役員給与ラボ②【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ各人別の限度額・使用人分・分掌変更の落とし穴・隠蔽仮装
無料の学習ツール「役員給与ラボ②【過大・退職給与編】」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は基礎編で扱っています。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
必ずそうなる選択の余地がない処理 「できる」扱い選べる処理 要件を満たす場合の例外要件に当たると原則と違う扱いになる処理 認められない否定されている処理
① 過大な役員給与(法人税法第34条第2項・施行令第70条第1号・第3号)
| 論点 | 原則 | 認められる扱い・例外 | 根拠 |
|---|
| 過大額の出し方 | 実質基準と形式基準のいずれか多い金額+第3号の金額 | 必ずそうなる (選択の余地はない) | 法人税法施行令第70条 |
| 給与の額の範囲 | 役員報酬に、使用人兼務役員の使用人分の給料・手当等を含める | 必ずそうなる (含めない扱いはない) | 法人税基本通達9-2-21 |
| 限度額に使用人分を含めない法人 | 形式基準では、使用人分のうち相当な額を除いて限度額と比べる | 要件を満たす場合の例外 定款・総会で「含めない」と定め又は決議していること | 法人税法施行令第70条第1号ロ・法人税基本通達9-2-22・9-2-23 |
| 総枠+各人別の配分 | 総会で総枠、役員会で各人別の限度額を決めたら各人別で判定 | 認められない 総枠の範囲内だから過大でない | 質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」 |
| 使用人分の賞与の支給時期 | 他の使用人と違う時期に支給した使用人分賞与は全額が過大 | 認められない 未払計上して役員の支給時期に払う | 法人税法施行令第70条第3号・法人税基本通達9-2-26 |
| 海外在勤役員の滞在手当 | 限度額に含めていない滞在手当のうち相当な額は給与の額に含めない | 要件を満たす場合の例外 限度額に含めていないこと | 法人税基本通達9-2-25 |
② 役員退職給与(施行令第70条第2号・法人税基本通達第9章第2節第7款)
| 論点 | 原則 | 認められる扱い・例外 | 根拠 |
|---|
| 相当な額 | 業務に従事した期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況に照らして判定 | 必ずそうなる 功績倍率法は業績連動給与に当たらない(第34条第1項の対象外) | 法人税法施行令第70条第2号・法人税基本通達9-2-27の3 |
| 損金算入の時期 | 株主総会の決議等で額が具体的に確定した日の属する事業年度 | 「できる」扱い 支払った年度に損金経理すれば、その年度 | 法人税基本通達9-2-28 |
| 確定前の未払計上 | 取締役会の内定額を未払金に計上しても損金にならない | 認められない (確定した年度で損金) | タックスアンサーNo.5208 |
| 退職年金 | 支給すべき時の損金。総額の未払計上は損金にならない | 認められない (一括計上の扱いはない) | 法人税基本通達9-2-29 |
| 使用人兼務役員 | 役員分と使用人分の合計で不相当に高額かを判定 | 認められない 区分して支給しても別々に判定 | 法人税基本通達9-2-30 |
| 分掌変更 | 実質的に退職したと同様の事情があれば退職給与として扱える | 認められない 未払金等に計上しただけのもの(原則) | 法人税基本通達9-2-32 |
| (参考)使用人の打切支給 | 使用人について、中退共への移行などで既往分を全部打切支給し、以後通算しない(役員の退職給与には当てはめない) | 認められない 一部だけの打切支給は賞与 | 法人税基本通達9-2-35・質疑応答事例「一部打切支給」 |
③ 受け取る役員の退職所得(所得税法第30条)
| 論点 | 原則 | 認められる扱い・例外 | 根拠 |
|---|
| 退職所得の金額 | (収入金額-退職所得控除額)×1/2 | 要件を満たす場合の例外 役員等の勤続5年以下は2分の1にしない(特定役員退職手当等) | 所得税法第30条第2項・第5項 |
| 退職所得控除額 | 20年以下:40万円×年数、20年超:800万円+70万円×(年数-20年) | 要件を満たす場合の例外 80万円に満たなければ80万円、障害者になったことによる退職は+100万円 | 所得税法第30条第3項・第6項 |
| 勤続年数 | 1年未満の端数は1年に切り上げる | 必ずそうなる (切り捨てない) | タックスアンサーNo.1420 |
