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企業結合・事業分離ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ取得とのれん・共通支配下の取引・事業分離

企業結合・事業分離ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ取得とのれん・共通支配下の取引・事業分離

無料の学習ツール「企業結合・事業分離ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社・株価・設例の数値はすべて架空の例です(適用指針の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
事例A:P社がS社を吸収合併する(P社が取得企業)
対価P社株式 20株(企業結合日の株価 @50)
取得原価50 × 20株 = 1,000
S社の諸資産簿価 700 → 時価 760
S社の土地簿価 200 → 時価 300
顧客関連の無形資産(S社の帳簿にない)時価 120
S社の負債400(時価も同額)
識別可能純資産(時価)760+300+120−400 = 780
のれん1,000 − 780 = 220(10年償却なら毎年 22)
はじめに

今日の題材 ── 合併で受け入れる側と、事業を手放す側

📍 ラボの場所:基礎タブ全体・設例・基礎1
ハルカ
先生、会社が合併するとか、事業を切り出して別会社に移すとか、ニュースではよく見ます。でも会計で何が起きているのか、うまく説明できません。
先生
今日はP社がS社を吸収合併する事例Aで考えていこうか。P社は株式を20株渡して、S社の資産と負債をまるごと受け入れるんだ。
ハルカ
払ったのは 1,000、受け入れた純資産は時価で 780。差の 220 がのれんですね。
先生
そのとおりだよ。ただ、この計算に入る前に「どの型の企業結合か」「だれの席で見るか」を決める必要があるんだ。今日は基礎タブの順に、受け入れる側と手放す側の両方を見ていこうか。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 基礎 範囲 ラボの図
支配の獲得企業結合日支配の維持追加取得・一部売却・増資支配の喪失売却・事業の移転企業結合基準(第21号)受け入れる側:取得原価の算定・配分・のれん連結会計基準(第22号)+資本連結実務指針支配獲得後:資本連結・追加取得・一部売却(資本剰余金)事業分離基準(第7号)手放す側・株主側:移転損益/交換損益を出すかどうか同じ買収でも、獲得の瞬間は企業結合基準、その後の持分の増減は連結会計基準が受け持つ。手放す側はいつでも事業分離基準。
基礎 範囲

このラボの位置づけと対象 ── 3つの基準の守備範囲

📍 ラボの場所:基礎タブ 範囲
ハルカ
時間の線の上に、企業結合基準・連結会計基準・事業分離基準の3本の帯が重なっています。
先生
支配を獲得する瞬間は企業結合基準、支配している間の持分の増減は連結会計基準、手放す側と株主は事業分離基準。この分担を最初に押さえておくと、迷いにくいんだ。
迷いポイント 株式を買って子会社にするのも、企業結合基準だけで処理が完結する?
ハルカ
株式取得も企業結合の形式の一つなので、企業結合基準を読めば全部書いてあると思っていました。
先生
個別では子会社株式を取得原価で持つだけなんだ。子会社の資産を時価に直してのれんを出すのは、連結の資本連結手続だよ(連結第20〜24項)。そこで企業結合基準のルールを使うんだ。
ハルカ
これ、資本連結ラボでやった「全面時価評価」と「投資と資本の相殺消去」ですよね。あれが企業結合基準の配分の続きだったんですね。
先生
よく覚えていたね。のれんの計算式も同じ形なんだよ。
💡 そうだったのか!
合併なら個別でのれんまで出ますが、株式取得なら、時価評価とのれんは連結の資本連結手続で出ます。連結会計基準が企業結合基準のルールを参照して動きます。
📝 資本連結ラボ【基礎編】(投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分)記事を読む ▶
📗 基礎 ① ラボの図

上の3つの箱(型)と下の4つの箱(席)はクリックできます。このラボの図はすべて、この見取り図の「どこの話か」を色で示します。
❶ どの型か(企業結合基準第17・37・40項)取得支配を獲得する共同支配企業の形成独立企業が共同で支配共通支配下の取引同じ株主の支配の下で移動❷ だれの席で見るか(適用指針の章立て)結合企業受け入れる側企業結合基準分離元企業手放す側事業分離基準被結合企業の株主株を手放す株主事業分離基準結合企業の株主株を持ち続ける株主事業分離基準
取得 ── 他の企業(事業)の支配を獲得する企業結合(企結第9項)

