相続税法ラボ【応用編】|図で学ぶ取得者の種類・財産の評価・小規模宅地等・生前贈与と手続
無料の学習ツール「相続税法ラボ」の読み方ガイドです。ラボの「取得者の種類から」「財産の評価から」「テーマから」「手続・期限から」「設例・試算」の各タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。全体像タブの内容は基礎編で扱っています。登場する人物と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
🧮 設例・試算 ラボの図
はじめに
今日の題材 ── 3つの家族を並べると見えること
📍 ラボの場所:設例・試算タブ F
ハルカ
先生、基礎編ではA家を追いました。応用編ではどの家族を見るんですか。
先生
今日は、子2人と孫のB家と、配偶者と子1人のC家が加わるよ。特例を使う前の課税価格、課税価格の合計、納付税額を並べた図から始めようか。
ハルカ
A家は 4,529,400円、B家は 18,645,100円、C家は0円です。B家はA家より遺産が少ないのに、税額は4倍以上ですね。
先生
B家は配偶者がいなくて、基礎控除も小さく、自宅の特例も使えないからなんだ。今日は取得者の種類、財産の評価、特例、生前贈与、手続の順に見ていこうか。
ラボの「取得者の種類から」タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
👤 取得者の種類から ラボの表
赤字=2割加算・対象外・できない緑字=非課税・控除・軽減・特例太字=手続の名前(小さい文字)=根拠灰色のマス=その人には関係がない
| 取得者の種類 | 課税される財産の範囲 | 法定相続人の数・非課税枠 | 2割加算 | 税額控除・軽減 | 申告・納付 | 主な特例・注意 |
|---|
| 配偶者婚姻届を出した夫・妻 | 国内に住所があればすべての財産(相続税法第1条の3第1項第1号・第2条第1項) | - 常に法定相続人(民法第890条)
- 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠の人数に入る(相続税法第12条第1項第6号・第7号)
| 対象外(相続税法第18条第1項) | 配偶者の税額軽減:1億6千万円か法定相続分相当額の多い方まで税額0(相続税法第19条の2第1項) | 税額0でも、配偶者の税額軽減を受けるには相続税の申告書の提出が必要(相続税法第19条の2第3項) | - 小規模宅地等の特例(特定居住用)は取得者ごとの要件なし(措置法第69条の4第3項第2号)
- 配偶者居住権は別に評価(相続税法第23条の2)
|
|---|
| 子(実子・養子)一親等の血族 | 国内に住所があればすべての財産 | - 法定相続人
- 養子は実子がいれば1人、いなければ2人まで人数に数える(相続税法第15条第2項)
| 対象外(一親等の血族) | - 18歳未満なら未成年者控除:18歳までの年数×10万円(相続税法第19条の3第1項)
- 障害者控除(第19条の4第1項)
| 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付(相続税法第27条第1項・第33条) | 生前の贈与で相続時精算課税を選べる(贈与者60歳以上・受贈者18歳以上。相続税法第21条の9第1項) |
|---|
| 孫(代襲相続人)子が先に亡くなった場合 | 国内に住所があればすべての財産 | 子に代わって法定相続人になる(民法第887条第2項) | 対象外(代襲相続人の孫は一親等の血族に含む。相続税法第18条第1項) | 未成年者控除・障害者控除 | 10か月以内に申告・納付 | — |
|---|
| 孫(遺贈・孫養子)代襲相続人でない孫 | 国内に住所があればすべての財産 | - 遺贈を受けただけなら法定相続人ではない
