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企業結合・事業分離ラボ【税務調整編】|先生と一緒に図で学ぶ適格・非適格と資産調整勘定・別表四と別表五(一)

企業結合・事業分離ラボ【税務調整編】|先生と一緒に図で学ぶ適格・非適格と資産調整勘定・別表四と別表五(一)

無料の学習ツール「企業結合・事業分離ラボ」の読み方ガイドです。ラボの「🧾 税務調整」タブを上から順に、会計と法人税の違いと、別表四・別表五(一)の書き方を先生と生徒の会話形式で見ていきます。会計処理そのものは基礎編「応用編」「設例編」で扱っています。設例の会社と数値はすべて架空の例です。別表はラボと同じ簡略版で、解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の設例
設例の条件(税務調整タブの初期値)
企業結合取得とされた吸収合併
取得原価(対価の時価)1,000
識別可能純資産の時価800
税務上の区分非適格合併(資産調整勘定 200)
実効税率30%(繰延税金資産は全額回収可能と仮定)
償却会計のれん 10年/資産調整勘定 60か月
はじめに

今日の題材 ── 同じ合併を、法人税の目で見る

📍 ラボの場所:税務調整タブ ④「設例の条件」
ハルカ
先生、企業結合の会計は設例編まで読みました。のれんは会計で20年以内に償却しましたが、申告書でもそのまま損金でよいのですか。
先生
そこが今日の主題なんだ。法人税では、会計の「取得か否か」ではなく、組織再編が適格か非適格かで扱いが決まるよ。非適格なら、のれんに似た資産調整勘定が出てくるんだ。
ハルカ
取得原価 1,000、時価純資産 800 の非適格合併ですね。差の 200 が資産調整勘定ですか。
先生
そう。ただ会計のれんは 200 ではなく 140 になるんだ。その理由も含めて、税務調整タブの6つの節を上から順に読んでいこうか。
税務調整タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
🧾 税務 1 ラボの図
📒 会計企業結合基準・事業分離基準
差
🧾 税務(法人税)法人税法第62条〜第62条の9
取得:識別可能資産・負債を時価で受け入れ(企結第28項)
≒
非適格合併:被合併法人が時価で譲渡したものとして課税、合併法人は時価で取得(法人税法第62条)
取得:取得原価と時価純資産の差はのれん。20年以内で償却(企結第32項)。非適格で資産調整勘定が生じるときは、その額を一時差異として繰延税金資産を計上し、残りがのれん(適用指針第378-3項)
≠
非適格:対価と時価純資産の差は資産調整勘定。60か月で均等に損金算入(法人税法第62条の8第1・4・5項)
取得:負ののれんは発生年度の利益(企結第33項)
≠
非適格:対価が時価純資産に満たない額は差額負債調整勘定。60か月で均等に益金算入(第62条の8第3・7・8項)
共通支配下・共同支配企業の形成:帳簿価額で引継ぎ(企結第38・41項)
≒
適格合併:帳簿価額で引継ぎ、譲渡損益なし。資産調整勘定は生じない(法人税法第62条の2)
取得関連費用:発生時の費用(企結第26項)
≠
合併・分割に要した費用は損金。株式取得なら付随費用として株式の取得価額(法人税法施行令第119条第1項第1号)
分離元企業の移転損益(分離第10項)、株主の交換損益(第32項)
≠
適格なら譲渡損益を繰り延べ、非適格なら時価で譲渡損益。株主は合併法人株式のみの交付なら譲渡損益なし(法人税法第61条の2第2項)
税務 1