共同支配企業の形成でも共通支配下の取引でもなければ取得(第17項)。会計処理はパーチェス法:取得企業が被取得企業を時価で買ったとみる。

受け入れる側(結合企業)は、取得原価を識別可能資産・負債の時価に配分し、残りをのれんにする(第28〜33項)。

基礎 ①

見取り図 ── 3つの型と4つの席

📍 ラボの場所:基礎タブ ①
ハルカ
上に「取得」「共同支配企業の形成」「共通支配下の取引」の3つの型、下に4つの席が並んでいます。
先生
どんな組織再編も、まず型を決めて、次に席を決めるんだ。取得なら時価、あとの2つは帳簿価額で引き継ぐよ。
迷いポイント 合併なら、受け入れた資産はいつも時価で計上する?
ハルカ
合併は「買う」ことだから、全部時価で受け入れるのだと思っていました。
先生
時価で受け入れるのは「取得」の型だけなんだ。親子会社の合併のような共通支配下の取引は、グループの中で移っただけなので帳簿価額のままだよ(企結第41項)。
ハルカ
「共通支配下」という言葉を初めて見たとき、共同で何かを支配する話だと思っていました。「共同支配」と一文字違いで、意味が全然違うんですね。
先生
名前は似ているけれど、片方は同じ親の下、片方は独立した会社どうしなんだ。図の色で分けておくと混ざらないよ。
💡 そうだったのか!
時価で受け入れるのは取得だけ。共同支配企業の形成と共通支配下の取引は帳簿価額で引き継ぎます。同じ合併でも、型が違えば数字が変わります。
📗 基礎 ② ラボの図

同じ工場と機械を買っても、企業結合になるときとならないときがある。違いは?
インプット人・設備・契約・ノウハウプロセス経営資源を動かす仕組みアウトプット製品・サービス・収益有機的一体として機能する経営資源 = 事業(企結第6項)→ 企業結合基準を適用取得原価を配分して残った差額が「のれん」になる
「事業」=企業活動を行うために組織化され、有機的一体として機能する経営資源(企結第6項)

インプットとプロセスがそろい、アウトプットを生む仕組みが動いていれば事業。工場1棟でも、従業員・取引先・運営の仕組みごと受け入れれば事業になりうる。

事業の受入れ(=企業結合、第5項)なら、支払額と識別可能資産・負債の時価の差がのれんになる(第31項)。

基礎 ②

「事業」か、資産の集まりか ── 企業結合基準の入口

📍 ラボの場所:基礎タブ ②
ハルカ
インプット、プロセス、アウトプットの3つの箱がつながっています。
先生
企業結合は「事業」が統合されることなんだ。人や設備や契約に、それを動かす仕組みがそろっていて、収益を生む。それが有機的一体として機能する経営資源だよ(企結第6項)。
迷いポイント 工場の建物と機械だけを買っても、のれんは出る?
ハルカ
時価より高く買ったら、その差はのれんになるのだと思っていました。
先生
事業に当たらない資産の集まりなら、企業結合ではないんだ。支払額を時価の比などで個々の資産に配分し切るので、のれんは出ないよ。
💡 そうだったのか!
のれんが出るのは事業を受け入れたときだけ。資産を買っただけなら、支払額を個々の資産に配分し切ります。
📗 基礎 ③ ラボの図

合併で株式を発行したA社。でも合併後の議決権の7割は旧B社株主。取得企業はどっち?
まず、連結会計基準の考え方で「支配を獲得した企業」を探す(企結第18項・適用指針第32項)明確なら、その企業が取得企業。明確でなければ対価の種類で見る ↓株式を交付した企業= 通常は取得企業(第20項)ただし「必ず」ではない。次の要素を総合的に勘案(第20項(1)〜(5)):(1) 総体としての株主の議決権比率結合後企業で最も大きい(2) 最も大きな議決権を持つ株主過半未満でも最大の株主グループ(3) 取締役等を選解任できる株主重要な意思決定機関の構成員の過半数(4) 取締役会等の構成役員・従業員が事実上支配(5) 株式の交換条件時価を超えるプレミアムを払った側さらに:相対的な規模が著しく大きい企業(第21項)、3社以上なら最初に提案した企業も考慮(第22項)
株式対価では「交付した側=取得企業」が原則だが、株主の議決権・役員構成・プレミアムで覆る

