MENU

グループ通算制度 会計・税効果ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ通算税効果額・税率・個別と連結の回収可能性

グループ通算制度 会計・税効果ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ通算税効果額・税率・個別と連結の回収可能性

無料の学習ツール「グループ通算制度 会計・税効果ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

今日の事例
このラボの基本の4社(独自の設例。単位:万円)
P社(通算親法人)将来減算一時差異 500/見積額 700
S1社(Pが100%保有)200/▲300
S2社(Pが100%保有)300/400
S3社(Pが100%保有)200/100
前提見積額は翌年の一時差異等加減算前通算前所得。一時差異は翌年に全部解消し、翌々年以降の見積額は0
はじめに

今日の題材 ── 基本の4社

📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、グループ通算制度ラボで損益通算と通算税効果額の計算をしました。今日は、その数字が決算書にどう載るかですね。
先生
そうなんだ。今日は会計と税効果会計の側だよ。根拠は実務対応報告第42号で、題材はこのラボの基本の4社なんだ。
ハルカ
表の右側の「見積額」は、翌年の所得の見込みですか。S1社だけマイナスです。
先生
そのマイナスが、今日の大事な場面で効いてくるんだ。表を手元に置いて、ラボの「基礎」タブを上から順に読んでいこうか。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
⚠ 適用時期:このラボと記事は2026年7月改正後の第42号・法人税等会計基準によります。原則は2028年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用し、2026年7月7日以後に開始する事業年度の期首から早期適用できます(第42号第33-2項・第36-2項)。
📗 基礎 範囲 ラボの図
① 基本・申告計算損益通算・欠損金・税率② 開始・加入・離脱時価評価・投資簿価修正グループ通算制度ラボ(公開中・税務)③ 会計・税効果このラボ実務対応報告第42号・第48号
基礎 範囲

このラボの位置づけ ── 税務の数字を、会計と税効果に映す

📍 ラボの場所:基礎タブ 範囲
ハルカ
シリーズの図ですね。①申告計算と②開始・加入・離脱が税務のラボで、③の会計・税効果がこのラボ。
先生
③は、①②で決まった税金の数字を財務諸表に映す段なんだ。対象は、グループ通算制度を適用する企業の連結財務諸表と個別財務諸表だよ(第42号第3項)。
ハルカ
税効果会計ラボの応用で、グループ通算制度の節に第42号が出てきました。あのときは名前だけでした。
先生
よく覚えていたね。今日は、その第42号の中身を1つずつ開いていくんだ。
迷いポイント 通算税効果額を授受しない会社も、第42号の処理に従えばよい?
ハルカ
通算税効果額の授受は任意だと税務で習いました。授受しない会社も、第42号のとおりに処理すればいいんですよね。
先生
そこは第42号の外なんだ。第42号は授受を前提にしていて、授受しない場合は取り扱っていないよ(第3項なお書き)。「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」に当たると考えられるんだ(第38項)。
💡 そうだったのか!
第42号は通算税効果額を授受することが前提。授受しない場合の会計処理は、第42号の中には書かれていません。
📗 基礎 1 ラボの図

5つの箱をクリック。グループ通算制度の会計処理と税効果会計を、5段に分けて見通します
① 対象の税金通算の対象か② 当期の税金通算税効果額③ 個別の回収可能性自社+損益通算④ 連結で見直すグループ全体⑤ 投資簿価・表示加入離脱・注記このラボでは:基礎2:6つの税金を「対象」と「対象外」に分ける
① 対象の税金:法人税・地方法人税・防衛特別法人税は通算の対象。住民税・事業税は区別して扱う(第42号第8項なお書き・第48号第10項)

