棚卸資産ラボ【設例・評価方法編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・基礎1・5、応用4・5 先入先出法・平均原価法・売価還元法・保有損益
無料の学習ツール「棚卸資産ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、評価方法の設例(設例・基礎1・5、応用4・5)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎1 ラボの画面
前提条件(独自の数値・設定)
- P社は同じ商品を期首に 100個(@50)持っていた。期中に3回仕入れ、2回販売した(順番は下の表)。
- 販売単価は @90。付随費用はないものとする。
- この1種類の商品について、先入先出法・移動平均法・総平均法で売上原価と期末の金額を計算する。
| 取引 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|
| 期首 | 100 | 50 | 5,000 |
| 仕入1 | 200 | 55 | 11,000 |
| 払出1 | 220 | | |
| 仕入2 | 150 | 60 | 9,000 |
| 払出2 | 160 | | |
| 仕入3 | 100 | 64 | 6,400 |
| 期末の数量 | 170 | | |
📎 実務で確認する資料- 商品有高帳(受払いの記録)
- 評価方法を定めた経理規程
- 税務署への「棚卸資産の評価方法の届出書」
はじめに
設例・基礎1・5、応用4・5 ── 同じ受払いを、方法を変えて計算する
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ1
ハルカ
先生、設例編の1本目は評価方法ですね。P社は期首 100個 に、@55・@60・@64 で3回仕入れて、2回で 380個 を販売しています。
先生
基礎編では結果だけを見たね。今日は払出しの1回ずつに、どの単価を当てるかを追っていくんだ。最後に売価還元法と、後入先出法をやめたときの影響も見るよ。
ハルカ
期末に残るのは 170個。払出可能額は 31,400 です。
先生
その 31,400 を、売上原価と期末にどう分けるかが評価方法なんだ。まず先入先出法から見てみようか。
設例・基礎タブの基礎1を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎1 ラボの画面
🧾 払出の仕訳(2回分の合計)
売上原価の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売上原価 | 20,800 | 商品 | 20,800 |
設例・基礎1
先入先出法 ── 期末は@60 と@64 で 10,600
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ2
ハルカ
払出1の 220個 は、期首の 100個(@50)と仕入1の 120個(@55)で 11,600。払出2は 9,200 です。
先生
古いものから順に払い出したとみなすからね。期末に残るのは、仕入2の残り 70個 と仕入3の 100個 で 10,600 なんだ。売上原価は2回分を合わせて 20,800 だよ。
迷いポイント 先入先出法なら、払出しの仕訳も単価ごとに切る?
ハルカ
@50 の分と@55 の分で、仕訳を2行に分けないといけないのでしょうか。
先生
仕訳は売上原価/商品の1本で足りるんだ。単価ごとの内訳は商品有高帳で管理するよ。画面の払出しの表が、その帳簿の役割を果たしているんだ。
ハルカ
単価ごとに行を分けていたら、仕訳帳が単価の地層みたいになるところでした。
💡 そうだったのか!
先入先出法は、
期末が最も新しい仕入で構成されます。この設例では期末 10,600、売上原価 20,800 です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「評価方法の比較」で、プリセット「仕入単価が上がる局面」を選ぶ
- 仕入3の単価を 64 から 80 にする
👀 先入先出法の期末は 10,600 → 12,200。売上原価 20,800 は変わりません。総平均法は売上原価まで 21,695 → 22,800 に変わります。
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📘 設例・基礎1 ラボの画面
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期
| 取引 | 数量(残) | 平均単価 | 払出額 |
|---|
| 期首 | 100 | 50 | |
| 仕入1 | 300 | 53.33 | |
| 払出1 | 80 | 53.33 | 11,733 |
| 仕入2 | 230 | 57.68 | |
| 払出2 | 70 | 57.68 | 9,229 |
| 仕入3 | 170 | 61.4 | |
仕入のたびに(残高の金額+仕入の金額)÷(残高の数量+仕入の数量)で平均単価を出し直す。
払出しはその時点の平均単価。売上原価 20,962、期末 10,438(端数は期末で四捨五入し、売上原価は差額)。
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期
平均単価 = 払出可能額 31,400 ÷ 数量 550 = 57.09
期末 = 170個 × 57.09 ≒ 9,705 / 売上原価 = 31,400 − 9,705 = 21,695
期末にならないと単価が決まらないので、期中の払出しは数量だけ記録し、期末にまとめて金額を出す。
設例・基礎1
移動平均法 10,438 と総平均法 9,705 ── 平均の取り方で差が出る
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ3・4
ハルカ
移動平均法は、仕入のたびに平均単価を出し直して 53.33、57.68、61.4。総平均法は、全体の 31,400 を 550個 で割って 57.09 です。
先生
どちらも平均原価法なんだ(第6-2項(3))。移動平均法は払出しのときの平均単価、総平均法は期間全体の平均単価を使うよ。
迷いポイント 総平均法なら、期中の払出しのたびに金額を記録する?
