MENU

企業結合・事業分離ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ処理早見表・取得の細部・逆取得・共通支配下の各形式・共同支配企業・開示

企業結合・事業分離ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ処理早見表・取得の細部・逆取得・共通支配下の各形式・共同支配企業・開示

無料の学習ツール「企業結合・事業分離ラボ」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は基礎編で扱っています。登場する会社・株価・設例の数値はすべて架空の例です(適用指針の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📙 応用 処理早見表
組織再編の形式取得:受け入れる側(個別)取得:連結共同支配企業の形成共通支配下の取引(個別→連結)
吸収合併(相手が消滅)時価で受入れ・のれん計上(PPA)個別と同じ帳簿価額で引継ぎ・払込資本帳簿価額(親子なら連結上の帳簿価額)→ 連結では内部取引で消去
株式取得・株式交換(相手が子会社に)子会社株式のみ(PPAなし)資本連結でPPA・のれん—子会社株式=取得の対価 → 連結では非支配株主との取引(資本剰余金)
株式移転(持株会社設立)取得企業株式=帳簿価額、被取得企業株式=時価資本連結でPPA—親会社株式=帳簿価額、子会社株式=連結上の帳簿価額+非支配株主分は時価
会社分割・事業譲受(事業を受け入れる)時価で受入れ・のれん(分離先が取得企業)個別と同じ帳簿価額で受入れ帳簿価額で受入れ → 連結では消去
会社分割・事業譲渡(事業を手放す)分離元:継続なら簿価の付替え、清算なら移転損益連結:のれん・資本剰余金・持分変動差額分離元:共同支配企業株式=株主資本相当額、連結は持分法分離元:移転損益は連結で消去、持分の変動は資本剰余金
株主の立場(持株が替わる)清算なら交換損益、継続なら簿価の付替え子会社→関連会社なら持分法へ—子会社同士の合併:個別の交換損益は連結で消去
はじめに

今日の題材 ── 形式 × 型 × 個別/連結の3軸

📍 ラボの場所:応用タブ 処理早見表
ハルカ
先生、基礎編で型と席の考え方は分かりました。応用編は、合併・株式交換・会社分割が縦に並んだ表から始まるんですね。
先生
実務では「合併だからこう」と形式で覚えてしまいがちなんだ。でも結論を決めるのは型と、個別か連結かの方だよ。この早見表は、その3軸を1枚にしたものなんだ。
ハルカ
同じ株式交換でも、取得なら連結でPPA、共通支配下なら非支配株主との取引、という具合に列で答えが変わりますね。
先生
そのとおりだよ。今日は応用タブから、取得の細部、逆取得、共通支配下の各形式、共同支配企業の判定、開示、それに連結で消える損益とのれん償却の見直しまで見ていこうか。
応用タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📙 応用 A ラボの要点
応用A 取得の細部(ラボの要点)
  • 取得関連費用:発生時の費用(企結第26項)。株式取得の個別では子会社株式に含め、連結で費用に直す(資本連結実務指針第8・46-2項)
  • 企業結合に係る特定勘定:取得後に予測され、対価の算定に反映されている費用・損失は負債として配分(企結第30項、適用指針第62〜66項)
  • 退職給付:企業結合日の退職給付債務と年金資産の時価の差額で配分。未認識項目は引き継がない(第67項)
  • ヘッジ:繰延ヘッジ損益は引き継がず、取得企業が新たにヘッジ指定(第68項)
  • リース:リース負債は企業結合日に新規のリースとして測定(第61-2項)
  • 税効果:一時差異と引き継ぐ繰越欠損金に繰延税金を認識し、のれんはその残余(第71〜75項)
応用 A

取得の細部 ── 取得関連費用・特定勘定・退職給付・ヘッジ・リース・税効果

📍 ラボの場所:応用タブ A
ハルカ
取得の細部は、取得関連費用、特定勘定、退職給付、ヘッジ、リース、税効果と、論点がたくさん並んでいます。
先生
どれも一本の考え方で読めるんだ。企業結合日の時価で受け入れて、被取得企業の帳簿にあった会計上の調整項目は引き継がない、ということだよ。
迷いポイント 被取得企業が計上していた繰延ヘッジ損益や、退職給付の未認識項目は、そのまま引き継ぐ?
ハルカ
相手の帳簿に載っているものは、全部まとめて受け入れるのだと思っていました。
先生
引き継がないんだ。取得企業から見れば、企業結合日に時価で買い直したのと同じだからね。デリバティブは時価で受け入れて、ヘッジを続けるなら改めてヘッジ指定するよ(適用指針第68項)。
ハルカ
相手の会社が大事にしていた思い出の品を、引っ越しの日に全部手放させるみたいで、なんだか切ないです。
先生
思い出は時価で測れないから、帳簿には持ち込まないんだよ。
💡 そうだったのか!
取得では企業結合日の時価で受け入れ直すので、繰延ヘッジ損益や退職給付の未認識項目は引き継ぎません。例外的に「作る」負債が企業結合に係る特定勘定です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 設例・応用3(ヘッジ会計が適用されていた場合)のステップ2「① 企業結合日」を開く

