企業結合・事業分離ラボ【設例・会社分割・株式交換編(共通支配下)】|先生と一緒に図で学ぶ設例・基礎13、応用18〜24 親子間の事業移転・完全子会社化・持株会社
無料の学習ツール「企業結合・事業分離ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、親子会社間の会社分割・株式交換・株式移転の設例(設例・基礎13、応用18〜24)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社・株価・設例の数値はすべて架空の例です(適用指針の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎13 ラボの画面
はじめに
設例・基礎13、応用18〜24 ── 親子の間で事業や株式を動かす
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎13 ステップ1
ハルカ
先生、この回は親会社と子会社の間の会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転ですね。形がたくさんあって目が回りそうです。
先生
形は多いけれど、骨格は二つだけなんだ。グループの中の移動は帳簿価額で、連結では消える。非支配株主との取引の部分だけが資本剰余金に出るよ。
ハルカ
「中の移動」と「非支配株主との取引」を分ければいいんですね。
先生
そう。まず一番シンプルな、親会社が子会社に事業を現金で譲る基礎13から見ていこうか。
設例・基礎タブの基礎13を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎13 ラボの画面
🧾 事業譲渡日(P社の個別財務諸表)
親会社(分離元)の個別:現金は帳簿価額(=額面)で計上、株主資本相当額との差が移転損益| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 現金 | 260 | 諸資産(p事業) | 180 |
| 評価・換算差額等 | 40 | 移転損益 | 120 |
🧾 事業譲渡日(S社の個別財務諸表)
子会社(分離先)の個別:帳簿価額で受け入れ、差額はのれん| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 諸資産(p事業) | 180 | 現金 | 260 |
| のれん | 120 | 評価・換算差額等 | 40 |
🧾 連結修正仕訳
連結修正:内部取引として消去(未実現損益の消去に準ずる)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 移転損益 | 120 | のれん | 120 |
設例・基礎13
親会社が子会社へ事業を現金で譲渡 ── 個別の移転利益 120 は連結で消える
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎13 ステップ2〜4
ハルカ
P社がp事業(株主資本相当額 140)を60%子会社S社に譲って、現金 260 を受け取ります。P社の個別には移転利益 120 が出ています。
先生
子会社への事業分離は共通支配下の取引なんだ。現金は額面で計上して、株主資本相当額との差は個別では移転損益になるよ(適用指針第223項)。
迷いポイント 子会社S社は、p事業を時価 260 で受け入れる?
ハルカ
現金 260 を払って買ったのだから、S社の帳簿には時価で載せるのだと思っていました。
先生
S社は諸資産を帳簿価額 180 で受け入れ、評価・換算差額等 40 も引き継ぐんだ。のれんは、現金 260 と株主資本相当額 140 の差 120 だよ(第224項)。連結では、移転利益 120 とのれん 120 を相殺して両方消すよ。
ハルカ
家族の中でお財布から別のお財布にお金を移しても、家族全体のお金は増えないのと同じですね。
先生
そう、連結はグループ全体のお財布で見るんだよ。
💡 そうだったのか!