ハルカ
移動平均法と同じように、払出しのたびに金額を付ければいいのでしょうか。
先生
総平均法は期末にならないと単価が決まらないんだ。期中は数量だけ記録して、期末にまとめて金額を出すよ。月次決算では、月ごとの総平均で計算する会社も多いんだ。
ハルカ
総平均法は、テストが終わってからクラスの平均点が出るまで、自分の点数が分からない方式なんですね。
先生
そういうことだね。そのかわり、計算は期末の1回で済むんだよ。
💡 そうだったのか!
移動平均法は
受け入れるたびに平均単価、総平均法は
期間全体の平均単価。総平均法は期末にまとめて金額を出します。
📘 設例・基礎1 ラボの画面
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期
| 方法 | 売上原価 | 期末 | 位置づけ |
|---|
| 後入先出法 | 21,500 | 9,900 | 2008年改正で削除(第34-12項) |
| 最終仕入原価法 | 20,520 | 10,880 | 原則不可。重要性が乏しい場合等に限り容認(第34-4項) |
最終仕入原価法は期末の全数量を最後の仕入単価 @64 で評価する。期末の一部しか実際の取得原価にならない。
税務では、届出をしなければ最終仕入原価法による原価法が法定評価方法になる(税務調整タブ)。
設例・基礎1
比較 ── 合計は 31,400、利益は 13,400・13,238・12,505
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ5・6
ハルカ
売上総利益は先入先出法 13,400、移動平均法 13,238、総平均法 12,505。同じ取引なのに 895 も違います。
先生
仕入単価が上がっている局面だからね。でも売上原価+期末は、どの方法でも 31,400 なんだ。違うのは、今期と来期への配分だけだよ。
迷いポイント 参考の最終仕入原価法の 10,880 は、使える数字?
ハルカ
最終仕入原価法の期末は 10,880 で、計算もいちばん簡単です。これを使えば楽ですよね。
先生
期末の 170個 を全部@64 で評価しているので、実際の取得原価なのは 100個 分だけなんだ。重要性が乏しい場合などに限って認められるよ(第34-4項)。後入先出法の 9,900 は、選択肢から削除されているんだ。
💡 そうだったのか!
どの方法でも
売上原価+期末=払出可能額。違うのは配分で、最終仕入原価法は原則不可、後入先出法は削除されています。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「評価方法の比較」で、プリセット「在庫を大きく減らした(期首の古い単価が出る)」を選ぶ
👀 期首 400個@40 から在庫をほぼ払い出す例です。期末は 先入先出法 21,440、総平均法 18,320 と、方法の差がさらに大きくなります。
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📘 設例・基礎5 ラボの画面
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期
期首売価 3,000 + 受入原価 14,000 + 原始値入 6,000 + 値上 500 − 値上取消 100 − 値下 1,200 + 値下取消 200 = 22,400
期末の売価合計 = 22,400 − 売上高 20,000 = 2,400
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期
原価率 =(2,000+14,000)÷ 23,400 = 68.38%
期末 = 2,400 × 68.38% ≒ 1,641(平均原価法より 73 低い)
値下額等が売価合計に適切に反映されていれば、この金額は簿価切下額を反映したものとみなせる(第13項ただし書き)。
この数字はシミュレーション「売価還元法」に入っている。
設例・基礎5
売価還元法 ── 原価率 71.43% と 68.38%、期末 1,714 と 1,641
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎5 ステップ2〜4
ハルカ
期首の売価 3,000 に受入原価、原始値入、値上げ、値下げを足し引きして 22,400。売上高 20,000 を引いて、期末の売価合計は 2,400 です。
先生
小売業では、品数が多すぎて1つずつ原価を追えないんだ。だから期末の売価合計に原価率をかけて期末の原価を出すよ。原価率の分母に値下げを入れるかどうかで、2つの方法に分かれるんだ。
迷いポイント 値下げの多い売場ほど、期末の金額は高くなる?
ハルカ
値下げを分母に入れると、分母が小さくなって原価率が上がりますよね。値下げするほど期末が高くなるのは変な気がします。
先生
いいところに気づいたね。だから平均原価法では、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合に切り下げるんだ。この設例は正味売却価額 2,280 が帳簿価額 1,714 を上回るので、切下げはないよ(第13項)。
💡 そうだったのか!
平均原価法の原価率は
値下げを分母に入れる、売価還元低価法は
入れない。前者は正味売却価額が帳簿価額を下回る場合に切り下げ(この設例では正味売却価額 2,280 が帳簿価額 1,714 を上回るので切下げなし)、後者は切下げ後とみなします。
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- シミュレーション「売価還元法」で、プリセット「値下げが大きい(シーズン末)」を選ぶ
👀 平均原価法の原価率は 82.05%(期末 2,051)に上がり、値下げを除いた原価率 68.38%(期末 1,709)との差は 342 に広がります。
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📘 設例・応用4 ラボの画面
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期
25,000 × 払出 24,000 ÷(期首 5,000+受入 25,000)= 20,000
影響額が多額なら、この額を特別損益に表示できた(第21-3項)。
総平均法では期首の古い単価が平均に混ざって払い出されるので、払出数量の割合で損益に出たとみる。
設例・応用4
後入先出法からの変更 ── 期首の保有損益相当額 25,000、当期に出た 20,000
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用4 ステップ2・3
ハルカ
期首の在庫 5,000個 は、後入先出法で古い単価の 40,000 のまま。今の仕入値@13 なら 65,000 なので、差が 25,000 です。
先生
その 25,000 が期首の保有損益相当額なんだ(第21-3項)。総平均法に変えると、古い単価が平均に混ざって払い出されるので、払い出した割合の分が当期の損益に出るよ。
迷いポイント 変更で出た 20,000 は、普通の売上総利益と同じに扱う?