👀 金利スワップは時価 12 の負債として受け入れ、識別可能純資産は 188、のれんは 260。被取得企業の繰延ヘッジ損益は仕訳に出てきません。

ラボを開く ▶
📙 応用 B ラボの図
形式取得企業の判定個別財務諸表連結財務諸表根拠・設例
逆取得となる吸収合併消滅会社の株主が結合後の議決権の過半数など(企結第20〜22項)存続会社は取得企業(消滅会社)の資産・負債を帳簿価額で受入れ、株主資本を払込資本に。評価・換算差額等は引継ぎ取得企業が存続会社を取得したとみてパーチェス法。みなし交付株式数で取得原価を計算企結第34・35項、適用指針第84〜86項、
逆取得となる吸収分割・現物出資(子会社化)分離元企業が分離先の議決権の過半数を得るなど承継会社(被取得企業)は移転事業を帳簿価額で受入れ。分離元は子会社株式=株主資本相当額分離元の連結で、承継会社の既存事業にパーチェス法(基礎7)適用指針第87〜89項、
株式交換(取得)完全親会社が取得企業なら通常の取得完全親会社:子会社株式=対価の時価(+保有分の帳簿価額)。PPAはしない資本連結でPPA・のれん。保有分は時価に再測定適用指針第110〜117項、
逆取得となる株式交換完全子会社が取得企業完全親会社:子会社株式=取得企業(完全子会社)の株主資本の帳簿価額。増加資本も同額完全子会社が完全親会社を取得したとみてパーチェス法適用指針第118・119項
株式移転(取得)完全子会社のいずれかが取得企業設立完全親会社:取得企業株式=帳簿価額による株主資本の額、被取得企業株式=交付株式の時価資本連結で被取得企業にPPA。取得企業の帳簿価額はそのまま適用指針第120〜125項、
みなし取得日—株式交換日・株式移転日が子会社の決算日以外のとき、直前又は直後の決算日を企業結合日とみなせる連結の資本連結も同じ日で適用指針第117・126項、連結(注5)
応用 B

逆取得・株式交換・株式移転 ── 法律上の形と会計上の取得企業がねじれるとき

📍 ラボの場所:応用タブ B
ハルカ
逆取得、株式交換、株式移転の表です。どの行も「個別」と「連結」の列で書き方が違います。
先生
法律上の形と会計上の取得企業がねじれる場面を集めた表なんだ。逆取得の合併では、存続会社の個別は取得企業の帳簿価額で受け入れて、連結でパーチェス法をやり直すよ(企結第34・35項)。
迷いポイント 株式移転で持株会社を作ったら、設立会社が持つ子会社株式はどちらも時価で計上する?
ハルカ
新しい会社が両方の株式を受け取るのだから、両方とも時価で受け入れるのだと思っていました。
先生
取得企業の株式は、取得企業の株主資本の帳簿価額で計上するんだ。時価になるのは被取得企業の株式だけだよ(適用指針第121項)。どちらが取得企業かで、子会社株式の金額が決まるんだ。
ハルカ
新しい家に引っ越しても、持ってきた家具の値段は買ったときのまま、みたいなものですね。
先生
そう、新しくなるのは箱の方で、取得企業の事業はずっと続いているんだよ。
💡 そうだったのか!
株式移転では取得企業株式は帳簿価額、被取得企業株式は時価。逆取得の合併も、個別は帳簿価額、連結でパーチェス法という同じ「ねじれ」です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 応用Bの表で「逆取得となる吸収合併」の行の「応用4」を押す
  2. ステップ4「③ 連結」を開く