親子間の事業譲渡は、
個別では移転損益とのれんが出ても、連結では内部取引として
両方消去します。資産は元の帳簿価額のまま残ります。
📕 設例・応用18/応用19 ラボの画面
🧾 P社の連結修正仕訳
連結修正:親会社持分相当額は内部取引として消去、非支配株主持分相当額は非支配株主持分から控除| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 資本剰余金 | 656 | P社株式 | 820 |
| 非支配株主持分 | 164 | | |
S社が持つP社株式は連結上は自己株式のような位置づけ。親会社持分相当額 656 は内部取引として消去し、非支配株主持分相当額 164 は非支配株主持分から控除する(適用指針第217項)。
適用指針第217項
🧾 P社の個別
親会社持分相当額(80%):抱合せ株式のうち引き換えられたとみなす額と相殺| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| S1事業資産(80%) | 720 | 子会社株式(按分 50%) | 320 |
| | その他有価証券評価差額金(80%) | 64 |
| | 抱合せ株式消滅差益 | 336 |
非支配株主持分相当額(20%):交付株式の時価が払込資本| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| S1事業資産(20%) | 180 | その他資本剰余金(払込資本) | 210 |
| その他資本剰余金(差額) | 46 | その他有価証券評価差額金(20%) | 16 |
親会社持分相当額は、按分したS社株式 320 との差額を抱合せ株式消滅差益 336(第218項(1))。
非支配株主持分相当額は、交付したP社株式の時価 210 を払込資本とし、受入資産との差はその他資本剰余金 46(第218項(2)、企結第46項)。
適用指針第218〜220項企結第46項
設例・応用18・応用19
子会社から親会社への会社分割 ── 分社型と分割型
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用18 ステップ3/応用19 ステップ3
ハルカ
応用18は、80%子会社S社がS1事業を親会社P社に移して、P社株式(時価 1,050)を受け取る分社型です。
先生
事業が下から上に動く形だね。S社が受け取ったP社株式をいくらで計上するかが、最初のポイントなんだ。
迷いポイント S社が受け取ったP社株式は、時価 1,050 で計上して移転利益を出す?
ハルカ
時価のある株式をもらったので、事業の帳簿価額との差は利益になると思っていました。
先生
共通支配下だから、取得原価は移転した事業の株主資本相当額 820 で、損益は出ないんだ(適用指針第216項)。P社の連結では、S社が持つP社株式を、親会社持分 656 と非支配株主持分 164 に分けて消すよ。
ハルカ
応用19は分割型です。対価のP社株式は、S社の株主に配られてしまいます。
先生
分割型は「分社型の分割+株式の現物配当」とみるんだ。P社は、S社株式 640 のうち 320 がP社株式と引き換えられたとみて、抱合せ株式消滅差益 336 を出すよ(第221・222項)。
ハルカ
分割型のP社は、事業を受け取る係と、S社の株主として配当を受け取る係の一人二役なんですね。
💡 そうだったのか!
子会社から親会社への分社型分割は
株主資本相当額で損益なし。分割型は
分社型+現物配当とみて、親会社は株主としての立場でも処理します。
📕 設例・応用20 ラボの画面
追加取得持分 = S社の時価純資産 180 × 20% = 36 持分の減少額 = p事業 130 × 20% = 26
差額 = 資本剰余金 10
🧾 連結修正仕訳(持分の変動)
連結修正:親会社の持分変動(追加取得持分−持分の減少額)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主持分 | 10 | 資本剰余金 | 10 |
連結修正:支配獲得後の資本連結| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 払込資本 | 130 | 子会社株式 | 130 |
p事業の20%を非支配株主に渡し、S社の既存事業の20%を取得したと見る。親会社の持分変動なので資本剰余金(分離第19項、適用指針第229項)。のれんは追加計上しない(連結第28項:追加取得は資本剰余金)。
分離第19項適用指針第229項連結第28項
設例・応用20
親会社が子会社に事業を移して 60%→80% ── 差額 10 は資本剰余金
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用20 ステップ4
ハルカ
P社がp事業(株主資本相当額 130)をS社に移して、S社株式を受け取り、持分が 60% から 80% に増えます。
先生
個別は、子会社株式 130 の付替えだけなんだ(適用指針第226項)。連結では、S社の既存事業の20%を取得した部分と、p事業の20%を手放した部分に分けるよ。
迷いポイント 持分が増えたのだから、増えた分にのれんを追加で計上する?
ハルカ
既存の60%にのれん 30 があったので、追加の20%にものれんが出るのだと思っていました。
先生
支配を取った後の持分の変動は資本取引なんだ。追加取得持分 36 と持分の減少額 26 の差 10 は資本剰余金で、のれんは追加しないよ(分離第19項)。
💡 そうだったのか!