会計と税務の違い ── 会計は「取得か否か」、税務は「適格か否か」で分かれる

📍 ラボの場所:税務調整タブ 1
ハルカ
左が会計、右が税務で、取得なら時価、非適格合併なら時価。共通支配下なら帳簿価額、適格合併なら帳簿価額。似ているようで、軸が違うんですね。
先生
会計は支配を獲得したかで「取得」を判定して、税務は適格要件を満たすかで帳簿価額の引継ぎか時価譲渡かを決めるんだ。2つの軸は別々だから、組合せで4通りのずれが生じるよ。
迷いポイント 会計で「取得」と判定したら、税務も非適格になる?
ハルカ
会計で時価にするなら、税務も時価で受け入れるのが自然だと思っていました。
先生
会計が取得でも、税務は適格(帳簿価額引継ぎ)ということはよくあるんだ。その場合、会計にはのれんがあるのに、税務には資産調整勘定がない。のれん償却は毎年加算になるよ。
ハルカ
会計と税務で、同じ合併に別々の名札が付いているんですね。名札を一枚しか見ずに、受付を通り過ぎようとしていました。
先生
二枚の名札を両方確かめてから、通るようにしようか。
💡 そうだったのか!
会計の取得・共通支配下と、税務の適格・非適格は別の判定です。組合せで4通りのずれが生じ、取得×適格ではのれん償却が毎年加算になります。
🧾 税務 2 ラボの図
加算所得が増える減算所得が減る赤字=税務では損金にならない・計上しない緑字=税務の損金(小さい文字)=根拠
論点📒 会計🧾 税務(法人税)📝 調整と別表
のれん(取得×非適格)
  • 資産調整勘定を一時差異とみて繰延税金資産を計上し、配分残余がのれん(適用指針第71・378-3項)
  • のれんは20年以内で償却(企結第32項)
  • 繰延税金資産は資産調整勘定の損金算入に合わせて取り崩す
  • 資産調整勘定を60か月で均等に損金算入(法人税法第62条の8第4・5項)
  • 会計の償却年数と無関係に5年
別表四のれん償却を加算、資産調整勘定の損金算入を減算、繰延税金資産の取崩し(法人税等調整額)を加算(いずれも留保)
別表五(一)のれんと資産調整勘定の差、繰延税金資産の2行
  • 会計の償却が終わると合計ゼロに戻る
のれん(取得×適格)
  • 取得原価と時価純資産の差が正ならのれん、負なら負ののれん(差額ゼロならどちらも出ない)
  • 適格でも会計の処理は変わらない
  • 適格合併は帳簿価額引継ぎ
  • 資産調整勘定は生じず、のれん償却は損金にならない(法人税法第62条の2)
別表四のれん償却額を加算(留保)
別表五(一)企業結合日にのれん相当額を▲で記載(資本金等の額との調整)し、毎年の加算で減っていく
  • のれんの行は会計の償却が終わるとゼロになるが、資本金等の額の側の調整は残る(繰延税金は認識しない:税効果適用指針第43項)
負ののれん配分を見直してもなお残る額は発生年度の利益(企結第33項)非適格:差額負債調整勘定として60か月で均等に益金算入(法人税法第62条の8第3・7・8項)
別表四発生年度は益金不算入分を減算(留保)、2〜5年目は益金算入分を加算(留保)
別表五(一)負ののれんの差額を5年で解消
識別可能資産の時価評価(取得×適格)
  • 時価で受け入れ(企結第28項)
  • 土地の評価益・無形資産の認識など
  • 帳簿価額引継ぎ(法人税法第62条の2)
  • 評価益は益金にならず、無形資産の償却も損金にならない
別表四無形資産の償却額・減価償却の増加分を加算(留保)
  • 土地は売却時に減算
別表五(一)資産ごとに評価差額の残高(将来加算一時差異:繰延税金負債)
識別可能資産の時価評価(取得×非適格)時価で受け入れ(企結第28項)
  • 時価で取得(法人税法第62条)
  • 会計と原則一致
  • 評価方法の差(鑑定評価の扱いなど)があれば差異
別表四原則なし
  • 時価の差があれば減価償却の差を加算・減算
別表五(一)差があれば資産ごとに残高
取得関連費用
  • 発生時の費用(企結第26項)
  • 株式取得なら個別は子会社株式に含め、連結で費用(資本連結実務指針第8項)
  • 合併・分割に要した費用は損金