| 法人で損金にならない部分 | 受け取る側の退職所得の計算には影響しない | 必ずそうなる (法人税と所得税は別に判定) | 所得税法第30条第1項 |
はじめに
応用タブの処理早見表 ── 原則・できる扱い・認められない扱い
📍 ラボの場所:応用タブ 処理早見表
ハルカ
先生、早見表に「認められない」の赤い札がたくさんあります。基礎編より、ずっと細かい話になりそうですね。
先生
基礎編で物差しの形は見たから、今日は物差しの当て方で迷うところを見るんだ。限度額の決め方、役員の立場が変わるとき、使用人の扱いとの区別だよ。
ハルカ
表の最後に「参考:使用人の打切支給」があります。役員の話のラボなのに、使用人も出てくるんですね。
先生
役員の退職給与と混ぜて覚えやすいので、あえて別の項目にしたんだ。最後に、そこもきちんと分けて見ようか。
📙 応用 A2 ラボの図
取締役営業部長Bの使用人分600万円(相当な額540万円)。限度額に含めるかどうかで比べる額が変わります
損金不算入額 1,200,000円 = 第1号 1,200,000円(形式基準が多い)+ 第3号 0円実質基準(イ):役員ごとに、相当と認められる額を超える部分を出して合計=0円(法人税法施行令第70条第1号イ)。
形式基準(ロ):比べる額の合計 28,200,000円 と限度額 27,000,000円の差=1,200,000円(法人税法施行令第70条第1号ロ)。
応用 A2
使用人分を限度額に含めない法人 ── 相当な使用人分の出し方
📍 ラボの場所:応用タブ A2
ハルカ
取締役営業部長Bの使用人分600万円のうち、相当な額は540万円。限度額に使用人分を含めないと決めている会社だと、比べる額は2,820万円で、限度額2,700万円を120万円超えています。
先生
使用人分を含めない法人は、使用人分のうち相当な額を除いて、限度額と比べるんだ(施行令第70条第1号ロ・法人税基本通達9-2-22)。相当な額を超える60万円は、比べる額に残るよ。
迷いポイント 使用人分を限度額に含めないと決めれば、使用人分は全部、限度額の外に出せる?
ハルカ
「含めない」と決めた以上、使用人分は丸ごと限度額の外だと思っていました。
先生
外に出せるのは、同じような職務の使用人の給与に比べて相当な額までなんだ(法人税基本通達9-2-23)。比べる使用人がいないときは、役員になる直前の給与やベースアップを参考に見積るよ。
ハルカ
使用人分という名前の、特別席があるのかと思っていました。席の数には限りがあるんですね。
先生
その席の数が「相当な額」なんだ。それに、「含めない」と定款や総会で決めていない会社は、使用人分も含めた合計で比べるよ。
💡 そうだったのか!
使用人分を限度額に含めない法人でも、外に出せるのは
使用人分のうち相当な額まで。超える部分は限度額と比べる額に残ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「過大な役員給与」で「使用人分を含めない限度額」を読み込む
- 「限度額に使用人兼務役員の使用人分を」を「含む」にする
👀 比べる額に使用人分600万円が全部入り、損金不算入額が 1,200,000円から 6,600,000円に変わります。
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📙 応用 A3 ラボの図
総枠4,000万円、役員会で役員Aの限度額を1,800万円と決めたのに、Aに2,160万円を支給した場合
損金不算入額 3,600,000円 = 第1号 3,600,000円(形式基準が多い)+ 第3号 0円実質基準(イ):役員ごとに、相当と認められる額を超える部分を出して合計=0円(法人税法施行令第70条第1号イ)。
形式基準(ロ):各人別の限度額で個別に判定=3,600,000円(質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」)。
総枠では限度額の範囲内ですが、各人別の限度額で個別に判定すると超える部分があります(質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」)。
応用 A3
総枠と各人別の配分 ── 役員会に一任した場合
📍 ラボの場所:応用タブ A3
ハルカ
総会で総枠4,000万円を決めて、配分は役員会に一任。役員会で役員Aの限度額を1,800万円にしたのに、2,160万円を払っています。
先生
3人の合計2,880万円は総枠の範囲内だね。でも、各人別の限度額で個別に判定するので、Aの360万円が過大になるんだ(質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」)。
迷いポイント 総枠の範囲内なら、役員会の配分を超えても問題ない?
