役員給与ラボ②【設例・退職給与と損金算入時期編】|先生と一緒に図で学ぶ設例6〜9 功績倍率法・兼務役員・確定日・未払計上
無料の学習ツール「役員給与ラボ②【過大・退職給与編】」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、役員退職給与の相当額と損金算入時期の設例(設例6〜9)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・退職給与と損金算入時期編で追う4つの設例(独自の数値)
| 設例6 | 創業者の代表取締役J。退職直前の月額150万円・勤続20年・比べる功績倍率3。退職給与1億2,000万円 |
| 設例7 | 取締役工場長D(使用人兼務役員)。月額100万円・勤続15年。役員分3,500万円+使用人分1,500万円 |
| 設例8 | 代表取締役E。3月20日に退任、6月25日の定時総会で5,000万円を決議、7月10日に支払 |
| 設例9 | 設例8と同じ。ただし3月25日に取締役会の内定額を未払金に計上 |
はじめに
今日の題材 ── 退職給与は「いくら」と「いつ」
📍 ラボの場所:設例タブ 設例6〜9
ハルカ
先生、今日は退職給与の設例ですね。設例6と7は「いくら」、設例8と9は「いつ」の話ですか。
先生
そのとおりだよ。退職給与は、相当な額を超えていないかと、どの事業年度の損金になるかを、別々に確かめるんだ。
ハルカ
金額と時期の二本立て。退職給与は欲張りですね。
先生
欲張りというより、確かめる順番が決まっているんだ。設例タブを開いて、設例6から読んでいこうか。
📘 設例6 ラボの画面
🧾 別表四で確認
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | 役員給与の損金不算入額 | 30,000,000 | 0 | 30,000,000(その他) |
過大な退職給与は社外流出。翌期以後に戻らない。
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
退職直前の月額 1,500,000円 × 勤続 20年 × 功績倍率 3 = 90,000,000円
功績倍率法は、退職直前の給与を基礎に、業務に従事した期間と職責に応じた倍率を乗じる方法(法人税基本通達9-2-27の3(注))。
比べる倍率・平均額は、業務に従事した期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況から求める(法人税法施行令第70条第2号)。
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
支給額 120,000,000円は相当な額を 30,000,000円超える → 超える部分が損金不算入
設例6
功績倍率法:相当額を超える退職給与
📍 ラボの場所:設例タブ 設例6 ステップ①〜③
ハルカ
月額150万円×20年×3で、相当額は9,000万円。支給した1億2,000万円は3,000万円超えていて、別表四で加算・社外流出です。
先生
支給額を功績倍率に直すと4倍になるね。同業類似法人の例から求めた3倍と比べて、超える部分が過大な退職給与なんだ(施行令第70条第2号)。
迷いポイント 会社の役員退職慰労金規程どおりに払えば、過大にはならない?
ハルカ
うちの規程では社長の倍率が4倍なので、規程どおりなら問題ないと思っていました。
先生
規程は会社が決めたもので、税務の相当額は同業類似法人と比べて判定するんだ。規程どおりでも、相当額を超える部分は損金不算入になるよ。
ハルカ
自分で作った規程なのに、自分を守ってくれないんですね。
先生
規程は支給の手続をそろえるもので、相当額を決めるものではないんだ。倍率の根拠になる資料を、規程とは別にそろえておこうか。
💡 そうだったのか!
規程どおりでも、
同業類似法人と比べた相当額を超える部分は損金不算入。功績倍率に法定の上限はありません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「退職給与の相当額」で「相当額を超える」を読み込む
- 「役員分として支給する額」を 90,000,000円にする
👀 損金不算入額が 30,000,000円から 0円に変わり、功績倍率に直すと 3倍になります。
ラボを開く ▶
📘 設例7 ラボの画面
🧾 別表四で確認
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | 役員給与の損金不算入額 | 5,000,000 | 0 | 5,000,000(その他) |
過大な退職給与は社外流出。翌期以後に戻らない。
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
支給額 50,000,000円は相当な額を 5,000,000円超える → 超える部分が損金不算入
使用人兼務役員の退職給与は、役員分と使用人分の合計で判定する(法人税基本通達9-2-30)。
支給額を功績倍率に直すと 3.33 倍。
設例7
使用人兼務役員の退職給与
📍 ラボの場所:設例タブ 設例7 ステップ②・③
ハルカ
取締役工場長Dは、役員分3,500万円と使用人分1,500万円に分けて退職給与をもらいました。合計5,000万円が、相当額4,500万円を500万円超えています。
先生
使用人兼務役員の退職給与は、役員分と使用人分に区分して払っても、その合計額で不相当に高額かを判定するんだ(法人税基本通達9-2-30)。
迷いポイント 使用人分は使用人の退職給与だから、役員分だけで判定すればよい?
ハルカ
役員分の3,500万円は相当額4,500万円の範囲内なので、使用人分を分けた時点で問題はないと思っていました。
先生
区分しても合計で見るんだ。分け方しだいで過大を避けられたら、物差しの意味がなくなってしまうよね。企業年金などからの給付がある場合も、勘案して判定するよ(法人税基本通達9-2-31)。
ハルカ
財布を2つに分けても、中身の合計は同じでした。
先生
そう、合計で数えるのが原則なんだ。比べる功績倍率の資料も、使用人分を含めた形で用意しようか。
💡 そうだったのか!
