MENU

役員給与ラボ③【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ業績連動給与の細部・届出不要の2つの1か月・没収と失効・税制適格SOの要件

役員給与ラボ③【応用編】|先生と一緒に図で学ぶ業績連動給与の細部・届出不要の2つの1か月・没収と失効・税制適格SOの要件

無料の学習ツール「役員給与ラボ③【株式報酬・会社法・会計編】」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は基礎編で扱っています。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

🎧 動画で聞く役員給与③【応用編】業績連動給与の細部・届出不要の2つの1か月・没収と失効・税制適格SOの要件を図で(13分)

この記事の先生とハルカの会話と、ラボの図で解説する音声動画です。業績連動給与の指標と期限、届出が要らない株の条件、没収・失効で会計と法人税が逆方向に動く理由、税制適格SOの要件を扱います。クリックすると再生が始まります(YouTubeで開く)

📙 処理早見表 ラボの図
報酬の種類① 会社法(総会で決めること)② 会計(費用の相手・時期)③ 法人税(形・時期・額)④ 所得税(役員)
金銭の賞与(事前に額を決める)額が確定:その額(第361条第1項第1号)発生した期の費用(支給した期ではない)。期末後の総会で決める分は引当金(役員賞与基準第3項・第13項)事前確定届出給与(届出)。期末後に額を決める賞与は損金不算入支給時に給与所得
業績連動の金銭賞与額が未確定:算定方法(第2号)発生した期の費用(引当金)業績連動給与:8つの要件。金銭は指標確定の翌日から1か月以内に交付(令第69条第19項)支給時に給与所得
RS(事前交付型・無償交付)募集株式の数の上限など(第3号)。上場会社は無償交付(第202条の2)対象勤務期間に配分、相手は資本金・資本準備金(実務対応報告第41号第9項)。新株発行なら割当日は仕訳なし事前確定届出給与(届出不要の2つの1か月)。解除日に「交付時の価額×解除数」を損金(第54条第1項、令第111条の2第4項)解除日の価額で給与所得の収入金額(所得税法施行令第84条第1項)
RSU・PSU(事後交付型)募集株式の数の上限など(第3号)対象勤務期間に配分、交付まで株式引受権(第15項)、交付日に資本金等へ(第16項)確定数なら事前確定届出給与、業績で数が変わるなら業績連動給与。第34条の要件(市場価格のある適格株式など)を満たす場合に限り、交付時に交付時の価額を基礎に損金(法人税基本通達9-2-20の2)交付時に給与所得の収入金額
SO(非適格)募集新株予約権の数の上限など(第4号)。上場会社は払込み不要の形も(第236条第3項)対象勤務期間に配分、相手は新株予約権(SO基準第4・5項)適格新株予約権(行使で市場価格のある株が交付される)なら第34条の形に。行使日に「交付時の価額×行使数」を損金(第54条の2第1項、令第111条の3第3項)行使日の株価−行使価額が給与所得の収入金額(所得税法施行令第84条第3項)
SO(税制適格)同上同上費用は損金不算入(第54条の2第2項)。失効の戻入益は益金不算入(同条第3項)行使時は課税なし。売却時に譲渡所得(租税特別措置法第29条の2第1項)
株式交付信託信託の型により第1号(金銭の拠出)と第3号(株式の数)の組合せで決議する実務信託の型により処理が分かれる(E)信託の型により判定(E)交付時に給与所得(型による)
論点主な設例
SOの費用配分・行使・失効
RSの費用配分・没収・解除
事後交付型(PSU)
業績連動給与の要件・事前確定届出給与の形
税制適格SO
会社法の決議