ハルカ
株主が決めたのは総枠なので、その範囲内なら配分は会社の中の話だと思っていました。
先生
総会が配分を役員会に一任したときは、総会で各人ごとの限度額を決めたものと解されるんだ。だから役員会で決めた各人の額が、そのまま形式基準の限度額になるよ。
ハルカ
総枠という大きな傘の下に、一人ずつ小さな傘があったんですね。
先生
そう、濡れるかどうかは小さな傘で判定するんだ。期中に増額するときは、役員会の配分の決議も見直しておこうか。
💡 そうだったのか!
総枠を決めて配分を役員会に一任したら、
各人別の限度額で個別に判定。総枠の範囲内でも、各人別の額を超える部分は過大です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「過大な役員給与」で「各人別の限度額を超える」を読み込む
- 「判定の単位」を「総枠で判定」にする
👀 損金不算入額が 3,600,000円から 0円に変わります。判定の単位を取り違えると、過大な部分を見落とします。
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📙 応用 B1 ラボの要点
| 支給の形 | 第34条第1項の扱い | 根拠 |
|---|
| 功績倍率法による退職給与 | 業績連動給与に当たらない → 第1項の適用なし(第2項の相当額で判定) | 法人税基本通達9-2-27の3 |
| 退任日に譲渡制限が解けるRS・行使期間が始まる新株予約権(役務提供期間の報酬費用として損金経理するもの) | 所得税では退職手当等に該当する場合であっても、法人税法第34条第1項の「退職給与で業績連動給与に該当しないもの」には該当しない | 法人税基本通達9-2-27の2 |
| 業績に連動して額が決まる退職給与 | 業績連動給与として第1項第3号の要件で判定 | 法人税法第34条第1項・第5項 |
応用 B1
功績倍率法と株式による退職給与
📍 ラボの場所:応用タブ B1
ハルカ
功績倍率法の退職給与は、業績連動給与に当たらない。左の表には、退任のときに譲渡制限が解ける株式の話もあります。
先生
功績倍率法は退職直前の給与と勤続年数で決まるので、業績の指標で決まる業績連動給与ではないんだ(法人税基本通達9-2-27の3)。だから3つの形の判定はいらないよ。
迷いポイント 退任の日に譲渡制限が解ける株式は、退職給与として扱える?
ハルカ
退任の日に受け取るのだから、退職給与と同じ扱いになると思いました。
先生
一定の要件を満たす譲渡制限付株式等は、所得税では退職手当等に該当する場合であっても、法人税法第34条第1項の「退職給与で業績連動給与に該当しないもの」には該当しないんだ(法人税基本通達9-2-27の2)。
ハルカ
所得税と法人税で、同じ株式の呼び名が変わるんですね。
先生
そう、税ごとに判定するからなんだ。要件は、将来の役務提供の対価として交付し、その期間の報酬費用として損金経理するものなどだよ。株式報酬は③で詳しく扱う予定なんだ。
💡 そうだったのか!
