役員給与ラボ③【税務調整編】|先生と一緒に図で学ぶ別表四・別表五(一) 株式報酬費用の加算と減算・税制適格SOの戻らない残高
無料の学習ツール「役員給与ラボ③【株式報酬・会社法・会計編】」の読み方ガイドです。ラボの税務調整タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。会計処理そのものは基礎編と設例編で扱っています。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📝 税務 1 ラボの図
📒 会計SO基準・実務対応報告第41号・役員賞与基準
差
🧾 税務(法人税)法人税法第34・54・54条の2
付与日の公正な評価単価×見込数を対象勤務期間に配分(SO基準第5項、実務対応報告第41号第6項)
≠
RSは解除日、非適格SOは行使日に役務の提供を受けたものとみなす(法人税法第54条第1項、第54条の2第1項)
見込みの変更は数に反映し、見直した期に差額を計上(SO基準第7項、第41号第8項)
≠
損金算入額は交付時の価額×解除数(行使数)。確定数給与は交付決議時価額(法人税法施行令第111条の2第4項、第111条の3第3項、第71条の3)
没収は自己株式の無償取得、SOの権利不行使は戻入益(第41号第11項、SO基準第9項)
≠
役員に課税されない分の費用・損失は損金不算入、戻入益は益金不算入(第54条第2項、第54条の2第2・3項)
税制適格SOも非適格SOも同じ費用(SO基準は税制で区別しない)
≠
税制適格SOは費用が損金にならない。行使分の加算は戻らない(第54条の2第2項)
役員賞与は発生した期の費用。期末後の総会で決める分は引当金(役員賞与基準第3項・第13項)
≠
期末後に額を決める賞与は事前確定届出給与・業績連動給与に当たらず損金不算入(第34条第1項)
はじめに
今日の題材 ── 会計は「期間で配分」、法人税は「役員に課税される日」
📍 ラボの場所:税務調整タブ 1 会計と税務の違い
ハルカ
先生、税務調整タブの最初は、会計と税務が「≠」で5行並んでいます。設例編で見た加算と減算を、今日は別表の様式に書くのですね。
先生
そう。会計は付与日の単価×見込数を対象勤務期間に配分し、法人税は役員に給与等課税事由が生じた1日にまとめて損金にするんだ。この差を別表四で1年分ずつ調整して、別表五(一)で残高を繰り越すよ。
ハルカ
②で、別表五(一)に残る「留保」は時期の差だけだと習いました。株式報酬の加算も、解除日・行使日に戻る時期の差だから留保ですね。
先生
よく覚えていたね。ただ、今日は戻らないずれも出てくるんだ。税制適格SOの行使分、没収・失効に対応する費用、期末後に決めた役員賞与だよ。税務調整タブを上から読んでいこうか。
📝 税務 2 ラボの図
加算所得が増える減算所得が減る赤字=税務では損金にならない・計上しない緑字=税務の損金(小さい文字)=根拠
| 論点 | 📒 会計 | 🧾 税務(法人税) | 📝 調整と別表 |
|---|
| RS(事前交付型)の費用 | 付与日の株価×見込数を3年に配分し、資本金・資本準備金に計上(第41号第6〜9項) | - 解除日に交付時の価額×解除数を損金(法人税法第54条第1項、法人税法施行令第111条の2第4項第1号)
- それまで損金不算入
| 別表四1・2年目は加算(留保)、解除の年に減算(留保) 別表五(一)費用否認の残高を繰り越し、解除の年にゼロ |
| RSの没収 | - 見込みを数に反映
- 実際の没収は自己株式の無償取得(数のみ。第41号第8・11項)
| 没収分に対応する費用・損失は損金不算入(法人税法第54条第2項) | 別表四没収分の費用は会計でも計上されないので、原則として調整なし - 見込まずに計上していた分は、没収の年の費用の減少として現れる
別表五(一)なし |
| RSU・PSU(事後交付型) | - 付与日の単価×見込数を配分し、交付まで株式引受権
- 交付日に資本金等へ(第41号第15・16項)
| - 交付時に損金
- 業績連動給与として適格株式を交付する場合は交付時の市場価格が基礎(法人税基本通達9-2-20の2)
