海外に子会社をつくる。海外へ使用料や利息を払う。海外から仕入れる。どれか一つでも始まった時点で、国際税務の論点は同時に複数立ち上がります。しかも制度ごとに入口の条件がばらばらで、「うちは関係あるのか」の判断自体が難しい分野です。このページは、自分の会社に効く論点を先に見つけて、そこから必要なツールと解説記事へ入るための、シリーズの目次です。
まず、自分の論点を見つける
国際税務の制度は数が多く見えますが、「お金を払う」「会社を持つ」「モノとサービスが国境を越える」の3つに分けると、自社に関係する範囲がかなり絞れます。
① 海外へお金を払う ── 源泉徴収と租税条約
海外への支払がすべて源泉徴収の対象になるわけではありません。対象になるのは国内源泉所得の支払で、税率は所得の種類で変わります。国内法では使用料・貸付金の利子・配当などが20.42%、預貯金や債券等の利子が15.315%。租税条約があれば下がりますが、最初の支払日の前日までに届出書を出していることが前提です。所得区分の判定と税率の確認には、すでに公開している次の3本が使えます。
- 非居住者・外国法人への源泉徴収|16区分と租税条約 … まずここから。支払の内容を16の区分に当てはめて、源泉徴収の要否と国内法の税率を確認できます
- 租税条約|源泉税(限度税率)国別シミュレーター … 相手国と所得の種類から、条約の限度税率と手取り額を試算します
- 租税条約 日本の締結国一覧(発効状況・MLI対象) … そもそも条約があるのか、MLIの対象かを引く早見表
② 海外に会社を持つ ── 子会社まわりの5制度
海外子会社があると、次の5つの制度が同時に視野に入ります。規模の閾値がそれぞれ違うため、「全部が全部かかる」わけではありません。
- 移転価格税制 … グループ内の取引価格を「他人同士の価格」に引き直す
- 外国子会社合算税制=CFC … 税負担の軽い国の所得を日本で合算する
- グローバルミニマム課税 … 国ごとの実効税率に15%の下限を設ける
- 利子控除制限 … 過小資本税制・過大支払利子税制。借入と利子で所得を圧縮しすぎるのを止める
- 外国税額控除と配当の益金不算入 … 二重課税を調整する
グローバルミニマム課税については、グローバルミニマム課税 Q&A 早見表で制度の全体像と用語を引けます。
③ モノとサービスが国境を越える ── 消費税・関税・PE
国外がからむ取引の消費税は、税率ではなくその取引をどの区分に置くか(課税・輸出免税・不課税・非課税)で結論が変わります。輸入があれば関税の課税価格に加算要素の論点があり、現地に人や工事が出ていけばPE(恒久的施設)の検討も必要になります。
- 電気通信利用役務|50サービスの処理方法 判定 … 海外SaaSやアプリの購入・販売で、リバースチャージや国外事業者の扱いを判定します
- 消費税法 早見表 … 内外判定や輸出免税の条文を引くとき
- 所得税法 早見表 … 国内源泉所得と源泉徴収の根拠条文を引くとき
制度別に判定する ── 9つのツール
上の3つの入口で見当がついたら、制度ごとのツールで一次判定に進みます。どれもタブ①で図解と数値例を読み、タブ②に自社の数字を入れる2段構えです。どこから手をつけるか決まっていなければ、まず国際税務ナビ(全体像)で7項目に答えると、9制度の当落を一度に確認できます。
海外子会社まわり(コア5制度)
- CFC(外国子会社合算税制)判定 … 租税負担割合の計算、経済活動基準4項目、少額免除まで
- グローバルミニマム課税 3段階判定 … 適用対象 → セーフハーバー → トップアップ試算
- 移転価格 文書化判定・レンジ試算 … 同時文書化の義務(50億円・無形3億円)と利益率レンジ
- 移転価格 参考事例集ナビ … 最も適切な算定方法の選び方を国税庁の31事例で学ぶ。裁決・判決・有報の実例つき
- 移転価格 文書化ナビ(ローカルファイル・ビルダー) … 取引の棚卸→義務判定→算定方法→16項目の草案(Word互換)→年次更新