  • 株式取得の付随費用は株式の取得価額に含める(法人税法施行令第119条第1項第1号)
別表四合併なら差なし
  • 株式取得で会計が費用処理していれば加算(留保)
別表五(一)子会社株式の取得価額の差として繰越し
条件付取得対価(業績条件)確実になった時点で取得原価とのれんを追加(企結第27項(1))
  • 非適格:対価の追加は資産調整勘定の調整
  • 適格:株式の追加交付のみ
別表四追加したのれんの償却と税務の差を加算・減算
別表五(一)のれんの差額に含めて繰越し
共通支配下の合併(適格)
  • 帳簿価額(連結上の帳簿価額)で受入れ
  • 抱合せ株式消滅差損益は特別損益(適用指針第206項)
  • 帳簿価額引継ぎ
  • 抱合せ株式については譲渡損益もみなし配当も生じない(法人税法第62条の2、第61条の2第3項、第24条第1項第1号)
別表四抱合せ株式消滅差益を減算(差損は加算)
  • 処分は留保
別表五(一)資本金等の額と利益積立金額の引継ぎ(別表五(一)の付表で調整)
共通支配下の合併(非適格)帳簿価額で受入れ(企結第41項)
  • 時価で取得(法人税法第62条)
  • 資産調整勘定・負債調整勘定が生じる
別表四税務の資産調整勘定の損金算入を減算、評価差額に係る償却の差を加算・減算
別表五(一)資産ごとの評価差額と資産調整勘定の残高
分離元企業の移転損益(適格分社型分割)
  • 子会社化・関連会社化なら移転損益なし(分離第17・20項)
  • それ以外は認識
  • 適格分社型分割:帳簿価額引継ぎで譲渡損益なし
  • 分割承継法人株式の取得価額は移転した資産・負債の税務簿価の純額(法人税法第62条の3、法人税法施行令第119条第1項第7号)
別表四会計で移転損益を認識し税務が適格なら、損益を減算(差損は加算)
別表五(一)子会社株式等の帳簿価額の差として繰越し(応用35)
分離元企業の移転損益(非適格)現金等で清算なら移転損益(分離第14〜16項)
  • 時価で譲渡したものとして譲渡損益(分割型分割は法人税法第62条、分社型分割は通常の資産の譲渡)
  • 会計と原則一致
別表四原則なし
  • 子会社化で会計が損益なしなら、税務の譲渡益を加算(留保)
別表五(一)子会社株式の帳簿価額の差
被結合企業の株主の交換損益現金等なら交換損益、株式のみで子会社・関連会社なら損益なし(分離第32〜44項)
  • 合併法人株式(又は親法人株式)のみの交付なら譲渡損益を繰り延べ(法人税法第61条の2第2項)
  • 金銭等が交付されれば、株式の譲渡損益と、非適格ならみなし配当の有無・金額(第24条第1項第1号)をそれぞれ計算
別表四会計の交換損益と税務の譲渡損益の差を加算・減算
  • みなし配当は受取配当等の益金不算入(第23条)
別表五(一)受け取った株式の帳簿価額の差
のれんの減損
  • 減損損失を認識(減損基準)
  • 償却は続く
  • 資産調整勘定は減損があっても60か月均等(法人税法第62条の8第4項)
  • 評価損の損金算入はない
別表四減損損失を加算(留保)、以後は会計の償却が減る分を減算
別表五(一)減損額を残高に加え、残りの期間で解消
繰越欠損金の引継ぎ(適格合併)
  • 回収可能性があれば繰延税金資産として取得原価に配分(適用指針第73項)
  • のれんが減る
  • 被合併法人の未処理欠損金を引継ぎ(法人税法第57条第2項)
  • 支配関係5年以内などは制限(第3項)
別表四欠損金の当期控除は「欠損金又は災害損失金等の当期控除額」で減算(社外流出扱いの欄)
別表五(一)なし(別表七(一)で管理)
子会社株式(株式交換・株式移転の完全親会社)取得企業株式は帳簿価額、被取得企業株式は時価(適用指針第110・121項)
  • 適格株式交換等:完全親法人の子会社株式の取得価額は、完全子法人の株主数に応じて株主の帳簿価額又は完全子法人の簿価純資産価額を基礎に算定(法人税法施行令第119条第1項)
  • 非適格:時価
別表四なし(株式の取得価額の差は損益を通らない)
別表五(一)子会社株式の取得価額の差(売却時まで繰越し。継続保有なら税効果なし:応用32)
税務 2