合併比率で相手の株主が過半を取れば、法律上の存続会社でも会計上は被取得企業になりうる(逆取得)。

💡 実務では、合併後の議決権比率表と取締役会の構成表を先に作る。

基礎 ③

取得企業の決定 ── だれが買ったのか

📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
取得企業を決める流れ図です。最初の箱は「連結会計基準の考え方で支配を獲得した企業を探す」になっています。
先生
出発点は支配なんだ。対価が現金なら払った側が取得企業。株式のときは、交付した側が通常は取得企業だけれど、議決権比率や取締役会の構成などで覆ることがあるよ(企結第20項)。
迷いポイント 合併で株式を発行して存続した会社が、必ず取得企業になる?
ハルカ
存続会社が相手を吸収したのだから、存続会社が買った側だと思っていました。
先生
相手の株主が合併後に議決権の過半数を握れば、存続会社の方が会計上は取得される側になるんだ。これを逆取得というよ。存続会社の個別は、相手の資産を帳簿価額で受け入れるんだ(第34項)。
ハルカ
看板は残ったのに、会計の世界では主役を交代させられている…。存続会社が少しかわいそうです。
先生
看板と主役が別、と覚えておけば十分だよ。
💡 そうだったのか!
取得企業は支配を獲得した企業。株式を発行した存続会社でも、議決権の過半数を相手の株主が握れば逆取得になります。
📗 基礎 ④ ラボの図

対価が株式のとき、「いつの株価」で測る?
株価(企業結合日)@50×交付株式数20株=取得原価1,000市場価格のある株式を交付したときは、原則として企業結合日の株価で測る(企結第24項)。合併比率を決めた日の株価ではない。取得関連費用(アドバイザー報酬など)は取得原価に含めず、発生した期の費用(第26項)。
取得原価 = 支払対価となる財の企業結合日の時価(企結第23項)

株式なら企業結合日の株価×交付株式数。被取得企業の時価の方が信頼性が高ければそちらで測る(第23項)。

取得関連費用は費用処理(第26項)。株式交付費も取得原価には入らない(適用指針第49項)。

基礎 ④

取得原価 = 対価の時価 ── 企業結合日に測る

📍 ラボの場所:基礎タブ ④
ハルカ
株価 @50 × 20株 = 1,000 が取得原価ですね。
先生
そう、取得原価は払った対価の企業結合日の時価なんだ(企結第23・24項)。アドバイザー報酬のような取得関連費用は取得原価に入れず、発生した期の費用にするよ(第26項)。
迷いポイント 株価は、合併比率を決めた日のものを使う?
ハルカ
交渉で合併比率を決めた日の株価で、金額が決まるのだと思っていました。
先生
それが、そうではないのだよ。合意した日から企業結合日までに株価が動いても、取得原価は企業結合日の株価で計算し直すんだ。
💡 そうだったのか!
取得原価は企業結合日の株価 × 交付株式数。合意した日の株価ではありません。取得関連費用は取得原価に含めず、その期の費用です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎④の図で「条件付取得対価」を押す

👀 業績条件を達成して追加交付が確実になると、追加の対価 80 から過年度の償却分 8 を引いた 72 がのれんに追加されます。確実になるまでは計上しません。

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📗 基礎 ⑤ ラボの図

同じ1,000を払っても、「何を受け入れたか」をどこまで識別するかで、のれんの金額が変わる。
取得原価(払ったもの)取得原価1,000配分(受け入れたもの)識別可能純資産(時価)780のれん 220配分識別可能資産・負債の内訳諸資産簿価 700 → 時価 760(+60)土地簿価 200 → 時価 300(+100)無形資産(顧客関連)簿価 0 → 時価 120(+120)負債簿価 400 → 時価 400純額 780のれん = 1,000 − 780 = 220
取得原価1,000識別可能純資産(時価)−780うち無形資産120= のれん 220

💡 法律上の権利や分離して譲渡できる無形資産は識別可能資産として配分する(企結第29項・適用指針第58・59項)。識別すればするほど、のれんは小さくなり、その分は無形資産の償却に置き換わる。

