はじめての方へ ── 設例の前提と、この記事で扱わないこと
設例:架空の製造小売業(3月決算・店舗68〈子会社3社の店舗を含むグループ全体〉・自社工場1・子会社3社・経理財務部8人)。店舗68はグループ全体の数で、子会社3社の店舗を含む。店舗ごとに資産グループとし、本社と自社工場は共用資産。子会社の兆候の判定の手順は各社ばらばら。昨年度は期末に兆候の判定をまとめて行い、68店のうち14店に兆候、うち5店で減損損失1.6億円を決算の直前に報告した。来期(2028年3月期)から新リース会計基準を適用する。経営上の改善の猶予と、減損の会計上の判定時期は別のものとして扱う。数字はすべて学習用の設例です。
扱わないこと:減損の計算の手順はラボとハルカの基礎編・応用編・設例編に任せます。のれんの減損、IFRS、新リースの使用権資産の減損の計算、原価計算としての配賦の手法、繰延税金資産の回収可能性の判断そのもの、税務調整の書き方(ラボの税務調整タブ)は扱いません。
登場人物は学習用のキャラクターで、解説内容は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。
一つの経営課題を、三つの視点で
ハルカの基礎編・応用編・設例編が「減損を判定・測定できるようになる」記事なら、この部長編は「減損を、期末の一発勝負から年間の管理にする」記事です。
兆候を四半期で拾う二つの入口。本社費の配り方とグルーピングの文書化、二人目の育成
計画を作る人と確かめる人を分ける。減損と税効果のバックテストを一つの表で
兆候のある店を事業の判断の机へ。二つの利益・猶予・時間と予算・見直しの条件
自部門の管理者として ── 兆候を、期末ではなく四半期で拾う
今日は減損です。
昨年の期末、兆候のある店舗が14店出て、決算が回りませんでした。
68店のうち14店は多いですね。
兆候に気づいたのは、いつでしたか。
担当が全店の損益を並べて、2期続けて営業損益がマイナスの店を拾いました。
ただ、拾うのが期末だけだと、知るのが遅すぎませんか。
中間決算でも判定はしていますが、形だけでした。
期末に初めて知る店をなくすのが、まず一歩でしょう。
当たれば認識の判定をして、認識が必要なら測定まで進めます。
認識の判定で回収できると分かれば、測定は要りませんよ。
損益やキャッシュ・フローの継続的なマイナス、使い方の変化、経営環境の著しい悪化、市場価格の著しい下落ですね。
それは店舗開発部が先に知っています。
数字で拾える兆候と、決定で拾える兆候を分けて、拾い方を変えるといいですよ。
決定は、出退店会議の資料で拾う。
入口を二つにします。
その数字の入口で使う店舗別損益に、本社費は入っていますか。
月次の店舗別損益は、店舗で使った費用までです。
本社費は年に一度、売上高で配っています。
配る前の数字だけで見ると、拾い漏れが出ますね。
郊外の店舗Fは、売上高で配ると赤字、売場面積で配ると黒字です。
どの基準なら、本社費の発生と結びつきますか。
基準は文書にして、毎期同じものを使います。
赤字の店を黒字にするために、基準を変えることはしません。
将来キャッシュ・フローを見積るときも、配る考え方をそろえると筋が通りますね。
会計上の費用と同じ額にはなりません。
本社ビルの減価償却費は入れません。
本社と工場を共用資産にした理由は、書いていません。
子会社3社は、それぞれ別のやり方です。
理由を書いておかないと、後で単位を変えたくなったときに説明がつきませんよ。
子会社には、同じ判定の手順と表を配ります。
担当の方は、どこまでできていますか。
④まで一人でできて「回せる」とします。
今、回せるのは一人だけです。
二人目は、どう育てますか。
②までを来年、④までを再来年にします。
判定を外したときの責任は、私が持ちます。
測定の段階では、将来キャッシュ・フローの見積りが入りますね。
経理だけで作れますか。
そこが次の話です。
シミュレーション「単一の資産グループ」で、プリセット「導入設例の数字(店舗:土地・建物・備品)」と「割引前CFは簿価以上、使用価値は簿価未満」を見比べてください。割引前の将来キャッシュ・フローの総額は 4,800 と 5,760(2割増し)で、帳簿価額 5,500 を下回るかどうかが入れ替わり、減損損失は 2,012 と 0 になります。後者は使用価値 4,233 が帳簿価額を下回っていても、割引前で回収できるので減損しません。計画を2割高く見るだけで結論が変わる。だから計画を確かめる人が要るのです。