金額は基礎・設例の独自の数値です。株式交付信託は型が多いので、Eで読み方だけ示しています。

はじめに

今日の題材 ── 処理早見表

📍 ラボの場所:応用タブ 処理早見表
ハルカ
先生、応用タブの最初は大きな表ですね。報酬の種類が7行、物差しが4列です。
先生
基礎編で見た4つの物差しを、報酬の種類ごとに1行に並べた表なんだ。右の列ほど「いつ・いくら」が細かくなるよ。
ハルカ
基礎編で、同じ報酬を4回量ると習いました。この表を横に読めば、1つの報酬の4回の採点が並ぶんですね。
先生
そのとおり。応用編では、表の中で条文の単位まで分解しないと迷うところを、応用タブのA〜Fの順に選んで読んでいこうか。
ラボの応用タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📙 応用 A ラボの要点
ラボの要点 業績連動給与の細部
  • ✔ 要点指標利益の状況を示す指標(有価証券報告書に記載される利益の額、減価償却費などを加減した額、売上高・総資産に対する割合、前年や目標との比較など)、株式の市場価格の状況を示す指標、売上高の状況を示す指標(利益か株価の指標と同時に用いるものに限る)法人税法第34条第1項第3号イ、法人税法施行令第69条第10〜12項。配当やキャッシュ・フローは当たらない法人税基本通達9-2-17の2。連結財務諸表の数値から算定する指標も含まれる(同9-2-17の3)。
  • ✔ 要点業務執行役員法人の業務を執行する役員。代表取締役以外で業務執行取締役に選定されていない取締役、社外取締役、監査役、会計参与は含まれない法人税基本通達9-2-17。全員に同じ要件の業績連動給与を支給することが条件。
  • ✔ 要点上限金銭は確定した額、株式・新株予約権は確定した数を「具体的な金額・数」で定める。「経常利益の○%を限度」は当たらない法人税基本通達9-2-18。
  • ✔ 要点手続報酬委員会の決定(委員の過半数が独立社外取締役、特殊関係者が委員でない、独立社外取締役の全員が賛成)、株主総会の決議、報酬諮問委員会に諮問した取締役会の決議(委員の過半数が独立社外取締役等で全員賛成、受給役員は不参加)など法人税法施行令第69条第16項。同族会社(非同族法人の100%子会社)は親法人の委員会の決定に従う決定(同条第17項)。
応用 A

業績連動給与の細部① ── 指標・だれに・上限・手続

📍 ラボの場所:応用タブ A 業績連動給与の細部
ハルカ
指標は利益・株価・売上高、支給するのは業務執行役員の全員、上限は確定した額、手続は報酬委員会など。基礎8の8つの要件を、条文の単位で割ったものですね。
先生
基礎⑧は8つにまとめた簡易判定で、ここでは条文の文言に当てはめるんだ。たとえば指標は、有価証券報告書に記載される利益の額、株式の市場価格、売上高(利益か株価の指標と同時に用いるもの)だよ(法人税法施行令第69条第10〜12項)。
迷いポイント キャッシュ・フローや配当を指標にしても、業績連動給与になる?
ハルカ
「業績」なら、どの数字でもよいと思っていました。経営会議でいちばん見るのは営業キャッシュ・フローなので、それを指標にするつもりでした。
先生
条文が指標を列挙しているんだ。利益・株価・売上高の3種類で、連結の数値から算定するものも含むよ(法人税基本通達9-2-17の3)。配当やキャッシュ・フローはそれだけでは当たらず、株価の指標に組み込む配当だけは別なんだ(同9-2-17の2)。
ハルカ
キャッシュ・フロー計算書だけ、採点表に名前のない転校生みたいです。
先生
名前のないものは、どれだけよい数字でも採点に入らないんだ。指標は条文の列挙から選ぼうか。上限も「経常利益の○%を限度」ではなく、具体的な金額か数で書くよ(同9-2-18)。
💡 そうだったのか!
指標は利益・株価・売上高(売上高は利益か株価と同時)で、配当やキャッシュ・フローだけでは当たりません(株価の指標に組み込む配当は除く)。業務執行役員の全員に同じ要件で、上限は具体的な金額・数で定めます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブで「③ 業績連動給与の要件チェック」を開き、プリセット「上限を「経常利益の○%」で定めた」を押す
  2. 「上限の定め方」を「確定した額(株は確定した数)」に戻す

👀 最初は判定「損金不算入 欠けた要件 1つ」で、8つの表のうち「確定した額(株は確定した数)を上限とし…」だけが ✖ です。戻すと「損金算入 8つの要件をすべて満たす」に変わります。

