別表四・別表五(一)ラボ【設例・留保と社外流出編】|先生と一緒に図で学ぶ設例1〜3 賞与引当金・交際費・減価償却超過額
無料の学習ツール「別表四・別表五(一)ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・基礎タブから、留保と社外流出の基本の設例(設例1〜3)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(単位:千円、税額は入力値)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例1 ラボの画面(X1期 ステップ1)
🎯 このステップでわかればよいこと:会計の当期利益と、税務とずれる項目を確認する
期末に計上した賞与引当金は、税務では支給するまで損金になりません。X1期に加算・留保、X2期に減算・留保で戻る「行って戻る差異」の代表です。
税金の動きは省いています(法人税等=0として計算)。税金の行は設例4・5で扱います。
X1期 の会計の数字(千円)
税引前当期純利益8,000
法人税、住民税及び事業税(P/L)0
当期純利益(別表四1欄へ)8,000
- 賞与引当金:期末に 1,200 を計上(税務では支給するまで損金にならない)
期首の別表五(一)
別表五(一) Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書(簡略) 単位:千円 △=マイナス| 区分 | 欄 | 期首現在 利益積立金額 ① | 当期の減 ② | 当期の増 ③ | 差引翌期首現在 利益積立金額 ④ ①-②+③ |
|---|
| 賞与引当金 | | - | … | | |
| 繰越損益金(損は赤)会計の繰越利益剰余金 | 25 | 5,000 | … | | |
| 納税充当金会計の未払法人税等 | 26 | - | … | | |
| 未納法人税、未納地方法人税及び未納防衛特別法人税(附帯税を除く。) | 27 | - | … | | |
| 未納道府県民税・未納市町村民税(均等割を含む。)様式では29欄・30欄の2行 | 29・30 | - | … | | |
| 差引合計額 | 31 | 5,000 | | | |
はじめに
設例1〜3 ── 留保と社外流出の基本を、1行ずつ書いてみる
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例1 ステップ1
ハルカ
先生、設例編の1本目ですね。設例1は賞与引当金、設例2は交際費・役員給与・受取配当金、設例3は減価償却超過額です。
先生
どれも税金の行を0にして、差異の動きだけを見られるようにした設例なんだ。基礎編で見た流れを、今日は1行ずつ自分の手で書いていこうか。
ハルカ
設例1は、X1期の当期純利益が 8,000、期末に計上した賞与引当金が 1,200 です。
先生
まず賞与引当金から見ていくよ。X1期に加算して、X2期に支給したら減算する。「行って戻る差異」の代表なんだ。
設例・基礎タブの設例1を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例1 ラボの画面(X2期 ステップ9)
🎯 このステップでわかればよいこと:いずれ戻ってくる差異は「留保」
加算・留保 賞与引当金繰入額の損金不算入額 1,350
減算・留保 前期賞与引当金の当期認容額 1,200
いずれも翌期以降に戻ってくる差異なので、留保②の欄に書きます。
■ 加算・留保 → 五(一)の増③■ 減算・留保 → 五(一)の減②■ 4欄 納税充当金 → 26欄 増③■ 当期利益 → 25欄 繰越損益金■ 検算式で使う数字
別表四 所得の金額の計算に関する明細書(簡略) 単位:千円| 区分 | 欄 | 総額 ① | 留保 ② | 社外流出 ③ |
|---|
| 当期利益又は当期欠損の額P/L の当期純利益 | 1 | 9,500 | 9,500→五(一)25 | 配当 - |
| 加算 |
| 損金経理をした法人税、地方法人税及び防衛特別法人税(附帯税を除く。) | 2 | … | | |
| 損金経理をした道府県民税及び市町村民税 | 3 | … | | |
| 損金経理をした納税充当金 | 4 | … | | |
| 賞与引当金繰入額の損金不算入額 | | 記入1,350 | 1,350→五(一) 増③ | - |
| 小計 | | | | |
| 減算 |
| 納税充当金から支出した事業税等の金額 | 13 | … | | |
| 前期賞与引当金の当期認容額 | | 記入1,200 | 1,200→五(一) 減② | - |
| 小計 | | | | |
| 仮計当期利益+加算-減算 | | | | |
| 所得金額又は欠損金額別表四の最下行(中間の合計・総計の行は省略) | 最下行 | | | |
設例1
賞与引当金 ── X2期は「戻す」と「新しく足す」を別の行に
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例1 ステップ9
ハルカ
X2期は、前期分 1,200 を支給したので減算・留保。期末に新しく計上した 1,350 は加算・留保です。
先生
期末の引当金は、税務では支給するまで損金にならないんだ。だから毎期「前期分を全額減算、当期分を全額加算」する形になるよ。
ハルカ
法人税法ラボで「引当金の繰入額は原則として損金にならず、別表四で加算する」と習いました。その加算がこれですね。
先生
そう、ちゃんとつながったね。法人税法ラボで見た条文の結論が、別表四の1行になって現れているんだ。
迷いポイント X2期は、差し引き+150 の1行で書けばいい?