功績倍率法の退職給与は
業績連動給与ではない。一方、一定の譲渡制限付株式等は、所得税では退職手当等に該当する場合であっても、第34条第1項の
「退職給与で業績連動給与に該当しないもの」には該当しません。
📙 応用 B3 ラボの要点
| 場面 | 扱い | 根拠 |
|---|
| 使用人が役員になった時に、退職給与規程に基づき使用人期間分を支給 | ○ 退職給与として支給した年度の損金(未払計上は不可) | 法人税基本通達9-2-36 |
| 使用人兼務役員が副社長・専務などになった時に、兼務役員期間分を支給 | × 原則として役員給与(一定の要件で使用人の退職給与) | 法人税基本通達9-2-37 |
| 退職給与規程を新設・改正し、既に役員になっている全員に使用人期間分を支給 | ○ 過去に未払で、直前給与を基礎に相当な額なら認める | 法人税基本通達9-2-38 |
| 個人事業から引き続く使用人の退職(設立後相当期間経過後) | ○ 個人事業の期間を含めて損金 | 法人税基本通達9-2-39 |
応用 B3
使用人から役員になったとき ── 使用人期間の退職給与
📍 ラボの場所:応用タブ B3
ハルカ
使用人が役員になったときの退職金が、4つの場面に分かれています。昇格した時に払う、専務になった時に払う、規程を作って一斉に払う、個人事業から引き継いだ使用人。
先生
使用人が役員になった時に、退職給与規程に基づいて使用人期間の分を払えば、払った年度の退職給与として損金になるんだ(法人税基本通達9-2-36)。
迷いポイント 使用人期間の退職金は、役員になった時に未払計上しておけばよい?
ハルカ
昇格の年に未払計上しておいて、資金に余裕ができたら払えばよいと思っていました。
先生
未払金に計上しただけでは、退職給与として損金にならないんだ(法人税基本通達9-2-36の注)。それから、使用人兼務役員が専務などになった時に払う兼務期間の分は、原則として役員給与になるよ(法人税基本通達9-2-37)。
ハルカ
同じ「使用人期間の退職金」でも、昇格の段階で扱いが分かれるんですね。
先生
使用人から使用人兼務役員になった時に精算していないかなど、要件をそろえれば使用人の退職給与として扱える場合もあるんだ。昇格の時点を議事録で確かめようか。
💡 そうだったのか!
使用人期間の退職金は
実際に払った年度の退職給与。未払計上は不可で、兼務役員が専務などになる時の兼務期間分は原則として役員給与です。
📄 国税庁 タックスアンサーNo.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金国税庁で読む ▶
📙 応用 C1 ラボの要点
| 場面 | 扱い | 根拠 |
|---|
| 退職年金 | 年金を支給すべき時の損金。総額を未払計上しても損金にならない | 法人税基本通達9-2-29 |
| 合併で退職する被合併法人の役員(合併承認総会で額が確定しない) | 合理的に計算した額を、合併の日の前日の属する事業年度に未払金として損金経理すれば認める | 法人税基本通達9-2-33 |
| 被合併法人の役員から合併法人の役員になる人 | 9-2-33を準用 | 法人税基本通達9-2-34 |
| 解散後も清算人として清算事務に従事する旧役員 | 解散前の勤続期間に係る退職手当等は、法人税法上も退職給与 | 質疑応答事例「清算事務に従事する者に支給する退職給与」 |
応用 C1
退職年金・合併・清算人
📍 ラボの場所:応用タブ C1
ハルカ
退職年金、合併で退職する役員、清算人になる役員。どれも少し珍しい場面ですね。
先生
珍しいけれど、どれも「いつ」と「退職給与か」の論点なんだ。退職年金は、年金を支給すべき時の損金だよ(法人税基本通達9-2-29)。
迷いポイント 退職年金も、総額を決めた年度に未払計上すれば損金になる?
ハルカ
一時金と同じように、総額が決まった年度に計上できると思いました。
先生
退職年金は、総額を未払金に計上しても、その年度の損金にはならないんだ。毎年支給する時の損金だよ。一方、合併で退職する役員は、合理的に計算した額を合併の日の前日の年度に未払計上すれば認められるんだ(法人税基本通達9-2-33)。
ハルカ
解散した会社の役員が清算人になると、辞めていないので退職金は出せない気がします。
先生
解散前の勤続期間に係る退職手当等なら、清算人になっても法人税法上も退職給与として扱われるんだ(質疑応答事例)。解散後の清算人としての報酬とは区分して決めようか。
💡 そうだったのか!