- 養子になっていれば人数に数える(相続税法第15条第2項)
| - 2割加算の対象
- 養子になった孫も対象(相続税法第18条第1項・第2項)
| 相続人でなければ未成年者控除は受けられない(相続税法第19条の3第1項) | 財産を取得したら申告・納付 | 死亡保険金の非課税は相続人が受け取った分だけ(相続税法第12条第1項第6号) |
|---|
| 父母(直系尊属)子も孫もいない場合 | 国内に住所があればすべての財産 | 法定相続人(民法第889条第1項第1号) | 対象外(一親等の血族) | 障害者控除など | 10か月以内に申告・納付 | — |
|---|
| 兄弟姉妹子・孫も父母もいない場合 | 国内に住所があればすべての財産 | - 法定相続人(民法第889条第1項第2号)
- 遺留分はない(民法第1042条第1項)
| 2割加算の対象(相続税法第18条第1項) | 障害者控除など | 10か月以内に申告・納付 | 法定相続分は配偶者3/4・兄弟姉妹1/4(民法第900条第3号) |
|---|
| 相続を放棄した人家庭裁判所で放棄 | 遺贈や死亡保険金を受け取れば納税義務者 | - 放棄がなかったものとして法定相続人の数に数える(相続税法第15条第2項)
- ただし死亡保険金の非課税は受けられない(第3条第1項・第12条第1項第6号)
| 続柄による(子なら対象外) | 未成年者控除・障害者控除は、放棄がなかったとした場合の相続人に当たれば受けられる(相続税法第19条の3第1項) | 財産を取得していれば申告・納付 | 民法では初めから相続人でなかったものとみなされる(民法第939条) |
|---|
| 国外に住む相続人取得時に国内に住所なし | 日本国籍があり10年以内に国内に住所があった人などはすべての財産、それ以外は国内にある財産だけ(相続税法第1条の3第1項第2号・第4号、第2条) | 法定相続人の数に入る | 続柄による | - 障害者控除は受けられない(相続税法第19条の4第1項)
- 未成年者控除は国内財産だけの人は受けられない(第19条の3第1項)
| 納税管理人を定めて申告・納付(国税庁 No.4138) | 国内にある財産かどうかは財産の所在で判定(相続税法第10条) |
|---|
| 相続時精算課税の適用者生前に精算課税で贈与を受けた人 | 精算課税の贈与財産(年110万円の基礎控除後)を課税価格に加算(相続税法第21条の15・第21条の16) | — | 続柄による | 納めた贈与税を相続税額から控除し、控除しきれない分は還付(相続税法第21条の15・第33条の2) | 相続で財産を取得しなくても、精算課税の財産があれば申告の対象(相続税法第27条第1項) | 精算課税の贈与財産は物納に充てられない(相続税法第41条第2項) |
|---|
取得者の種類
配偶者・子・孫・兄弟姉妹 ── 6列の違い
📍 ラボの場所:取得者の種類からタブ 早見表
ハルカ
9種類の取得者に、課税される財産の範囲・法定相続人の数と非課税枠・2割加算・税額控除・申告・特例の6列があります。
先生
同じ相続でも、誰が取得するかで効く規定が違うんだ。配偶者は税額軽減、子は未成年者控除、孫や兄弟姉妹は2割加算が目立つよ。
迷いポイント 孫に遺贈すれば、相続税を一回分飛ばせて得?
ハルカ
B家は孫に1,000万円を遺贈しました。子を飛ばして孫に渡せば、次の相続で税金がかからないので得ですよね。
先生
一回分飛ばせるのは確かだね。だから孫など、一親等の血族と配偶者以外の人は、相続税額に2割を加算するんだ(第18条第1項)。B家の孫は 1,226,666円に 245,333円が加わるよ。
ハルカ
孫でも、親が先に亡くなって代わりに相続人になった場合はどうですか。
先生
代襲相続人の孫は2割加算の対象外なんだ。逆に、孫を養子にしただけなら対象のままだよ(第18条第2項)。
💡 そうだったのか!