通算の対象とされている税金は、法人税等会計基準・税効果会計基準等に従い、第42号に定めのあるものはそれに従う(第42号第6項・第8項)。

防衛特別法人税は、地方法人税と同様に第42号に従う(第48号第10項・第12項)。

基礎 1

5段の流れ ── 対象の税金 → 当期の税金 → 個別 → 連結 → 投資簿価・表示

📍 ラボの場所:基礎タブ 1
ハルカ
箱が5つです。①対象の税金、②当期の税金、③個別の回収可能性、④連結で見直す、⑤投資簿価・表示。
先生
会計処理と税効果会計を、この5段で見通すんだ。ラボではすべてのタブで同じ図を使うから、迷ったらここに戻るといいよ。
迷いポイント 税務のラボの「5段の流れ」と同じもの?
ハルカ
税務のラボにも5段がありました。承認、損益通算、欠損金の通算、税率、申告・遮断。同じ図の色違いかと思いました。
先生
別の図なんだ。税務の5段は税額を計算する順番、このラボの5段は財務諸表に映す順番だよ。②の通算税効果額は、税務の計算の結果として決まるんだ。
💡 そうだったのか!
このラボの5段は財務諸表に映す順番。税額の計算は税務のラボ、その結果の載せ方はこのラボ、と分けて読みます。
📗 基礎 2 ラボの図

6つの税金をクリック。どれがグループ通算制度の対象で、どれが各社で計算する税金?
グループ通算制度の対象対象外(各社で計算)法人税地方法人税防衛特別法人税住民税(法人税割)事業税(所得割)特別法人事業税赤の破線:住民税(法人税割)は法人税額を基に計算するが、通算による影響を控除する。だから区別して回収可能性を判断する(第42号第8項なお書き)
法人税:損益通算・欠損金の通算をした後の所得に課税(通算の対象)

会計処理は法人税等会計基準に、税効果会計は税効果会計基準等に従い、第42号に定めのあるものはそれに従う(第42号第6項・第8項)。

税率は23.2%。繰延税金資産の計算では、地方法人税・防衛特別法人税とまとめた税率を使う(基礎4)。

基礎 2

① 対象の税金を分ける ── 法人税・地方法人税・防衛特別法人税と、住民税・事業税

📍 ラボの場所:基礎タブ 2
ハルカ
6つの税金が、左の青い枠と右の灰色の枠に分かれています。青は法人税・地方法人税・防衛特別法人税。
先生
青の3つが通算の対象の税金なんだ。会計処理は法人税等会計基準に従うよ(第42号第6項、第48号第10項)。灰色の住民税・事業税は区別して税効果会計を適用するんだ(第42号第8項なお書き)。
迷いポイント 住民税は法人税額をもとに計算するから、通算の対象?
ハルカ
住民税の法人税割は、法人税額に税率を掛けますよね。法人税が通算で変わるなら、住民税も通算の対象だと思いました。
先生
それが、そうではないのだよ。住民税は、通算で計算した法人税額から通算の影響を控除して計算するんだ。だから対象外として、それを考慮して回収可能性を判断するよ(第42号第8項なお書き)。
ハルカ
赤い破線は、そのことなんですね。法人税と住民税は親戚なのに、別々に暮らしている。
先生
親戚という見方は合っているよ。ただし注記は区分せず、税効果会計の注記は全体で1つにするんだ(第42号第29項)。
💡 そうだったのか!
通算の対象は法人税・地方法人税・防衛特別法人税。住民税・事業税は区別して税効果会計を適用します。
📗 基礎 3 ラボの図

グループ通算制度ラボの基本の4社で、P社がS1社に通算税効果額 5,117,920円 を払う。会計ではどこに出る?
P社(所得法人)当期の法人税・地方法人税10,235,840+ 支払う通算税効果額5,117,920= 法人税等15,353,760B/S未払金 5,117,920S1社(欠損法人)当期の法人税・地方法人税0− 受け取る通算税効果額5,117,920= 法人税等▲5,117,920B/S未収入金 5,117,920通算税効果額5,117,920円P社の 15,353,760円 = 単体なら払う 6,000万円×23.2%×(1+10.3%)と同じ(この計算方法の場合)
P社:支払う通算税効果額は、法人税等に含めて表示する(第42号第7項・第25項)
当期の税金10,235,840+通算税効果額5,117,920= 法人税等 15,353,760円