差異の一覧表 ── どの処理が、どの別表に出るか

📍 ラボの場所:税務調整タブ 2
ハルカ
のれん、負ののれん、取得関連費用、共通支配下の合併、事業分離、株主の交換損益まで、論点ごとに会計・税務・別表の順に並んでいます。
先生
右端の「調整と別表」を見れば、どの論点が別表四のどちらに出るかが分かるよ。設例編で見た会計処理が、ここで税務と突き合わせになるんだ。
迷いポイント 親子の適格合併で出た抱合せ株式消滅差益は、税務でも益金になる?
ハルカ
会計で特別利益になったので、税務でも所得に入るのだと思っていました。
先生
適格合併では、抱合せ株式について譲渡損益もみなし配当も生じないんだ(法人税法第61条の2第3項、第24条第1項第1号)。だから別表四で減算するよ。差損なら加算なんだ。
ハルカ
会計でせっかく特別利益になったのに、税務では減算で消えてしまうなんて、少しさみしいです。
先生
会計と税務で、それぞれ正しい場所に入っているだけだよ。
💡 そうだったのか!
適格合併の抱合せ株式消滅差益は減算(差損は加算)。差異の一覧表で、会計の処理が別表四のどちらに出るかを論点ごとに確かめられます。
🧾 税務 3 ラボの図
P/L 当期純利益会計の数字から出発別表四(1年分の調整)+ 加算:会計の費用が多すぎる− 減算:税務の損金が多い所得金額 → 法人税「留保」の分だけ別表五(一)(調整の残高を繰り越す)期首 − 減 + 増 = 期末(税務と会計の帳簿の差)一時差異→ 税効果会計
税務 3

別表の書き方 ── 別表四で1年分を調整し、別表五(一)で残高を繰り越す

📍 ラボの場所:税務調整タブ 3
ハルカ
当期純利益から別表四、別表四の「留保」から別表五(一)へ。矢印が一本の道になっています。
先生
別表四は1年分の調整、別表五(一)は残高を繰り越す表なんだ。今日の非適格の設例では、のれんと資産調整勘定の差は年度の配分がずれるだけで、10年で戻るよ。ただ、適格合併のように税務に対応する資産がない場合は、いつも戻るとは限らないんだ。
迷いポイント のれん償却を加算したら、処分は社外流出?
ハルカ
税務では損金にならないお金なので、外に出ていった扱いだと思っていました。
先生
のれん償却の加算は留保なんだ。別表四・別表五(一)ラボで見た「利益積立金に反映するか」で決まるよ。留保は別表五(一)に残高を残すという意味で、必ず戻るという意味ではないんだ。
ハルカ
前に習った「留保か社外流出かは、利益積立金に反映するかで決まる」ですね。ここでもちゃんと使えました。
先生
よく覚えていたね。資産調整勘定の損金算入の減算も、同じく留保だよ。
💡 そうだったのか!
のれん・資産調整勘定の調整はすべて留保。別表四の留保の金額が、別表五(一)の増減に入ります。
📝 別表四・別表五(一)ラボ【基礎編】(留保と社外流出・検算式)記事を読む ▶
🧾 税務 4 ラボの図(1年目)
🧾 企業結合日(非適格・初期値)
資産調整勘定 200 × 30% を繰延税金資産に、残りがのれん
借方金額貸方金額
識別可能純資産(時価)800対価(払込資本又は現金)1,000
繰延税金資産(資産調整勘定分)60
のれん140
会計:のれん償却+法人税等調整額税務:資産調整勘定の損金算入26401年目減算 1426402年目減算 1426403年目減算 1426404年目減算 1426405年目減算 141406年目加算 141407年目加算 141408年目加算 141409年目加算 1414010年目加算 14