使用人兼務役員の退職給与は、役員分と使用人分の
合計で相当額と比べます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「退職給与の相当額」で「使用人兼務役員(合計で判定)」を読み込む
- 「使用人分として支給する額」を 10,000,000円にする
👀 合計が 45,000,000円になり、損金不算入額が 5,000,000円から 0円に変わります。
ラボを開く ▶
📘 設例8 ラボの画面
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
額が具体的に確定した日=株主総会の決議等の日 2027年6月25日。その日は 2027年4月1日〜2028年3月31日の事業年度に属する。
退職した日(2027年3月20日)は前の事業年度だが、損金は額が確定した年度になる。
設例8
3月に退任・6月の総会で決議
📍 ラボの場所:設例タブ 設例8 ステップ①・②
ハルカ
代表取締役Eは3月20日に退任して、退職給与は6月25日の定時総会で決議しました。ステップ①で、額が具体的に確定した日は6月25日です。
先生
だから損金は、6月25日が属する2027年4月期首の事業年度なんだ(法人税基本通達9-2-28)。退任した2026年4月期首の年度ではないよ。
迷いポイント 退任した年度に、退職給与を見込みで計上しておけば損金になる?
ハルカ
退任したのは3月なので、3月期に見込み額を計上すれば、その年度の損金になると思っていました。
先生
額が確定する前の見込み額は損金にならないんだ。損金になるのは、総会の決議などで額が具体的に確定した日の事業年度だよ。
ハルカ
辞めたのは3月なのに、退職給与だけ新年度に引っ越していくんですね。
先生
引っ越し先は、額が確定した日の年度なんだ。源泉徴収は、7月10日の支払の時に行うよ。
💡 そうだったのか!
3月に退任して6月の総会で決議すると、損金は
翌事業年度。額が確定した日で決まります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「損金算入時期」で「3月に退任・6月の総会で確定」を読み込む
- 「株主総会の決議等(額が確定した日)」を 2027年3月25日にする
👀 損金算入の年度が「2027年4月期首の年度」から「2026年4月期首の年度」に変わります。退任の後、同じ年度のうちに決議すれば、その年度の損金です。
ラボを開く ▶📄 国税庁 タックスアンサーNo.5208 役員の退職金の損金算入時期国税庁で読む ▶
📘 設例9 ラボの画面
① どの給与か② 実質基準③ 形式基準④ 退職・時期⑤ 申告・受給
| 事業年度 | 出来事 | 損金算入 | 別表四 |
|---|
| 2026年4月期首の年度 | 取締役会の内定額を未払金に計上(費用) | 0 | 加算・留保 50,000,000 |
| 2027年4月期首の年度 | 株主総会で額が確定 | 50,000,000 | 減算・留保 50,000,000 |
額が確定する前の年度なので損金にならない。別表四で加算(留保)。
確定した日の属する事業年度の損金。会計の費用は前期に計上済みなので、別表四で減算(留保)。
設例9
取締役会の内定額を期末に未払計上
📍 ラボの場所:設例タブ 設例9 ステップ②
ハルカ
3月25日に取締役会で内定した5,000万円を、期末に未払金に計上しました。2026年4月期首の年度は加算・留保5,000万円、翌年度は減算・留保5,000万円です。
先生
額が確定する前の年度に内定額を未払計上しても、その年度の損金にはならないんだ(タックスアンサーNo.5208)。会計では費用に入っているから、別表四で加算して留保するよ。
迷いポイント 取締役会で決めた額なら、確定した額として扱える?
ハルカ
取締役会で金額まで決めたので、それで額が確定したと思いました。
先生
退職給与の額を決めるのは株主総会で、取締役会の内定はその前の段階なんだ。総会で決議した6月25日の年度に、減算・留保で戻して損金にするよ。
ハルカ
別表四・別表五(一)ラボの賞与引当金と同じですね。加算・留保したものが別表五(一)に残って、後の年度に減算で戻る形です。
先生
よく結びつけたね。前期に加算・留保した5,000万円が、別表五(一)に残って、確定した年度に減算で消えるんだ。過大な部分の社外流出とは、ここが違うよ。
💡 そうだったのか!
確定前の内定額の未払計上は
加算・留保、確定した年度に
減算・留保で戻します。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて役員給与ラボ②【過大・退職給与編】の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
役員給与ラボ②【過大・退職給与編】を開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。退職給与は、同業類似法人と比べた相当額で「いくら」を、額が確定した日で「いつ」を判定する。規程や取締役会の内定だけでは、どちらも決まらないんだ。
ハルカ
前は、規程があれば金額は大丈夫、辞めた年度の費用にすればよい、と二つとも思い込んでいました。今日は、二つとも外の物差しで確かめるものだと分かりました。
先生
外の物差しで確かめる、はとても良い言い方だね。退職給与は金額が大きいから、どちらの物差しも資料で残しておこうか。
ハルカ
退職給与が新年度に引っ越すなら、引っ越し先の住所も議事録の日付で決まるんですね。
先生
住所は総会の決議の日だね。次の設例・分掌変更と退職所得編では、辞めずに地位が変わる役員と、受け取る側の退職所得を設例10〜13で見ていこうか。
参考資料
法人税法第34条・第36条、法人税法施行令第70条〜第72条の3(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)、法人税基本通達第9章第2節第6款〜第8款(9-2-21〜9-2-40)、所得税法第30条(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)。国税庁 質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」「解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与」「勤続年数の打切りに伴う退職給与の一部打切支給」(令和7年8月1日現在)、タックスアンサーNo.5208・No.5203・No.1420(令和8年4月1日現在)。確認日:2026年10月24日。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、功績倍率などは「何倍までなら安全」という目安ではありません。3つの形(定期同額給与・事前確定届出給与)は役員給与ラボ①【損金算入編】、株式報酬と会計処理は③株式報酬・会社法・会計編(準備中)で扱います。
このシリーズの記事:役員給与ラボ②【基礎編】/役員給与ラボ②【応用編】/役員給与ラボ②【設例・過大な役員給与編】/役員給与ラボ②【設例・分掌変更と退職所得編】
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この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。