ハルカ
25,000 × 24,000 ÷ 30,000 で 20,000。利益が増えたので、そのまま売上総利益で喜んでいいのでしょうか。
先生
過去に積み上がった保有利益がまとめて出ただけなんだ。2008年改正の適用初年度は、影響が多額ならこの額を特別損益に表示できたよ(第21-3項)。今は経過措置なので、新しく使う場面はないんだ。
ハルカ
何年も前のへそくりが、引っ越しの日にまとめて出てきた感じですね。
💡 そうだったのか!
後入先出法をやめると
過去の保有利益がまとめて出ます。適用初年度は、当期の損益に出た額を特別損益に表示できました(経過措置)。
📘 設例・応用5 ラボの画面
前提条件(独自の数値・設定)
- A社(独自の数値・金額は千単位)は総平均法に変更した。ある事業の商品について、当期の損益に含まれる保有損益相当額を注記したい。
- 期首 10,000個 @90、当期受入 100,000個 @120。
- 販売:40,000個(その時の購入単価 @110)、35,000個(その時の購入単価 @125)、24,000個(その時の購入単価 @130)。
| 販売 | 数量 | 購入単価 | 再調達原価 |
|---|
| 1回目 | 40,000 | 110 | 4,400,000 |
| 2回目 | 35,000 | 125 | 4,375,000 |
| 3回目 | 24,000 | 130 | 3,120,000 |
| 合計 | 99,000 | | 11,895,000 |
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期
売上原価(総平均法)= 12,900,000 × 99,000 ÷ 110,000 = 11,610,000
払出時点の再調達原価合計 = 11,895,000
保有損益相当額 = 11,895,000 − 11,610,000 = 285,000
会計方針の変更の影響として、後入先出法との差額の代わりにこの額を注記できた(第21-4項)。算定方法の概要と範囲もあわせて注記する。
払出時点の再調達原価の代わりに、受入高の平均単価や各月末の再調達原価の平均単価を使うことも考えられる(計算例2の注)。
設例・応用5
当期の損益に含まれる保有損益相当額 ── 再調達原価との差 285,000
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用5 ステップ1・2
ハルカ
総平均法の売上原価は 11,610,000。販売した時点の仕入値で計算し直すと 11,895,000 で、差が 285,000 です。
先生
払出しの時点の再調達原価と、実際の売上原価の差が、当期の損益に含まれる保有損益相当額なんだ。会計方針の変更の影響として、後入先出法との差額の代わりに注記できたよ(第21-4項)。
迷いポイント 再調達原価は、払出時点の単価しか使えない?
ハルカ
販売のたびの仕入値を全部集めるのは、実務ではかなり大変そうです。
先生
受入高の平均単価や、各月末の再調達原価の平均単価を使うことも考えられるんだ(計算例2の注)。どの方法で計算したかは、算定方法の概要として注記するよ。
💡 そうだったのか!
当期の保有損益相当額は
払出時点の再調達原価 − 売上原価。平均単価などの簡便な代わりも考えられ、算定方法の概要も注記します。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて棚卸資産ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
棚卸資産ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。評価方法は、同じ払出可能額を売上原価と期末にどう配分するかの約束なんだ。売価還元法は原価率で、後入先出法をやめたときは、溜まっていた保有利益が表に出てきたね。
ハルカ
前は「先入先出法か平均法か」を名前で覚えていただけでした。今日は、合計が同じで配分だけが違うことを、数字で確かめられました。
先生
配分の違いだと分かれば、利益の差を見ても慌てずに説明できるよ。
ハルカ
次の決算で「なぜ去年と利益の出方が違うの」と聞かれたら、まず「合計は同じです」と胸を張ります。
先生
その後に、配分の理由まで言えれば完璧だよ。次の簿価切下げ編では、正味売却価額、再調達原価、滞留品、判定の単位の設例を見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第9号 第6-2・6-3・13・21-3・21-4・34-4・34-12・54・55項、参考の計算例1・2。企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(2006年7月5日公表、2008年・2019年改正、2025年修正。参考の計算例1・2を含む)、原価計算基準、中小企業の会計に関する指針(第25〜29項)、中小企業の会計に関する基本要領(Ⅱ各論6)。基準確認日:2026年10月14日。ラボの設例は、原典の考え方と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の計算例の数値は画面に出していません)。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・簿価切下げ編(基礎2〜4・6・7)/設例・特別な論点編(応用1〜3・6・7)/税務調整編
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。