🧾 企業結合日(P社の個別財務諸表)
企業結合日(取得企業の個別財務諸表)
借方金額貸方金額
諸資産760負債400
土地300払込資本(資本金等)1,000
無形資産(顧客関連)120
のれん220
基礎 ⑤

取得原価の配分(PPA)とのれん ── 残りがのれん

📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
ハルカ
取得原価 1,000 の箱と、識別可能純資産 780 + のれん 220 の箱が並んでいます。
先生
取得原価を、受け入れた資産・負債の企業結合日の時価に配分していくんだ。S社が帳簿に載せていなかった顧客関連の無形資産 120 も、分離して譲渡できるなら配分の対象だよ(企結第29項)。
迷いポイント 無形資産を識別しなくても、どうせのれんに入るのだから結果は同じ?
ハルカ
無形資産とのれん、どちらに入れても資産の合計は 1,000 なので、変わらないと思っていました。
先生
合計は同じでも、識別しないとのれんが 340 に膨らむんだ。無形資産はその耐用年数で、のれんは効果の及ぶ期間で償却するから、毎年の費用の出方が変わるよ。
💡 そうだったのか!
のれんは配分しきれずに残った差額。無形資産を識別しないと、その分がのれんに紛れ込み、償却の仕方も変わります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎⑤の図で「無形資産を識別しない」を押す
  2. 次に「顧客関連資産 300 を識別」を押す

👀 のれんは 340 → 40 に変わります。取得原価 1,000 は動かず、配分の中身だけが入れ替わります。

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📗 基礎 ⑥ ラボの図

のれんは何年で費用にする? 年数で営業利益の見え方が大きく変わる。
のれん 220 の残高の推移(定額法・10年)X122X222X322X422X522X622X722X822X922X1022黄=当期の償却費(販売費及び一般管理費) 紺=期末残高(無形固定資産)
のれん220償却年数÷10年= 毎年の償却費 22(販売費及び一般管理費)

💡 20年以内の「効果の及ぶ期間」で定額法などにより規則的に償却(企結第32項)。重要性が乏しければ発生年度の費用にできる。残高は減損の対象(適用指針第77項)。

基礎 ⑥

のれんの償却と負ののれん ── 20年以内で規則的に

📍 ラボの場所:基礎タブ ⑥
ハルカ
のれん 220 が 10年で毎年 22 ずつ減っていく棒グラフです。
先生
のれんは20年以内の効果の及ぶ期間で、定額法などで規則的に償却するんだ(企結第32項)。償却費は販売費及び一般管理費なので、営業利益の上で営業利益を減らすよ。
迷いポイント 償却年数は、利益への影響が小さくなるように自由に選んでよい?
ハルカ
20年にしておけば毎年の費用が小さくて済むので、長い方が得だと思っていました。
先生
年数は「効果の及ぶ期間」で見積もるもので、損得で選ぶものではないんだ。合併の目的や事業計画の期間と合っているかを説明できる必要があるよ。
ハルカ
20年にすれば楽になると思ったのに、説明の宿題が増えただけでした。ちょっと悲しいです。
先生
その宿題こそが、注記と監査で見られるところなんだよ。
💡 そうだったのか!
のれんは20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却し、償却費は販管費です。負ののれんは、配分を見直してもなお残れば発生した期の利益です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎⑥の図で「5年」「20年(上限)」を順に押す

👀 毎年の償却費は 44(5年)と 11(20年)。のれん 220 は同じでも、年数で営業利益への影響が4倍違います。

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📗 基礎 ⑦ ラボの図

同じ合併なのに、個別と連結でのれんが違う。差はどこから?
個別財務諸表今回の対価960+以前からの株式(帳簿価額)60取得原価 1,020 − 識別可能純資産 900 = のれん 120損益は出ない(原価の合計のまま)連結財務諸表今回の対価960+以前からの株式(企業結合日の時価)90取得原価 1,050 − 識別可能純資産 900 = のれん 150段階取得に係る差益 30(時価 90 − 帳簿価額 60)
連結のれん150個別のれん−120差30= 段階取得に係る差益と同額