| 別表四1〜3年目は 加算(留保)、交付の年に 減算(留保) - 会計の累計と交付時の価額の差は留保の残高(△)として残る
|
| SO(非適格)の費用 | 付与日の単価×見込数を配分し、新株予約権に計上(SO基準第4〜7項) | 行使日に交付時の価額×行使数を損金(法人税法第54条の2第1項、法人税法施行令第111条の3第3項) | 別表四1〜3年目は加算(留保)、行使の年に減算(留保) 別表五(一)新株予約権の残高を繰り越し |
| SOの権利不行使による失効 | 失効が確定した期に新株予約権戻入益(SO基準第9項) | 戻入益は益金不算入(法人税法第54条の2第3項) | 別表五(一)残高が減る |
| SO(税制適格)の費用 | 非適格と同じ(SO基準は税制で区別しない) | - 費用は損金不算入(法人税法第54条の2第2項)
- 失効の戻入益は益金不算入(同条第3項)
| |
| SOの条件変更 | - 単価が上がる変更は増加分を残存期間に追加(SO基準第10項(1))
- 下がる変更は変えない(同(2))
| - 損金算入額は交付時の価額が基礎(法人税法施行令第111条の3第3項)
- 増加分は損金にならない
| 別表五(一)差が残る |
| 役員賞与の引当金 | 当期の職務の賞与を期末後の総会で決めるときは引当金(役員賞与基準第13項) | - 期末後に額を決める賞与は損金不算入(法人税法第34条第1項)
- 引当金の繰入れも損金不算入
| 別表四繰入年度は加算(留保)、支給年度に取崩しを減算(留保)し、同額を役員給与の損金不算入額として加算(社外流出) 別表五(一)引当金の残高が翌期に消える |
| 事前確定届出給与(金銭) | 発生した期の費用 | 届出どおりの支給なら損金(法人税法第34条第1項第2号) | 別表四なし 別表五(一)なし |
| 業績連動給与(金銭)の引当金 | 発生した期の費用(見込額を引当金) | - 要件を満たせば損金
- 見込額の引当金繰入れと取崩しの方法も損金経理に含まれる(法人税法施行令第69条第19項第2号)
| 別表四引当金計上の年度と支給年度がずれる場合は、繰入れを加算(留保)・取崩しを減算(留保) 別表五(一)引当金の残高 |
| 過去の役務提供の対価のRS | 費用は対象勤務期間に配分(過去分は一時に) | 届出不要の給与に当たらず、事前確定届出給与として損金にならない(法人税基本通達9-2-15の2) | 別表四加算(戻らない) 別表五(一)処分の区分は個別に検討 |
| 税効果 | 将来減算一時差異に繰延税金資産(回収可能性を判断) | — | - 別表五(一)の留保の残高(RS・非適格SOの費用否認)が将来減算一時差異の候補
- 税制適格SOの残高は一時差異ではない
|
税務 2
差異の一覧表 ── どの処理が、どの別表に出るか
📍 ラボの場所:税務調整タブ 2
ハルカ
12行の表で、左が会計、真ん中が税務、右が別表四と別表五(一)です。RS・RSU・SOの費用は「加算(留保)→ 減算(留保)」、税制適格SOは「行使の年に減算はない」と書いてあります。
先生
1行ずつ、会計・税務・別表の順に読む表なんだ。赤い字は税務で損金にならないもの、緑の字は損金になるものだよ。
迷いポイント 株式報酬の加算は、全部が留保で、いつか別表五(一)から消える?
ハルカ
加算は全部留保で、解除日か行使日に減算で戻ると思っていました。
先生
RSと非適格SOの費用はそうなんだ。時期の差だから、加算(留保)した額が解除日・行使日に減算(留保)で戻って、合計はゼロになるよ。
先生
税制適格SOの行使分は損金にならないので、加算の残高が戻らないんだ。期末後に額を決めた役員賞与の損金不算入は社外流出で、別表五(一)には出ないよ。
ハルカ
別表五(一)は、いつか戻ってくる約束のある人だけが泊まれる宿なんですね。社外流出は、宿帳にも書かれずに出ていく…。
先生
宿帳に書くのは、税務と会計の帳簿の差として残るものだけなんだ。戻らない差を書いてしまうと、残高が消えなくなるよ。
ハルカ
PSUの行の「会計の累計と交付時の価額の差は留保の残高(△)として残る」は、設例・応用3の450,000ですね。
先生
そう。それは資本金等の額の区分の問題として別表五(一)で整理する、戻らない差の一つなんだ。
💡 そうだったのか!
