仮払として処理する部分は影響しないよ。ただし申告額との精算差額や、簡易課税による差額は益金・損金になる場合があるんだ。仮受消費税等は、課税売上げの税額と返還等の税額に分けて申告書と突き合わせてね。
💡 そうだったのか!
会計と法人税の差は別表四へ、翌期以降に解消する留保は別表五(一)に残って一時差異に(繰延税金資産は回収可能性を判断して計上)。消費税の差は課税標準に現れ、通常の仮受・仮払は所得に影響しません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「時期」のシミュレーションを開く(応用4の数字:入会金)
  2. 右の「法人税:特定期間の役務提供との具体的な対応関係」を 「認められる」 に変える

👀 原則では X1年度に加算 80,000、X2・X3年度に減算 40,000 ずつで別表五(一)の残高が 80,000 → 40,000 → 0 と動きます。「認められる」にすると加算・減算が消え、申告調整なしになります。消費税は、この設例の前提(会員資格の付与の対価として受け取る返金不要の入会金)では、どちらでも入会時の 120,000 のままです。

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📝 税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異と繰延税金資産)記事を読む ▶

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この記事の図は、すべて収益認識ラボ⑤の画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

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📝 収益認識ラボ③【基礎編】(本人と代理人・ポイント・商品券・入会金)③編の基礎編を読む ▶
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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
法人税は会計基準に合わせたから、もう差は出ない?返品の可能性のように織り込まないもの、ポイントのように要件つきのものが残る。消費税は別の物差し基礎0
法人税と消費税の列は同じ色の並び?法人税は黄(要件つきで同じ)が多く、消費税は赤(別の扱い)が多い基礎1
履行義務に分けたら、消費税も同じ単位?結果は近いが理由が違う。消費税は譲渡等ごとに判定(基通2-1-1(1)ロ、消費税法)基礎2
期末の売上だけ検収日に変えて翌期に回せる?不可。近接する日は継続適用。経理した日を申告調整で変えることもできない(法22条の2②③)基礎3
返金負債 600 は法人税でも売上から引ける?引けない。返品・貸倒れの可能性は織り込まず、返金負債は加算、返品資産は減算(法22条の2⑤)基礎4
3要件を1つ満たさなかったら?見積りは認められず、返金負債を加算。通知または支払をした日の事業年度に減額(基通2-1-1の11・12)基礎5
工事を3年に分けたら消費税も3年に分かれる?原則は引渡しの日に全額。消法17条の特例を選べば進捗に応じる(消基通9-1-5)基礎6
税込方式でも所得は同じ?この設例では同じ。交際費等の損金不算入額の計算などで課税所得が変わる場合がある基礎7
消費税の差は所得に影響しない?通常の仮受・仮払は影響しない。精算差額や簡易課税の差額は益金・損金になる場合がある基礎8
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。同じ取引を、会計は履行義務・支配・取引価格で、法人税は契約・引渡し等の日・時価で、消費税は譲渡等・その時期・対価の額で測る。法人税は要件つきで会計に合わせる部分が多く、消費税は別の物差しで動かない。差が出たら別表四と課税標準に現れる。この3つを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
①〜④編では「会計でいくら売上にするか」ばかり考えていました。今日は同じ 14,400 の売上が、申告書では 15,000 になり、消費税でも 15,000 になるのを見て、決算書と申告書は別々に組み立てるものだと分かりました。前は会計が決まれば税務は自動で付いてくると思っていたんです。
先生
自動で付いてくるのは、差が出ない取引だけなんだ。差が出る取引を知っていれば、決算の手順を自分で組めるようになるよ。
ハルカ
では私は、仕訳を切るたびに「法人税さんはどう思いますか」「消費税さんはどう思いますか」と2回聞くことにします。
先生
その2回の問いかけが、申告調整の抜けを防ぐんだよ。次の応用編では、入会金・商品券・工事の消費税・消化仕入など、実務で迷う論点を見ていこうか。

参考資料

法人税法第22条・第22条の2・第63条、法人税法施行令第18条の2、法人税基本通達2-1-1〜2-1-1の16・2-1-21の2〜2-1-21の7・2-1-39〜2-1-40の2(平成30年5月30日付課法2-8ほか「法人税基本通達等の一部改正について」とその趣旨説明を含む)、消費税法第4条・第17条・第28条・第30条・第38条、消費税法基本通達第9章、国税庁「収益認識基準による場合の取扱いの例」(平成30年5月・ケース1〜6)、タックスアンサーNo.6161・6513・6917。会計は企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」・企業会計基準適用指針第30号。基準確認日:2026年10月7日。原文は国税庁(法人税基本通達)・国税庁(消費税法基本通達)・ASBJ(第29号)で公開されています。ラボの設例は国税庁のケース1〜6と同じパターンを独自の数値(消費税率10%)で組み立てたものです。

シリーズ:基礎編/応用編 / 設例編:単位編(ポイント・消化仕入)・時期編(商品券・入会金・工事)・金額編(変動対価・返品・金融要素) / 関連:収益認識ラボ②【基礎編】(取引価格・変動対価・返品権付き販売・金融要素)/収益認識ラボ③【基礎編】(本人と代理人・ポイント・商品券・入会金)/収益認識ラボ④【基礎編】(工事契約・契約資産・消費税等の表示)/税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異と繰延税金資産)/【早見表】収益認識基準・適用指針(論点を項番号で検索)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。