この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。企業結合日に資産調整勘定 200 に係る繰延税金資産 60 を計上し、会計のれんは配分残余の 140(適用指針第378-3項)。1〜5年目は税務の損金が先に出て、6年目以降は会計の償却だけが残ります。

1年目:会計はのれん 140 を10年で 14 償却し、繰延税金資産 12 を取り崩す(法人税等調整額)。税務は資産調整勘定 200 を60か月で 40 損金算入。純額は減算(留保)14。
📒 会計の費用(1年目)
  • のれん償却(販売費及び一般管理費)14
  • 法人税等調整額(繰延税金資産 60 を5年で取崩し)12
計 26
🧾 税務の損金(1年目)
  • 資産調整勘定の減額(60か月均等)40
計 40
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 1年目簡略版
区分項目総額①留保②社外流出③
加算のれん償却(税務の資産ではないので損金不算入)1414
加算法人税等調整額(資産調整勘定に係る繰延税金資産の取崩し)1212
減算資産調整勘定損金算入額(200÷60×12か月)4040
所得への影響(加算 − 減算)▲14
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 1年目簡略版
区分(項目)期首現在①当期の減②当期の増③差引翌期首現在④①−②+③
のれん(会計 140)と資産調整勘定(税務 200)の差60401434
繰延税金資産(資産調整勘定分)▲60012▲48
合計(この論点の分)04026▲14

別表五(一)の残高 34/▲48(合計 ▲14)

税務 4(1年目)

設例で書いてみる ── 資産調整勘定の税効果と、会計のれん10年償却 × 税務60か月を別表へ

📍 ラボの場所:税務調整タブ ④ 年度ボタン「1年目」
ハルカ
企業結合日の仕訳で、繰延税金資産 60 を計上して、のれんは 140 になっています。資産調整勘定 200 なのに、会計のれんは 140 なんですね。
先生
資産調整勘定は税務上ののれんだから、その 200 を一時差異とみて、繰延税金資産 60 を先に計上するんだ。この設例は全額回収できる前提だよ。会計のれんは、その後の配分残余の 140 だよ(適用指針第378-3項)。
迷いポイント 資産調整勘定は、会計のれんの10年に合わせて償却する?
ハルカ
同じのれんの仲間なので、会計と同じ10年で損金にすると思っていました。
先生
資産調整勘定は必ず60か月で均等なんだ(法人税法第62条の8第4項)。1年目は、のれん償却 14 と法人税等調整額 12 を加算、資産調整勘定 40 を減算して、差し引き 14 の減算(留保)だよ。
ハルカ
会計が10年かけてのんびり歩くのに、税務は5年で駆け抜けるんですね。同じゴールなのに、マラソンと短距離走くらい違います。
先生
ゴールが同じだから、途中の差を別表で管理するんだよ。
💡 そうだったのか!
非適格合併の資産調整勘定は60か月で均等に損金。企業結合日に資産調整勘定に係る繰延税金資産を計上し、会計のれんはその残余です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 税務調整タブ ④ の「設例の条件」で、会計のれんの償却年数を 10 から 5 にする

👀 会計はのれん償却 28 + 法人税等調整額 12 = 40 で、税務の損金 40 と同じになり、別表四の調整は毎年 0 になります。

ラボを開く ▶
🧾 税務 4 ラボの図(6年目)
🧾 企業結合日(非適格・初期値)
資産調整勘定 200 × 30% を繰延税金資産に、残りがのれん
借方金額貸方金額
識別可能純資産(時価)800対価(払込資本又は現金)1,000
繰延税金資産(資産調整勘定分)60
のれん140
会計:のれん償却+法人税等調整額税務:資産調整勘定の損金算入26401年目減算 1426402年目減算 1426403年目減算 1426404年目減算 1426405年目減算 141406年目加算 141407年目加算 141408年目加算 141409年目加算 1414010年目加算 14