💡 未払の通算税効果額は、未払法人税等ではなく未払金などに含める(第42号第25項)。

🧾 仕訳で確認(通算税効果額)
P社(支払う側)
借方金額貸方金額
法人税等5,117,920未払金5,117,920

科目名は2026年改正後の法人税等会計基準の例示「法人税等」。改正前の例示は「法人税、住民税及び事業税」(法人税等会計基準第9項・第40-5項)。

🧾 仕訳で確認(通算税効果額)
P社(支払う側)
借方金額貸方金額
法人税等5,117,920未払金5,117,920

科目名は2026年改正後の法人税等会計基準の例示「法人税等」。改正前の例示は「法人税、住民税及び事業税」(法人税等会計基準第9項・第40-5項)。

基礎 3

② 当期の税金と通算税効果額 ── 法人税等に含め、未収入金・未払金で精算

📍 ラボの場所:基礎タブ 3
ハルカ
これは税務のラボの基本の4社ですね。P社がS1社に通算税効果額5,117,920円を払う。
先生
税務のラボの数字そのままなんだ。P社の法人税等は、当期の法人税・地方法人税10,235,840円に5,117,920円を足して15,353,760円になるよ(第42号第7項・第25項)。防衛特別法人税・住民税・事業税は省略しているんだ。
ハルカ
税務では、受け取った側は益金不算入、払った側は損金不算入でした。所得には影響させないお金です。
先生
ちゃんと覚えていたね。会計では、その性質を「通算の対象の税金に準ずるもの」として表すんだ(第42号第7項)。
迷いポイント 受け取ったS1社は、営業外収益に計上する?
ハルカ
S1社は512万円を受け取るので、営業外収益だと思いました。赤字の会社に臨時収入です。
先生
受け取る側も法人税等に含めるんだ。S1社の法人税等は▲5,117,920円、つまり貸方だよ。未収分は未収入金などに含めるんだ(第42号第25項)。
ハルカ
決算説明で「営業外収益が512万円増えました」と胸を張るところでした。
先生
胸を張る前に、法人税等の行を見ようか。払う側の未払は、未払法人税等ではなく未払金などに入れるんだ(第42号第25項)。
ハルカ
通算税効果額は、いつも損益計算書の法人税等に入るんですか。
先生
損益に計上する場合はそうなんだ。株主資本や評価・換算差額等に計上する場合は、純資産の部の対応する内訳項目から控除するよ(第42号第25項)。
💡 そうだったのか!
通算税効果額は、払う側も受け取る側も法人税等に含めます。債権・債務は未収入金・未払金などです。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎 3 の図の上のボタンで「受け取る側(S1社)」を押す

👀 S1社の法人税等が「0−通算税効果額5,117,920=▲5,117,920円(貸方)」と出て、仕訳が「未収入金 5,117,920/法人税等 5,117,920」に変わります。

ラボを開く ▶
📗 基礎 4 ラボの図

将来減算一時差異 200万円。法人税等・住民税・事業税で、回収できる額が違ったら?
計上対象一時差異等(万円)適用税率繰延税金資産法人税・地方法人税・防衛特別法人税20025.55%51.10住民税(法人税割)2002.32%4.65事業税(特別法人事業税を含む)2003.64%7.283つの合計 63.03(200×法定実効税率31.52%=63.04。端数の差を除き一致)
税金の種類ごとに税率を出す(第42号第9項・補足文書 別紙3)
法人税等23.2%×(1+10.3%+4.0%)÷1.0378=25.55%
住民税23.2%×10.4%÷1.0378=2.32%事業税3.78%÷1.0378=3.64%