配偶者と一親等の血族以外が取得すると、相続税額に
2割加算(第18条第1項)。
代襲相続人の孫は対象外、
孫養子は対象です(同条第2項)。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 取得者の種類からタブの右の「取得者を選ぶ」で、「孫(遺贈・養子)」を押す
👀 早見表が「孫(遺贈・孫養子):代襲相続人でない孫」の1行になり、2割加算の対象で養子になった孫も対象(相続税法第18条第1項・第2項)、相続人でなければ未成年者控除は受けられないことなどが表示されます。
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🔁 財産の評価から ラボの表
加算課税価格に足す差引き課税価格から引く赤字=課税される・控除できない緑字=非課税・控除できる・減額第11表=申告書の様式(小さい文字)=根拠
| 財産・債務 | 📒 帳簿・ふだんの見方 | 🧾 相続税法と評価 | 📝 申告書での書き方 |
|---|
| 現金・預貯金財産 | | - 相続開始日の残高で評価する(相続税法第22条)
- 定期預金は既経過利息も含める
- 名義が家族でも、実質的に亡くなった人のお金なら相続財産として課税価格に算入する
| 第11表に計上し、課税価格に加算する。名義預金も同じ表に書く。 |
| 上場株式財産 | 証券口座の評価額(直近の株価)を見る | 亡くなった日の最終価格と、その月・前月・前々月の毎日の最終価格の月平均額のうち最も低い額で評価する(国税庁 No.4632) | 第11表に計上(上場株式の評価明細書で評価額を出す)。 |
| 取引相場のない株式(家業の会社)財産 | 帳簿上は出資した金額(取得価額)のまま | 同族株主等は会社の規模に応じて類似業種比準方式・純資産価額方式・その併用、それ以外の株主は配当還元方式で評価する(国税庁 No.4638) | 第11表に計上(取引相場のない株式の評価明細書で評価額を出す)。事業承継税制を使うときは第8の2表など。 |
| 自宅の土地財産 | 買った時の価格や、不動産会社の査定額で考えがち | - 路線価×面積(奥行などで補正)か、固定資産税評価額×倍率で評価する(国税庁 No.4604・No.4606)
- 自宅の敷地は、要件を満たせば330㎡まで評価額を80%減額できる(措置法第69条の4第1項)
| 第11表に評価額を計上し、小規模宅地等の特例は第11・11の2表の付表1で減額を計算して差引き。 |
| 貸家とその敷地財産 | 賃貸アパートは帳簿では取得価額−減価償却累計額 | - 貸家は借家権の分、敷地(貸家建付地)は自用地価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合の分だけ評価額が下がる(国税庁 No.4614)
- 貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額できる場合がある(措置法第69条の4第1項第2号)
| 第11表に計上。貸付事業用宅地等の特例は付表1で差引き。 |
| 死亡保険金財産 | 受取人の固有の財産で、遺産分割の対象外と考えるのが一般的 | - 亡くなった人が保険料を負担していた保険金は相続財産とみなす(相続税法第3条第1項第1号)
- 相続人が受け取った分は500万円×法定相続人の数まで非課税(第12条第1項第6号)
| 第9表で非課税額を計算し、残りを第11表に加算。 |
| 死亡退職金財産 | 会社から遺族に支払われるお金 | - 死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金等は相続財産とみなす(相続税法第3条第1項第2号)
- 相続人が受け取った分は500万円×法定相続人の数まで非課税(第12条第1項第7号)
| 第10表で非課税額を計算し、残りを第11表に加算。 |
| 生前の贈与財産 | 贈与した時点で、もう亡くなった人の財産ではないと考えがち | - 加算対象期間内に暦年課税で贈与された財産は、贈与時の価額で課税価格に加算する(相続税法第19条第1項)
- 令和8年中の相続は3年以内(国税庁 No.4161)
- 納めた贈与税は控除できる
| 第14表で加算額を計算し、第4表の2で贈与税額控除。 |
| 墓地・仏壇財産 | 財産というより、家の祭祀の道具 | - 墓所・霊びょう・祭具などは非課税(相続税法第12条第1項第2号)
- 生前に買えば相続財産にならない
| 申告書には計上しない(課税価格に算入しない)。 |
| 借入金・未払の税金債務 | 借入金残高・未払金 | - 相続開始の時に現に存在し、確実と認められる債務は控除できる(相続税法第13条第1項第1号・第14条第1項)
- 亡くなった人の所得税(準確定申告分)や固定資産税も控除できる(第14条第2項)
- 生前に買った墓の未払代金は控除できない(第13条第3項)
| 第13表に記載し、課税価格から差引き。 |
| 葬式費用債務 | 葬儀社への支払いや香典返しなど、まとめて葬儀の費用と考えがち | - 通夜・告別式・火葬・納骨・お布施などは控除できる(相続税法第13条第1項第2号)
- 香典返し・墓地の購入・初七日などの法事の費用は控除できない(国税庁 No.4129)
| 第13表に記載し、課税価格から差引き。 |
財産の評価
ふだんの見方/相続税法と評価/申告書
📍 ラボの場所:財産の評価からタブ 冒頭の表
ハルカ
現金・預貯金、上場株式、家業の会社の株式、自宅の土地、貸家…。所得税法ラボの「会計との違い」と同じ3列の表ですね。
先生
帳簿やふだんの感覚と、相続税の評価額がずれるところを並べてあるんだ。土地は路線価、上場株式は3か月の月平均との比較で、時価そのものとは違うよ。
迷いポイント 家族名義の預金は、名義人の財産として相続財産から外せる?