👀 みなし交付株式 40株 × @35 = 取得原価 1,400、のれん 250。存続会社A社の個別には、のれんは出ません。

ラボを開く ▶
📙 応用 C ラボの図
形式個別のポイント連結のポイント適用指針設例
親会社が子会社を吸収合併親会社持分は連結上の帳簿価額(抱合せ株式消滅差損益)、非支配株主分は時価の対価(資本剰余金)差損益は利益剰余金と相殺。非支配株主との取引は資本剰余金第205〜208項
子会社が親会社を吸収合併親会社の資産を帳簿価額で、株主資本の内訳を引継ぎ。親会社保有の自社株は自己株式親会社が子会社を合併したものとみなす第209〜213項
子会社が親会社に会社分割(分社型)親会社:帳簿価額で受入れ、株主資本相当額を払込資本。子会社:親会社株式を株主資本相当額で親会社持分は内部取引、非支配株主分は非支配株主持分から控除第214〜217項
子会社が親会社に分割型分割分社型の分割+現物配当。抱合せ株式を按分して消滅差損益同上第218〜222項
親会社が子会社に事業譲渡・会社分割対価が現金:移転損益(帳簿価額基準)。株式のみ:子会社株式=株主資本相当額。混合:現金が超えた分だけ移転利益移転損益は消去、持分の変動は資本剰余金第223〜232項
親会社が子会社に分割型分割子会社の株主(親会社自身)への配当と組み合わせ同上第233〜235項—
株式交換で親会社が子会社を完全子会社化子会社株式の追加取得=対価の時価非支配株主との取引:資本剰余金第236〜238項
株式移転で親会社と子会社が持株会社設立親会社株式=帳簿価額、子会社株式=連結上の帳簿価額(親会社持分)+時価(非支配株主分)非支配株主との取引は資本剰余金、親会社が受け取った持株会社株式は自己株式第239〜241項
子会社同士の合併(対価:現金/株式/混合/自己株式)存続会社は帳簿価額で受入れ、現金超過分はのれん、自己株式なら処分差額。親会社は交換損益か簿価付替え交換損益・のれん・処分差額を消去し、持分の変動は資本剰余金(負なら利益剰余金)第242〜253項
子会社と孫会社の合併親子合併と同じ。中間親会社の連結上の帳簿価額を使う最上位の親会社では非支配株主持分の振替第251項(4)
同一株主(個人)の下の合併帳簿価額で受入れ、株主資本の内訳を引継ぎ(連結なし)第254項
子会社同士の会社分割(分社型・分割型)親会社が子会社に移転する場合に準ずる。承継会社は帳簿価額親会社の連結では持分の変動第254-2〜257項
単独株式移転・単独新設分割設立会社は帳簿価額で受入れ。親会社(分割会社)は子会社株式=株主資本相当額連結上は変化なし第258〜264項
応用 C

共通支配下の取引の各形式 ── 第200〜267項の地図

📍 ラボの場所:応用タブ C
ハルカ
共通支配下の取引が、親子合併、逆さ合併、会社分割、株式交換、子会社同士の合併と、13行も並んでいます。
先生
形式は多いけれど、柱は2本なんだ。個別は適正な帳簿価額、連結では内部取引としてすべて消去。非支配株主との取引の部分だけが資本剰余金になるよ(企結第41〜46項)。
迷いポイント 親会社が子会社を合併するとき、子会社の個別の帳簿価額で受け入れる?
ハルカ
子会社の決算書の数字をそのまま足せばよいのだと思っていました。
先生
親会社の個別には、連結上の帳簿価額で受け入れるんだ。時価評価した差額や、のれんの未償却残高も含めた数字だよ(適用指針第206項)。連結でもう認識している金額を、個別に持ち込むんだ。
ハルカ
子会社の決算書だけを見て、連結の精算表を開くのを忘れて合併の仕訳を切ってしまいそうです。正直、そのつもりでした。
先生
連結の精算表が、合併の仕訳の材料になる、ということだよ。
💡 そうだったのか!
親子合併では連結上の帳簿価額(評価差額・のれん未償却残高を含む)で受け入れます。抱合せ株式との差額は個別の特別損益で、連結では過年度に認識済みです。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 設例・基礎12(親会社が80%子会社を吸収合併)のステップ3「② 親会社持分相当額」を開く