💡 1.0378 は(1+事業税率3.78%)。事業税は法人税の所得の計算で損金に算入されるので、その分だけ税率を割り引く。

表示の税率は小数点以下第3位を四捨五入。繰延税金資産の金額は丸める前の税率で計算している(補足文書 別紙3と同じ)。

基礎 4

税率 ── 税金の種類ごとに出し、回収可能性が違えば税率を直す

📍 ラボの場所:基礎タブ 4
ハルカ
将来減算一時差異200万円に、法人税等25.55%、住民税2.32%、事業税3.64%。合計で繰延税金資産は63.03万円ですね。
先生
税金の種類ごとに税率を出しておくんだ(第42号第9項)。法定実効税率には防衛特別法人税率も考慮するので(第48号第9項)、法人税等の25.55%にも入っているよ(補足文書 別紙3)。
ハルカ
税効果会計ラボでは、解消する年の税率を使う、と習いました。そこに税金の種類ごとの分け方が加わるんですね。
先生
そういうことなんだ。種類ごとに分けておくと、回収できる額が税金で違うときに対応できるよ。
迷いポイント 回収できる額が税金の種類で違っても、法定実効税率を掛ければよい?
ハルカ
法定実効税率31.52%を、回収できる額に掛ければ済むと思っていました。
先生
影響が重要なら、税金の種類ごとの計上対象に税率を掛けるんだ(第42号第9項また書き)。ラボの例では、事業税率を直す方法を使っているよ(補足文書 別紙3)。
💡 そうだったのか!
税率は税金の種類ごとに出しておきます。回収できる額が種類で違い、影響が重要なら、その違いを反映した税率で計算します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎 4 の図の上のボタンで「税金の種類で異なる(重要な影響あり)」を押す

👀 計上対象が「法人税等200・住民税50・事業税100」になり、「法人税等の計算に使う事業税率」が 1.89%、「住民税用」が 7.56% に直ります。

ラボを開く ▶
📗 基礎 5 ラボの図

基本の4社。X1年末の将来減算一時差異は、X2年に全部解消する。各社は、いくら回収できる?
自社の見積額で回収損益通算の益金算入見積額で回収回収できない(翌年以降の見積りは0)見積額 700500差異 500P社回収 500見積額 ▲300200差異 200S1社回収 0見積額 400300差異 300S2社回収 300見積額 1001005050差異 200S3社回収 150
S3社:回収可能見込額 150万円
将来減算一時差異200自社の見積額100(1) 自社の見積額で100
益金算入見積額50マイナスへ充当0残り50(1) 損益通算で50→ 回収可能見込額 150万円

💡 自社の見積額 100 で 100 を回収し、残りを損益通算による益金算入見積額 50 で回収する。残る 50 は、翌年度以降、特定繰越欠損金以外の繰越欠損金として扱われる。この設例では翌年以降の見積りが0なので回収できない(第42号第11項(2))。

基礎 5

③ 個別:将来減算一時差異 ── 自社の見積額、次に損益通算の益金算入見積額

📍 ラボの場所:基礎タブ 5
ハルカ
基本の4社です。P社は将来減算一時差異500に見積額700なので、全部回収できますね。
先生
個別財務諸表では、まず自社の見積額と相殺し、足りない分を損益通算による益金算入見積額と相殺するんだ(第42号第11項(1))。P社は自社の見積額だけで500を回収できるよ。
ハルカ
損益通算は、税務のラボでやりました。欠損の比で益金に算入する、でしたね。
先生
その益金算入の見積額が、ここで受け皿になるんだ。S3社は自社の100に益金算入見積額の50を足して、150を回収できるよ。
迷いポイント S1社は益金算入見積額が250あるから、200を回収できる?
ハルカ
S1社の益金算入見積額は250。将来減算一時差異200より大きいので、全部回収できると思いました。
先生
S1社は自社の見積額が▲300なんだ。益金算入見積額は、まずこのマイナスに充当するよ(第11項(1)括弧書き)。250は全部充当されて、回収に使える額は0なんだ。
ハルカ
お小遣いをもらったのに、全部前借りの返済に消えた、という感じですね。
先生
そのたとえで合っているよ。残る200は翌年以降に特定繰越欠損金以外の繰越欠損金として扱うけれど、この例では見積額が0なので回収できないんだ(第11項(2))。
💡 そうだったのか!
個別では自社の見積額 → 損益通算の益金算入見積額の順。自社の見積額がマイナスなら、益金算入見積額はまずそのマイナスに充当します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎 5 の図の上のボタンで「S1社」を押す
  2. 続けて「4社まとめて」を押す