RS・非適格SOの加算は
時期の差なので留保で戻ります。税制適格SOの行使分は加算が戻らず、期末後に決めた役員賞与は
社外流出で別表五(一)に出ません。
📝 税務 3 ラボの図
税務 3
別表の書き方 ── 別表四で1年分を調整し、別表五(一)で残高を繰り越す
📍 ラボの場所:税務調整タブ 3
ハルカ
P/Lの当期純利益から出発して、別表四で加算・減算して所得金額。「留保」の分だけ別表五(一)に行って、期首−減+増=期末。この流れは、別表四・五(一)ラボの賞与引当金と同じですね。
先生
そのとおり。賞与引当金は繰入れを加算(留保)し、翌期の取崩しを減算(留保)で戻したね。株式報酬費用も、「譲渡制限付株式」「新株予約権」の行に費用否認の残高を積んで、解除・行使の年にゼロに戻すんだ。
迷いポイント 別表五(一)の「当期の減」は、会計で費用を戻したときに書く?
ハルカ
会計の戻入益が出た年に「減」を書くのだと思っていました。
先生
当期の減を書くのは、別表四で減算(留保)した年なんだ。RSなら解除日に損金算入額を減算した年、SOなら行使日の年だよ。会計の戻入益は益金不算入の減算なので、これも減に入るね。
ハルカ
期末後に決めた役員賞与の損金不算入は、別表五(一)に書かないのですね。
先生
社外流出だから書かないんだ。処分欄で留保と社外流出を分けるのは、別表五(一)に引き継ぐかどうかを決めるためだよ。
💡 そうだったのか!
別表四の
留保の金額だけが別表五(一)の増減に入ります。「当期の減」は別表四で減算(留保)した年に書き、
期首−減+増=期末で残高を繰り越します。
📝 税務 4 ラボの画面(RS・1年目)
この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。RSは3年目(解除日)にまとめて損金になります。
1年目:会計は 1,000,000 を費用にするが、法人税は解除日まで損金にしない(第54条第1項)。全額を加算(留保)して別表五(一)に残す。
📒 会計の費用(1年目)- 株式報酬費用(資本金・資本準備金が相手)1,000,000
計 1,000,000
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 1年目簡略版
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | 株式報酬費用否認(譲渡制限付株式。解除日まで損金にならない) | 1,000,000 | 1,000,000 | |
| 減算 | なし |
| 所得への影響(加算 − 減算) | +1,000,000 | | |
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 1年目簡略版
| 区分(項目) | 期首現在① | 当期の減② | 当期の増③ | 差引翌期首現在④①−②+③ |
|---|
| 譲渡制限付株式(費用否認の残高) | 0 | 0 | 1,000,000 | 1,000,000 |
| 合計(この論点の分) | 0 | 0 | 1,000,000 | 1,000,000 |
別表五(一)の残高 1,000,000(将来減算一時差異の候補)
税務 4
設例で書いてみる① ── RSの1年目:加算(留保)1,000,000
📍 ラボの場所:税務調整タブ 4 設例で書いてみる RS 1年目
ハルカ
B社のRSです。1年目は会計の費用1,000,000、税務の損金0。別表四は加算「株式報酬費用否認」1,000,000を留保に、別表五(一)は「譲渡制限付株式」の行に期首0、増1,000,000、期末1,000,000です。
先生
会計は費用にするけれど、法人税は解除日まで損金にしないから(法人税法第54条第1項)、全額を加算して別表五(一)に残すんだ。
迷いポイント 株式報酬費用の加算1,000,000は、別表四の「社外流出」に書く?
