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役員給与ラボ②【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ実質基準・形式基準・功績倍率法・損金算入時期・退職所得

役員給与ラボ②【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ実質基準・形式基準・功績倍率法・損金算入時期・退職所得

無料の学習ツール「役員給与ラボ②【過大・退職給与編】」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
代表取締役Aと創業者Jの役員給与(独自の設例)
会社同族会社・3月決算(期首 2026年4月1日)
代表取締役A役員報酬 年額3,600万円(月額300万円)
実質基準の相当額Aの職務・同業類似法人などから、相当と認められる額は年額2,400万円とする
総会の限度額取締役の報酬は年額5,000万円以内(定時株主総会の決議)
創業者J勤続20年で退任。退職直前の月額150万円、退職給与8,000万円
はじめに

今日の題材 ── 高すぎる報酬と、退任のときの退職給与

📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、役員給与ラボ①では、3つの形と届出を習いました。②は何の続きですか。
先生
①の5段の流れで「④ 過大・仮装」が残っていたね。今日はそこと、役員が辞めるときの退職給与を見るんだ。題材は、年額3,600万円の代表取締役Aと、退任する創業者Jだよ。
ハルカ
毎月同じ額で払っていれば、もう安心だと思っていました。
先生
形が正しくても、額が高すぎれば別の問題になるんだ。ラボの「基礎」タブを上から順に読んでいこうか。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 基礎 1 ラボの図

3つのふるいをクリック。どの項が、どの給与を、どこまで損金不算入にするかが出ます
第1項 3つの形に当たらない給与定期同額・事前確定届出・業績連動のどれでもない → 全額が損金不算入第2項 不相当に高額な部分3つの形に当たっても、相当な額を超える部分は損金不算入第3項 隠蔽・仮装による給与事実を隠蔽・仮装して経理して支給 → 全額が損金不算入すべて通った給与だけが損金になる
法人税法第34条第2項

このラボの中心。第1項・第3項が適用される給与を除いた給与のうち、不相当に高額な部分を、施行令第70条で定める金額として損金不算入にする。退職給与もここで判定する。

基礎 1

3つの形に当たっても ── 不相当に高額な部分は損金にならない

📍 ラボの場所:基礎タブ 1
ハルカ
3つのふるいが重なっています。第1項が3つの形、第2項が不相当に高額な部分、第3項が隠蔽・仮装。
先生
第1項は①で見た「形」の判定だね。形を通った給与でも、相当な額を超える部分は第2項で損金不算入になるんだ(法人税法第34条第2項)。
迷いポイント 3つの形に当たれば、額がいくらでも損金になる?
ハルカ
①の5段の流れでは、④の「過大・仮装」は②で扱うと言われていました。でも、届出どおりならもう大丈夫だと思っていました。
先生
よく覚えていたね。その④が今日の中心なんだ。形の判定と額の判定は別で、どちらも通って初めて損金になるよ。業績連動給与に該当しない退職給与は、原則として第1項の対象外だけれど、不相当に高額な部分は第2項で損金不算入になるんだ。
ハルカ
関所を全部通ったと思ったら、出口でもう一度、荷物の重さを量られる感じですね。
先生
その量り方を、今日はラボの図で見ていくんだ。隠蔽・仮装による給与だけは、量る前に全額が不算入だよ(第3項)。
💡 そうだったのか!
3つの形に当たっても、不相当に高額な部分は損金不算入(第34条第2項)。退職給与も同じ第2項で判定します。
📗 基礎 2 ラボの図

5つの箱をクリック。代表取締役Aの年額3,600万円の報酬と、退任する創業者Jの退職給与を例に、各段で何を確かめるかを表示します
① どの給与か退職給与か② 実質基準職務・同業他社③ 形式基準総会の限度額④ 退職・時期相当額・時期⑤ 申告・受給別表四・退職所得設例では:代表取締役Aの年額3,600万円の報酬は通常の給与。退任する創業者Jの8,000万円は退職給与。
① どの給与か:退職給与か、毎月の報酬・賞与などの通常の給与かで、使う物差しが変わる