👀 S1社は「益金算入見積額250 → マイナスへ充当▲250 → 残り0」で回収可能見込額0万円。4社まとめては合計950万円と出ます。

ラボを開く ▶
📗 基礎 6 ラボの図

S2社は通算前からの特定繰越欠損金 600。P社・S1社はX2年の通算後の欠損 300。X3年に回収できるのは?
X3年の課税所得の見積額P社 400S2社 15050S3社計 600控除の順番① 特定 150② 非特定 300残り 150特定繰越欠損金(S2社 600)上限=S2社の所得 150 とグループの所得 600 の小さい方回収 150回収できない 450特定以外の繰越欠損金(P社 200・S1社 100)上限=グループの所得 600 − 特定の控除 150 = 450回収 300P 200・S1 100(割合 100%)
特定繰越欠損金と特定以外の繰越欠損金を分けて、控除の見込年度ごとにスケジューリングする(第42号第12項)
特定(S2社)150 回収特定以外300 / 300→ 回収可能見込額 450万円

💡 特定繰越欠損金は自社の所得からしか控除できない。S2社の所得が 150 しかないので、グループの所得に余裕があっても 450 は回収できない。

基礎 6

③ 個別:繰越欠損金 ── 特定繰越欠損金と、それ以外に分けてスケジューリング

📍 ラボの場所:基礎タブ 6
ハルカ
S2社には通算前からの特定繰越欠損金が600。P社とS1社には、通算後の欠損300があります。
先生
繰越欠損金は、特定繰越欠損金とそれ以外に分けて、控除の見込年度ごとにスケジューリングするんだ(第42号第12項)。順番は税務の欠損金の通算と同じだよ。
ハルカ
税務のラボで、特定欠損金額は自社の所得の範囲でしか控除できない、と習いました。
先生
その性質が、そのまま回収可能性の上限になるんだ。S2社の上限は、自社の所得150とグループの所得600の小さい方の150だよ。
迷いポイント グループの所得に余裕があれば、特定繰越欠損金も全部回収できる?
ハルカ
グループの所得は600もあるので、S2社の600も回収できると思いました。
先生
特定繰越欠損金は自社の所得からしか控除できないんだ。S2社の所得が150しかないので、残る450は回収できないよ。特定以外の300は、グループの所得の残り450から全部回収できるんだ。
💡 そうだったのか!
特定繰越欠損金の上限は自社の所得とグループの所得の小さい方。特定以外は、グループの所得の残りの枠から控除します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 基礎 6 の図の上のボタンで「グループの所得 300」を押す

👀 特定(S2社)は150のまま、特定以外が「150 / 300」に減り、回収可能見込額は450万円から300万円になります(特定以外の割合50%)。

ラボを開く ▶
📗 基礎 7 ラボの図

グループは分類2、P社は分類1、S2社は分類3。どちらの分類で判断する?
通算グループ全体分類 2P社自社だけなら 分類1→ 自社の分類1回収 900 / 900S1社自社だけなら 分類2→ グループの分類2回収 300 / 500S2社自社だけなら 分類3→ グループの分類2回収 400 / 500S3社自社だけなら 分類4→ グループの分類2回収 200 / 300グループが同じか上位 → グループの分類。グループが下位 → 自社の分類(第42号第13項(2))
将来減算一時差異:グループの分類と自社の分類のうち、上位の方で判断する(第42号第13項(2))
項目P社S1社S2社S3社
自社の分類1234
使う分類1222
スケジューリング可能500300400200
スケジューリング不能400200100100
回収可能見込額900300400200

💡 P社は自社が分類1でグループ(分類2)より上位なので、自社の分類1でスケジューリング不能な 400 も計上する。S2社(分類3)・S3社(分類4)はグループの分類2を使う。