ハルカ
加算 1,350 と減算 1,200 を相殺して、+150 だけ書けば早いと思いました。
先生
所得の金額は同じでも、加算と減算は別の行に書くんだ。別表五(一)でも減② 1,200・増③ 1,350 と分けて書くから、どの年の分が戻ったかを後から追えるんだよ。
ハルカ
1行にまとめたら、去年の 1,200 がいつ帰ってきたのか、誰にも分からなくなるところでした。
💡 そうだったのか!
賞与引当金は毎期
前期分を全額減算、当期分を全額加算。相殺せずに別の行で書き、別表五(一)の減②・増③にも分けて書きます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 設例1のステップ5(X1期の別表五(一))を開く
- ステップ11(X2期の別表五(一))に進めて見比べる
👀 賞与引当金の行は、X1期が 期首0・増③ 1,200・期末 1,200、X2期が 期首 1,200・減② 1,200・増③ 1,350・期末 1,350。差引合計は 14,200 → 23,850 です。
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📘 設例2 ラボの画面(ステップ4)
🎯 このステップでわかればよいこと:所得金額=留保②+社外流出③
加算の小計 940、減算の小計 180。仮計=7,400+940-180=8,160。
所得金額 8,160 = 留保② 7,400 + 社外流出③ 760。この留保②が、検算式で使う「留保所得」です。
■ 加算・留保 → 五(一)の増③■ 減算・留保 → 五(一)の減②■ 4欄 納税充当金 → 26欄 増③■ 当期利益 → 25欄 繰越損益金■ 検算式で使う数字
別表四 所得の金額の計算に関する明細書(簡略) 単位:千円| 区分 | 欄 | 総額 ① | 留保 ② | 社外流出 ③ |
|---|
| 当期利益又は当期欠損の額P/L の当期純利益 | 1 | 7,400 | 7,400→五(一)25 | 配当 - |
| 加算 |
| 損金経理をした法人税、地方法人税及び防衛特別法人税(附帯税を除く。)中間納付した法人税等 | 2 | - | - | - |
| 損金経理をした道府県民税及び市町村民税中間納付した住民税 | 3 | - | - | - |
| 損金経理をした納税充当金期末に計上した未払法人税等 | 4 | - | - | - |
| 役員給与の損金不算入額 | | 300 | - | 300 |
| 交際費等の損金不算入額 | | 640 | - | 640 |
| 小計 | | 940 | - | 940 |
| 減算 |
| 納税充当金から支出した事業税等の金額前期末に計上した事業税を当期に納付 | 13 | - | - | - |
| 受取配当等の益金不算入額 | | 180 | - | ※180 |
| 小計 | | 180 | - | 180 |
| 仮計当期利益+加算-減算 | | 8,160 | 7,400 | 760 |
| 所得金額又は欠損金額別表四の最下行(中間の合計・総計の行は省略) | 最下行 | 記入8,160 | 7,400→検算式 | 760 |
設例2
交際費・役員給与・受取配当金 ── 別表四だけで終わる
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例2 ステップ4
ハルカ
当期純利益 7,400 に、交際費 640 と役員給与 300 を加算、受取配当 180 を減算して、所得は 8,160 です。
先生
所得 8,160 のうち、留保②は当期利益と同じ 7,400、社外流出③は 640+300-180=760 なんだ。3つとも、税務上の利益積立金額の増減計算に反映させない調整だよ。
迷いポイント 社外流出の調整も、別表五(一)のどこかに書いておく?
ハルカ
書かないと忘れそうなので、別表五(一)の空いている行にメモしておこうと思いました。
先生
社外流出③の調整は、別表五(一)には書かないんだ。書いてしまうと、期末合計が増えて検算式が合わなくなるよ。翌期に戻すものもないから、別表四だけで完結するんだ。
ハルカ
受取配当金は入ってきたお金なのに、出ていく側の「社外流出」に入るんですね。出口と入口を間違えた気分です。
先生
区分の名前はお金の向きとは関係ないんだ。※を付けて社外流出③の欄で減算する、と覚えておくといいよ。
💡 そうだったのか!