ハルカ
①で、損金不算入の役員給与は加算・社外流出でした。これも役員給与なので社外流出だと思っていました。
先生
①の損金不算入は戻らない差だったね。この1,000,000は解除日に減算で戻る時期の差だから、留保なんだ。留保に書くと別表五(一)に残高として引き継がれるよ。
ハルカ
1,000,000が留保の欄に座って、解除日まで3年間待っている…。待合室で番号札を握っている気分です。
先生
番号が呼ばれるのが解除日なんだ。それまでは別表五(一)が待合室だよ。2年目も同じように、費用600,000を加算して残高は1,600,000になるんだ。
💡 そうだったのか!
株式報酬費用の加算は
留保。解除日・行使日に減算で戻る時期の差なので、別表五(一)の「譲渡制限付株式」「新株予約権」の行に残高として引き継ぎます。
📝 税務 4 ラボの画面(RS・3年目)
この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。RSは3年目(解除日)にまとめて損金になります。
3年目:解除日に交付時の価額×解除数 2,400,000 が損金。会計の費用 800,000 との差 1,600,000 を減算(留保)し、1・2年目に加算した残高が戻る。没収した600株は損金不算入(第54条第2項)で、会計でも費用に入っていないので調整は出ない。
📒 会計の費用(3年目)- 株式報酬費用(資本金・資本準備金が相手)800,000
計 800,000
🧾 税務の損金(3年目)- 解除日に役務の提供を受けたものとみなす(法人税法第54条第1項)2,400,000
計 2,400,000
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 3年目簡略版
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | 株式報酬費用否認(譲渡制限付株式。解除日まで損金にならない) | 800,000 | 800,000 | |
| 減算 | 譲渡制限付株式に係る損金算入額(交付時の価額 @1,000 × 解除 2,400株) | 2,400,000 | 2,400,000 | |
| 所得への影響(加算 − 減算) | ▲1,600,000 | | |
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 3年目簡略版
| 区分(項目) | 期首現在① | 当期の減② | 当期の増③ | 差引翌期首現在④①−②+③ |
|---|
| 譲渡制限付株式(費用否認の残高) | 1,600,000 | 2,400,000 | 800,000 | 0 |
| 合計(この論点の分) | 1,600,000 | 2,400,000 | 800,000 | 0 |
3年の合計で会計の費用 2,400,000 と損金 2,400,000 が一致し、別表五(一)の残高はゼロに戻った。
税務 4
設例で書いてみる② ── RSの3年目:加算800,000と減算2,400,000で残高ゼロ
📍 ラボの場所:税務調整タブ 4 設例で書いてみる RS 3年目
ハルカ
3年目は会計の費用800,000、損金は解除日に@1,000×2,400株で2,400,000。別表四は加算800,000と減算2,400,000で、所得への影響は▲1,600,000です。
先生
別表五(一)は期首1,600,000−減2,400,000+増800,000=0。3年の合計で会計の費用2,400,000と損金2,400,000が一致して、残高がゼロに戻るんだ。
迷いポイント 3年目の別表四は、損金と会計の費用の差1,600,000だけを減算に書く?
ハルカ
差額の1,600,000を1行で減算すれば足りると思っていました。
先生
この簡略版では、その年の費用否認800,000を加算し、解除日の損金算入額2,400,000を減算して、両方を書くんだ。所得への影響は同じでも、減算の額を「状況に関する明細書」の交付時の価額×解除数と照らし合わせられるよ。
ハルカ
没収した600株の分は、別表四に出てこないのですね。
先生
没収分の費用・損失は損金不算入だけれど(法人税法第54条第2項)、会計でも2年目末の見込みで費用から外れているから、調整は出ないんだ。
💡 そうだったのか!