👀 連結上の帳簿価額 2,000 × 80% + のれん 160 = 1,760。抱合せ株式 1,400 との差の 360 が抱合せ株式消滅差益です。

ラボを開く ▶
📙 応用 D ラボの図
① 独立企業要件(適用指針第177項)複数の独立した企業が参加している(親子・兄弟会社だけの結合は共通支配下)② 契約要件(第178・179項)共同支配となる契約等を締結し、重要な経営事項の決定に全員の合意が必要③ 対価要件(第180・180-2項)対価が議決権のある株式のみ。重要な金銭等の交付・買戻し条件・取得の意図がないこと④ その他の支配要件(第181項)議決権比率・取締役の構成・資金関係などから、いずれかの企業が支配していないこと→ 4つとも満たせば共同支配企業の形成(帳簿価額引継ぎ)。1つでも欠ければ原則として取得付録のフローチャートで判定順を確認する企結第37項・適用指針第175〜181項
応用 D

共同支配企業の形成の判定 ── 4つの要件

📍 ラボの場所:応用タブ D
ハルカ
独立企業要件、契約要件、対価要件、その他の支配要件の4つの箱が上から並んでいます。
先生
共同支配企業の形成になるのは、この4つを全部満たしたときだけなんだ。1つでも欠ければ原則として取得になるよ(企結第37項、適用指針第175〜181項)。
ハルカ
連結範囲ラボの応用編で、合弁会社はどの出資者の子会社でもなく、各出資者の関連会社として持分法、とやりました。それと同じ会社ですか。
先生
よく覚えていたね。投資する側から見た連結範囲の話がそれで、作るときの会計処理がこの判定なんだ。
迷いポイント 出資比率が50%ずつなら、それだけで共同支配企業になる?
ハルカ
半分ずつ持っていれば、どちらも支配していないので、共同支配で決まりだと思っていました。
先生
比率だけでは決まらないんだ。重要な経営事項を全員の合意で決める契約が必要だし、対価が議決権のある株式だけで、取締役会の構成などからどちらかが支配していないことも確かめるよ。
ハルカ
50%ずつなのに共同支配と認めてもらえないなんて、仲良しの証明書をたくさん出さないといけないんですね。
先生
証明書の中心は「全員の合意が要る」という契約なんだよ。
💡 そうだったのか!
共同支配企業の形成は4つの要件をすべて満たすときだけ。出資比率50%ずつでも、全員の合意が要る契約などがなければ取得になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 設例・応用13(親会社の異なる子会社同士の合併)のステップ2を開く

👀 共同支配企業Y社は、X社の諸資産を帳簿価額 480 のまま受け入れ、のれんは出ません。

ラボを開く ▶
📝 連結範囲ラボ【応用編】(合弁会社・子会社にならない例外)記事を読む ▶
📙 応用 E ラボの図
区分主な注記事項根拠
取得(重要な企業結合)被取得企業の名称・事業内容・結合理由・企業結合日・法的形式・結合後の名称・取得した議決権比率・取得企業を決定するに至った主な根拠/連結損益計算書に含まれる被取得企業の業績の期間/取得原価の算定(対価の種類ごとの内訳、株式の交換比率とその算定方法、交付株式数)/取得関連費用の主な内訳と金額/のれんの金額・発生原因・償却方法・償却期間(負ののれんの金額と原因)/取得原価の配分(資産・負債の主な内訳)/条件付取得対価の内容と方針/暫定的な会計処理の内容と確定時の修正/当期首に完了したと仮定した場合の連結損益計算書への影響の概算額企結第49〜50項、適用指針第306〜309・326・327項
共通支配下の取引等結合当事企業の名称・事業内容・結合理由・企業結合日・法的形式/実施した会計処理の概要/子会社株式の追加取得の取得原価と対価の種類別内訳/非支配株主との取引に係る親会社の持分変動に関する事項(資本剰余金の主な変動要因と金額)企結第52項
共同支配企業の形成結合当事企業の名称・事業内容・結合理由・企業結合日・法的形式/共同支配企業の形成と判定した理由/実施した会計処理の概要企結第54項
事業分離(分離元企業)分離先企業の名称・分離した事業の内容・事業分離を行った主な理由・事業分離日・法的形式を含む取引の概要/実施した会計処理の概要(移転損益の金額、移転した事業に係る資産・負債の適正な帳簿価額とその主な内訳、会計処理)/分離した事業が含まれていた報告セグメント/当期の損益計算書に計上されている分離した事業に係る損益の概算額/継続的関与の概要分離第28項
結合当事企業の株主結合企業・被結合企業の名称・事業内容・企業結合を行った主な理由・企業結合日・法的形式/実施した会計処理の概要(交換損益の金額など)/報告セグメント/損益の概算額分離第54項
重要な後発事象貸借対照表日後に完了した企業結合・事業分離、又は主要条件が合意されたもの企結第55項、分離第31・56項
連結を作らない場合の逆取得パーチェス法を適用したとした場合の、のれん・取得原価の配分などの金額企結第36項、適用指針第307項
応用 E