導入設例を開く ▶ 2割増しの設例を開く ▶全社の調整役として ── 計画を作る人と、確かめる人を分ける
ただ、赤字の店ほど、来期から急に黒字になる計画になっています。
計画を作る人が、その店を続けたい人でもありますからね。
前期の計画を、その店はどれくらい達成しましたか。
ただ、6割を全店に一律に掛けるのは、少し乱暴かもしれませんね。
見積りは、合理的で説明可能な仮定で作ることになっていますからね。
一時的な理由なら、回復の根拠を確かめて、影響する分だけ見積りに反映します。
見直しは、誰が決めますか。
合わなければ、経営会議で決めます。
ほかに受け取るものはありますか。
共用資産の工場は、製造部門が持っています。
算定の方法は、翌期以降も同じものを続けるのが原則ですよ。
来期から、店舗の賃借が使用権資産として資産グループに入ります。
兆候を見る損益の形も変わりますよ。
支払利息のような財務の損益は、兆候を見る損益に含めないことになっていますよ。
主な店で今の形と新しい形の両方を試算して、兆候の判定がどう動くかを先に見ておきます。
ほかに、同じ計画を使う見積りはありませんか。
繰延税金資産の回収可能性の見積りでも、同じ事業計画を使っています。
税効果の課税所得の見積りも、よく見られるところですよ。
その場で集計したので、答えるのに時間がかかりました。
減損の達成率と、同じ表に並べられませんか。
表は一つにします。
ただ、結果が外れても、前期の見積りが誤りだったとは限りませんよ。
外れた理由が、次の見積りを直す材料になるんですよ。
見直しの前提は一つにして、見る期間の違いは、それぞれの基準に合わせます。
監査法人との協議も、ずっと楽になりますよ。
経営層に説明する側として ── 何を判断してもらうか
昨年は、5店で1.6億円の減損損失を、決算の直前に報告しました。
それと、「減損しない方法はないのか」とも言われました。
見積りが外れたときの説明は、もっと重くなりますよ。
だから、経営会議で判断してもらうことを変えます。
一つ目は、兆候のある店舗の扱いです。
減損はその結果として出ます。
改善策を打つ店は、いつまで待ちますか。
その間に計画の8割に届かなければ、閉店を含めて議論し直す目安を出します。
ただ、猶予は経営の判断の期間で、減損の判定を待つ期間ではありませんよ。
猶予中でも、各決算で兆候と認識の判定は行います。
もう一つ、本社費を配った後の赤字で閉店を議論すると、「閉めても本社費は減らない」と言われそうです。
閉めて消える費用と、残る費用は分けて見せるといいですよ。
兆候は本社費を配った後で判定し、撤退は閉めて消える費用までの利益と、閉店で出ていくお金で議論します。
事業部の目標は変えず、会計の見積りに使う数字だけを分けることを、了承してもらいます。
三つ目は出店の条件です。
稟議に、投資を回収する年数と、撤退を検討する目安を書いてもらいます。
開業したばかりの店は、どう扱いますか。
その計画を稟議に残します。
だからこそ、開業時の計画を残しておくことが大事なんですよ。
四半期の判定に担当二人で月10時間、土地と建物の査定に年200万円を見込みます。
見直しの時期は、決めていますか。
期末に兆候が出た店のうち、四半期の候補に挙がっていた店が8割に届かなければ、入口の作り方を直します。
損益と税金への出方は、どう書きますか。
災害などで評価損が認められる例外もあるので、個別に確かめましょう。
経営課題兆候の判定が期末の一発勝負で、将来キャッシュ・フローを確かめる人がいない
- 兆候を四半期で拾う
- 計画を作る人と確かめる人を分ける
- 兆候のある店を事業の判断の机へ
- 二つの入口
- 数字:月次の店舗別損益から四半期ごとに候補を出す
- 決定:出退店会議の資料から拾う
- 候補はその四半期の決算作業で結論づけ、当たればその決算で認識の判定(認識が必要なら測定)
- 本社費の配賦
- 兆候は本社費を配った後の営業損益で判定
- 費目ごとに発生と結びつく基準。文書にして毎期同じ
- 変えるときは理由と時期を記録し、変更前後の両方で判定
- 将来CFには将来に現金で出る本社費の見込みを配る(会計上の費用と同額ではない。共用資産の減価償却費は入れない)
- グルーピング
- 理由と、変えるときの条件を文書にする。子会社3社にも同じ手順と表
- 到達条件
- ①兆候の判定
- ②認識の判定
- ③測定と配分