💡 「支配を獲得した日に、全部を時価で買い直した」と見るのが連結。個別は法形式どおり原価を積む。

🧾 連結修正仕訳
連結修正仕訳(保有株式を企業結合日の時価に)
借方金額貸方金額
のれん30段階取得に係る差益30
基礎 ⑦

段階取得 ── 個別と連結で数字が違う

📍 ラボの場所:基礎タブ ⑦
ハルカ
以前から株式を持っていた相手を合併した例ですね。個別はのれん 120、連結はのれん 150 で、30 違います。
先生
個別は、支配を獲得するまでの個々の取引の原価を合計するんだ。以前の株式は帳簿価額 60 のまま。連結は、企業結合日に全部を時価で買い直したと見て、以前の株式も時価 90 に測り直すよ(企結第25項)。
ハルカ
資本連結ラボの応用編でやった段階取得ですね。既存の持分を時価で評価し直して、差額が段階取得に係る損益でした。
先生
そのとおりだよ。あのときは株式取得だったけれど、合併でも連結では同じ考え方なんだ。
迷いポイント 合併なら、個別財務諸表でも段階取得に係る差益が出る?
ハルカ
合併は個別でPPAまでするので、個別でも時価に直して差益を出すのだと思っていました。
先生
個別では出さないんだ。原価の合計 1,020 が取得原価で、損益は出ないよ。差益 30 は連結修正で「のれん/段階取得に係る差益」として足すんだ。
💡 そうだったのか!
段階取得は個別は原価の合計、連結は企業結合日の時価。差額 30 は連結だけの段階取得に係る差益で、連結ののれんもその分だけ大きくなります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎⑦の図で「並べて見る」を押す

👀 連結のれん 150 − 個別のれん 120 = 30。段階取得に係る差益と同じ額です。

ラボを開く ▶
📝 資本連結ラボ【応用編】(段階取得・追加取得・一部売却)記事を読む ▶
📗 基礎 ⑧ ラボの図

親会社が子会社に事業を売った。時価で測る? 損益は出る?
企業集団(同じ株主の支配の下)親会社 P(手放す側)p事業 帳簿価額 180(時価 260)株主資本相当額 140p事業を移転現金 260子会社 S(受け入れる側)帳簿価額 180 で受け入れ差額 120 はのれん(第41項)個別:P社は移転損益 120(現金 260 − 株主資本相当額 140)を計上(分離第14項(1))S社は帳簿価額で受け入れ、対価との差をのれんにする(適用指針第224項)。時価では評価しない
個別では帳簿価額で引き継ぐ(企結第41〜43項)

時価では測らない。移転した資産・負債の差額は純資産(第42項)、対価として受け取った株式の取得原価も帳簿価額ベース(第43項)。

現金対価なら手放す側に移転損益が出る(分離第14項)が、これは集団内の「内部の損益」。

🧾 事業譲渡日(P社の個別財務諸表)
親会社(分離元)の個別:現金は帳簿価額(=額面)で計上、株主資本相当額との差が移転損益
借方金額貸方金額
現金260諸資産(p事業)180
評価・換算差額等40移転損益120
🧾 連結修正仕訳
連結修正:内部取引として消去(未実現損益の消去に準ずる)
借方金額貸方金額
移転損益120のれん120
基礎 ⑧

共通支配下の取引 ── 帳簿価額で引き継ぎ、連結では消える

📍 ラボの場所:基礎タブ ⑧
ハルカ
親会社P社がp事業を60%子会社S社に現金 260 で譲渡して、P社には移転損益 120 が出ています。
先生
同じ株主の支配の下での移動なので、S社は時価ではなく帳簿価額 180 で受け入れるんだ。P社の個別には、現金 260 と株主資本相当額 140 の差の移転損益 120 が出るよ。
迷いポイント 親会社の個別で出た移転損益 120 は、連結でも利益として残る?
ハルカ
現金を受け取って利益が出たのだから、連結でもそのまま利益だと思っていました。
先生
連結から見るとグループの中で事業が移っただけなので、内部取引として消すんだ(企結第44項)。移転損益 120 も、S社が付けたのれん 120 も、連結修正で消えるよ。
ハルカ
グループ全体で見ると、右のポケットの財布を左のポケットに移しただけなんですね。それで「儲かった」と喜んでいたのが恥ずかしいです。
先生
ポケットの中身は増えていない、ということだよ。
💡 そうだったのか!
共通支配下の取引は個別は帳簿価額、連結では内部取引として消去。個別で出た移転損益やのれんは、連結では残りません。
📗 基礎 ⑨ ラボの図