開示・注記 ── 取得・共通支配下・事業分離で何を書くか

📍 ラボの場所:応用タブ E
ハルカ
注記事項の表です。取得、共通支配下、共同支配企業、事業分離、株主で、書くことが違うんですね。
先生
そうなんだ。取得なら、取得原価の内訳、のれんの金額と発生原因と償却期間、配分した資産・負債の内訳などを書くよ(企結第49項)。
迷いポイント 企業結合が当期首に完了していたら、という仮定の数字まで書かないといけない?
ハルカ
実際に起きていない期間の損益なので、書かなくてよいと思っていました。
先生
影響の概算額として注記するんだ(第49項(5))。ただし実務的に算定可能な項目でよく、算定の方法と監査人の確認の有無も書くよ(適用指針第326・327項)。
💡 そうだったのか!
取得の注記には、のれんの発生原因・償却期間や配分の内訳に加えて、当期首に完了したと仮定した影響の概算額も入ります。
📝 企業結合注記ナビゲーターβ(有価証券報告書の企業結合等関係の注記を横断検索)ナビを開く ▶
🔗 連結との関係 ④ ラボの図
段階取得に係る差益:個別と連結0個別財務諸表30連結財務諸表連結でだけ出る
段階取得に係る差益(連結でだけ出る)

個別は原価の合計なので差益なし。連結で保有株式を企業結合日の時価に測り直す(企結第25項(2))。

設例:基礎2・応用1

損益個別連結理由
段階取得に係る差損益出ない出る連結は企業結合日の時価で測り直す(企結第25項(2))
取得関連費用(株式取得)子会社株式に含める費用資本連結実務指針第8・46-2項
抱合せ株式消滅差損益出る(特別損益)消える連結では過年度に認識済み(適用指針第208項)
共通支配下の移転損益出る消える未実現損益の消去に準ずる(第225・232項)
株主側の交換損益(子会社同士)出る消える未実現損益の消去に準ずる(第245・253項)
持分変動差額出ない出る(持分法)分離第20項(2)
負ののれん発生益出る(合併)出る(株式取得でも)企結第33項・連結第24項
🔗 「連結でだけ出る損益」は支配獲得日の時価測定から、「連結で消える損益」はグループ内取引の消去から生じる。どちらも連結会計基準の2つの柱(第20項と第35・36項)。
🔗 連結 ④

個別では出るが連結では消える/連結でだけ出る損益

📍 ラボの場所:🔗 連結との関係タブ ④
ハルカ
個別と連結の棒が並んでいます。段階取得に係る差益は、個別がゼロで、連結が 30 です。
先生
このタブには、同じ取引でも個別と連結で損益の有無が逆になるものを集めたんだ。連結でだけ出る損益と、個別で出て連結で消える損益の2種類があるよ。
迷いポイント 関連会社に事業を移して持分比率が下がったときの差額は、子会社のときと同じく資本剰余金?
ハルカ
子会社なら資本剰余金だったので、関連会社でも同じだと思っていました。
先生
関連会社なら持分変動差額として損益にするんだ(分離第20項(2))。支配が続いている間の持分の変動だけが資本取引になるんだよ。
ハルカ
持分法ラボの応用編で、持分法の持分変動は資本剰余金ではなく損益、とやりました。あれと同じですね。
先生
そのとおりだよ。支配があるかどうかで、行き先が資本剰余金か損益かに分かれるんだ。
💡 そうだったのか!
連結でだけ出る損益は時価での測り直しから、連結で消える損益はグループ内取引の消去から生じます。関連会社への持分の変動は損益です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 🔗 連結との関係タブ④で「抱合せ株式消滅差益」を押す

👀 個別 360、連結 0。親子合併の差益は、連結では過年度に認識済みなので消えます。

ラボを開く ▶
📝 持分法ラボ【応用編】(未実現利益・持分変動・債務超過)記事を読む ▶
📙 応用 F ラボの要点
応用F のれんの償却の見直し動向(ラボの要点)
  • 現行:20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却し、減損の対象にもなる(企結第32項、適用指針第77項)
  • ASBJは2026年9月に「のれんの会計処理及び関連する開示の検討」を新規テーマとした
  • 論点:償却期間・償却方法の考え方の明確化と、のれん償却前の営業利益など償却の影響を取り除いた情報の提供(第585回・2026年10月5日)
  • 審議中の内容は結論ではない。基準が改正されるまでは第32項のまま
  • いまできる備え:償却期間の根拠(事業計画の期間、超過収益力の持続期間)を文書化しておく
応用 F

