役員給与ラボ②【設例・分掌変更と退職所得編】|先生と一緒に図で学ぶ設例10〜13 非常勤・代表権・退職所得控除・特定役員
無料の学習ツール「役員給与ラボ②【過大・退職給与編】」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、分掌変更と受け取る側の退職所得の設例(設例10〜13)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・分掌変更と退職所得編で追う4つの設例(独自の数値)
| 設例10 | 代表取締役F。息子に社長を譲り、代表権のない非常勤取締役に。月額100万円→40万円。退職給与3,000万円を支給 |
| 設例11 | 代表取締役G。非常勤になったが代表取締役のまま。月額100万円→60万円。退職給与3,000万円 |
| 設例12 | 代表取締役I。勤続25年(すべて役員)。退職手当等8,000万円 |
| 設例13 | 外部から招いた取締役H。在任4年3か月。退職手当等2,000万円 |
はじめに
今日の題材 ── 辞めずに地位が変わる人と、受け取る側
📍 ラボの場所:設例タブ 設例10〜13
ハルカ
先生、設例編の最後ですね。前半は分掌変更、後半は受け取る役員の退職所得ですか。
先生
そう、前半は会社の側で「退職給与として扱えるか」、後半は役員の側で「退職所得がいくらか」を見るんだ。同じ退職金を、両側から見る回だよ。
ハルカ
退職金を、払う人ともらう人の両方から見るんですね。
先生
法人税と所得税は別に判定するから、両方見て初めて全体が分かるんだ。設例タブを開いて、設例10から読んでいこうか。
📘 設例10 ラボの画面
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
| 例示 | 事実 | 除かれる事情 | 結果 |
|---|
| (1) 常勤役員が非常勤役員になった | あり | — | ✔ 当たる |
| (2) 取締役が監査役になった | なし | — | — |
| (3) 給与が激減(おおむね50%以上の減少)した | あり | — | ✔ 当たる |
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
通達の例示に該当する。退職給与として認められるかは、変更後の職務の実態などを確認したうえで判断する。認められれば、次に相当な額かを判定する(法人税法施行令第70条第2号)。
例示は「例えば」であり、最後は地位・職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあるかで判断する(法人税基本通達9-2-32)。
設例10
分掌変更:常勤から非常勤へ
📍 ラボの場所:設例タブ 設例10 ステップ①・②
ハルカ
代表取締役Fは、息子に社長を譲って、代表権のない非常勤取締役になりました。給与は60%減って、(1)と(3)の例示に当たります。
先生
常勤役員が非常勤役員になった、給与が激減した、の2つだね(法人税基本通達9-2-32)。代表権もなく、経営上主要な地位も残らない前提なので、除かれる事情もないよ。
迷いポイント 例示に当たれば、それで退職給与として認められる?
ハルカ
2つも当たったので、これで確定だと思っていました。
先生
例示は「例えば」なんだ。ステップ②のとおり、退職給与として認められるかは、変更後の職務の実態などを確かめて判断するよ。社長を譲った後も、実際には重要な判断をしていたら認められないんだ。
ハルカ
社長室の机はそのまま、というのは危ないんですね。
先生
机の場所より、決裁と会議の中身だね。取締役会への出席や決裁の範囲が変わったことを、記録に残しておこうか。
💡 そうだったのか!
例示に当たっても、
変更後の職務の実態で、実質的に退職したと同様かを確かめます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「分掌変更」で「常勤→非常勤・給与60%減」を読み込む
- 「変更後も実質的に経営上主要な地位を占める」を「はい」にする
👀 判定が「通達の例示に該当」から「例示に当たらない」に変わります。主要な地位が残ると、(1)も(3)も除かれます。「変更後も代表権がある」だけを「はい」にすると、除かれるのは(1)だけで、(3)には実態を確かめる注意が出ます。
ラボを開く ▶📄 国税庁 タックスアンサーNo.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金国税庁で読む ▶
📘 設例11 ラボの画面
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
| 例示 | 事実 | 除かれる事情 | 結果 |
|---|
| (1) 常勤役員が非常勤役員になった | あり | 変更後も代表権がある | — |
| (2) 取締役が監査役になった | なし | — | — |
| (3) 給与が激減(おおむね50%以上の減少)した | なし | — | — |
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
例示の事実に当たらない → 実質的に退職したと同様の事情がなければ退職給与として扱えない。臨時的な給与として、届出がなければ損金不算入(法人税法第34条第1項)。
例示は「例えば」であり、最後は地位・職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあるかで判断する(法人税基本通達9-2-32)。
設例11
分掌変更:代表権を残したまま
📍 ラボの場所:設例タブ 設例11 ステップ①・②
ハルカ
代表取締役Gは非常勤になったけれど、代表取締役のままです。給与は40%減。(1)は代表権があるので除かれて、(3)は50%に届きません。
先生
常勤から非常勤になっても、代表権のある人は例示(1)から除かれるんだ(法人税基本通達9-2-32(1))。どの例示にも当たらないね。
迷いポイント 非常勤になったのだから、代表権が残っていても退職と同じ?
ハルカ
毎日は会社に来なくなるので、ほとんど退職したのと同じだと思っていました。
先生
代表権があれば、会社を代表して契約を結べるし、経営への影響が残るんだ。だから実質的に退職したと同様とは言いにくいよ。退職給与として扱えなければ、臨時的な給与として、届出がない限り損金不算入になるんだ(法人税法第34条第1項)。
ハルカ
3,000万円が、退職給与から一気に「届出のない賞与」になってしまうんですね。
先生
そう、扱いが大きく変わるんだ。分掌変更の退職金を払う前に、代表権と給与の減り方を確かめようか。
💡 そうだったのか!