事業を手放して何を受け取った? 現金なら「売った」、株式なら「形を変えて持ち続けている」。
分離元企業(手放す側):対価=分離先企業の株式/相手=子会社になる/子会社へ投資は継続移転損益なし・簿価で付替え投資は清算時価で測り、移転損益を認識受け取った株式を通じて、事業への投資を続けている(分離第17〜19項)
投資の継続 → 移転損益を認識しない(分離第10項(2))

移転損益は認識しない。株式の取得原価=移転した事業の株主資本相当額(分離第17〜19項)。

受け取った株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額(資産・負債の帳簿価額の差額から評価・換算差額等を除いた額)。

💡 「子会社になるか」は連結範囲ラボの支配力基準で判定。相手が子会社・関連会社かどうかで、同じ現金対価でも帳簿価額か時価かが変わる。

🧾 事業分離日(A社の個別財務諸表)
分離元企業の個別:子会社株式の取得原価=移転した事業の株主資本相当額
借方金額貸方金額
子会社株式420諸資産(a事業)500
評価・換算差額等80
基礎 ⑨

事業分離 ── 投資の継続か清算か

📍 ラボの場所:基礎タブ ⑨
ハルカ
天秤の図です。分離先の株式だけを受け取って、相手が子会社になると「投資は継続」に傾いています。
先生
事業を手放す側は、受け取った対価で判定するんだ。現金のように事業と明らかに異なる資産なら投資は清算で移転損益を出す。子会社株式・関連会社株式だけなら投資は継続だよ(分離第10項)。
迷いポイント 事業を渡して株式をもらったら、事業の時価と帳簿価額の差は利益になる?
ハルカ
時価 700 の事業を渡して株式をもらったのだから、株主資本相当額 420 との差の 280 は利益だと思っていました。
先生
受け取った株式で事業への投資を続けているので、移転損益は出さないんだ。子会社株式の取得原価は、移転した事業の株主資本相当額 420 になるよ(分離第17項)。
💡 そうだったのか!
事業分離は投資の継続か清算かで決まります。子会社株式・関連会社株式だけを受け取れば継続で、株主資本相当額で付け替えるだけです。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎⑨の図で「現金等だけ受け取る」を押す
  2. 次に「分離先の株式だけ受け取る」に戻す

👀 天秤が「投資は清算 → 移転損益を認識」に傾き、株式に戻すと「投資は継続 → 移転損益なし」に戻ります。

ラボを開く ▶
📗 基礎 ⑩ ラボの図

合併で持株が別会社の株に変わった。売ったのと同じ?
被結合企業の株主被結合企業の株式帳簿価額で持っている合併・株式交換結合企業の株式(子会社・関連会社株式のまま)投資は継続 → 交換損益なし帳簿価額を付け替える(分離第32項(2)・第38〜40・42項)個別:(借)結合企業の株式 ××/(貸)被結合企業の株式 ××(同額)連結:子会社・関連会社の持分比率が変わった分は、のれん・持分変動差額・資本剰余金で処理(第38〜40・42項)
子会社・関連会社の株主が、引き続き子会社・関連会社株式となる株式だけを受け取る = 投資の継続

個別では交換損益を認識せず、被結合企業株式の帳簿価額をそのまま結合企業株式に付け替える(分離第38・42項)。

連結では持分比率の変化を、追加取得(のれん)と一部売却(持分変動差額・資本剰余金)に分けて処理する(第38〜40・42項)。

🧾 企業結合日(A社の個別財務諸表)
被結合企業の株主の個別:帳簿価額を付け替えるだけ(交換損益なし)
借方金額貸方金額
関連会社株式(Y社)48関連会社株式(X社)48
基礎 ⑩