退職年金は
支給すべき時の損金。合併の役員は未払計上の扱いがあり、清算人になる役員の解散前の期間分は退職給与です。
📙 応用 C3 ラボの図
未払計上だけでは原則として退職給与にならない法人税基本通達9-2-32は「例えば」として3つの事実を挙げる。どれかに当たっても、その後も経営上主要な地位を占めていれば退職給与として扱えない。
3つのどれにも当たらなくても、地位・職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情があれば認められる余地がある(事実で判断)。
応用 C3
分掌変更の落とし穴 ── 未払・主要な地位・その後の報酬
📍 ラボの場所:応用タブ C3
ハルカ
常勤から非常勤になって給与も60%減ったのに、「未払金に計上しただけでは、原則として含まれない」とオレンジで出ています。
先生
分掌変更の退職給与には、原則として未払金等に計上した額は含まれないんだ(法人税基本通達9-2-32の注)。実際に払うことが前提だよ。
迷いポイント 分掌変更の退職金は、決算で未払計上しておけば、その年度の損金になる?
ハルカ
退任のときの退職金と同じように、額を決めて未払計上すればよいと思っていました。
先生
辞めずに地位が変わる場面は、本当に退職と同様かが問われるから、実際の支給が求められるんだ。それに、監査役になった場合でも、持株の要件を全て満たす株主等は例示から除かれるよ(施行令第71条第1項第5号)。
ハルカ
その持株の要件は、①の応用編でやった50%・10%・5%ですよね。使用人兼務役員になれない人の条件が、ここにも出てくるんですね。
先生
よく覚えていたね。同じ要件を、分掌変更の判定でも使うんだ。大株主は、肩書が変わっても経営への影響が残ると見るからだよ。
ハルカ
肩書が監査役になっても、株主総会では一番大きな声のままなんですね。
先生
その声の大きさを、50%・10%・5%で測っているんだ。給与を下げて、すぐ元に戻すような形も、「激減」の説明が難しくなるよ。
💡 そうだったのか!
分掌変更の退職給与は
実際に支給したものが前提。監査役になっても
持株の要件を全て満たす株主等は例示から除かれます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「分掌変更」で「常勤→非常勤・給与60%減」を読み込む
- 「退職給与の支給」を「未払金に計上するだけ」にする
👀 判定が「通達の例示に該当(実態を確認)」から「未払計上は原則含まれない」に変わります。例示の(1)(3)に当たっていても結論が変わります。
ラボを開く ▶
📙 応用 D1 ラボの要点
| 規定 | 対象 | 損金不算入の範囲 |
|---|
| 法人税法第34条第2項 | 3つの形に当たる給与・退職給与など | 不相当に高額な部分だけ |
| 法人税法第34条第3項 | 事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支給する給与 | その給与の額の全額 |
応用 D1
隠蔽・仮装による役員給与 ── 全額が損金不算入
📍 ラボの場所:応用タブ D1
ハルカ
第2項は「不相当に高額な部分だけ」、第3項は「その給与の額の全額」。同じ役員給与でも、損金不算入の範囲がずいぶん違います。
先生
事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによって支給する役員給与は、額にかかわらず全額が損金不算入なんだ(法人税法第34条第3項)。
迷いポイント 隠蔽・仮装による給与も、相当な額までは損金になる?
ハルカ
高すぎる部分だけが問題なら、仮装でも相当な額までは損金にしてもらえると思っていました。
先生
第3項が適用される給与は、第2項の判定の対象から外れて、全額が損金不算入になるんだ(法人税法第34条第2項括弧書)。たとえば架空の外注費として役員に払うような形だよ。
ハルカ
帳簿の上で別人になりすましても、全部見抜かれたら、かえって損ですね。
先生
損得の前に、経理の信頼の問題なんだ。役員へのお金は、役員給与として正しく記録するのが出発点だよ。
💡 そうだったのか!