ラボを開く ▶
📙 応用 A ラボの要点
ラボの要点 業績連動給与の細部
  • ✔ 要点期限手続は職務執行期間開始日の属する会計期間開始の日から3か月以内(同条第13項)。確定申告書の提出期限の延長の特例を受けている法人のうち、定款等の定めにより3か月以内に定時総会が招集されない常況にあるなどの一定の通算法人は4か月、延長の指定を受けている法人は指定月数に2を加えた月数(同項、同条第1項第1号イ)。
  • ✔ 要点開示業務執行役員ごとに、業績連動指標・支給の限度としている確定額(数)・客観的な算定方法の内容を有価証券報告書などで開示法人税基本通達9-2-19。同じ算定方法なら包括的な開示でよい(同(注))。
  • ✔ 要点交付期限金銭は指標の数値が確定した日の翌日から1か月、株式・新株予約権は2か月を経過する日まで(交付される見込みを含む)法人税法施行令第69条第19項第1号。指標の確定日は定時総会で計算書類の承認を受けた日(会計監査人設置会社の特則なら報告した日、連結の数値なら連結計算書類を報告した日)法人税基本通達9-2-20。
  • ✔ 要点損金経理費用として経理する。見込額を引当金に繰り入れ、支給時に取り崩す方法も含む(同項第2号)。株式を交付する場合の損金算入額は、見込額ではなく交付時の市場価格を基礎にした額法人税基本通達9-2-20の2。
  • 💡 実務「全部か0か」の給与:業績指標などの条件で、所定の時期に全部を支給するか全部を支給しないかのどちらかとする定め(例:目標達成なら金銭賞与を全額支給、未達なら不支給)は、業績連動給与ではなく事前確定届出給与の対象法人税基本通達9-2-15の5。交付済みのRSを業績で没収する設計は、無償取得する数が業績で変動するものとして法人税基本通達9-2-16の2との関係を確認する。
  • ⚠ 注意1円SO(株式報酬型)を業績で数が変わる形にすると、無償取得される数が業績で変動する特定新株予約権として業績連動給与になる。その場合の交付期限は、手続の終了日の翌日から1か月以内法人税法施行令第69条第19項第1号ロ。
応用 A

業績連動給与の細部② ── 3か月・開示・交付期限・損金経理

📍 ラボの場所:応用タブ A 業績連動給与の細部
ハルカ
手続は会計期間開始の日から3か月以内、算定方法は有価証券報告書で開示、交付は指標の確定日の翌日から金銭1か月・株2か月、それと損金経理。期限が3つもあります。
先生
手続の3か月と、交付の1か月・2か月だね。設例編の設例・基礎4で、連結の指標なら「連結計算書類の内容を総会へ報告した日」の翌日から1か月と見たよ。
ハルカ
議事録の付箋を貼り直した設例ですね。承認日ではなく、報告した日が起点でした。
先生
よく覚えていたね。金銭はそこから1か月、株式・新株予約権は2か月だよ。利益の指標は、ふつうは計算書類の承認日が確定日で、株価の指標は確定日を別に確かめるんだ(法人税基本通達9-2-20)。
迷いポイント 株式で払う業績連動給与も、指標の確定日の翌日から1か月以内に渡す?
ハルカ
金銭と同じ1か月だと思って、総会の1か月後に割当日を置くつもりでした。
先生
株式・新株予約権は2か月を経過する日までで、交付される見込みも含むんだ(法人税法施行令第69条第19項第1号)。ただし、1円SOなど、業績で数が変わる一定の特定新株予約権にすると、手続の終了日の翌日から1か月になるよ(同号ロ)。
ハルカ
「目標を達成したら全額支給、未達なら不支給」の賞与は、業績連動給与ですか。
先生
金銭の賞与で、所定の時期に全部を支給するかしないかを条件で決める形は、事前確定届出給与の対象なんだ(法人税基本通達9-2-15の5)。交付済みの株を業績で没収する設計は別の話で、設例・応用4で見ようか。
💡 そうだったのか!
手続は会計期間開始から3か月以内、交付は指標の確定日の翌日から金銭1か月・株2か月(見込みを含む。業績で数が変わる一定の特定新株予約権は手続終了の翌日から1か月)。「全部か0か」の金銭賞与は、業績連動給与ではなく事前確定届出給与の側です。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブの「③ 業績連動給与の要件チェック」で、プリセット「株式の交付が3か月後になった」を押す
  2. 「指標の確定日の翌日から交付までの月数」を 2 にする