通常の給与は法人税法施行令第70条第1号(実質基準・形式基準)、退職給与は同条第2号で判定する。

分掌変更で支給する「退職給与」は、実質的に退職したと同様の事情がなければ退職給与として扱えない(法人税基本通達9-2-32)。

基礎 2

過大・退職給与の5段の流れ

📍 ラボの場所:基礎タブ 2
ハルカ
① どの給与か、② 実質基準、③ 形式基準、④ 退職・時期、⑤ 申告・受給。①とは箱の名前が違いますね。
先生
このラボの判断は、この5段で見通せるんだ。最初に、毎月の報酬などの通常の給与か、退職給与かを分けるよ。使う物差しが変わるからね。
迷いポイント 退職給与も、毎月の報酬と同じ物差しで高すぎるかを見る?
ハルカ
同じ役員に払うお金なので、同じ基準で比べるのだと思っていました。
先生
通常の給与は施行令第70条第1号、退職給与は同条第2号で判定するんだ。退職給与は、業務に従事した期間や退職の事情を見るよ。分掌変更で払う「退職金」も、まず①で本当に退職給与かを確かめるんだ。
💡 そうだったのか!
判断は① どの給与か → ② 実質基準 → ③ 形式基準 → ④ 退職・時期 → ⑤ 申告・受給。通常の給与と退職給与で、物差し(施行令第70条の号)が変わります。
📗 基礎 3 ラボの図
相当と認められる額職務の内容代表か・常勤か・担当業務法人の収益売上・利益・その推移使用人の給与最上位の使用人の給与など同業類似法人の役員給与同種の事業・規模が類似

法人税法施行令第70条第1号イは「等に照らし」と書き、計算式を定めていません。実務では、同業類似法人の役員給与との比較が重く見られます。

実質基準と形式基準のいずれか多い金額が第1号の過大額です。切り替えて比べてください
役員ごとの給与の年額(左の数字)と、実質基準で相当と認められる額役員A相当額 2,400万3,600万超える 1,200万限度額の総枠と、比べる額の合計合計限度額 5,000万3,600万実質基準(多い方)イ 1,200万/形式基準ロ 0万+第3号0万+損金不算入1,200万

紺=役員分の給与、青緑=使用人分の給与、紫=他の使用人と違う時期の使用人分賞与(第3号)、赤の点線=超える部分、緑の線=実質基準で相当と認められる額。

損金不算入額 12,000,000円 = 第1号 12,000,000円(実質基準が多い)+ 第3号 0円

実質基準(イ):役員ごとに、相当と認められる額を超える部分を出して合計=12,000,000円(法人税法施行令第70条第1号イ)。

形式基準(ロ):比べる額の合計 36,000,000円 と限度額 50,000,000円の差=0円(法人税法施行令第70条第1号ロ)。

基礎 3

実質基準 ── 4つの物差しで「相当な額」を考える

📍 ラボの場所:基礎タブ 3
ハルカ
真ん中の「相当と認められる額」に、職務の内容・法人の収益・使用人の給与・同業類似法人の役員給与の4つが矢印を向けています。
先生
実質基準は、この4つなどに照らして相当な額を超える部分なんだ。下の図では、Aの3,600万円が相当額2,400万円を1,200万円超えているね。
迷いポイント 相当な額は、法令の計算式で出せる?
ハルカ
「相当な額」というくらいなので、どこかに計算式があって、それに当てはめるのだと思っていました。
先生
施行令第70条第1号イは「等に照らし」と書いていて、計算式はないんだ。実務では同業類似法人の役員給与との比較が重く見られるよ。だからラボも、相当額は判断の結果として入力する形なんだ。
ハルカ
計算式がないなんて、答えのないテストみたいです。
先生
答えはあるけれど、資料で説明する形の答えなんだ。業績や職務の変化と報酬の推移を、議事録などで説明できるようにしておこうか。
💡 そうだったのか!
実質基準の相当額に計算式はない。職務・収益・使用人給与・同業類似法人に照らして判断し、超える部分を役員ごとに合計します。
📗 基礎 4 ラボの図