親会社が子会社に事業を移して持分が増えるときは、
追加取得持分と持分の減少額の差を資本剰余金にします。のれんは支配獲得時の分だけです。
📕 設例・応用21/応用22 ラボの画面
現金 180 − 株主資本相当額 120 = 移転利益 60
🧾 P社の個別
親会社P社の個別| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 現金(帳簿価額) | 180 | 諸資産(p事業) | 120 |
| | 移転利益 | 60 |
🧾 S社の個別
子会社S社の個別| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 諸資産(p事業) | 120 | 現金 | 180 |
| のれん | 60 | | |
共通支配下でも、現金等が株主資本相当額を上回れば個別では移転利益を認識する(適用指針第230項(1))。S社は帳簿価額で受け入れ、現金との差をのれんとする(第231項)。
適用指針第230・231項
子会社株式 = 株主資本相当額 120 − 現金 60 = 60(移転利益なし)
🧾 P社の個別
親会社P社の個別| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 現金(帳簿価額) | 60 | 諸資産(p事業) | 120 |
| 子会社株式 | 60 | | |
🧾 S社の個別
子会社S社の個別| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 諸資産(p事業) | 120 | 現金 | 60 |
| | 払込資本 | 60 |
現金が株主資本相当額を下回るときは移転損益を認識せず、残りを子会社株式の取得原価とする(適用指針第230項(2))。S社は差額を払込資本に(第231項)。
適用指針第230項(2)・第231項
設例・応用21・応用22
対価が株式+現金 ── 現金が帳簿価額を上回るか下回るか
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用21 ステップ2/応用22 ステップ2
ハルカ
応用21は、p事業(帳簿 120)を移して、S社株式と現金 180 を受け取ります。現金が帳簿価額を 60 上回っています。
先生
共通支配下でも、現金等が株主資本相当額を上回れば、個別では上回った 60 が移転利益なんだ(適用指針第230項)。応用22のように現金 60 が下回れば、残り 60 が子会社株式の取得原価だよ。
迷いポイント 応用21の移転利益 60 は、連結でもそのまま残る?
ハルカ
現金で受け取った分は清算なので、連結でも利益になるのだと思っていました。
先生
相手が子会社なので、未実現損益の消去に準じて全額消すんだ。S社ののれん 60 と相殺されるよ(第232項)。事業分離編の応用12は関連会社だから、持分相当額だけを消していたね。
ハルカ
現金を多めにもらって利益が出たと喜んだのに、連結で全部消されて、ぬか喜びでした。
先生
個別の利益と連結の利益は、別々に確かめればいいんだよ。
💡 そうだったのか!
親子間の事業移転で現金等が株主資本相当額を上回ると
個別では移転利益。相手が子会社なら、連結では
全額消去します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「事業分離の判定」で、プリセット「株式+少しの現金 → 子会社(応用22)」を選ぶ
- 「現金等の財産」を 60 から 180 にする
👀 移転損益は 0(認識しない)から 60(認識する)に、株式の取得原価は 60 から 0 に変わります。応用22から応用21の形になります。
ラボを開く ▶
📕 設例・応用23/応用24 ラボの画面
減少する非支配株主持分 = 1,200 × 20% = 240 対価 420 との差 = 資本剰余金 180(借方)
🧾 連結修正仕訳
連結修正:非支配株主との取引(差額は資本剰余金)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 非支配株主持分 | 240 | 子会社株式 | 420 |
| 資本剰余金 | 180 | | |
支配を獲得した後の追加取得は資本取引。のれんは出さず、差額は資本剰余金(連結第28項)。
連結第28項適用指針第237項
P社株式 = P社の株主資本の帳簿価額 1,640
S社株式(P社保有分) = S社の株主資本 1,200 × 80% = 960
S社株式(非支配株主分) = 交付株式の時価 420
🧾 株式移転日(HD社の個別)
HD社の個別| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| P社株式(P社の株主資本の帳簿価額) | 1,640 | 資本金 | 1,000 |
| S社株式(P社保有分80%:S社の株主資本×80%) | 960 | その他資本剰余金 | 2,020 |