ハルカ
名義を家族に変えておけば、遺産は小さくできますね。ラベルライターなら会社に3台あります。
先生
ラベルを貼り替えても持ち主は変わらないね。お金の出どころや、誰が通帳と印鑑を管理していたかなど、実態で判断するんだ。亡くなった人のお金なら相続財産になるよ。
ハルカ
債務の欄では、生前に買った墓の未払代金は控除できない、と書いてあります。
先生
墓地は非課税財産だから、その未払代金も差し引けないんだ(第13条第3項)。葬式費用でも、香典返しや法事の費用は控除できないよ。
💡 そうだったのか!
財産は
取得の時の時価で評価し(第22条)、具体的な方法は
財産評価基本通達によります。家族名義の預金も
実態で判断します。非課税財産のための債務は控除できません(第13条第3項)。
🔁 財産の評価 A1 ラボの図
相続税の総額は「分け方」で変わらないが、各人の税額は「分け方」で決まる相続税の総額 8,987,500円は法定相続分で計算するので、課税価格の合計が同じなら、遺産をどう分けても同じです(小規模宅地等の特例を誰が受けるかで課税価格の合計が変わるときは、総額も変わります)。それを各人の課税価格の割合で配分し、母は配偶者の税額軽減で0、子2人は 2,264,700円・2,264,700円を納めます。
財産の評価 A1
誰がいくら取得したか ── 各人の課税価格
📍 ラボの場所:財産の評価からタブ A1
ハルカ
母が5,675万円、長男と長女が2,987.5万円ずつです。長男・長女には、3年以内の贈与150万円が足されています。
先生
相続税の総額 8,987,500円を、この課税価格の割合で配るんだ(第17条)。母は配偶者の税額軽減で0、子2人は 2,264,700円ずつだよ。
迷いポイント 生前に贈与を受けた分は、贈与税と相続税を二重に払う?
ハルカ
長男は150万円の贈与で贈与税を4万円払いました。その150万円が相続税にも足されるなら、二重取りですよね。
先生
足した贈与について払った贈与税は、相続税から差し引くんだ(第19条第1項)。だから長男の相続税は、按分した額から4万円を引いた額になるよ。
ハルカ
二重には払わないけれど、相続税の税率で計算し直される、ということですね。
先生
そう。贈与税の申告書の控えは、相続の申告で使うから、捨てずに取っておくのが大事なんだ。
💡 そうだったのか!
各人の税額=相続税の総額×
各人の課税価格÷課税価格の合計(第17条)。加算した生前贈与の
贈与税は相続税から差し引きます(第19条第1項)。
🔁 財産の評価 A2 ラボの図
特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額。A家の自宅250㎡は全体が対象で、4,800万円が減額される母が自宅を相続したので、取得者ごとの要件はありません(措置法第69条の4第3項第2号)。特例を受けるには、申告書に特例を受ける旨を書き、計算明細書や遺産分割協議書の写しを添付します(同条第7項)。申告期限までに分割されていることも必要です(同条第4項)。
財産の評価 A2
小規模宅地等の特例 ── 自宅の土地を80%減額
📍 ラボの場所:財産の評価からタブ A2
ハルカ
自宅の土地6,000万円から4,800万円を減らして、課税価格に入るのは1,200万円です。A家の納付税額は 4,529,400円ですね。
先生
特例を使わなければ、A家の納付税額は 9,192,200円になるんだ。自宅の土地は、相続税の計算でいちばん大きく動く部分だよ(措置法第69条の4第1項)。
迷いポイント 自宅の土地なら、誰が相続しても80%減額される?