限度額の定め方を切り替えます。比べる額と、超える部分の出し方が変わります
役員ごとの給与の年額(左の数字)と、実質基準で相当と認められる額役員A相当額 2,000万1,800万役員B相当額 1,200万1,200万役員C相当額 600万600万限度額の総枠と、比べる額の合計合計限度額 3,000万3,600万実質基準イ 0万/形式基準(多い方)ロ 600万+第3号0万+損金不算入600万

紺=役員分の給与、青緑=使用人分の給与、紫=他の使用人と違う時期の使用人分賞与(第3号)、赤の点線=超える部分、緑の線=実質基準で相当と認められる額。

損金不算入額 6,000,000円 = 第1号 6,000,000円(形式基準が多い)+ 第3号 0円

実質基準(イ):役員ごとに、相当と認められる額を超える部分を出して合計=0円(法人税法施行令第70条第1号イ)。

形式基準(ロ):比べる額の合計 36,000,000円 と限度額 30,000,000円の差=6,000,000円(法人税法施行令第70条第1号ロ)。

基礎 4

形式基準 ── 定款・総会で決めた限度額と比べる

📍 ラボの場所:基礎タブ 4
ハルカ
役員A・B・Cの3人は、どれも実質基準の相当額の範囲内です。それなのに、合計3,600万円が限度額3,000万円を超えて、600万円が過大になっています。
先生
それが形式基準なんだ。定款や株主総会で決めた限度額を超える部分は、相当な額の範囲内でも過大になるよ(施行令第70条第1号ロ)。
迷いポイント 一人ひとりが相当な額なら、総会の限度額を超えても問題ない?
ハルカ
一人ずつ見て妥当な額なら、合計が限度額を少し超えるくらいは大目に見てもらえると思っていました。
先生
限度額は株主が決めた上限だから、超えた部分は数字で判定されるんだ。期の途中で報酬を上げたときに、限度額の見直しを忘れる会社が多いよ。
ハルカ
超えた600万円は、3人のうち誰の分になるんですか。くじ引きで決めるんでしょうか。
先生
くじ引きはしないよ。総枠で判定するときは、超えた部分を全体として過大にするんだ。各人別の限度額を決めていれば、その人ごとに見るよ。
💡 そうだったのか!
形式基準は総会で決めた限度額との比較。一人ひとりが相当な額でも、合計が限度額を超える部分は過大です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎4 の図の上のボタンで「各人別の限度額」を押す

👀 総枠4,000万円の範囲内なのに、役員Aが各人別の限度額1,800万円を360万円超え、損金不算入額が 3,600,000円と出ます。

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📗 基礎 5 ラボの図

部長兼取締役Bの使用人分の賞与100万円を、他の使用人と違う時期(役員と同じ時期)に払った場合と比べます
役員ごとの給与の年額(左の数字)と、実質基準で相当と認められる額役員A相当額 2,000万1,800万役員B相当額 1,600万1,560万限度額の総枠と、比べる額の合計(使用人分のうち相当な額を除く)合計限度額 3,000万2,860万実質基準イ 0万/形式基準ロ 0万+第3号100万+損金不算入100万