👀 最初は「交付期限 2か月/入力した交付時期 3か月 期限を超えている」で損金不算入。2にすると「期限内」になり、判定が「損金算入」に変わります。

ラボを開く ▶
📙 応用 B ラボの要点
ラボの要点 株の「数」と「価額」の決め方
  • ✔ 要点届出が不要な株将来の役務提供に係るもので、職務執行の開始の日から1か月以内の株主総会等の決議で定め、決議の日から1か月以内に特定譲渡制限付株式・特定新株予約権を交付するもの法人税法施行令第69条第3項第1号。定時総会で選任・再任された役員の職務執行の開始の日は、その総会の開催日法人税基本通達9-2-16。
  • ⚠ 注意過去の役務提供の対価過去の役務提供の対価として交付するRS・譲渡制限付新株予約権による給与は、届出不要の給与に当たらないため、事前確定届出給与として損金にならない法人税基本通達9-2-15の2。
  • ✔ 要点確定した額に相当する株「確定した額に相当する適格株式」を交付する定め法人税法施行令第69条第8項は、確定した額の給与。1に満たない端数の株の価額に相当する金銭を交付しないと、確定した額の給与に当たらない法人税基本通達9-2-15の3。
  • ✔ 要点損金算入額特定譲渡制限付株式・特定新株予約権は「交付された時の価額」。確定数給与として交付したものは「交付決議時価額」(定めをした日の1単位当たりの価額×交付数)法人税法施行令第111条の2第4項、第111条の3第3項、第71条の3第1項。
  • ✔ 要点適格株式市場価格のある株式か、市場価格のある株式と交換される株式で、その法人か関係法人(支配関係がある法人)が発行したもの法人税法第34条第1項第2号ロ、同条第7項。子会社の役員に親会社の株を渡す形も、関係法人の株として適格株式になり得る。
  • ✔ 要点適格新株予約権行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権(同号ハ)。非上場会社が自社株を交付するSOは当たらないので、第34条の形にならない。
  • 💡 実務実務では、総会の決議日・割当日・交付日を1枚の表にし、「決議から1か月以内の交付」と「職務開始から1か月以内の決議」の両方を確かめる。
応用 B