解除の年は、その年の費用否認を
加算し、交付時の価額×解除数の損金算入額を
減算します。別表五(一)は期首−減+増でゼロに戻ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 税務調整タブの「4 設例で書いてみる」で、年度ボタンの「1年目」「2年目」「3年目」を順に押す
👀 別表五(一)の残高が 1,000,000 → 1,600,000 → 0 と動き、3年目の別表四に「減算 2,400,000」が出ます。下の税効果の表も 300,000 → 480,000 → 0 と変わります。
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📝 税務 4 ラボの画面(SO非適格・4年目)
この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。非適格SOは4年目(行使日)にまとめて損金になります。
4年目:行使された800個分は交付時の価額×行使数 240,000 が損金(減算・留保)。失効した40個分の戻入益 12,000 は益金不算入(減算・留保)。
📒 会計の費用(4年目)- 新株予約権戻入益(失効 40個分。費用のマイナス)▲12,000
計 ▲12,000
🧾 税務の損金(4年目)- 行使日に役務の提供を受けたものとみなす(第54条の2第1項)240,000
計 240,000
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 4年目簡略版
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | なし |
| 減算 | 特定新株予約権に係る損金算入額(交付時の価額 @300 × 行使 800個) | 240,000 | 240,000 | |
| 減算 | 新株予約権戻入益の益金不算入(失効 40個分。第54条の2第3項) | 12,000 | 12,000 | |
| 所得への影響(加算 − 減算) | ▲252,000 | | |
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 4年目簡略版
| 区分(項目) | 期首現在① | 当期の減② | 当期の増③ | 差引翌期首現在④①−②+③ |
|---|
| 新株予約権(費用否認の残高) | 252,000 | 252,000 | 0 | 0 |
| 合計(この論点の分) | 252,000 | 252,000 | 0 | 0 |
3つを合わせて加算の残高はゼロに戻り、会計の費用の累計 252,000 = 損金 240,000 + 戻入益 12,000。
税務 4
設例で書いてみる③ ── 非適格SOの4年目:減算が2行
📍 ラボの場所:税務調整タブ 4 設例で書いてみる SO(非適格) 4年目
ハルカ
A社のSOに切り替えると4年目まであります。4年目は会計の費用が「新株予約権戻入益▲12,000」で、損金は@300×行使800個の240,000。別表四は減算が2行です。
先生
行使分の損金算入額240,000と、失効分の戻入益の益金不算入12,000だね。別表五(一)は期首252,000、減252,000で期末0だよ。
迷いポイント 戻入益12,000は会計で利益になったのだから、別表四では加算?
ハルカ
利益が増えたので加算で所得も増える、と反射的に思いました。
先生
戻入益は益金不算入だから減算(留保)なんだ(法人税法第54条の2第3項)。設例・基礎1で見た「3つを合わせてゼロ」が、別表の様式ではこの形になるよ。会計の費用の累計252,000=損金240,000+戻入益12,000だね。
ハルカ
所得への影響は▲252,000で、1〜3年目の加算の合計と同じです。
先生
そう。だから4年目の申告では、減算の2行を忘れないことがいちばん大事なんだ。別表五(一)の残高252,000を見れば、戻し忘れに気づけるよ。
💡 そうだったのか!
非適格SOの行使の年は、
損金算入額の減算と
戻入益の益金不算入の減算の2行。別表五(一)の残高を見れば、減算漏れに気づけます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 税務調整タブの「4 設例で書いてみる」で、「報酬の種類」を「SO(非適格)」にする
- 年度ボタンの「4年目」を押す
👀 会計の費用が「新株予約権戻入益 ▲12,000」、別表四に「減算 240,000」「減算 12,000」の2行、別表五(一)は期首 252,000・減 252,000・期末 0 になります。
ラボを開く ▶
📝 税務 4 ラボの画面(SO税制適格・4年目)
この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。税制適格SOは、行使分の費用が最後まで損金になりません。
4年目:行使された800個分の費用 240,000 は損金にならず、加算の残高として残る。失効した40個分の戻入益 12,000 は益金不算入なので減算(留保)する。
📒 会計の費用(4年目)- 新株予約権戻入益(失効 40個分。費用のマイナス)▲12,000
計 ▲12,000
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 4年目簡略版
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | なし |
| 減算 | 新株予約権戻入益の益金不算入(失効 40個分。第54条の2第3項) | 12,000 | 12,000 | |
| 所得への影響(加算 − 減算) | ▲12,000 | | |
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 4年目簡略版
| 区分(項目) | 期首現在① | 当期の減② | 当期の増③ | 差引翌期首現在④①−②+③ |
|---|
| 新株予約権(費用否認の残高) | 252,000 | 12,000 | 0 | 240,000 |
| 合計(この論点の分) | 252,000 | 12,000 | 0 | 240,000 |
別表五(一)に加算の残高 240,000 が残る(戻らない)。この残高は利益積立金額と資本金等の額の区分の問題として、別表五(一)の資本金等の額の欄で整理する例が多い。一時差異ではないので税効果は認識しない。
税務 4
設例で書いてみる④ ── 税制適格SOの4年目:240,000が戻らない
📍 ラボの場所:税務調整タブ 4 設例で書いてみる SO(税制適格) 4年目
ハルカ
同じ数字で税制適格にすると、4年目の損金は0。別表四の減算は戻入益12,000の1行だけで、別表五(一)は期首252,000、減12,000、期末240,000が残ります。
先生
行使された800個分の費用240,000は、役員に給与等課税事由が生じないので最後まで損金にならないんだ(法人税法第54条の2第2項)。
迷いポイント 税制適格SOでも、行使の年には加算した費用を減算で戻す?