- ④注記と監査法人への説明 → ④まで一人でできて「回せる」
- 二人目の育成
- 今年:四半期の候補リスト
- 来年:②まで、再来年:④まで
- 育成中は担当と部長が二重に確認。責任は部長
- 計画の見直し
- 過去の達成率(赤字の店は平均6割=設例)を出発点にし、外れた理由を店ごとに一行で書く。一時的な理由は回復の根拠を確かめ、影響する分だけ反映
- 決め方
- 経理の案 → エリアの事業部長と経理財務部長で合意 → 合わなければ経営会議
- 割引率・時価
- 割引率は財務と算定方法を固定(税引前・測定時点)。土地・建物の時価は総務
- 新リース
- 使用権資産を資産グループに含める。兆候を見る損益から支払利息を除く。適用前に主な店で試算
- バックテスト
- 年1回、第3四半期の見直しの前に
- 減損=店舗の計画と実績、税効果=課税所得の見積りと実績を一つの表で
- 外れても誤りとは限らない。当時の合理性とその後の変化を分ける
- 税効果との整合
- 見直しの前提は一つにする(見る期間はそれぞれの基準に合わせる)
- 兆候のある店
- 四半期ごとに報告し、続ける・改善策・閉店を事業の判断として決める
- 二つの利益
- 兆候は本社費の配賦後で判定。撤退は閉めて消える費用までの利益と、閉店で出ていくお金で議論
- 猶予
- 改善策の店は2四半期。計画の8割に届かなければ閉店を含めて議論し直す(設例の目安)。猶予中も減損の判定は各決算で行う
- 出店の条件
- 稟議に投資の回収年数と撤退を検討する目安。開業時の計画を残す
- 時間と予算
- 担当二人で月10時間、査定に年200万円(設例)
- 見直し
- 1年後。期末の兆候のうち四半期の候補に挙がっていた店が8割未満なら、入口を直す
- 損益と税務
- 特別損失に一度に出る
- 戻入れはしない
- 翌期から減価償却費が減る
- 税務:建物などは償却限度額を超える分を加算。土地は原則損金にならず、売却等の時まで差を管理
- 姿勢
- 計画を上振れさせて減損を避けることはしない
実務のひな形 ── 兆候モニタリング表・情報の受け渡しルール・経営層向け一枚(Excel・PowerPoint)
以下はすべて架空の会社の記入例です。Excelテンプレートでは記入例を残したまま配り、自社の状況に上書きして使います。
① 兆候モニタリング表 ── 数字の入口と決定の入口を、一つの表に
| 資産グループ | 区分 | ①損益の継続マイナス(本社費の配賦後) | ②使い方の変化 | ③経営環境の悪化 | ④市場価格の下落 | 判定 | 候補に挙げた時期 | 次の手続 | 情報の持ち主 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 店舗A(駅前・開業6年) | 店舗 | 前期・当期見込みともマイナス | なし | なし | — | 兆候あり | 第1四半期 | 認識の判定(割引前の将来CF) | 経理(月次の店舗別損益) |
| 店舗B(郊外・開業2年) | 店舗 | 当期見込みマイナス。開業時の計画で予定した範囲内 | なし | なし | — | 兆候に当たらないと判断(理由を記録) | 第2四半期 | 計画との乖離を四半期で確認 | 経理・エリア事業部 |
| 店舗C(閉店を決定) | 店舗 | — | 閉店の決定(来期の第2四半期) | — | — | 兆候あり | 第2四半期(出退店会議) | 認識の判定(処分までの将来CF) | 店舗開発部(出退店会議) |
| 店舗D(周辺に大型店が開業) | 店舗 | 当期は黒字 | なし | 競合の出店で客数が大きく減少し、戻る見込みがない | — | 兆候あり(経営環境の著しい悪化と判断。理由を記録) | 第3四半期 | 当四半期に認識の判定(割引前の将来CF) | エリア事業部・経理 |
| 店舗F(郊外・開業8年) | 店舗 | 配賦前は黒字。売上高で配ると前期・当期見込みともマイナス(売場面積で配ると黒字) | なし | なし | — | 兆候あり(文書にした基準で判定。基準は変えない) | 第1四半期 | 認識の判定(将来CFからも現金で出る本社費を控除) | 経理(管理会計) |
| 店舗E(子会社の店舗) | 店舗 | 前期マイナス・当期見込みマイナス | なし | なし | — | 兆候あり | 第3四半期(子会社の提出) | 子会社と同じ手順で認識の判定 | 子会社の経理 |
