役員給与ラボ①【設例・届出どおりの支給編】|先生と一緒に図で学ぶ設例8〜10 職務執行期間・全額が損金不算入
無料の学習ツール「役員給与ラボ①【損金算入編】」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、届け出た賞与を届出どおりに払えなかったときの設例(設例8〜10)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・届出どおりの支給編で追う3つの設例(独自の数値)
| 設例8 | 12月300万円・翌年6月300万円の届出。翌年6月は150万円だけ支給 |
| 設例9 | 同じ届出で、12月は200万円だけ支給。翌年6月は届出どおり |
| 設例10 | 7月200万円・12月200万円の届出。12月に250万円を支給 |
| 共通の前提 | 同族会社・3月決算。職務執行期間は6月の定時総会から翌年6月の定時総会まで。毎月の定期給与もある |
はじめに
今日の題材 ── 届出どおりに払えなかった3つの設例
📍 ラボの場所:設例タブ 設例8〜10
ハルカ
先生、今日は届け出た賞与を届出どおりに払えなかった設例ですね。少なく払う、多く払う、どれもありそうです。
先生
実務で一番相談が多いところなんだ。どの設例も、① 届出が必要か → ② 1回ずつ照合 → ③ 職務執行期間で判定 → ④ 別表四、の4ステップで進むよ。
ハルカ
②で×が付いたら、その1回だけが損金不算入になるんですよね。
先生
そこが今日の分かれ目なんだ。③で「職務執行期間」という単位が出てくるよ。設例タブを開いて、設例8から読んでいこうか。
📘 設例8 ラボの画面
① 役員か② 給与の形③ 改定・届出④ 過大・仮装⑤ 申告・支給
支給1:当期は定めどおり → 損金算入して差し支えない。
支給2:翌期に定めどおりでない支給 → 翌期の支給額が損金不算入。
定めどおりかは職務執行期間を1つの単位として判定する。当期は定めどおりで翌期だけ違うときは、翌期の支給だけを損金不算入として差し支えない(質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定」)。
設例8
翌期の支給だけ届出より少ない
📍 ラボの場所:設例タブ 設例8 ステップ③
ハルカ
取締役Hは、12月は届出どおり300万円、翌年6月は資金繰りの都合で150万円しか払えませんでした。当期は損金算入、翌期の150万円が損金不算入です。
先生
定めどおりかは、職務執行期間を1つの単位として判定するのが原則なんだ。ただ、当期は定めどおりで翌期だけ違うときは、翌期の支給だけを損金不算入として差し支えない、という扱いがあるよ(質疑応答事例)。
迷いポイント 翌期の支給が違ったら、当期に損金にした12月分も直す?
ハルカ
職務執行期間の全部で判定するなら、6月がだめだった時点で、12月分まで遡って修正申告になると思いました。
先生
質疑応答事例では、この場合は当期の12月分まで遡って損金不算入にしなくてよい、とされているんだ。ステップ④のとおり、当期は加算なし、翌期の申告で150万円を加算するよ。
ハルカ
翌年の自分に宿題が1つ残るだけで済むんですね。
先生
宿題の答えも決まっているよ。翌期の別表四で、150万円を加算・社外流出にするんだ。
💡 そうだったのか!
当期は届出どおり、
翌期だけ違うときは
翌期の支給だけが損金不算入。当期の申告は直しません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「届出どおりか」で「翌期の支給だけ少ない」を読み込む
- 「支給2の金額」を 3,000,000円にする
👀 翌期の損金不算入額が 1,500,000円から 0円に変わり、2回とも「✓ 届出どおり」になります。
ラボを開く ▶📄 国税庁 質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定」国税庁で読む ▶
📘 設例9 ラボの画面
🧾 別表四で確認
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | 役員給与の損金不算入額 | 2,000,000 | 0 | 2,000,000(その他) |
当期の損金不算入額。翌期の申告でも 3,000,000円を加算する。
設例9
当期の支給が届出より少ない
📍 ラボの場所:設例タブ 設例9 ステップ④
ハルカ
設例8の逆です。12月は200万円しか払わず、翌年6月は届出どおり300万円。それなのに、当期の200万円も翌期の300万円も損金不算入です。
先生
当期に定めどおりでない支給があると、設例8のような扱いはできないんだ。職務執行期間の支給の全部が事前確定届出給与に当たらなくなるので、翌年6月の300万円も損金不算入になるよ。
迷いポイント 翌年6月に届出どおり払えば、6月分は取り戻せる?