ハルカ
亡くなった人が住んでいた土地なら、誰がもらっても同じ特例ですよね。
先生
取得する人で要件が変わるんだ。配偶者は要件なし。同居していた親族は、申告期限まで住み続けて持ち続けることが要件だよ(措置法第69条の4第3項第2号)。
ハルカ
同居していない子が相続したら、使えないんですか。
先生
配偶者も同居の相続人もいない場合に、持ち家のない親族なら使える道があるんだ。要件が細かいから、ラボのテーマタブで確かめてみてね。
💡 そうだったのか!
特定居住用宅地等は
330㎡まで80%減額(措置法第69条の4第1項・第2項)。
配偶者は要件なし、
同居親族は申告期限まで居住・保有が要件です(同条第3項第2号)。申告書の提出も必要です(同条第7項)。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 財産の評価からタブの A2 で、「特例を使わない」を押す
👀 減額が「減額なし」になり、課税価格に入る額が6,000万円に、A家の納付税額の合計が 9,192,200円(特例を使えば 4,529,400円)に変わります。
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🧩 テーマから ラボの図
令和11年12月1日に相続:令和6年1月1日から相続開始日が令和9年1月1日〜令和12年12月31日なので、加算対象期間は「令和6年1月1日から死亡の日まで」です。3年より前の部分からは総額100万円を差し引きます(国税庁 No.4161)。(毎年1月に200万円ずつ贈与した例)
- ✔ 要点加算対象期間令和6年1月1日以後の暦年課税の贈与から、相続税の課税価格に加算する期間が相続開始前3年以内から7年以内に延びました(相続税法第19条第1項)。
- 経過措置相続開始日が令和8年12月31日以前は3年以内、令和9年1月1日〜令和12年12月31日は令和6年1月1日から死亡の日まで、令和13年1月1日以後は7年以内です(国税庁 No.4161)。
- 100万円の控除相続開始日が令和9年1月2日以後の場合、3年より前の部分は、その合計から総額100万円を差し引いて加算します(国税庁 No.4161)。
- ⚠ 注意110万円以下でも加算基礎控除110万円以下で贈与税がかからなかった贈与や、亡くなった年の贈与も加算の対象です(国税庁 No.4161)。
- 加算しないもの贈与税の配偶者控除の額、住宅取得等資金・教育資金・結婚子育て資金の非課税額は加算しません(国税庁 No.4161)。
- 💡 実務贈与税額控除加算した贈与について納めた贈与税は、相続税額から差し引きます(相続税法第19条第1項)。
テーマ 1
生前贈与の加算 ── 3年から7年へ
📍 ラボの場所:テーマからタブ
ハルカ
毎年1月に200万円ずつ贈与した例です。令和11年の相続だと、令和6年からの6年分、1,200万円が加算の対象ですね。
先生
令和6年1月1日以後の贈与から、加算する期間が3年から7年に延びたんだ(第19条第1項)。ただし段階的で、令和8年中の相続はまだ3年以内だよ。
迷いポイント 基礎控除110万円以下の贈与なら、相続のとき加算されない?
ハルカ
110万円以下なら贈与税の申告もいらないので、相続税でも見えない贈与ですよね。
先生
贈与税がかからなかった贈与も、加算の対象なんだ。3年より前の部分は、合計から100万円を差し引いて加算するよ。
ハルカ
亡くなる直前に、急いで贈与しても意味がないんですね。
先生
そう。生前贈与は、何年前から計画するかで効き目が変わるんだ。だからこの年表で、相続の年ごとに確かめられるようにしてあるよ。
💡 そうだったのか!
