このラボには、先生と生徒の会話形式の解説記事があります役員給与ラボ②の図をそのまま使って、過大な役員給与・役員退職給与・分掌変更・退職所得の迷いやすい点を会話で読み解きます。30秒でできるラボ実習つき。
要点:過大な役員給与と役員退職給与とは
- 不相当に高額な部分 … 定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3つの形に当たる給与でも、不相当に高額な部分の金額は損金になりません(法人税法第34条第2項)。退職給与(業績連動給与に該当しないもの)は第34条第1項の対象外ですが、不相当に高額な部分は同じ第2項で損金不算入です。
- 実質基準と形式基準 … 役員の職務の内容・法人の収益・使用人給与・同業類似法人の役員給与に照らして相当な額を超える部分(実質基準)と、定款・株主総会で定めた限度額を超える部分(形式基準)の、いずれか多い金額が過大な役員給与です(法人税法施行令第70条第1号)。使用人兼務役員の使用人分の賞与を他の使用人と違う時期に支給した額も加えます(同条第3号)。
- 役員退職給与の相当額 … 業務に従事した期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況に照らして相当な額を超える部分が損金不算入です(法人税法施行令第70条第2号)。退職直前の給与×勤続年数×功績倍率で算定する功績倍率法がよく使われます(法人税基本通達9-2-27の3)。倍率に法定の上限はありません。
- 損金算入の時期 … 株主総会の決議等で額が具体的に確定した日の属する事業年度です。支払った日の属する事業年度に損金経理する扱いもあります(法人税基本通達9-2-28)。確定前に取締役会の内定額を未払計上しても損金になりません(タックスアンサーNo.5208)。
- 分掌変更と受け取る側 … 辞めずに地位が変わる役員への退職金は、実質的に退職したと同様の事情があるときだけ退職給与として扱えます(法人税基本通達9-2-32)。受け取る役員の退職所得は(収入金額-退職所得控除額)×1/2で、役員等の勤続5年以下は2分の1にしません(所得税法第30条)。
このラボでできること
- 5段の流れを1枚でつかむ … ① どの給与か → ② 実質基準 → ③ 形式基準 → ④ 退職・時期 → ⑤ 申告・受給を、全てのタブで同じ図・同じ色で示します。
- 過大な役員給与を計算する … 役員3人までの給与・使用人分・相当な額・限度額(総枠/各人別、使用人分を含むか)を入れると、実質基準・形式基準・第3号の金額と別表四の加算額を示します(法人税法施行令第70条第1号・第3号)。
- 退職給与の相当額を確かめる … 功績倍率法(または1年当たり平均額法)で相当な額を出し、超える部分を示します。使用人兼務役員は役員分と使用人分の合計で判定します(法人税基本通達9-2-30)。
- 損金算入の事業年度を判定する … 退職日・決議日・支払日と経理の仕方から、損金算入の事業年度と別表四(加算・留保/減算・留保)を示します。退職前に決議・支払をした場合は判定しません。
- 分掌変更と退職所得を確かめる … 法人税基本通達9-2-32の例示に当たるか(除かれる人を含む)と、受け取る役員の退職所得の金額(一般・短期・特定役員退職手当等)を示します。
- 設例13本・条文・立場・書類・手続から引く … 施行令第70条の地図と条文ツリー(9-2-21〜9-2-40・所得税法第30条)、役員の立場8つの早見表、別表・議事録・規程・源泉の書類、定時総会から退任までの手続を一覧にしています。
- 国税庁の資料6件を図で読む … 質疑応答事例(過大役員給与の判定基準・清算人の退職給与・一部打切支給)とタックスアンサー(No.5208・No.5203・No.1420)を、要約・結論・図(数値は独自)・根拠で示します。
使い方(3ステップ)
- 基礎タブで考え方をつかむ … 3つのふるいと5段の流れから始め、実質基準・形式基準・多い方+第3号・功績倍率法・損金算入の時期・分掌変更・退職所得の順に読みます。
- 設例で1ステップずつ追う … 設例2で形式基準、設例6で功績倍率法、設例8で損金算入の時期、設例10で分掌変更を追います。
- シミュレーションで数字・日付を変える … 設例の「この設例の数字でシミュレーション ▶」から同じ条件で開き、相当額・限度額・決議日・勤続年数を変えて結果を見ます。
よくあるつまずき
- 総会の限度額の範囲内なら過大にならないと考える … 実質基準で相当な額を超える部分は、限度額の範囲内でも過大です(法人税法施行令第70条第1号イ)。
- 総枠の範囲内なら役員会の配分を超えてもよいと考える … 配分を役員会に一任した場合は、各人別の限度額で個別に判定します(国税庁 質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」)。
- 役員退職慰労金規程どおりなら過大にならないと考える … 規程どおりでも、同業類似法人と比べた相当額を超える部分は損金不算入です(法人税法施行令第70条第2号)。
- 3月に退任した役員の退職金を3月期の損金にする … 損金は額が具体的に確定した日(株主総会の決議等)の事業年度です(法人税基本通達9-2-28)。
- 分掌変更で給与を半分にすれば退職給与になると考える … 例示に当たっても、代表権が残れば例示(1)から、経営上主要な地位を占めていれば(1)〜(3)から除かれます。未払計上だけのものも原則として含まれません(法人税基本通達9-2-32)。
このラボは学習用の簡易判定です。実質基準の「相当と認められる額」や比べる功績倍率は法令に計算式がなく、判断の結果を入力する方式です。倍率などはすべて独自の数値で、「何倍までなら安全」という目安ではありません。分掌変更は例示に当たるかを示すもので、最後は変更後の職務の実態で判断されます。退職所得の税額は計算しません。3つの形(定期同額給与・事前確定届出給与)は役員給与ラボ①【損金算入編】、株式報酬・会社法・会計は③株式報酬・会社法・会計編(準備中)で扱います。実務の判断は、個別の事実関係と最新の法令・国税庁の資料で確認してください。
根拠にした法令・資料
- 法人税法第34条・第36条(令和8年10月1日施行版。e-Gov)
- 法人税法施行令第70条〜第72条の3(令和8年10月1日施行版。e-Gov)
- 法人税基本通達 第9章第2節 第6款〜第8款(9-2-21〜9-2-40)
- 所得税法第30条(令和8年10月1日施行版。e-Gov)
- 国税庁 質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」「解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与」「勤続年数の打切りに伴う退職給与の一部打切支給」、タックスアンサーNo.5208・No.5203・No.1420
法令は2026年10月24日に条文で確認しました(法令確認日:2026年10月24日)。設例の数値はすべて独自で、国税庁資料の数値は画面に出していません。
あわせて読む・調べる
- 会話形式の解説:役員給与ラボ②【基礎編】/【応用編】/設例編(過大な役員給与・退職給与と損金算入時期・分掌変更と退職所得)
- 役員給与ラボ①【損金算入編】 … 3つの形・期中改定・届出
- 法人税法ラボ … 法人税法全体の入口
- タックスアンサーNo.5208 役員の退職金の損金算入時期 … 確定した日の事業年度
- タックスアンサーNo.5203 分掌変更したときの退職金 … 分掌変更・昇格時の退職金
- タックスアンサーNo.1420 退職所得 … 受け取る側の課税
- 別表四・別表五(一)ラボ … 社外流出と留保
- ラボ一覧
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