- 利子控除制限ナビ … 過小資本税制と過大支払利子税制を同じ数字から同時に計算
- 外国税額控除・外国子会社配当 … 控除限度額と、配当の益金不算入との使い分け
周辺論点
- 租税条約・源泉税 学習ナビ … 所得区分と限度税率の考え方(税率の確認は上記の既存2ツールで)
- PE(恒久的施設)リスク整理シート … 答えではなく、専門家に相談する前に事実を整理するための画面
- 国外取引の消費税 … 4つの置き場・リバースチャージ・課税売上割合
- 関税 課税価格ナビ … 加算要素の積み上げ、EPA税率、移転価格の期末調整との連動
9つとも一次判定と参考概算です。申告用の税額・適用額を確定するものではなく、「どの制度を、誰に、いつまでに確認すべきか」を洗い出すための画面としてお使いください。
解説記事で学ぶ
ツールは「判定する」ための画面で、制度の解説はそれぞれの解説記事に置いています。これから国際税務を担当する方は、まず全体像の記事を読んでから各ツールに進んでください。制度ごとの記事は順次追加します。
- 国際税務入門|初心者が最初に押さえる9制度の全体像とナビの使い方 … 「4本の線と1枚の傘」で9制度を1枚の絵に収め、ナビの7つの質問・判定カード・税率ものさしの読み方と、初担当者の1か月チェックリストまで
- 外国子会社合算税制(CFC税制)とは?|租税負担割合と判定6ステップ … 法定税率ではなく租税負担割合で判定する理由、20%と27%の2本のライン、経済活動基準4つ、受動的所得の部分合算、合算のタイミングまで
- 過大支払利子税制・過少資本税制とは?|3倍と20%の2つの物差し … 借入の量を資本と比べる過少資本税制と、利子の量を利益と比べる過大支払利子税制。3倍・20%・2,000万円の判定と、両方が当たったときの調整、7年の繰越まで
- 移転価格税制とは?わかりやすく|文書化の50億円と四分位レンジ … 独立企業間価格の考え方と「最も適切な方法」、四分位レンジと調整点(原則は平均値)、ローカルファイル50億円・3億円とMF・CbCRの1,000億円、提示できないときの推定課税まで
- 外国税額控除とは?わかりやすく|限度額の計算式・90%上限・3年繰越 … 控除限度額=法人税額×調整国外所得金額÷所得金額という器の作り方、90%シーリング、高率負担部分の除外、3年繰越、そして外国子会社配当95%益金不算入との使い分けと源泉税の取り切られまで
- 非居住者への源泉徴収とは?|20.42%と租税条約の届出書の実務 … 国内源泉所得かどうかの判定、20.42%・15.315%という国内法の税率、租税条約の限度税率と支払前の届出、使用料と役務対価の線引き、債務者主義、納付期限とグロスアップまで
- グローバルミニマム課税とは?わかりやすく|15%と7.5億ユーロの判定 … 直前4年度のうち2年度で7.5億ユーロという対象判定、IIR・UTPR・QDMTTの3ルールと日本の適用開始時期、実効税率とSBIEを使った上乗せ税の計算式、CbCRセーフハーバーの3テスト、令和8年度改正のSbSセーフ・ハーバー、税額ゼロでも残る情報申告まで
国際税務は「調べる」より「見落とさない」が難しい
この分野の実務でつまずくのは、条文が読めないことよりも、そもそも検討すべき論点に気づかないことです。海外子会社がなくても、海外への支払があれば源泉徴収、出張者や現地工事があればPE、輸出入があれば消費税と関税の論点が立ちます。逆に、子会社があっても租税負担割合が高ければCFCには当たりません。まとめて「うちは関係ある/ない」と決めてしまわないことが、最初の一歩になります。
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掲載している内容は一般的な情報提供であり、個別の取引に対する税務アドバイスではありません。実際の適用判定には法令・通達の確認と、税理士等の専門家への相談が必要です。