株の「数」と「価額」の決め方 ── 届出不要の2つの1か月、損金算入額

📍 ラボの場所:応用タブ B
ハルカ
届出が不要な株は、職務執行の開始の日から1か月以内の総会決議で定めて、決議の日から1か月以内に交付。基礎7で習った「2つの1か月」ですね。損金算入額は交付時の価額です。
先生
2つの1か月は、起点に注意なんだ。職務執行の開始の日は、定時総会で選任・再任された役員なら、その総会の開催日だよ(法人税基本通達9-2-16)。
迷いポイント 過去の働きに報いるために渡すRSも、2つの1か月を守れば届出不要?
ハルカ
前の期の功労に対するRSも、総会の決議日から1か月以内に渡せば、届出なしで損金になると思っていました。
先生
届出不要なのは「将来の役務提供に係るもの」だけなんだ(法人税法施行令第69条第3項第1号)。過去の役務提供の対価として交付するRSは届出不要の給与に当たらず、事前確定届出給与として損金にならないよ(法人税基本通達9-2-15の2)。
ハルカ
去年のがんばりは、株では払えない…。「功労賞」という名前の重さに、法人税は動かされないんですね。
先生
動かされないんだ。将来の3年分の職務に対する株として設計しようか。
ハルカ
「交付決議時価額」という言葉も出てきます。交付時の価額とは別ですか。
先生
「確定した額に相当する株」を交付する定め(法人税法施行令第69条第8項)のときは、定めをした日の1単位の価額×交付数が損金算入額なんだ(同令第71条の3第1項)。
ハルカ
株数に1株未満の端数が出たら、どうしますか。
先生
端数の株の価額に相当する金銭を交付しないと、確定した額の給与に当たらないんだ(法人税基本通達9-2-15の3)。
💡 そうだったのか!
届出不要になるのは将来の役務提供に係る株だけ。損金算入額は、RS・SOは交付時の価額、確定した額に相当する株は交付決議時価額です。
応用Bをラボで読むラボで開く ▶
📙 応用 C ラボの図
📒 会計SO基準・実務対応報告第41号
差
🧾 税務(法人税)法人税法第34・54・54条の2
没収の見込み:費用を計算する株数を見直し、累計との差額を見直した期に計上(実務対応報告第41号第8項)
≠
没収で無償取得した株に対応する費用・損失は損金不算入(法人税法第54条第2項)。役員に給与等課税額が生じないため
実際の没収:自己株式の無償取得。数のみ増え、帳簿価額は増えない(第11項・自己株式等会計適用指針第14項)
≠
益金・損金は生じない。別表四では、没収分の加算は戻らない
SOの権利不行使による失効:失効が確定した期に新株予約権戻入益(SO基準第9項)
≠
戻入益は益金不算入(法人税法第54条の2第3項)。別表四で減算
条件変更で公正な評価単価が増えた:増加分を以後の残存期間に追加で費用(SO基準第10項(1))。単価が下がる変更は費用を変えない(同(2))
≠
損金算入額は交付時の価額を基礎にする(法人税法施行令第111条の3第3項)。条件変更で増えた会計の費用がそのまま損金になるわけではない
退任で譲渡制限が解ける設計:費用は対象勤務期間(退任までの見積期間)に配分
≠
退任日に解除されるRS等は、所得税で退職手当等になる場合でも、第34条第1項の「退職給与」には当たらない。事前確定届出給与などの形で判定(法人税基本通達9-2-27の2)
応用 C

没収・失効・条件変更・退任 ── 会計と法人税が逆方向にずれる

📍 ラボの場所:応用タブ C
ハルカ
会計と税務が「≠」で4行です。没収の見込みは数で見直す、実際の没収は自己株式の無償取得、SOの失効は戻入益、条件変更は増加分を追加。
先生
会計は「数」で見直し、法人税は「役員に課税されたか」が損金かどうかの出発点なんだ(そのうえで第34条などの要件も要るよ)。この違いが4行の≠を作っているよ。
迷いポイント 没収や失効で会計の費用が減ったら、法人税でも損金が減るだけ?
ハルカ
会計で費用が戻るなら、法人税でも同じ方向に動くだけだと思っていました。
先生
逆方向にずれるんだ。失効で会計は戻入益、つまり利益になるけれど、法人税は益金不算入だよ(法人税法第54条の2第3項)。没収分の費用・損失は損金不算入なんだ(第54条第2項)。理由はどちらも、役員に課税されないからだよ。
ハルカ
会計が「利益が出ました」と喜んでいる横で、法人税が「数えません」と腕を組んでいる図が浮かびました。
先生
腕を組む理由は「役員に課税されていないから」の一つだけなんだ。その一つを覚えておくと、没収も失効も同じ答えになるよ。
ハルカ
4行目の「退任で譲渡制限が解ける設計」は、退職給与になるのですか。
先生
所得税で退職手当等になる場合でも、法人税の第34条第1項の「退職給与」には当たらないんだ(法人税基本通達9-2-27の2)。事前確定届出給与などの形で判定するよ。設例・応用5で数字を追おうか。
💡 そうだったのか!
没収・失効は役員に課税されないので、費用・損失は損金不算入、戻入益は益金不算入。会計の損益と法人税が逆方向にずれます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブで「① SOの費用配分と損金」を開き、プリセット「株価が下がって1個も行使されない」を押す

👀 法人税の損金 0、役員の給与所得の収入金額 0。別表四は「1〜3年目 加算 252,000」と「4年目 減算(戻入益の益金不算入)252,000」が同額で、所得への影響はゼロです。