代表権が残ると、非常勤になっても
例示(1)から除かれる。この設例は給与の減少も50%に届かず、どの例示にも当たりません。退職給与として扱えなければ、届出のない臨時の給与として損金不算入です。
📘 設例12 ラボの画面
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
勤続年数 25年(端数切り上げ)→ 800万円 + 70万円 × (25年 - 20年) = 11,500,000円
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
一般退職手当等:(80,000,000 - 11,500,000)× 1/2 = 34,250,000円
退職所得は他の所得と分けて課税する(分離課税。タックスアンサーNo.1420)。税額は、このラボでは計算しない。
設例12
受け取る側:勤続25年の退職所得
📍 ラボの場所:設例タブ 設例12 ステップ①・②
ハルカ
代表取締役Iは、勤続25年で8,000万円。退職所得控除額は800万円+70万円×5年で1,150万円、退職所得の金額は3,425万円です。
先生
一般退職手当等だから、控除後の残りの2分の1なんだ(所得税法第30条第2項・第3項)。他の所得と分けて課税するよ。
迷いポイント 勤続年数は、在任した年数をそのまま使う?
ハルカ
25年ちょうどならそのままですが、24年3か月なら24年で数えるのだと思っていました。
先生
1年未満の端数は1年に切り上げるんだ(タックスアンサーNo.1420)。24年3か月なら25年として控除額を計算するよ。
ハルカ
3か月だけでも1年おまけ。退職所得控除は、ずいぶん気前がいいんですね。
先生
端数の切り上げは、受け取る側に有利な数え方なんだ。それから、「退職所得の受給に関する申告書」を出してもらわないと、20.42%で源泉徴収されるので気をつけようか。
💡 そうだったのか!
退職所得控除額は、勤続年数の
1年未満の端数を切り上げて計算。20年を超える部分は1年70万円です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「退職所得」で「勤続25年の社長」を読み込む
- 「勤続期間(年)」と「うち役員等の期間(年)」を 15 にする
👀 退職所得控除額が 6,000,000円になり、退職所得の金額が 34,250,000円から 37,000,000円に変わります。
ラボを開く ▶📄 国税庁 タックスアンサーNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)国税庁で読む ▶
📘 設例13 ラボの画面
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
勤続年数 5年(端数切り上げ)→ 40万円 × 5年 = 2,000,000円
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
特定役員退職手当等:20,000,000 - 2,000,000(2分の1にしない) = 18,000,000円
退職所得は他の所得と分けて課税する(分離課税。タックスアンサーNo.1420)。税額は、このラボでは計算しない。
設例13
受け取る側:役員4年3か月で退任
📍 ラボの場所:設例タブ 設例13 ステップ①・②
ハルカ
外部から招いた取締役Hは、在任4年3か月で2,000万円。勤続は5年に切り上げて控除200万円。退職所得の金額は、2分の1にしないで1,800万円です。
先生
役員等としての勤続年数が5年以下だから、特定役員退職手当等になるんだ(所得税法第30条第5項)。2分の1の計算はしないよ。
迷いポイント 勤続を5年に切り上げたなら、「5年以下」なので2分の1にする?
ハルカ
切り上げて5年なら、ちょうど5年なので一般の退職手当等の側に入ると思っていました。
先生
「5年以下」なので、5年ちょうどは特定役員退職手当等の側なんだ。役員等としての勤続が6年以上になって初めて、2分の1が効くよ。
ハルカ
同じ2,000万円でも、在任があと1年長ければ、残りの2分の1で済んだんですね。
先生
そう、所得の金額が大きく変わるんだ。法人の側の相当額の判定とは別の話だから、両方を確かめようか。
💡 そうだったのか!
役員等の勤続
5年以下は特定役員退職手当等で、
2分の1にしない。5年ちょうども含みます。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて役員給与ラボ②【過大・退職給与編】の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
役員給与ラボ②【過大・退職給与編】を開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。分掌変更の退職金は、例示と実態の両方で退職給与として扱えるかを見る。受け取る側では、勤続年数と役員等の期間で退職所得の計算が変わるんだ。
ハルカ
基礎編から5本を通して、役員給与は「形」の次に「額」と「時期」、そして受け取る側まで見るものだと分かりました。①の6本と合わせて、5段の流れが二つとも頭に入りました。
先生
二つの5段が入ったなら、役員給与の大きな地図は持てたよ。残るのは、株式で払う報酬と、会社法・会計の話なんだ。
ハルカ
では③が公開されるまでに、①と②の会話記事を、設例のステップだけでも読み返しておきます。
先生
いい準備だね。基礎編から読み返すと、施行令第70条の地図の見え方がきっと変わるよ。③株式報酬・会社法・会計編で、また会おうか。
参考資料
法人税法第34条・第36条、法人税法施行令第70条〜第72条の3(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)、法人税基本通達第9章第2節第6款〜第8款(9-2-21〜9-2-40)、所得税法第30条(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)。国税庁 質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」「解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与」「勤続年数の打切りに伴う退職給与の一部打切支給」(令和7年8月1日現在)、タックスアンサーNo.5208・No.5203・No.1420(令和8年4月1日現在)。確認日:2026年10月24日。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、功績倍率などは「何倍までなら安全」という目安ではありません。3つの形(定期同額給与・事前確定届出給与)は役員給与ラボ①【損金算入編】、株式報酬と会計処理は③株式報酬・会社法・会計編(準備中)で扱います。
このシリーズの記事:役員給与ラボ②【基礎編】/役員給与ラボ②【応用編】/役員給与ラボ②【設例・過大な役員給与編】/役員給与ラボ②【設例・退職給与と損金算入時期編】
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この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。