隠蔽・仮装による役員給与は
全額が損金不算入。第2項の「相当な額まで」の判定はありません。
📙 応用 E1 ラボの要点
| ケース | 扱い | 根拠 |
|---|
| 使用人:制度の移行・定年延長に伴い、既往分の全部を打切支給し、以後は既往の在職年数を加味しない | ○ 支給した日の事業年度の損金(退職給与) | 法人税基本通達9-2-35 |
| 使用人:打切支給したことにして未払金に計上 | × 打切支給に含まれない | 法人税基本通達9-2-35(注) |
| 使用人:旧規程の退職金の2分の1だけを打切支給 | × 退職給与と認められず賞与 | 質疑応答事例「一部打切支給」 |
| 役員:辞めずに地位が変わるときの退職給与 | この通達ではなく、分掌変更等の取扱いで判定 | 法人税基本通達9-2-32(基礎8) |
| 使用人が役員になるときの使用人期間分 | この通達ではなく、使用人から役員になった場合の取扱いで判定 | 法人税基本通達9-2-36(応用B3) |
応用 E1
参考:使用人の退職給与の打切支給 ── 役員の退職給与とは別の扱い
📍 ラボの場所:応用タブ E1(参考)
ハルカ
最後は使用人の打切支給ですね。中小企業退職金共済制度に移るときに、それまでの退職金を精算して払うと、退職給与になる。
先生
そう、これは使用人に対する打切支給の扱いなんだ(法人税基本通達9-2-35)。相当の理由があり、その後は既往の在職年数を加味しないことが要件だよ。
迷いポイント 役員の退職金も、制度の移行に合わせて打切支給すれば退職給与になる?
ハルカ
同じ「打切支給」なら、役員にもそのまま使えると思っていました。
先生
この通達が対象にしているのは使用人なんだ。役員に在任中のまま退職給与を払うときは、分掌変更等の取扱いで、実質的に退職したと同様の事情があるかを判定するよ(法人税基本通達9-2-32)。
ハルカ
使用人の通達と役員の通達は、入口から分かれているんですね。
先生
そう、表の最後の2行がその案内板なんだ。それから使用人でも、既往分の一部だけを打切支給するのは賞与として扱われるよ(質疑応答事例)。
💡 そうだったのか!
打切支給(9-2-35)は
使用人の退職給与の扱い。役員の在任中の退職給与は
分掌変更等(9-2-32)で判定します。
今日のまとめ ── 迷いポイント早見表
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。限度額は決め方(使用人分を含むか・各人別か)で比べる額が変わる。退職給与はだれに・いつ・どう払ったかで、退職給与として扱えるかが分かれるんだ。
ハルカ
基礎編では物差しの種類を覚えて、今日は物差しの当て方でした。前は条文の言葉を覚えるので精いっぱいでしたが、今日は議事録のどこを読めばよいかが見えてきました。
先生
議事録の読みどころが見えたなら、実務でそのまま使えるよ。限度額の決議、配分の決議、退任と額の確定。この3つの日付と中身だね。
ハルカ
では、議事録の日付の丸の横に「だれが決めたか」も書きます。①から数えて、丸と書き込みが、また一つ増えました。
先生
書き込みが増えるのは、読む力が増えた印だね。次の設例・過大な役員給与編では、設例1〜5を1ステップずつ数字で追っていこうか。
参考資料
法人税法第34条・第36条、法人税法施行令第70条〜第72条の3(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)、法人税基本通達第9章第2節第6款〜第8款(9-2-21〜9-2-40)、所得税法第30条(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)。国税庁 質疑応答事例「過大役員給与の判定基準」「解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与」「勤続年数の打切りに伴う退職給与の一部打切支給」(令和7年8月1日現在)、タックスアンサーNo.5208・No.5203・No.1420(令和8年4月1日現在)。確認日:2026年10月24日。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、功績倍率などは「何倍までなら安全」という目安ではありません。3つの形(定期同額給与・事前確定届出給与)は役員給与ラボ①【損金算入編】、株式報酬と会計処理は③株式報酬・会社法・会計編(準備中)で扱います。
このシリーズの記事:役員給与ラボ②【基礎編】/役員給与ラボ②【設例・過大な役員給与編】/役員給与ラボ②【設例・退職給与と損金算入時期編】/役員給与ラボ②【設例・分掌変更と退職所得編】
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。