紺=役員分の給与、青緑=使用人分の給与、紫=他の使用人と違う時期の使用人分賞与(第3号)、赤の点線=超える部分、緑の線=実質基準で相当と認められる額。

損金不算入額 1,000,000円 = 第1号 0円(どちらも0)+ 第3号 1,000,000円

実質基準(イ):役員ごとに、相当と認められる額を超える部分を出して合計=0円(法人税法施行令第70条第1号イ)。

形式基準(ロ):比べる額の合計 28,600,000円 と限度額 30,000,000円の差から第3号の金額を控除=0円(法人税法施行令第70条第1号ロ)。

基礎 5

多い方+第3号 ── 過大な役員給与の額

📍 ラボの場所:基礎タブ 5
ハルカ
実質基準は0円、形式基準も0円なのに、損金不算入が100万円あります。部長兼取締役Bの使用人分の賞与ですね。
先生
そう、第3号の金額なんだ。使用人兼務役員の使用人分の賞与を、他の使用人と違う時期に払うと、その額が過大な役員給与になるよ(施行令第70条第3号)。
迷いポイント 実質基準と形式基準は、合計して過大額にする?
ハルカ
2つの物差しで超えた分を、両方とも足すのだと思っていました。
先生
合計ではなく、いずれか多い方なんだ。そこに第3号の金額を加えるよ。実質基準は第3号の金額を除いて判定して、形式基準は超えた部分から第3号を控除するから、二重には数えないんだ。
ハルカ
使用人分の賞与の支給時期は、①の設例13でやりましたよね。あのときの「同じ時期に払う」が、ここにつながるんですね。
先生
ちゃんと覚えていたね。①では「対象外の給与の条件」として見て、②では外れたときの金額として見るんだ。
💡 そうだったのか!
過大額は実質基準と形式基準のいずれか多い方+第3号。二つの基準を合計はしません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「過大な役員給与」で「使用人分賞与の支給時期(第3号)」を読み込む
  2. 役員Bの「うち他の使用人と違う時期に支給した使用人分の賞与」を 0 にする

👀 損金不算入額が 1,000,000円から 0円に変わります。額は同じでも、支給時期だけで結論が変わります。

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📗 基礎 6 ラボの図

退任する代表取締役の退職給与。支給額と比べ方を切り替えます(比べる倍率・平均額は独自の数値)
退職直前の月額報酬150万×勤続年数20年×比べる功績倍率3倍=相当な額9,000万支給額8,000万相当額 9,000万相当額の範囲内 → 支給額の全額 8,000万円が損金算入この支給額を功績倍率に直すと 2.67 倍(=支給額÷(月額×勤続年数))
相当額 90,000,000円の範囲内

功績倍率法:退職の直前に支給した給与の額を基礎に、業務に従事した期間と職責に応じた倍率を乗じる(法人税基本通達9-2-27の3(注))。比べる倍率は同業類似法人の例から求める。

超える部分は、法人税法施行令第70条第2号の過大な退職給与として損金不算入。

基礎 6

役員退職給与の相当額 ── 功績倍率法

📍 ラボの場所:基礎タブ 6
ハルカ
退職直前の月額150万円×勤続20年×功績倍率3で、相当額9,000万円。創業者Jの退職給与8,000万円は範囲内です。
先生
これが功績倍率法なんだ。退職の直前の給与を基礎に、業務に従事した期間と職責に応じた倍率を掛ける方法だよ(法人税基本通達9-2-27の3の注)。
迷いポイント 功績倍率は、通達で何倍までと決まっている?
ハルカ
「功績倍率3」と書いてあるので、3倍までなら安全という決まりがあるのだと思いました。
先生
それが、そうではないのだよ。法令にも通達にも「何倍まで」という数字はないんだ。比べる倍率は同業類似法人の支給状況から求めるもので、このラボの3倍も独自の数値だよ。
ハルカ
「3倍までなら安全」と、手帳にメモするところでした。
先生
そのメモは消しておこうか。もう一つ、功績倍率法による退職給与は業績連動給与に当たらないので、3つの形の判定はいらないんだ(法人税基本通達9-2-27の3)。
💡 そうだったのか!
功績倍率法は退職直前の給与×勤続年数×倍率。倍率に法定の上限はなく、同業類似法人と比べて相当な額かを判定します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「退職給与の相当額」で「相当額を超える」を読み込む
  2. 「比べる功績倍率」を 3 から 4 にする