相続や遺贈で財産を取得した人が受けた暦年課税の贈与は、
令和8年中の相続なら3年以内、
令和13年以後は7年以内を加算します(第19条第1項)。
110万円以下の贈与も加算されます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- テーマからタブの「生前贈与の加算」で、「令和15年の相続」を押す
👀 年表の令和9年〜令和15年の7年分が色づき、「令和15年12月1日に相続:加算 7年分 1,400万円(3年より前の分から100万円を控除 → 1,300万円)」と表示されます。
ラボを開く ▶
🧩 テーマから ラボの図
- ✔ 要点暦年課税1年間の贈与から基礎控除110万円(措置法第70条の2の4)を引き、残りに10%〜55%の累進税率を掛けます(相続税法第21条の7)。18歳以上の子・孫が父母・祖父母から受けた贈与は特例税率です(措置法第70条の2の5)。
- 相続時精算課税60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べます(相続税法第21条の9第1項)。年110万円の基礎控除第21条の11の2・措置法第70条の3の2、累計2,500万円の特別控除第21条の12を引き、残りに20%第21条の13。
- ⚠ 注意一度選ぶと戻れない相続時精算課税選択届出書は撤回できません(相続税法第21条の9第6項)。
- 相続のとき暦年課税は加算対象期間内の贈与だけを加算、精算課税は選択後の贈与(年110万円の基礎控除後)をすべて加算して精算します(相続税法第19条・第21条の15)。
- 💡 実務教育資金の一括贈与直系尊属からの教育資金の一括贈与の非課税(措置法第70条の2の2)は、令和8年3月31日までで終了しました(延長されず)。
テーマ 2
暦年課税と相続時精算課税
📍 ラボの場所:テーマからタブ
ハルカ
暦年課税は毎年110万円の基礎控除、相続時精算課税は累計2,500万円の特別控除と20%の税率。2つの方式があるんですね。
先生
精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べるんだ(第21条の9第1項)。相続のときに、贈与した財産を足して精算するよ。
迷いポイント 精算課税を選んで、合わなければ暦年課税に戻せる?
ハルカ
まず精算課税で試して、合わなかったら翌年から暦年課税に戻せば、いいとこ取りができますね。
先生
その作戦は使えないんだ。届出書は撤回できない(第21条の9第6項)。その贈与者からの贈与は、ずっと精算課税になるよ。
ハルカ
一度選ぶと戻れないなら、選ぶ前の比較が大事ですね。
先生
そう。令和6年からは精算課税にも年110万円の基礎控除ができて、その分は相続のときも加算しないんだ。どちらが合うかは、財産と年齢で変わるよ。
💡 そうだったのか!
相続時精算課税は
特別控除2,500万円・税率20%で、相続時に精算します(第21条の12・第21条の13・第21条の15)。
届出書は撤回できません(第21条の9第6項)。
🧩 テーマから ラボの図
- ✔ 要点配偶者の税額軽減配偶者が取得した課税価格が、1億6千万円と法定相続分相当額の多い方までなら、配偶者の相続税はかかりません(相続税法第19条の2第1項)。
- ⚠ 注意未分割の財産は対象外申告期限までに分割されていない財産は軽減の計算に入りません。3年以内に分割すれば対象になります(相続税法第19条の2第2項)。
- 申告が必要軽減を受ける旨と計算の明細を記載し、遺産分割協議書の写しなどを添付した申告書を出す必要があります(相続税法第19条の2第3項)。
- 配偶者居住権配偶者が自宅に住み続ける権利(民法第1028条)は、建物の時価から残りの存続年数に応じた価額を引く方法で評価します(相続税法第23条の2)。
- 💡 実務二次相続配偶者が多く取得すると、配偶者が亡くなった時(二次相続)の相続税が増えることがあります。1次・2次の合計で考えるのが実務です。
テーマ 3
配偶者の税額軽減と二次相続
📍 ラボの場所:テーマからタブ
ハルカ
配偶者は、1億6千万円か法定相続分相当額の多い方までなら、相続税がかからないんですね。
先生
そう(第19条の2第1項)。A家の母も、課税価格5,675万円で税額は0だよ。ただ、分割と申告が要件なんだ。
迷いポイント 配偶者に全部相続させるのが、いちばん得?
ハルカ
A家も母が全部相続すれば、税額は0に近づきます。母の次の相続のことは、そのとき考えればいいですよね。
先生
今回は減っても、母が亡くなったときの二次相続では配偶者の軽減がないんだ。子だけで、基礎控除も小さくなるよ。
ハルカ
一次で節税したつもりが、二次でまとめて払うことになるんですね。
先生
そう。だから実務では、一次と二次の合計で考えるんだ。配偶者居住権のように、住む権利と所有を分ける方法もあるよ(民法第1028条・第23条の2)。
💡 そうだったのか!