ラボを開く ▶
📙 応用 D ラボの図
要件(第29条の2第1項各号)内容ラボの設例
付与の決議会社法第238条第2項の決議(第239条第1項の委任・第240条第1項の取締役会決議を含む)に基づき、取締役等との契約で付与。大口株主と大口株主の特別関係者は対象外E社の取締役
① 行使期間付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日まで。設立5年未満などの財務省令の要件を満たす会社は15年付与決議から3年後に行使
② 年間の行使価額年間の合計が1,200万円を超えないこと。設立5年未満の会社は行使価額を2で除して判定(実質2,400万円)、設立5年以上20年未満などの要件を満たす会社は3で除して判定(実質3,600万円)。超えることとなる行使は、超える部分だけでなく、その行使による経済的利益の全額が非課税の対象外(第1項ただし書)500円×1,000個=50万円
③ 行使価額1株当たりの行使価額が、契約締結時の1株当たりの価額に相当する金額以上500円(契約時の株価と同額)
④ 譲渡禁止新株予約権を譲渡してはならないこととされていること契約に明記
⑤ 交付の適法性行使による株式の交付が、付与決議の会社法第238条第1項の事項に反しないで行われること—
⑥ 株式の管理取得後直ちに、金融商品取引業者等の振替口座簿への記載・保管の委託・管理等信託(イ)か、発行会社による譲渡制限株式の管理(ロ)のどちらかの取決めに従うこと—
応用 D

税制適格SOの要件一覧 ── 租税特別措置法第29条の2

📍 ラボの場所:応用タブ D
ハルカ
行使期間は付与決議の日後2年から10年、年間の行使価額は1,200万円まで、行使価額は契約締結時の株価以上、譲渡禁止、株式の管理。設例・基礎5のE社は行使価額500円で、契約時の株価と同額でした。
先生
要件は契約に書き込む形で定めるんだ。役員の行使時の課税を繰り延べる代わりに、会社の費用は損金にならないよ(法人税法第54条の2第2項)。
迷いポイント 株式報酬型の1円SOも、契約に要件を全部書けば税制適格にできる?
ハルカ
行使価額が1円でも、譲渡禁止や保管委託などを契約に全部書けば適格になると思っていました。
先生
行使価額が契約締結時の1株の価額以上という要件(③)があるので、1円SOは満たせないんだ。非適格なら行使時は原則給与所得だけど、退任後の短期間に限る設計で退職所得とされた例もあるよ(東京国税局の文書回答事例)。
ハルカ
1円SOは入場料1円で特典がたくさん…と思っていたら、税制適格の入口だけは閉まっていたんですね。
先生
閉まっているのはその入口だけだよ。会社の側は、第34条の形に当たれば行使日に損金にできるんだ。
ハルカ
税制適格だと、失効したときの戻入益はどうなりますか。
先生
役員に給与等課税事由が生じないので、費用は損金不算入、失効の戻入益は益金不算入だよ(第54条の2第2・3項)。年間の限度額を超えた行使の扱いは、設例・応用6で見ようか。
💡 そうだったのか!
税制適格の要件は行使期間・年間1,200万円・行使価額は契約時の株価以上・譲渡禁止・株式の管理。1円SOは行使価額の要件で税制適格になりません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブの「① SOの費用配分と損金」で、プリセット「A社のSO(非適格・設例の数字)」を押す
  2. 「税制適格か」を「税制適格(行使時は課税なし)」に切り替える

👀 法人税の損金が 240,000 → 0、役員の行使時の課税が 1,199,200 → 0 に変わり、別表四の「差し引き(加算の残り)」に 240,000 が残ります。

ラボを開く ▶
📙 応用 E ラボの要点
ラボの要点 株式交付信託・現物出資構成・金銭との併用
  • ✔ 要点株式交付信託会社が信託に金銭を拠出し、信託が取得した自社株を役員に交付する仕組み。従業員等を対象とする信託は実務対応報告第30号で処理するが、役員だけを対象とする信託は同報告の直接の対象ではなく、その考え方を参考に個別に検討する。会社法は、金銭の拠出第361条第1項第1号・第2号と株式の数第3号の両面で決議する実務が多い。法人税は、交付される株が適格株式か、確定した数か業績で変わる数かで、事前確定届出給与・業績連動給与の形に当てはめる。
  • ✔ 要点現物出資構成のRS役員に金銭報酬債権を与え、それを現物出資させて譲渡制限付株式を交付する形。実務対応報告第41号の対象外第26項で、株式の発行として処理する。法人税では「役務の提供の対価として生ずる債権の給付と引換えに交付」される特定譲渡制限付株式法人税法第54条第1項第1号として、無償交付型と同じく解除日に損金。
  • ✔ 要点金銭との併用株の端数分を金銭で交付する定め法人税基本通達9-2-15の3・9-2-19の2や、株と金銭を組み合わせた業績連動給与では、それぞれの交付期限(金銭1か月・株2か月)のうち最も遅い日までに交付すればよい法人税法施行令第69条第19項第1号イ。
  • 💡 実務このラボで扱わないもの信託の会計処理の数値、現金決済型(株価連動の金銭報酬)の会計、子会社役員への親会社株式の会計処理。法人税の形の判定は、A・Bの考え方がそのまま使える。
応用 E