ハルカ
行使されたのだから、非適格と同じく減算で戻すものだと思っていました。
先生
戻さないんだ。失効した40個分の戻入益12,000だけが益金不算入で減算になって、240,000は加算の残高として残るよ。
ハルカ
240,000だけ、待合室に残されて番号を呼ばれない…。ずっと待ち続けることになるんですか。
先生
呼ばれないのは、役員に課税される日が来ないからなんだ。会計では新株予約権が資本金等に振り替わっているので、利益積立金額と資本金等の額の区分の問題になるよ。
先生
資本金等の額の欄で整理する例が多いんだ。会計では、行使で新株予約権が資本金・資本準備金へ振り替わっているけれど、税務ではその費用を損金にしていないからだよ。
ハルカ
具体的に、いくらをどちらの欄に書くのですか。
先生
そこは一律には言えないんだ。資本金等の額の計算には、行使直前の新株予約権の税務上の帳簿価額が関わるから(法人税法施行令第8条第1項)、ラボの別表は簡略版として利益積立金額の側の残高240,000だけを示しているよ。
ハルカ
資本金等の額の側は、別表を作るときに個別に計算するのですね。
先生
そう。実際の申告では、その計算を顧問税理士と確認しようか。
ハルカ
この設例は、非適格と同じ数字を税制適格に切り替えただけでしたよね。
先生
そう、損金の扱いの違いだけを見るための比較の仮定なんだ。行使価額1円の株式報酬型は、本来は税制適格の要件(行使価額が契約時の株価以上)を満たさないよ。
💡 そうだったのか!
税制適格SOの行使分は
減算で戻さず、加算の残高が残ります。利益積立金額と資本金等の額の区分で整理し、一時差異ではないので税効果は認識しません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 税務調整タブの「4 設例で書いてみる」で、「報酬の種類」を「SO(税制適格)」にする
- 年度ボタンの「4年目」を押す
👀 税務の損金が 0、別表四は「減算 12,000」の1行、別表五(一)の期末に 240,000 が残ります。下の税効果の欄は「一時差異ではありません」と表示されます。
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📝 税務 5 ラボの画面
3年目末までの繰延税金資産の参考額(実効税率30%)
| 年度 | 別表五(一)の残高 | × 30% = 繰延税金資産の参考額 |
|---|
| 1年目末:費用否認の残高(将来減算一時差異の候補) | 1,000,000 | 300,000 |
| 2年目末:費用否認の残高(将来減算一時差異の候補) | 1,600,000 | 480,000 |
| 3年目末:費用否認の残高(将来減算一時差異の候補) | 0 | 0 |
解除日・行使日に損金算入が見込まれる額に税率を掛けた参考額です。回収可能性(将来の課税所得の見込み)の判断は省いています。
税務 5
税効果へのつながり ── 戻る差は一時差異、戻らない差は一時差異ではない
📍 ラボの場所:税務調整タブ 5
ハルカ
税効果会計ラボで、将来減算一時差異×税率が繰延税金資産でした。RSの1年目末の残高1,000,000×30%で300,000、2年目末は1,600,000×30%で480,000、3年目末は0ですね。
先生
別表五(一)の留保の残高のうち、解除日・行使日に損金算入が見込まれるものが将来減算一時差異の候補なんだ。回収可能性があれば繰延税金資産を計上して、損金算入の年に取り崩すよ。
迷いポイント 税制適格SOの残高240,000にも、30%の繰延税金資産72,000を計上する?