👀 相当な額が 120,000,000円になり、損金不算入額が 30,000,000円から 0円に変わります。比べる倍率の根拠が結論を左右します。

ラボを開く ▶
📗 基礎 7 ラボの図

退職日・決議日・支払日と経理の仕方を切り替えます。緑の枠が損金算入の事業年度です
4/1〜3/31(2026年4月期首)4/1〜3/31(2027年4月期首)✔ 損金算入の事業年度退職3/20総会で確定6/25支払7/10
損金算入は 2027年4月1日〜2028年3月31日の事業年度

2027年4月期首の年度:株主総会で額が確定し、費用(未払金)に計上 → 額が具体的に確定した日の属する事業年度(法人税基本通達9-2-28本文)。

退職した年度と、損金になる年度が違う点に注意。

基礎 7

損金算入の時期 ── 額が確定した日の事業年度

📍 ラボの場所:基礎タブ 7
ハルカ
3月20日に退任して、6月25日の総会で退職給与を決めて、7月10日に払った場面ですね。緑の枠は、翌事業年度に付いています。
先生
役員退職給与は、株主総会の決議などで額が具体的に確定した日の事業年度の損金なんだ(法人税基本通達9-2-28)。だから、退任した年度ではなく翌事業年度になるよ。
迷いポイント 退職した日の事業年度に損金にする?
ハルカ
3月に辞めたのだから、3月期の費用にするのが自然だと思っていました。
先生
退職した日ではなく、額が確定した日で決まるんだ。逆に、確定する前の期末に取締役会の内定額を未払計上しても、その年度の損金にはならないよ(タックスアンサーNo.5208)。
ハルカ
辞めた日と決めた日で、決算期が分かれてしまうんですね。
先生
そう、3月決算で3月に退任すると、ほとんどこの形になるんだ。支払った年度に損金経理する扱いもあるけれど、それは応用編で見ようか。
💡 そうだったのか!
役員退職給与は額が具体的に確定した日の事業年度の損金。退職した日ではありません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「損金算入時期」で「3月に退任・6月の総会で確定」を読み込む
  2. 「株主総会の決議等(額が確定した日)」を 2027年3月25日にする

👀 損金算入の年度が「2027年4月期首の年度」から「2026年4月期首の年度」に変わります。退職日の後に決議した日で決まります。

ラボを開く ▶
📗 基礎 8 ラボの図

分掌変更の中身を切り替えます。3つの例示の事実と、除かれる場合が分かります
(1)常勤役員が非常勤役員になった✔ 例示の事実に当たる(2)取締役が監査役になった— 当たらない(3)給与が激減(おおむね50%以上の減少)した✔ 例示の事実に当たる変更前 100万変更後 40万60%減50%の線通達の例示に該当退職給与として認められるかは、変更後の職務の実態などで確認する
通達の例示に該当(退職給与として認められるかは実態を確認)

法人税基本通達9-2-32は「例えば」として3つの事実を挙げる。どれかに当たっても、その後も経営上主要な地位を占めていれば退職給与として扱えない。

3つのどれにも当たらなくても、地位・職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情があれば認められる余地がある(事実で判断)。