基礎 7

③ 個別:企業の分類 ── グループの分類と自社の分類を両方判定する

📍 ラボの場所:基礎タブ 7
ハルカ
グループは分類2、P社は分類1、S2社は分類3。1つのグループに分類がいくつもありますね。
先生
通算会社は、通算グループ全体の分類と、損益通算・欠損金の通算を考慮しない自社の分類の両方を判定するんだ(第42号第13項(1))。
ハルカ
これ、税効果会計ラボの設例でやりました。グループ通算のとき、どちらの分類で判断するか、でしたね。
先生
よく覚えていたね。今日は、それを項目ごとに整理するんだ。
迷いポイント いつも上位の分類を使えばよい?
ハルカ
将来減算一時差異は、グループと自社の上位の方を使うと聞きました。繰越欠損金も同じだと思っていました。
先生
項目で違うんだ。将来減算一時差異は上位の方(第13項(2))、特定以外の繰越欠損金はグループの分類だよ。特定繰越欠損金は、グループの所得の部分と自社の所得の部分で使い分けるんだ(第13項(3))。
💡 そうだったのか!
分類は2つ判定して、項目ごとに使い分けます。将来減算一時差異は上位の方、特定以外の繰越欠損金はグループの分類です。
📗 基礎 8 ラボの図

個別で計上した繰延税金資産を足すと、連結でもそのまま使える?
個別財務諸表の合計P 500S2 300S3 150950連結(グループ全体)グループ全体で回収 900連結上修正 ▲50(取り崩す)S1社の見積額のマイナス300のうち、益金算入見積額250で埋まらない50は、個別では他社の回収から引かれない。グループ全体では引かれる
通算グループ全体の見積額の合計と相殺し直す(第42号第14項・第15項)
将来減算一時差異の合計1,200見積額の合計900グループで回収900個別の合計 950 との差額 50 を取り崩す

💡 連結では、通算グループを1つの単位として、将来減算一時差異・一時差異等加減算前課税所得をそれぞれ合計して判断する(第42号第15項)。

基礎 8

④ 連結で見直す ── 通算グループ全体で判断し、差額を連結上修正

📍 ラボの場所:基礎タブ 8
ハルカ
個別の合計950が、連結では900。棒が少し縮んでいます。
先生
連結財務諸表では、通算グループ全体で回収可能性を判断し直すんだ。個別で計上した繰延税金資産の合計との差額は、連結上修正するよ(第42号第14項)。
迷いポイント 個別で計上した繰延税金資産は、連結でもそのまま足せばよい?
ハルカ
4社がそれぞれ丁寧に判断したので、足せば連結になると思っていました。
先生
連結では、将来減算一時差異も見積額もグループ全体の合計で見るんだ(第15項)。差異1,200に見積額900なので、回収できるのは900だよ。差額50を取り崩すんだ。
ハルカ
S1社の▲300は、個別ではS1社の中だけの話でした。連結では、P社たちの見積額まで食べてしまうんですね。
先生
合計すると、マイナスもそのまま差し引かれるんだ。ただ、連結が必ず小さくなるわけではなく、方向は数字次第だよ。
💡 そうだったのか!
連結では通算グループ全体で判断し直し、個別の合計との差額を連結上修正します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションの「回収可能性(個別→連結)」で「欠損の会社が多い」を押す

👀 個別の合計 655、連結 250、連結上修正「▲405(取崩し)」と出ます。基本の4社の ▲50 より、差がずっと大きくなります。

ラボを開く ▶
📗 基礎 9 ラボの図

通算の対象の税金に係る繰延税金資産・負債。4社の分を、連結ではどう表示する?
P社繰延税金資産300繰延税金負債100資産 200S1社繰延税金資産50繰延税金負債120負債 70S2社繰延税金資産80繰延税金負債0資産 80S3社繰延税金資産0繰延税金負債40負債 40個別:各社の中で相殺(企業会計基準第28号第2項)。資産 280(P・S2)と 負債 110(S1・S3)が別々に残る
個別財務諸表:税効果会計基準等に従い、自社の中で相殺する(第42号第26項)