配偶者は
1億6千万円か法定相続分相当額の多い方まで税額0(第19条の2第1項)。ただし
二次相続では軽減がないので、
一次と二次の合計で考えます。
⏱ 手続・期限から 1 ラボの図
相続税の申告が必要な家族相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告書を提出して納付します。遺産分割はこの期限までにまとめるのが理想です。
手続・期限 1
期限のカレンダー ── 分割がまとまらないとき
📍 ラボの場所:手続・期限からタブ 1
ハルカ
相続開始から3か月で相続の放棄、4か月で準確定申告、10か月で相続税の申告と納付。期限が三段になっていますね。
先生
よく読めているね。4か月の準確定申告は、亡くなった人の所得税の確定申告で、所得税法第124条にあるんだ。
迷いポイント 10か月以内に遺産分割がまとまらないと、特例は一切使えない?
ハルカ
兄弟でもめて分割が決まらなかったら、配偶者の軽減も自宅の特例も、もう諦めるしかないですよね。
先生
諦めなくていいんだ。未分割のまま法定相続分で申告して(第55条)、分割見込書を出しておけば、申告期限から3年以内に分割すれば使えるよ(第19条の2第2項)。
ハルカ
分割が決まったあとは、どうすればいいですか。
先生
特例は自動では付かないから、分割を知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をして受けるんだ(第32条第1項)。税額が増える人は修正申告だよ(第31条第1項)。
ハルカ
訴訟が長引いて、3年でも分割できなかったらどうなりますか。
先生
訴えの提起などやむを得ない事情があれば、3年を過ぎた日の翌日から2か月以内に承認を申請するんだ。承認されれば、分割できることになった日の翌日から4か月以内の分割まで延ばせるよ(第19条の2第2項ただし書)。
💡 そうだったのか!
分割がまとまらなくても、
未分割で期限内に申告(第55条)し、分割見込書を出せば、
申告期限から3年以内の分割で特例を受けられます(第19条の2第2項)。分割後は
4か月以内の更正の請求で特例を受けます(第32条第1項)。訴訟などやむを得ない事情があれば、
3年経過後2か月以内の承認申請で期間を延ばせます。
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- 手続・期限からタブの「期限のカレンダー」で、「分割がまとまらない」を押す
👀 カレンダーが48か月に広がり、10か月の「未分割で申告+分割見込書(第55条)」と、3年10か月の「申告期限から3年(第19条の2第2項)」が表示されます。
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⏱ 手続・期限から 2 ラボの表
| 時期 | 手続 | 期限 | だれが | 条文 |
|---|
| 相続開始 | 相続の開始(死亡) | 死亡の日 | — | 民法第882条(相続は死亡によって開始) |
|---|
| 3か月 | 相続の放棄・限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(家庭裁判所で伸長できる) | 相続人 | 民法第915条第1項 |
|---|
| 4か月 | 準確定申告(亡くなった人の所得税) | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日まで | 相続人 | 所得税法第124条第1項・第125条第1項 |
|---|
| 10か月 | 相続税の申告書の提出 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 | 財産を取得した人(課税価格の合計が基礎控除を超える場合) | 相続税法第27条第1項 |
|---|
| 10か月 | 相続税の納付 | 申告書の提出期限まで | 納付税額がある人 | 相続税法第33条 |
|---|
| 10か月 | 延納・物納の申請 | 納期限(申告期限)まで | 金銭で一括納付が困難な人 | 相続税法第39条第1項・第42条第1項 |
|---|
| 10か月 | 未分割の場合の申告と分割見込書 | 申告期限まで(申告期限後3年以内の分割見込書を添付) | 遺産分割がまとまっていない相続人 | 相続税法第55条・第19条の2第2項、措置法第69条の4第4項 |
|---|
| 申告後 | 分割による更正の請求 | 分割などの事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内 | 税額が減る相続人 | 相続税法第32条第1項 |
|---|
| 申告後 | 分割による修正申告 | 税額に不足が生じたとき | 税額が増える相続人 | 相続税法第31条第1項 |
|---|