のれんの償却の見直し動向 ── ASBJの審議(2026年10月〜)

📍 ラボの場所:応用タブ F
ハルカ
IFRSではのれんを償却しないと聞きました。日本基準も償却しなくなるのですか。
先生
ASBJが2026年9月に新しいテーマとして取り上げて、10月から審議を始めたところなんだ。論点は、償却期間と償却方法の考え方をはっきりさせることと、償却の影響を除いた利益の情報をどう出すかだよ。
迷いポイント 審議が始まったなら、もう償却をやめる準備をしてよい?
ハルカ
どうせ変わるなら、今のうちに償却年数を長くしておく方がよいのかと思いました。
先生
審議中の内容は結論ではないので、実務は現行の第32項のままなんだ。いまできるのは、償却期間の根拠を文書にしておくことだよ。どちらに改正されても、その説明は必ず求められるからね。
💡 そうだったのか!
のれんの償却は改正が公表されるまで現行の第32項のままです。備えとして、償却期間の根拠を文書化しておきます。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて企業結合・事業分離ラボの画面そのものです。応用タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

企業結合・事業分離ラボを開く ▶
📝 企業結合・事業分離ラボ【基礎編】(取得とのれん・共通支配下の取引・事業分離)基礎編を読む ▶
📝 設例・取得編(基礎1〜6、応用1〜3)設例編を読む ▶
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る学習ノートへ ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
被取得企業の繰延ヘッジ損益や退職給付の未認識項目は引き継ぐ?引き継がない。企業結合日の時価で受け入れ直す(適用指針第67・68項)応用A
株式移転の子会社株式はどちらも時価?取得企業株式は帳簿価額、被取得企業株式は時価(第121項)応用B
親子合併は子会社の個別の帳簿価額で受け入れる?連結上の帳簿価額(評価差額・のれん未償却残高を含む)(第206項)応用C
出資比率50%ずつなら共同支配企業?4要件をすべて満たすときだけ。全員の合意が要る契約などが必要(第175〜181項)応用D
当期首に完了したと仮定した数字も注記する?影響の概算額として注記する。実務的に算定可能な項目でよい(企結第49項(5))応用E
関連会社への事業移転の持分変動も資本剰余金?関連会社なら持分変動差額(損益)(分離第20項(2))🔗④
審議が始まったら償却をやめる準備をしてよい?改正が公表されるまで第32項のまま。償却期間の根拠を文書化しておく応用F
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。取得は企業結合日の時価で受け入れ直すので、相手の帳簿の調整項目は引き継がない。逆取得と株式移転は取得企業が帳簿価額、共通支配下は連結上の帳簿価額で、連結では消える。共同支配企業は4つの要件がそろったときだけなんだ。
ハルカ
基礎編では型と席を決めるだけで精一杯でした。今日は、同じ形式でも型と個別・連結で答えが変わるのを表で確かめられたので、仕訳を切る前に何を聞けばよいか分かってきました。
先生
仕訳の前に質問が出てくるようになったのは、大きな前進だよ。
ハルカ
次に組織再編のニュースを見たら、早見表のどの列か、まず考えてみます。…新聞を読むのに、時間が倍かかりそうですが。
先生
倍かかった分だけ、記事の裏側が見えるようになるよ。次の設例・取得編では、ラボの設例を1つずつ、仕訳と一緒に見ていこうか。

参考資料

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(2019年1月16日最終改正・2026年1月9日までの修正反映)、企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(2013年9月13日最終改正)、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(2024年9月13日最終改正・2026年10月16日までの修正反映)、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」。基準確認日:2026年10月26日。ラボの設例は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の設例の数値は画面に出していません)。

シリーズ:基礎編/応用編 / 設例編:取得編・逆取得・株式交換・株式移転編・事業分離編・共同支配企業と合併編・会社分割・株式交換編(共通支配下)・子会社同士の合併と株主編・税効果編 / 税務調整編 / 関連:連結範囲ラボ【応用編】(合弁会社・子会社にならない例外)/持分法ラボ【応用編】(未実現利益・持分変動・債務超過)/企業結合注記ナビゲーターβ(有価証券報告書の企業結合等関係の注記を横断検索)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。