ハルカ
12月の分は仕方がないとしても、6月にきちんと300万円を払えば、6月分は損金に戻ると思いました。
先生
取り戻せないんだ。設例8と9は、2回のうち1回が違うのは同じでも、どちらの期で違ったかで結論が分かれるよ。当期の別表四で200万円、翌期の別表四で300万円を加算するんだ。
ハルカ
同じ「1回失敗」なのに、先に転ぶと全部やり直し。順番がこんなに大事だとは思いませんでした。
先生
順番というより、当期の申告の時点で定めどおりかが分かるかどうかなんだ。12月で違えば、その時点で職務執行期間の全体が崩れているからね。
💡 そうだったのか!
当期に違う支給があると、
翌期の届出どおりの支給まで損金不算入。設例8との違いは、どちらの期で違ったかです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーション「届出どおりか」で「当期の支給が少ない」を読み込む
- 「支給1の金額」を 3,000,000円にする
👀 当期の損金不算入額が 2,000,000円から 0円に、翌期の 3,000,000円も 0円に変わります。
ラボを開く ▶📄 国税庁 質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定」国税庁で読む ▶
📘 設例10 ラボの画面
🧾 別表四で確認
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | 役員給与の損金不算入額 | 4,500,000 | 0 | 4,500,000(その他) |
当期の損金不算入額。
設例10
届出より多く払った
📍 ラボの場所:設例タブ 設例10 ステップ④
ハルカ
取締役Jは、業績が良かったので、12月の賞与を届出の200万円より50万円多い250万円にしました。損金不算入は450万円。7月の200万円まで入っています。
先生
届出より多く払っても「届出と違う」支給なんだ。差額の50万円ではなく、支給額の全額が問題になるよ(法人税基本通達9-2-14)。7月と12月は同じ職務執行期間の当期の支給なので、7月の200万円も含めて450万円が損金不算入になるんだ。
迷いポイント 多く払った分の50万円だけを損金不算入にすれば足りる?
ハルカ
200万円までは約束どおりなので、はみ出した50万円だけを加算すればよいと思っていました。
先生
事前確定届出給与は、「この時期にこの額」と確定した額を払う約束なんだ。多く払うと、その支給は確定した額の支給ではなくなるので、全体が事前確定届出給与に当たらないよ。増やしたいなら、届出の段階で決めておくしかないんだ。
ハルカ
50万円のおまけで、450万円の損金が消える…。おまけの方が高くつきました。
先生
高くついたね。図のとおり、当期の別表四で450万円を加算・社外流出にするよ。
💡 そうだったのか!
届出より
多く払っても全額が損金不算入。同じ職務執行期間の
届出どおりの支給まで巻き込みます。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて役員給与ラボ①【損金算入編】の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
役員給与ラボ①【損金算入編】を開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。届出と違う支給は差額ではなく全額が損金不算入で、判定は職務執行期間が単位。当期は届出どおりで翌期だけ違うときに限って、翌期の支給だけで済むんだ。
ハルカ
設例8と9の違いが、今日いちばんの発見でした。基礎8で見た図が、今日やっと自分の言葉で説明できる気がします。
先生
説明できるようになったのは大きいね。実務では、資金繰りに不安があるなら、届け出る額と回数を無理のない形にしておくことが一番の対策なんだ。
ハルカ
では、届出書を出す前に「この額、本当に払えますか」と、社長に一度だけ聞く係になります。
先生
その一言で救われる会社は多いよ。次の設例・非常勤役員と使用人兼務役員編では、届出が要るかどうかと、使用人分の賞与を見ていこうか。
参考資料
法人税法第2条第15号・第34条・第36条、法人税法施行令第7条・第69条〜第72条の3、法人税法施行規則第22条の3(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)、国税通則法第10条第2項・国税通則法施行令第2条第2項、法人税基本通達第9章第2節(9-2-1〜9-2-52)。国税庁「役員給与に関するQ&A」(平成20年12月、平成24年4月改訂)、質疑応答事例(報酬、給料、賞与及び退職給与等)、タックスアンサーNo.5211・No.5200・No.5202・No.2523、事前確定届出給与に関する届出書・変更届出書の記載要領。確認日:2026年10月23日。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例です。過大な役員給与・役員退職給与は②過大役員給与・役員退職給与編(準備中)、株式報酬と会計処理は③株式報酬・会社法・会計編(準備中)で扱います。公認会計士が監修しています。
このシリーズの記事:役員給与ラボ①【基礎編】/役員給与ラボ①【応用編】/役員給与ラボ①【設例・期中改定編】/役員給与ラボ①【設例・届出期限編】/役員給与ラボ①【設例・非常勤役員と使用人兼務役員編】
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。