| 自社工場 | 共用資産 | 単独では判定しない | 稼働率の低下を確認 | なし | 土地の時価を確認 | 共用資産を含む、より大きな単位で判定 | 第2四半期 | 全店の損益と合わせて確認 | 製造部門・総務 |
①は本社費を配った後の営業損益で見る。兆候に当たれば、その四半期の決算作業で認識の判定を行い、認識が必要なら測定まで行う。期末に全体を確かめ直す。①は月次の数字から四半期ごとに、②は出退店会議の資料から、その都度拾う。兆候に当たらないと判断した店、検討した店も、理由を記録する。「候補に挙げた時期」は、1年後に仕組みを見直すときの物差しに使う。Excelでは右側に管理用の列(対象四半期・判定日・判定者・承認者・認識の判定と測定の状況・将来CF資料の保存場所・次回対応期限)を加え、兆候を見つけてから認識の判定(必要なら測定)を終えるまでを追えるようにしている。
② 情報の受け渡しルール ── 計画を作る人と、確かめる人を分ける
| 資料 | 持っている部署 | 受け取り方 | 期限 | 経理の作業 |
|---|---|---|---|---|
| 店舗別の月次損益 | 経理(管理会計) | 四半期ごとに兆候の候補リストを作る | 四半期末の翌月15日 | 損益のマイナスの継続・当期見込みのマイナスを抽出 |
| 本社費と配賦基準 | 経理(管理会計) | 費目ごとに発生と結びつく基準を文書にする | 期首(変えるときは経営会議) | 配賦後の店舗損益で兆候を判定。基準を変えるときは変更前後の両方で判定 |
| 閉店・業態転換・改装の決定 | 店舗開発部 | 出退店会議の資料の回付先に経理を入れる | 会議の当月 | 使い方の変化として判定 |
| 子会社の店舗の損益と決定 | 子会社3社の経理 | 親会社と同じ兆候モニタリング表で提出 | 四半期末の翌月15日 | 連結の候補リストにまとめる |
| 店舗の将来の計画 | エリア事業部 | 全社の中長期計画と整合させて提出 | 第3四半期末 | 過去の達成率を出発点に、外れた理由を店ごとに書いて見直し案を作る(税効果と共通の前提) |
| バックテスト(減損・税効果) | 経理(減損・税効果の担当) | 前期の見積り(店舗の計画・課税所得)と実績を一つの表に | 第3四半期の見直しの前(年1回) | 外れた理由を一時的か続くかで記録し、今期の見積りに反映 |
| 店舗の賃貸借(使用権資産) | 店舗開発部・経理(リース台帳) | リース台帳から店舗ごとの使用権資産と支払利息を受け取る | 四半期末の翌月15日 | 資産グループの帳簿価額に含め、兆候を見る損益から支払利息を除く |
| 割引率 | 財務 | 算定方法を固定し、測定時点の率を提出 | 期末日後5営業日 | 使用価値の計算 |
| 土地・建物の時価 | 総務 | 不動産会社の査定・鑑定評価 | 兆候の判定から2週間 | 正味売却価額、市場価格の下落の確認 |
| 食い違ったとき | — | 経理の案→エリアの事業部長と経理財務部長で合意 | 随時 | 合わなければ経営会議で決める |
期限の日数は設例の提案。使用権資産の行は来期(新リース会計基準の適用後)から。適用時は、リース負債と将来キャッシュ・フローの範囲(支払リース料の扱い)の整合も確かめる。見直しの前提は税効果の回収可能性の見積りと一つにし、見る期間はそれぞれの基準に合わせる。
③ 経営層向け一枚 ── 減損を、出店と撤退の判断と同じ机に
| ブロック | 載せること | 判断してもらうこと |
|---|---|---|
| 1 課題 | 兆候の判定が期末だけ。昨年はグループ68店(子会社の店舗を含む)のうち14店に兆候、5店・1.6億円の減損を決算の直前に報告 | 課題の共有 |
| 2 四半期の報告と猶予 | 兆候の候補の店舗を四半期ごとに報告。続ける・改善策を打つ・閉店を、事業の判断として決める。改善策の店は2四半期の猶予、計画の8割に届かなければ閉店を含めて議論し直す。猶予は経営判断の期間で、減損の認識の判定は各決算で行い、認識が必要なら測定する | 仕組みの承認 |
| 3 二つの利益と配賦基準 | 兆候は本社費を配った後の営業損益で判定。撤退は閉めて消える費用までの利益と、閉店で出ていくお金で議論する。本社費の配賦基準は文書にして毎期同じ、変えるときは経営会議 | 基準の承認 |