社外流出の調整は
別表四だけで完結し、別表五(一)には書きません。所得は動いても、留保②と期末合計は動きません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションで「設例2 社外流出」を選ぶ
- 「交際費等の損金不算入額」を 640 から 1,000 にする
👀 所得金額は 8,160 → 8,520、社外流出③は 760 → 1,120。留保② 7,400 と別表五(一)の期末合計 19,400 は変わりません。
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📘 設例3 ラボの画面(X3期 ステップ15)
🎯 このステップでわかればよいこと:いずれ戻ってくる差異は「留保」
減算・留保 減価償却超過額の当期認容額 100(償却不足 300 の範囲で、超過額の残高 100 まで)
いずれも翌期以降に戻ってくる差異なので、留保②の欄に書きます。
■ 加算・留保 → 五(一)の増③■ 減算・留保 → 五(一)の減②■ 4欄 納税充当金 → 26欄 増③■ 当期利益 → 25欄 繰越損益金■ 検算式で使う数字
別表四 所得の金額の計算に関する明細書(簡略) 単位:千円| 区分 | 欄 | 総額 ① | 留保 ② | 社外流出 ③ |
|---|
| 当期利益又は当期欠損の額P/L の当期純利益 | 1 | 6,500 | 6,500→五(一)25 | 配当 - |
| 加算 |
| 損金経理をした法人税、地方法人税及び防衛特別法人税(附帯税を除く。) | 2 | … | | |
| 損金経理をした道府県民税及び市町村民税 | 3 | … | | |
| 損金経理をした納税充当金 | 4 | … | | |
| 小計 | | | | |
| 減算 |
| 減価償却超過額の当期認容額償却不足 300 の範囲で、超過額の残高 100 まで | | 記入100 | 100→五(一) 減② | - |
| 納税充当金から支出した事業税等の金額 | 13 | … | | |
| 小計 | | | | |
| 仮計当期利益+加算-減算 | | | | |
| 所得金額又は欠損金額別表四の最下行(中間の合計・総計の行は省略) | 最下行 | | | |
設例3
減価償却超過額 ── 不足額の範囲で、残高まで少しずつ戻す
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 設例3 ステップ15
ハルカ
X1期に超過額 300 を加算。X2期は償却不足 200 で 200 を減算、X3期は償却不足が 300 あるのに、減算は 100 だけです。
先生
X2期が終わった時点で、超過額の残高が 100 しか残っていないからね。認容できるのは、償却不足額と超過額の残高の小さい方までなんだ。
迷いポイント X3期の償却不足 300 は、全額減算できる?
ハルカ
償却が足りなかった年なので、不足の 300 は全部取り戻せると思っていました。
先生
X3期に減算できるのは残高の 100 までなんだ。超えた 200 は、そのまま損金にならずに終わるよ。
ハルカ
法人税法ラボで「償却不足額は取り戻せない」と習いました。ここでも同じことが起きているんですね。
先生
よく覚えていたね。取り戻せるのは、前に加算した超過額の残高の分だけなんだ。
ハルカ
私、償却不足は来年に繰り越せる「ポイント」みたいなものだと思っていました。
先生
ポイントのように貯まるのは、超過額の残高の方なんだ。不足額は貯まらないよ。
💡 そうだったのか!
償却超過額の認容は
償却不足額と超過額の残高の小さい方まで。X3期は不足 300 でも、残高 100 だけを減算して、残高は 0 になります。
📝 法人税法ラボ【応用編】(法人税等の行・受取配当・欠損金)記事を読む ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて別表四・別表五(一)ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
別表四・別表五(一)ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。賞与引当金は毎期全額を戻して全額を足す。社外流出は別表四だけで終わる。償却超過額は、不足額の範囲で残高まで少しずつ戻すんだ。
ハルカ
同じ「留保」でも、戻り方が3つとも違いました。前は、留保を見たら翌年に全部戻すものだと決めつけていました。
先生
戻り方が違うから、別表五(一)は行を分けて残高を持っているんだ。そこに気づけたのは大きいよ。
ハルカ
別表五(一)の行が、急に一人ひとり性格の違う人に見えてきました。毎年おとなしく帰る人、少しずつ帰る人…。
先生
その見方なら、名簿の管理もはかどりそうだね。次の税金の行と総合編では、納税充当金と未納法人税等の行を、設例4・5で見ていこうか。
参考資料
法人税法第2条第18号(利益積立金額)・施行令第9条、法人税基本通達9-5-1、別表四「所得の金額の計算に関する明細書」・別表五(一)「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」の様式と記載要領(令和8年4月1日以後終了事業年度分)。確認日:2026年10月14日。設例の数値は独自のもの(単位:千円)で、税額は入力値です。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・税金の行と総合編(設例4・5)/設例・複数期編(設例6・7)/設例・社外流出と赤字の年編(設例8・9)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。