基礎 8

分掌変更等の退職給与 ── 実質的に退職したと同様か

📍 ラボの場所:基礎タブ 8
ハルカ
常勤から非常勤になって、給与が月100万円から40万円に減った場面です。(1)と(3)に緑のチェックが付いて、「通達の例示に該当」と出ています。
先生
役員を辞めずに地位が変わるときの「退職金」は、地位や職務が激変して、実質的に退職したと同様の事情があるときだけ、退職給与として扱えるんだ(法人税基本通達9-2-32)。
迷いポイント 給与を半分にすれば、分掌変更の退職金は必ず退職給与になる?
ハルカ
50%以上減らせば条件を満たすので、退職給与として認められると思いました。
先生
3つの事実は「例えば」の例示なんだ。非常勤になっても代表権が残れば例示(1)から除かれるし、経営上主要な地位を占めていれば、どの例示からも除かれるよ。最後は、変更後の実際の職務で判断されるんだ。
ハルカ
肩書と給与を変えても、毎日会社の大事なことを決めていたら、辞めたことにならないんですね。
先生
そう、だから取締役会への出席や決裁の範囲を記録しておくんだ。未払金に計上しただけのものも、原則として含まれないよ。
💡 そうだったのか!
分掌変更の退職金は、実質的に退職したと同様の事情があるときだけ退職給与。給与のおおむね50%減などは例示で、実態で判断します。
📄 国税庁 タックスアンサーNo.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金国税庁で読む ▶
📗 基礎 9 ラボの図

受け取る側の退職所得です。勤続年数と役員の期間で、2分の1にするかどうかが変わります
収入金額8,000万控除後灰色=退職所得控除 1,150万残り 6,850万一般退職手当等:残りの2分の1退職所得3,425万円勤続年数 25年(1年未満の端数は切り上げ)・うち役員等 25年
退職所得の金額 34,250,000円

退職所得控除額:勤続20年以下は40万円×年数(80万円に満たなければ80万円)、20年超は800万円+70万円×(年数-20年)(所得税法第30条第3項・第6項)。

この控除額 11,500,000円。

基礎 9

受け取る役員の退職所得 ── 控除して2分の1

📍 ラボの場所:基礎タブ 9
ハルカ
受け取る側の図ですね。収入金額8,000万円から退職所得控除1,150万円を引いて、残りの2分の1で3,425万円。
先生
勤続25年だから、控除は800万円+70万円×5年で1,150万円なんだ(所得税法第30条第3項)。法人で損金になるかどうかと、受け取る側の計算は別だよ。
ハルカ
所得税法ラボで、収入を10種類の所得に分けると習いました。退職金は、その中の退職所得ですね。
先生
そう、よく結びつけたね。長年の勤務の対価を一度に受け取るから、控除と2分の1で負担を軽くしているんだ。
迷いポイント 役員の退職金も、いつでも2分の1にできる?
ハルカ
退職所得なら、誰でも残りの2分の1になると思っていました。
先生
役員等としての勤続年数が5年以下の人は、2分の1にしないんだ(所得税法第30条第2項・第5項)。特定役員退職手当等というよ。短い在任で大きな退職金を払う形を抑えるためなんだ。
💡 そうだったのか!
退職所得は(収入金額-退職所得控除額)×1/2。ただし役員等の勤続5年以下は2分の1にしません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーション「退職所得」で「役員4年3か月(特定役員)」を読み込む
  2. 「勤続期間(年)」と「うち役員等の期間(年)」を 5 にする

👀 勤続が6年(端数切り上げ)になり、退職所得の金額が 18,000,000円から 8,800,000円に変わります。控除は 2,400,000円になり、2分の1も効きます。

ラボを開く ▶
📗 基礎 10 ラボの図

どの差かで、処分(社外流出か留保か)が変わります
区分項目(例)総額①留保②社外流出③
加算役員給与の損金不算入額12,000,000012,000,000(その他)
過大な部分は社外流出