| 4 計画の見直しとバックテスト | 事業部の目標は変えず、会計の見積りには過去の達成率(赤字の店は平均6割=設例)を出発点に、外れた理由を店ごとに書いて見直した計画を使う。年1回、減損の計画と税効果の課税所得の見積りを、前期の見積りと実績で比べる(下の比較欄) | 方針の了承 |
| 5 出店の条件 | 出店の稟議に、投資を回収する年数と、撤退を検討する目安(設例の提案:開業3年目以降に営業損益のマイナスが2期続いたら)。開業時の計画を残す | ルールの承認 |
| 6 時間と予算 | 四半期の判定に担当二人で月10時間、土地・建物の査定に年200万円(設例)。二人目の育成:②まで来年、④まで再来年 | 時間と予算の承認 |
| 7 見直しの時期と条件 | 1年後に見直す。期末に兆候が出た店のうち、四半期の候補に挙がっていた店が8割未満なら、入口の作り方を直す | 見直しの条件の承認 |
| 8 損益と税務への出方 | 減損損失は原則として特別損失に一度に。戻入れはしない。翌期からは減価償却費が減る。税務では、建物などは償却限度額を超える分を加算する。土地は原則として損金にならず、売却等で損金になる時まで差を管理する | 説明の了承 |
| 9 説明の方針 | 計画を上振れさせて減損を避けることはしない。見積りの前提を注記と監査法人との協議で説明できる形にする | 姿勢の確認 |
比較欄 ── 事業部の計画のままと、見直した計画(金額は自社で試算して記入)
| 比較項目 | 事業部の計画のまま | 達成率を出発点に見直した計画 |
|---|---|---|
| 認識の判定で減損となる店舗数 | ○店 | ○店 |
| 減損損失(特別損失) | ○○万円 | ○○万円 |
| 翌期以降の減価償却費 | ○○万円 | ○○万円 |
| 見積りの根拠の説明 | 店舗ごとに計画の合理性を説明 | 過去の達成率を出発点にし、外れた理由(一時的か、続くか)を店ごとに記録 |
「達成率6割」「猶予2四半期・8割」「開業3年目・2期」「月10時間・年200万円」は設例の数字と社内目安。基準には撤退の目安はない。開業直後の店は、合理的な事業計画で予定したマイナスを実績が著しく下回っていなければ、兆候に当たらない(適用指針第12項(4))。
今日のふりかえり
自部門は「期末の一発勝負を、四半期の管理にする」。
全社は「計画を作る人と、確かめる人を分ける」。
経営層の視点は、どうなりますか。
先に判断が来れば、決算は確かめる場になりますよ。
外れた店から学べることも、きっと多いはずですよ。
一次情報・ラボ・前後の回
一次情報
- 企業会計基準委員会(ASBJ)企業会計基準適用指針一覧:企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(2003年10月31日公表、2024年9月13日改正、2025年10月16日最終改正。2026年7月7日の修正を反映)。グルーピング(第7〜10項・第70項)、減損の兆候(第11〜15項。本社費等の間接的に生ずる費用を含めることは第12項(1)、新規事業・新店舗の扱いは第12項(4))、将来キャッシュ・フロー(第36項。間接的に生ずる支出の配分と共用資産の減価償却費を含めないことは第40項)、割引率(第43〜47項)、注記(第58・59項)。
- 企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」・「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(2002年8月9日)。
- 企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(将来の課税所得の見積り)。日本公認会計士協会 監査基準報告書540「会計上の見積りの監査」(前期の見積りの結果の検討)。原価計算基準 33(間接費の配賦。適用指針第6号第40項が合理的な配分方法の例に挙げる)。
- 法人税法第33条(資産の評価損)、法人税基本通達7-5-1(5)の注(減損損失は償却費として損金経理した金額に含まれる)。
ラボ・ツール
- 減損会計ラボ(5段の流れ・兆候・認識・測定・配分・シミュレーション・税務調整)
- ラボのシミュレーション「単一の資産グループ」
- 税効果会計ラボ(同じ事業計画を使う、もう一つの見積り)
- リース会計ラボ(使用権資産が資産グループに入る)
- 減損のKAM事例267社を分析|監査人は兆候の何を見るか
- KAM割引率とは?開示事例95社で学ぶ算定方法