この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。企業結合日に資産調整勘定 200 に係る繰延税金資産 60 を計上し、会計のれんは配分残余の 140(適用指針第378-3項)。1〜5年目は税務の損金が先に出て、6年目以降は会計の償却だけが残ります。

6年目:資産調整勘定はすでに全額損金算入済みで、繰延税金資産もゼロ。会計の償却 14 は全額加算(留保)。
📒 会計の費用(6年目)
  • のれん償却(販売費及び一般管理費)14
  • 法人税等調整額(繰延税金資産 60 を5年で取崩し)0
計 14
🧾 税務の損金(6年目)
  • 資産調整勘定の減額(60か月均等):償却済み0
計 0
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 6年目簡略版
区分項目総額①留保②社外流出③
加算のれん償却(税務の資産ではないので損金不算入)1414
減算なし
所得への影響(加算 − 減算)+14
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 6年目簡略版
区分(項目)期首現在①当期の減②当期の増③差引翌期首現在④①−②+③
のれん(会計 140)と資産調整勘定(税務 200)の差▲70014▲56
繰延税金資産(資産調整勘定分)0000
合計(この論点の分)▲70014▲56

別表五(一)の残高 ▲56/0(合計 ▲56)

税務 4(6年目)

6年目 ── 資産調整勘定は損金算入済み、会計の償却 14 だけが加算

📍 ラボの場所:税務調整タブ ④ 年度ボタン「6年目」
ハルカ
6年目は、資産調整勘定はもう全額損金算入済みで、繰延税金資産もゼロです。会計の償却 14 が全額加算になっています。
先生
1〜5年目は税務の損金が先に出て、6年目以降は会計の償却だけが残るんだ。5年目末の別表五(一)の残高 ▲70 が、6年目から毎年 14 ずつ戻っていくよ。
迷いポイント 5年目末の別表五(一)の残高 ▲70 に、繰延税金を計上する?
ハルカ
別表五(一)に残高があるなら、一時差異として税効果を付けるのだと思っていました。
先生
この ▲70 は、会計のれん 140 のうち未償却の 70 の分で、会計上ののれん自体の差異なんだ。のれんは配分残余だから、税効果は認識しないよ(適用指針第72項)。
💡 そうだったのか!
資産調整勘定の損金算入が終わった後に残る差は会計上ののれん自体の差異で、繰延税金は認識しません。10年目に会計の償却が終わると残高はゼロに戻ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 税務調整タブ ④ の「設例の条件」で、税務上の区分を「適格合併(帳簿価額引継ぎ)」にする
  2. 年度ボタンで 1年目・10年目 を順に選ぶ

👀 資産調整勘定も繰延税金資産も出ず、会計のれん 200 の償却 20 が毎年加算に。別表五(一)ののれんの行は ▲200 から始まり、1年目末 ▲180、10年目末に 0 になります。ただし企業結合日に資本金等の額の側で調整した差は残ります。この動きは、時価と税務簿価に差がないなどの前提を置いた簡略版の設例です。

ラボを開く ▶
🧾 税務 5 ラボの図(1年目末)

1年目末までの繰延税金資産の動き(この設例で実際に計上している額)

繰延税金資産(資産調整勘定分)期首取崩し期末
企業結合日:資産調整勘定 200 × 30%(全額回収可能と仮定)6060
1年目:資産調整勘定の損金算入に合わせて取崩し(法人税等調整額)60▲1248

1年目末の繰延税金資産は 48。資産調整勘定の未償却残高 160 × 30% と一致します。

上の表は、この設例で実際に計上している繰延税金資産(資産調整勘定分、全額回収可能と仮定)の残高推移です。別表五(一)の各行に税率を掛けた「参考額」ではありません。会計のれん自体の差異(適格合併ののれんなど)には繰延税金を認識しません。