株式交付信託・現物出資構成・金銭との併用 ── 形が変わると、どの基準で読むか

📍 ラボの場所:応用タブ E
ハルカ
株式交付信託、現物出資構成のRS、金銭との併用。基礎で見た無償交付のRS・SOとは形が違います。
先生
このラボの基礎で扱わなかった形を、どの規定で読むかだけ整理した節なんだ。
迷いポイント 現物出資構成のRSも、無償交付と同じく実務対応報告第41号で処理する?
ハルカ
同じ「譲渡制限付株式」なので、第41号で処理すると思っていました。
先生
第41号は無償で交付する取引が対象で、現物出資構成は対象外なんだ(第26項)。役員に金銭報酬債権を与えて現物出資させる形なので、株式の発行として処理するよ。
ハルカ
法人税の側も、無償交付型とは別の扱いになりますか。
先生
そこは同じなんだ。「役務の提供の対価として生ずる債権の給付と引換えに交付」される特定譲渡制限付株式(法人税法第54条第1項第1号)として、解除日に損金だよ。
ハルカ
株と金銭を併用する業績連動給与の交付期限は、どちらに合わせますか。
先生
同じ職務執行期間に係る株と金銭を併せて支給するなら、金銭1か月・株2か月の期限のうち、最も遅い日までに交付すればよいんだ(法人税法施行令第69条第19項第1号イ)。
💡 そうだったのか!
現物出資構成のRSは第41号の対象外で、株式の発行として処理します。法人税は無償交付型と同じく、解除日に損金です。
応用Eをラボで読むラボで開く ▶
📙 応用 F ラボの図
物差し書類・開示内容・根拠
会社法株主総会参考書類・招集通知報酬等の議案と相当とする理由の説明(第361条第4項)。決定方針(同条第7項)は事業報告で開示される
会計計算書類・有価証券報告書の注記ストック・オプションの注記(SO基準第16項)、株式引受権・新株予約権の純資産の表示
法人税事前確定届出給与に関する届出書(付表)届出が必要な場合の付表。株式・新株予約権を交付する場合の付表がある(法人税法施行規則第22条の3)。届出不要の要件を満たす株は付表を出さない
法人税特定譲渡制限付株式・特定新株予約権の状況に関する明細書1株(1個)当たりの交付の時の価額、交付数、その事業年度に給与等課税額が生じた(生じない)ことが確定した数などを確定申告書に添付(法人税法第54条第3項、第54条の2第4項)
法人税業績連動給与の開示算定方法の内容を有価証券報告書などで開示(法人税基本通達9-2-19)。開示が手続の終了後遅滞なく行われたことを記録
所得税源泉徴収RSの解除日・非適格SOの行使日に給与所得の収入金額が生じるので、会社が源泉徴収する。税制適格SOは行使時の源泉徴収なし、売却時に役員が申告
応用 F