| S社株式(非支配株主分:交付株式の時価) | 420 | | |
親会社株式は株主資本の帳簿価額、子会社株式のうち親会社持分は連結上の帳簿価額、非支配株主分は取得の対価(適用指針第239項)。
適用指針第239項
設例・応用23・応用24
株式交換で完全子会社化/株式移転で持株会社 ── 非支配株主との取引
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用23 ステップ3/応用24 ステップ2
ハルカ
応用23は、80%子会社S社を株式交換で完全子会社にします。非支配株主にP社株式(時価 420)を渡して、減る非支配株主持分は 240 です。
先生
個別は、交付した株式の時価 420 で子会社株式を追加するんだ(適用指針第236項)。連結では、非支配株主持分 240 との差 180 をどう扱うかが問題になるよ。
ハルカ
資本連結ラボの応用編で習った、支配を取った後の追加取得と同じ形に見えます。
先生
そのとおりだよ。対価が現金ではなく自社株式なだけで、中身は追加取得なんだ。
迷いポイント 非支配株主持分との差額 180 は、のれんにする?
ハルカ
時価 420 で買ったのだから、差額はのれんだと思っていました。
先生
支配獲得後の追加取得は資本取引だから、差額 180 は資本剰余金なんだ(連結第28項)。応用24の持株会社HD社でも、非支配株主分の差額は同じく資本剰余金 180 だよ。
💡 そうだったのか!
親会社による完全子会社化は
非支配株主との取引。差額はのれんではなく
資本剰余金です。株式移転でも、子会社株式の非支配株主分だけが時価になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 設例・応用タブで応用23のステップ3「② 連結」を開く
- 設例を選ぶメニューで応用24に切り替え、ステップ2「① HD社の個別」を開く
👀 応用23の資本剰余金は 180(対価 420 − 非支配株主持分 240)。応用24のHD社の個別は、P社株式 1,640・S社株式(P社保有分)960・S社株式(非支配株主分)420 の3つの取得原価です。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて企業結合・事業分離ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
企業結合・事業分離ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。親子の間の移動は帳簿価額で、個別の移転損益やのれんは連結で消える。非支配株主から持分を取得した部分だけが、対価の時価で測られて、差額は資本剰余金なんだ。
ハルカ
前は形ごとに仕訳を覚えようとしていましたが、今日は「中の移動」と「非支配株主との取引」に分けるだけで、どの設例も読めました。連結では何も起きない、で覚えておきます。
先生
損益についてはそのとおりだね。ただ、非支配株主との取引の分は、資本剰余金と非支配株主持分が動くことを忘れないでね。
ハルカ
骨格が二つなら、会議で組織再編の話が出たとたんに「はい、中の移動ですね」と手を挙げてしまいそうです。
先生
手を挙げる前に、上にだれがいるかだけは確かめてね。次の子会社同士の合併と株主編では、合併した会社の株主側の会計を見ていこうか。
参考資料
企業結合会計基準 第40〜46項、事業分離等会計基準 第14・18・19・63項、適用指針第214〜240項・設例24〜28。企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(2019年1月16日最終改正・2026年1月9日までの修正反映)、企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(2013年9月13日最終改正)、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(2024年9月13日最終改正・2026年10月16日までの修正反映)、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」。基準確認日:2026年10月26日。ラボの設例は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の設例の数値は画面に出していません)。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・取得編(基礎1〜6、応用1〜3)/設例・逆取得・株式交換・株式移転編(基礎10・11、応用4〜6)/設例・事業分離編(基礎7〜9、応用7〜12)/設例・共同支配企業と合併編(基礎12、応用13〜17)/設例・子会社同士の合併と株主編(基礎14、応用25〜30)/設例・税効果編(応用31〜35)/税務調整編
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。