各社は別の納税主体なので、S1社の繰延税金負債をP社の繰延税金資産と相殺することはない。

💡 投資その他の資産(繰延税金資産)または固定負債(繰延税金負債)に表示する。

基礎 9

⑤ 表示と注記 ── 連結はグループ全体で相殺、連帯納付は注記しない

📍 ラボの場所:基礎タブ 9
ハルカ
4社の繰延税金資産と負債です。連結では、資産430と負債260を相殺して170。
先生
個別では、各社の中で相殺して表示するんだ(第42号第26項)。連結では、通算の対象の税金に係る分を、通算グループ全体の合計で相殺するよ(第27項)。
ハルカ
S1社の負債70とP社の資産200は、個別では相殺しないんですね。
先生
各社は別々の納税主体だからなんだ。住民税・事業税に係る分は、この全体での相殺の対象外だよ。
迷いポイント 連帯納付義務は、偶発債務として注記する?
ハルカ
通算会社は、ほかの会社の法人税を連帯して納める義務があると習いました。保証債務のように注記が要りますよね。
先生
偶発債務としての注記は要しないんだ(第42号第30項)。注記するのは、第42号に従って処理していることなどだよ(第28項)。
ハルカ
「連帯」と聞いて、身構えていました。運動会の二人三脚くらいの重さでした。
先生
二人三脚でも転べば一緒だから、義務そのものは軽くないよ。注記が要らない、というだけなんだ。
💡 そうだったのか!
連結では通算の対象の税金に係る分をグループ全体で相殺。連帯納付義務は偶発債務の注記を要しません。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべてグループ通算制度 会計・税効果ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

グループ通算制度 会計・税効果ラボを開く ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
授受しない会社も第42号どおり?第42号は授受が前提。授受しない場合は取り扱っていない(第3項なお書き・第38項)範囲
税務のラボの5段と同じ?別の図。このラボは財務諸表に映す順番基礎1
住民税も通算の対象?対象外。通算の影響を控除して計算するので区別して適用(第8項なお書き)基礎2
受け取った通算税効果額は営業外収益?法人税等に含める(貸方)。未収は未収入金など(第7項・第25項)基礎3
回収できる額が違っても法定実効税率でよい?影響が重要なら、違いを反映した税率で計算(第9項また書き)基礎4
益金算入見積額250で200を回収できる?まず自社のマイナスに充当。S1社は0(第11項(1))基礎5
グループに余裕があれば特定繰越欠損金も回収?自社の所得とグループの所得の小さい方が上限(第12項)基礎6
分類はいつも上位を使う?項目で違う。特定以外の繰越欠損金はグループの分類(第13項)基礎7
個別の繰延税金資産を足せば連結?グループ全体で判断し直し、差額を連結上修正(第14項)基礎8
連帯納付義務を偶発債務として注記?注記を要しない(第30項)基礎9
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。通算税効果額は法人税等に含め、回収可能性は個別では自社の見積額から、連結ではグループ全体で判断し直す。住民税・事業税は区別して扱うんだ。
ハルカ
税務のラボでは「いくら払うか」ばかり見ていました。今日は同じ数字を、繰延税金資産が回収できるか、という目で見直せた気がします。
先生
同じ数字を別の目で見る、という言い方はいいね。1点だけ足すと、基礎5の見積額は自社の将来の計画から作るから、計画の作り方も大事なんだ。
ハルカ
S1社の▲300を見るたびに、前借りの返済を思い出しそうです。
先生
思い出せるなら、それも覚え方の1つだよ。次の応用編では、投資簿価修正と、加入・離脱のときの税効果を見ていこうか。

参考資料

企業会計基準委員会 実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(2021年8月12日公表、2026年7月7日改正)、実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(2026年2月27日公表)、補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」(2026年7月7日)、企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」(2026年7月7日改正)、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(2026年7月7日改正)、法人税法(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)。確認日:2026年10月25日。改正後の第42号・法人税等会計基準は2028年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用(2026年7月7日以後に開始する事業年度の期首から早期適用可)。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、基準の設例の数値は計算の確認にだけ使っています。将来減算一時差異は翌年にすべて解消し、損金算入限度額は課税所得の100%とする簡便化をしています。公認会計士が監修しています。
このシリーズの記事:グループ通算制度 会計・税効果ラボ【応用編】/グループ通算制度 会計・税効果ラボ【設例・回収可能性編】/グループ通算制度 会計・税効果ラボ【設例・通算税効果額と税率編】/グループ通算制度 会計・税効果ラボ【設例・投資簿価修正と加入編】

📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。