| 申告後 | 特例の適用(3年以内の分割) | 申告期限から3年以内に分割 | 配偶者・小規模宅地等の取得者 | 相続税法第19条の2第2項、措置法第69条の4第4項 |
|---|
| 贈与 | 贈与税の申告・納付 | 贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日 | 贈与を受けた人(基礎控除110万円を超えるなど) | 相続税法第28条第1項・第33条 |
|---|
| 贈与 | 相続時精算課税選択届出書 | 最初の贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日(贈与税の申告期間内) | 精算課税を選ぶ受贈者 | 相続税法第21条の9第2項 |
|---|
| 贈与 | 贈与税の配偶者控除 | 翌年3月15日までに居住し、引き続き居住する見込み | 婚姻期間20年以上の配偶者から居住用不動産などの贈与を受けた人 | 相続税法第21条の6第1項 |
|---|
手続・期限 2
相続の開始から申告後まで ── 手続の一覧
📍 ラボの場所:手続・期限からタブ 一覧
ハルカ
相続開始・3か月・4か月・10か月・申告後・贈与の6つに分けて、手続が並んでいます。
先生
相続税法だけでなく、民法と所得税法の手続も一緒に並べてあるんだ。期限が短いものほど、先に手を打つ必要があるよ。
迷いポイント 相続の放棄は、相続税の申告期限までに決めればよい?
ハルカ
借金が多いかどうかは、財産を全部調べてからでないと分かりません。10か月かけてゆっくり熟成させれば、いい判断になりますよね。
先生
ワインなら熟成もいいけれど、放棄は相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し出るんだ(民法第915条第1項)。調べきれないときは、期間の伸長を申し立てられるよ。
ハルカ
相続税の10か月より、ずっと先に来るんですね。
先生
そう。だから最初の1か月で、財産と借入金の全体をつかむのが実務なんだ。手続の一覧は、その段取り表として使えるよ。
💡 そうだったのか!
期限は
3か月(相続の放棄・民法第915条)→ 4か月(準確定申告・所得税法第124条)→ 10か月(相続税の申告・第27条)の順。放棄の判断のために、
最初の1か月で財産と債務の全体をつかみます。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて相続税法ラボの画面そのものです。各タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。
相続税法ラボを開く ▶📝 相続税法ラボ【基礎編】(5段の流れ・みなし財産・基礎控除・相続税の総額)基礎編を読む ▶ 今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。相続税は誰が取得するかで2割加算や軽減が変わり、財産の評価と特例で課税価格が大きく動く。生前贈与は加算され、期限は3か月・4か月・10か月の順に来るんだ。
ハルカ
前は、相続税は亡くなったあとに計算するだけのもの、と思っていました。今日は、何年も前の贈与から、3年後の分割まで、時間の幅がとても長い税金だと分かりました。
先生
それが分かると、相続を「申告の10か月」ではなく、生前から申告後までの流れで考えるようになるね。
ハルカ
社長の家の相続の相談が来たら、まず3か月の期限と、過去7年分の贈与の記録を確かめます。贈与税の申告書の控えも、捨てないようにお願いします。
先生
いい段取りだね。基礎編から読み返すと、5段の③④と、今日の特例・加算がつながって見えるはずだよ。
参考資料
相続税法(昭和25年法律第73号。e-Gov法令検索、令和8年4月1日施行の版=令和6年法律第8号による改正まで)、租税特別措置法(第69条の4・第70条の2の4・第70条の2の5・第70条の3の2ほか)、民法(第五編 相続)、所得税法(第124条・第125条)、国税庁タックスアンサー(No.4102・4103・4124・4152・4155・4158・4161・4408ほか)、国税庁「相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)」「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(課税割合10.4%)。法令の確認日:2026年10月17日。ラボと記事の設例の人物・家族・金額はすべて架空です(単位:円、令和8年中の相続)。条番号・条見出しは、ラボ本体で e-Gov 法令検索の原文と照合しています(通達・国税通則法を除く)。
シリーズ:基礎編/応用編 / 関連:所得税法ラボ【応用編】(納税者の種類・帳簿との違い・損益通算・青色申告と手続)/年末調整ラボ【基礎編】(178万円・基礎控除・扶養の壁)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。