株主側の会計処理 ── 交換損益

📍 ラボの場所:基礎タブ ⑩
ハルカ
最後は株主の席ですね。持っていた関連会社X社が合併で消えて、代わりに合併相手のY社の株式を受け取っています。
先生
株主も同じ「継続か清算か」で考えるんだ。関連会社の株主が、引き続き関連会社株式になるY社株式だけを受け取るなら、帳簿価額 48 を付け替えるだけだよ(分離第38・42項)。
迷いポイント 持っていた株式が別の会社の株式に替わったら、売却したのと同じで損益が出る?
ハルカ
手元の株式の銘柄が変わったので、一度売って買い直したのだと思っていました。
先生
投資の継続なら交換損益は出さないんだ。ただし、関連会社株式がその他有価証券になるように、持分比率が下がって関係が切れると清算になるよ(第41項)。
💡 そうだったのか!
株主の処理も継続か清算か。子会社・関連会社株式が引き続き子会社・関連会社株式になるなら、交換損益は出さずに帳簿価額を付け替えます。
📝 持分法ラボ【応用編】(未実現利益・持分変動・債務超過)記事を読む ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて企業結合・事業分離ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

企業結合・事業分離ラボを開く ▶
📝 企業結合・事業分離ラボ【応用編】(処理早見表・取得の細部・逆取得・共通支配下の各形式・共同支配企業・開示)応用編を読む ▶
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今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
株式取得も企業結合基準だけで完結する?個別は子会社株式のまま。時価評価とのれんは連結の資本連結手続(連結第20〜24項)基礎 範囲
合併なら、いつも時価で受け入れる?時価は取得だけ。共同支配企業の形成・共通支配下は帳簿価額で引き継ぐ基礎①
工場と機械だけ買ってものれんは出る?事業でなければ企業結合ではない。個々の資産に配分し切る基礎②
株式を発行した存続会社が必ず取得企業?支配で決める。相手の株主が過半数を握れば逆取得(企結第20・34項)基礎③
株価は合併比率を決めた日のもの?企業結合日の株価。取得関連費用は取得原価に含めず費用(第24・26項)基礎④
無形資産を識別しなくても結果は同じ?識別しないとのれんが膨らみ、償却の仕方が変わる(第29項)基礎⑤
償却年数は自由に選べる?20年以内の効果の及ぶ期間で見積もる。償却費は販管費(第32・47項)基礎⑥
合併なら個別でも段階取得の差益が出る?個別は原価の合計で損益なし。差益は連結だけ(第25項)基礎⑦
親会社の移転損益は連結でも残る?共通支配下は内部取引として連結で消去(第44項)基礎⑧
事業を渡して株式をもらったら時価との差は利益?子会社・関連会社株式だけなら投資の継続で移転損益なし(分離第10・17項)基礎⑨
株式が別会社の株式に替わったら損益が出る?継続なら帳簿価額の付替え。関連会社株式がその他有価証券になれば清算(分離第38・41項)基礎⑩
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。組織再編は、まず型と席を決める。取得なら時価で受け入れて残りがのれん、共通支配下なら帳簿価額で引き継いで連結では消える。手放す側と株主は、投資の継続か清算かで損益を出すかが決まるんだ。
ハルカ
資本連結ラボでは、のれんを「連結の手続」として覚えていました。今日は合併の個別でも同じのれんが出てきて、二つの基準がつながっているのが分かりました。
先生
つながりが見えると、新しい論点も「どの基準の、どの席の話か」から入れるようになるよ。
ハルカ
ニュースで合併を見たら、まず「どっちが本当の主役ですか」と聞きたくなりそうです。
先生
その質問は、実務でも一番最初にする質問なんだよ。次の応用編では、取得の細部、逆取得、共通支配下の各形式、共同支配企業の判定を見ていこうか。

参考資料

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(2019年1月16日最終改正・2026年1月9日までの修正反映)、企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(2013年9月13日最終改正)、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(2024年9月13日最終改正・2026年10月16日までの修正反映)、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」。基準確認日:2026年10月26日。ラボの設例は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の設例の数値は画面に出していません)。

シリーズ:基礎編/応用編 / 設例編:取得編・逆取得・株式交換・株式移転編・事業分離編・共同支配企業と合併編・会社分割・株式交換編(共通支配下)・子会社同士の合併と株主編・税効果編 / 税務調整編 / 関連:資本連結ラボ【基礎編】(投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分)/資本連結ラボ【応用編】(段階取得・追加取得・一部売却)/持分法ラボ【基礎編】(関連会社・のれん・持分法による投資損益)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。