税務 5

税効果へのつながり ── 会計のれん自体は認識しない、税務上ののれんは認識する

📍 ラボの場所:税務調整タブ ⑤(1年目末)
ハルカ
繰延税金資産の動きの表です。企業結合日に 60、1年目に 12 を取り崩して、1年目末は 48 です。
先生
全額回収できる前提だから、資産調整勘定の未償却残高 160 × 30% と一致しているね。回収できない分があれば、その分は計上しないんだ(適用指針第71項)。
ハルカ
税効果会計ラボで「会計の簿価と税務の簿価の差が一時差異」と習いました。ここでは、会計に資産調整勘定はないけれど、税務にだけ 160 がある形ですね。
先生
ちゃんと覚えていたね。会計の簿価 0、税務の簿価 160 の将来減算一時差異だと見ればいいんだ。
迷いポイント 別表五(一)の各行の残高に、税率を掛ければ繰延税金資産になる?
ハルカ
別表五(一)の残高はそのまま一時差異なので、全部に 30% を掛ければよいと思っていました。
先生
会計のれん自体の差異には税効果を認識しないから、全部に掛けてはいけないんだ。この表は、実際に計上している資産調整勘定分だけの推移だよ。
💡 そうだったのか!
税務上ののれん(資産調整勘定)は一時差異として繰延税金資産を計上し、会計上ののれん自体には認識しません。のれんの税効果は2段構えです。
📝 税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異・繰延税金資産・回収可能性)記事を読む ▶
🧾 税務 6 ラボの図
  • ✖ 会計で「取得」と判定したので、税務も非適格として時価で処理する✔ 会計の取得・共通支配下と、税務の適格・非適格は別の判定。会計が取得でも税務が適格(帳簿価額引継ぎ)のことは多い
  • ✖ 会計のれんの償却年数に合わせて資産調整勘定を償却する✔ 資産調整勘定は必ず60か月で均等(法人税法第62条の8第4項)。会計の償却年数との差を別表四で調整する
  • ✖ 非適格合併で「のれんには税効果を認識しない」として資産調整勘定にも繰延税金資産を計上しない✔ 税務上ののれん(資産調整勘定)は一時差異。繰延税金資産を計上してから会計のれんを算定する(適用指針第378-3項)。認識しないのは会計のれん自体の差異
  • ✖ 適格合併ののれん償却を「永久差異」として別表五(一)に載せない✔ のれん償却否認は留保項目。別表五(一)に残高として繰り越す(繰延税金を認識しないのは税効果会計上の扱いで、別表の記載とは別)
  • ✖ 負ののれん発生益を全額そのまま所得に含める✔ 非適格なら差額負債調整勘定として60か月で益金算入。発生年度は益金不算入分を減算し、翌年以降に加算
  • ✖ 株式取得のアドバイザー費用を会計どおり損金にする✔ 株式取得の付随費用は株式の取得価額(法人税法施行令第119条第1項第1号)。会計が費用処理していれば加算(留保)
  • ✖ 合併で株式と現金を受け取った株主に譲渡損益だけを計上する✔ 株式以外の金銭等が交付される合併は原則として非適格(法令上の例外あり)。株主側では、みなし配当の有無・金額(法人税法第24条第1項第1号)と株式の譲渡損益をそれぞれ計算し、会計の交換損益との差を調整
  • ✖ 適格合併で引き継いだ繰越欠損金を無条件に使う✔ 支配関係が合併前5年以内に生じた場合などは引継ぎ・使用に制限(法人税法第57条第3項・第4項)。会計の繰延税金資産の回収可能性の判断にも影響
税務 6

よくある誤り ── 申告書を作る前のチェック

📍 ラボの場所:税務調整タブ 6
ハルカ
誤りと正しい扱いが8組並んでいます。今日の話がほとんど入っていますね。
先生
申告書を作る前のチェックリストとして使えるよ。特に適格か非適格か、資産調整勘定の60か月、資産調整勘定の税効果は、実務家でも間違いやすいところなんだ。
迷いポイント 合併で株式と現金を受け取った株主は、譲渡損益だけを計上すればよい?
ハルカ
会計の交換損益と同じように、譲渡損益だけを考えればよいと思っていました。
先生
株式以外の金銭等が交付される合併は、原則として非適格なんだ。例外もあるので個別に確かめるよ。株主側では、みなし配当の有無と金額、株式の譲渡損益をそれぞれ計算するんだ(法人税法第24条)。
ハルカ
みなし配当という名前なのに、本物の配当と同じように計算の対象になるんですね。「みなし」に油断していました。
先生
名前に「みなし」と付いていても、申告書ではしっかり働くんだよ。
💡 そうだったのか!
チェックの要は、適格・非適格の判定、資産調整勘定の60か月均等、資産調整勘定の税効果、株主のみなし配当です。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて企業結合・事業分離ラボの画面そのものです。税務調整タブを開けば、同じ図を見ながら、数字を変えて別表の動きを確かめられます。