書類と開示 ── だれが何を出すか

📍 ラボの場所:応用タブ F
ハルカ
会社法は招集通知と事業報告、会計は注記、法人税は届出書の付表と明細書、所得税は源泉徴収。4つの物差しで、出す書類も4通りですね。
先生
公開前に、だれが何を出すかを1枚の表にしておくと、物差しのずれをそのまま説明できるんだ。
迷いポイント 届出が不要な株なら、法人税の書類は何も出さなくてよい?
ハルカ
届出が不要なので、申告書に添付するものも何もないと思っていました。
先生
届出書の付表は出さないけれど、特定譲渡制限付株式・特定新株予約権の状況に関する明細書は、届出の要否にかかわらず確定申告書に添付するんだ(法人税法第54条第3項、第54条の2第4項)。別表四の減算の根拠にもなるよ。
ハルカ
源泉徴収は、株の報酬でも会社がするのですか。
先生
RSの解除日と非適格SOの行使日に給与所得の収入金額が生じるから、会社が源泉徴収するんだ。税制適格SOは行使時の源泉徴収がなく、売却時に役員が申告するよ。
💡 そうだったのか!
届出不要の株でも明細書は確定申告書に添付します。源泉徴収は、RSの解除日と非適格SOの行使日に会社が行います。
応用Fをラボで読むラボで開く ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて役員給与ラボ③【株式報酬・会社法・会計編】の画面そのものです。応用タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

役員給与ラボ③【株式報酬・会社法・会計編】を開く ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
キャッシュ・フローや配当を指標にしても業績連動給与?指標は利益・株価・売上高(売上高は利益か株価と同時)。配当・CFだけでは当たらない(株価指標の配当は除く。基通9-2-17の2)応用A
株の業績連動給与も指標確定の翌日から1か月以内に渡す?株式・新株予約権は原則2か月(見込みを含む)。金銭は1か月(令第69条第19項第1号)応用A
過去の功労に対するRSも2つの1か月を守れば届出不要?届出不要は将来の役務提供に係る株だけ。過去分は損金にならない(基通9-2-15の2)応用B
没収・失効で会計の費用が減れば法人税も同じ方向?逆方向。費用・損失は損金不算入、戻入益は益金不算入(第54条第2項、第54条の2第3項)応用C
1円SOも契約に要件を書けば税制適格?行使価額が契約時の株価以上という要件を満たせない応用D
現物出資構成のRSも第41号で処理?第41号の対象外(第26項)。株式の発行として処理。法人税は解除日に損金応用E
届出不要の株なら法人税の書類は不要?状況に関する明細書は届出の要否にかかわらず添付(第54条第3項)応用F
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。業績連動給与は指標・期限・交付期限を条文の単位で確かめ、届出不要は将来の役務提供の株だけなんだ。没収・失効は役員に課税されないので損金不算入・益金不算入、税制適格SOは行使価額の要件が入口だよ。
ハルカ
基礎編では4つの物差しを覚えるだけで精一杯でしたが、今日は、没収や失効でなぜ損金にならないかを「役員に課税されたか」から説明できるようになりました。
先生
それが応用の読み方だね。ただ、課税されても第34条などの要件を満たさなければ損金にならない。この2段階で確かめれば、初めて見る設計でも迷わないんだ。
ハルカ
ただ、条文の番号は増えました。「第69条第19項第1号ロ」を、電話番号のように暗唱しています。
先生
番号は暗唱しなくていいよ。ラボの図の脇に全部書いてあるからね。次の設例・応用編では、没収・条件変更・退任のときの数字を1ステップずつ追っていこうか。

参考資料

会社法第202条の2・第236条・第361条、会社法施行規則第98条の2〜第98条の5、法人税法第34条・第54条・第54条の2、法人税法施行令第69条・第111条の2・第111条の3(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)、法人税基本通達9-2-15の2・9-2-16の2・9-2-18・9-2-20(国税庁)、所得税法施行令第84条、租税特別措置法第29条の2、企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」・第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」、実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」(企業会計基準委員会)。確認日:2026年10月30日。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例です。3つの形(定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与)は役員給与ラボ①【損金算入編】、過大な役員給与と退職給与は役員給与ラボ②【過大・退職給与編】で扱っています。
動画で聞く:役員給与③【基礎編】株式報酬の4つの物差し・ストック・オプション・譲渡制限付株式・業績連動給与を図で(YouTube・13分)
このシリーズの記事:役員給与ラボ③【基礎編】/役員給与ラボ③【設例・会計と法人税編】/役員給与ラボ③【設例・要件判定・所得税・会社法編】/役員給与ラボ③【設例・応用編】/役員給与ラボ③【税務調整編】

📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。