役員へ渡ったお金なので留保ではなく社外流出(その他)。別表五(一)には出ない。項目名は様式の「役員給与の損金不算入額」の欄を使う。

基礎 10

申告書のどこに書くか ── 過大は社外流出、時期の差は留保

📍 ラボの場所:基礎タブ 10
ハルカ
過大な役員給与1,200万円は、別表四で加算して社外流出です。留保は0。
先生
役員へ渡ったお金だから、翌期以後に戻らない社外流出なんだ。過大な退職給与も同じだよ。①で見た損金不算入の役員給与と、書き方は変わらないんだ。
迷いポイント 過大な退職給与も、いつか損金になるので留保にする?
ハルカ
退職給与は時期の問題が多いので、過大な部分も、いつか戻る留保だと思いました。
先生
過大な部分は戻らないので社外流出なんだ。留保になるのは時期の差だけだよ。確定する前の年度に未払計上した退職金は、加算・留保して、確定した年度に減算・留保で戻すんだ。
ハルカ
同じ退職金なのに、社外流出と留保で行き先が分かれるんですね。
先生
「額が高すぎる」は戻らない差で、「時期がずれる」は戻る差なんだ。この区別ができれば、別表四の処分欄で迷わないよ。
💡 そうだったのか!
過大な部分は加算・社外流出、時期の差(確定前の未払計上)は加算・留保 → 翌期に減算。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて役員給与ラボ②【過大・退職給与編】の画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

役員給与ラボ②【過大・退職給与編】を開く ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
3つの形に当たれば額がいくらでも損金?不相当に高額な部分は損金不算入(第34条第2項)基礎1
退職給与も毎月の報酬と同じ物差し?通常の給与は施行令第70条第1号、退職給与は第2号基礎2
相当な額は法令の計算式で出せる?計算式はない。職務・収益・使用人給与・同業類似法人に照らす基礎3
一人ひとりが相当なら限度額を超えてもよい?総会の限度額を超える部分は過大(第1号ロ)基礎4
実質基準と形式基準は合計する?いずれか多い方+第3号(二重には数えない)基礎5
功績倍率は何倍までと決まっている?決まっていない。同業類似法人と比べて判断基礎6
退職した日の事業年度に損金にする?額が具体的に確定した日の事業年度(基通9-2-28)基礎7
給与を半分にすれば分掌変更の退職金は必ず退職給与?例示にすぎない。実質的に退職したと同様かを実態で判断基礎8
役員の退職金もいつでも2分の1?役員等の勤続5年以下は2分の1にしない基礎9
過大な退職給与は留保?過大は社外流出。留保は時期の差(確定前の未払計上)だけ基礎10
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。役員給与は、形が正しくても相当な額を超える部分は損金にならない。退職給与は額が確定した日の事業年度で、受け取る側には退職所得の計算があるんだ。
ハルカ
①では、決めた日と理由を見ることを覚えました。今日は、その額を「何と比べて説明できるか」まで見る必要があると分かりました。
先生
「比べて説明する」が見えたなら大きいね。相当な額は計算式で決まらないから、比べる資料をそろえることが、そのまま実務の答えになるんだ。
ハルカ
では、議事録の日付に丸を付けた横に、「何と比べたか」の欄も作ります。私の手帳、だんだん監査調書みたいになってきました。
先生
頼もしい手帳だね。次の応用編では、使用人分を含めない限度額、各人別の配分、分掌変更の落とし穴などを見ていこうか。

参考資料

法人税法第34条・第36条、法人税法施行令第70条〜第72条の3(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)、法人税基本通達第9章第2節第6款〜第8款(9-2-21〜9-2-40)、所得税法第30条(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)。国税庁 質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」「解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与」「勤続年数の打切りに伴う退職給与の一部打切支給」(令和7年8月1日現在)、タックスアンサーNo.5208・No.5203・No.1420(令和8年4月1日現在)。確認日:2026年10月24日。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、功績倍率などは「何倍までなら安全」という目安ではありません。3つの形(定期同額給与・事前確定届出給与)は役員給与ラボ①【損金算入編】、株式報酬と会計処理は③株式報酬・会社法・会計編(準備中)で扱います。
このシリーズの記事:役員給与ラボ②【応用編】/役員給与ラボ②【設例・過大な役員給与編】/役員給与ラボ②【設例・退職給与と損金算入時期編】/役員給与ラボ②【設例・分掌変更と退職所得編】

📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。