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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
会計で「取得」なら税務も非適格?別の判定。取得×適格なら会計にのれん、税務に資産調整勘定なしで、のれん償却は毎年加算(法62の2)税務1
適格合併の抱合せ株式消滅差益は益金?譲渡損益もみなし配当も生じない。別表四で減算(差損は加算)(法61の2③)税務2
のれん償却の加算は社外流出?留保。資産調整勘定の減算も留保。留保は別表五(一)に残高を残す意味で、必ず戻るとは限らない税務3
資産調整勘定は会計のれんの年数で償却?必ず60か月均等(法62の8④)。差は別表四で調整税務4
5年目末の残高 ▲70 に繰延税金を計上?会計上ののれん自体の差異なので認識しない(適用指針第72項)税務4
別表五(一)の各行に税率を掛ければ繰延税金資産?資産調整勘定分だけ。会計のれん自体の差異には認識しない(第378-3項)税務5
株式と現金を受け取った株主は譲渡損益だけ?原則として非適格(例外あり)。みなし配当の有無・金額と株式譲渡損益をそれぞれ計算(法24)税務6
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。税務は適格か非適格かで決まる。非適格なら資産調整勘定を60か月で損金にして、その税効果を先に計上してから会計のれんを出す。会計上ののれん自体には税効果を認識しない。今日の非適格の設例では、10年で累計が一致するんだ。
ハルカ
設例編まで会計の目で読んできた合併を、今日は法人税の目で読み直しました。同じ 200 が、会計では 140 ののれんと 60 の繰延税金資産に分かれる理由が、別表を書いてやっと腹に落ちました。
先生
会計と税務を行き来できるようになったのは、大きな進歩だね。
ハルカ
これで企業結合のシリーズは全部読み終えました。次に組織再編の話を聞いたら、「それは取得ですか、適格ですか」と二つ続けて聞き返せそうです。
先生
二つ続けて聞ければ、もう一人前の質問だよ。基礎編から読み返すと、図の見え方がきっと変わるよ。

参考資料

法人税法第2条第12号の8(適格合併)・第24条第1項第1号(みなし配当)・第57条第2項〜第4項(欠損金の引継ぎと制限)・第61条の2(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)・第62条(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)・第62条の2(適格合併及び適格分割型分割による資産等の帳簿価額による引継ぎ)・第62条の8(非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等)、法人税法施行令第119条・第123条の10、法人税申告書 別表四・別表五(一)の記載要領(国税庁)。基準確認日:2026年10月27日。別表の表示はラボと同じ「簡略版」で、項目名や行のまとめ方は会社ごとに異なります。実際の申告は、最新の法令・通達と顧問税理士の確認のうえで行ってください。 会計:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」、企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」。

シリーズ:基礎編/応用編/設例・取得編/設例・逆取得・株式交換・株式移転編/設例・事業分離編/設例・共同支配企業と合併編/設例・会社分割・株式交換編(共通支配下)/設例・子会社同士の合併と株主編/設例・税効果編/税務調整編(この記事) / ほかのラボの税務調整編:リース会計ラボ【税務調整編】/資産除去債務ラボ【税務調整編】/減損会計ラボ【税務調整編】/棚卸資産ラボ【税務調整編】/外貨建取引ラボ【税務調整編】 / 関連:税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異・繰延税金資産・回収可能性)/別表四・別表五(一)ラボ【基礎編】(留保と社外流出・検算式)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。