ハルカ
別表五(一)に残っている額なら、全部に税率を掛けるものだと思っていました。
先生
税制適格SOの行使分は将来も損金にならないので、一時差異ではないんだ。繰延税金資産は計上しないよ。期末後に決めた役員賞与の引当金も、支給時に社外流出になるので将来減算一時差異ではないんだ。
ハルカ
別表五(一)に残っているのに一時差異ではない…。名簿には載っているのに、クラス写真には写らない人がいるんですね。
先生
写るのは、解除日・行使日に損金になる見込みのある残高だけなんだ。回収可能性の判断は、ラボの表では省いているよ。
💡 そうだったのか!
将来減算一時差異になるのは、
解除日・行使日に損金算入が見込まれる費用否認の残高だけ。税制適格SOの残高と、期末後に決めた役員賞与の引当金は一時差異ではありません。
📝 税務 6 ラボの図
- ✖ 会計で費用にした年に、同じ額を損金にする✔ RSは解除日、非適格SOは行使日にまとめて損金。それまでの費用は加算(留保)する(法人税法第54条第1項、第54条の2第1項)
- ✖ 解除日の損金を、解除日の株価×解除数で計算する✔ 損金は交付時の価額×解除数(確定数給与は交付決議時価額)。解除日の株価は役員の給与所得の収入金額に使う(法人税法施行令第111条の2第4項)
- ✖ 税制適格SOの費用も、行使日に減算して戻す✔ 税制適格SOは費用が損金にならない。行使の年に減算はなく、加算の残高が残る(法人税法第54条の2第2項)
- ✖ SOの失効で出た戻入益を、そのまま益金にする✔ 戻入益は益金不算入。別表四で減算(留保)する(法人税法第54条の2第3項)
- ✖ 没収した株の分の費用を、損金として減算する✔ 役員に課税されない分の費用・損失は損金不算入(法人税法第54条第2項)。会計でも数の見直しで費用から外れる
- ✖ 非適格SOなら、どの会社でも行使日に損金になる✔ 第54条の2は時期の規定。損金になるかは第34条の形で判定し、行使で市場価格のある株式が交付される新株予約権であることが必要(第34条第1項第2号ハ)
- ✖ 期末後の総会で決めた役員賞与の引当金を、支給時に損金にする✔ 期末後に額を決める賞与は損金不算入。支給時に引当金の取崩しを減算(留保)し、同額を社外流出で加算する(法人税法第34条第1項)
税務 6
よくある誤り ── 申告書を作る前のチェック
📍 ラボの場所:税務調整タブ 6
ハルカ
左が誤り、右が正しい扱いの7組です。「会計で費用にした年に損金」「解除日の株価×解除数で損金」「税制適格SOも行使日に減算」…今日の内容が全部入っています。
先生
申告書を作る前に、この7組を順に当てはめるとよいんだ。1つ選んで考えてみようか。
迷いポイント 解除日の損金は、解除日の株価×解除数で計算する?
ハルカ
役員の給与所得の収入金額が解除日の株価@1,400×2,400株の3,360,000なので、会社の損金も同じ3,360,000だと思っていました。
先生
損金は交付時の価額@1,000×解除2,400株の2,400,000なんだ(法人税法施行令第111条の2第4項)。解除日の株価は、役員の給与所得の収入金額に使う数字だよ。会社の損金と役員の課税は、基礎にする価額が違うんだ。
ハルカ
「非適格SOなら、どの会社でも行使日に損金になる」も誤りなのですね。設例・基礎5のE社で、非上場なら非適格でも損金不算入でした。
先生
そう、第54条の2は時期の規定で、損金になるかは第34条の形で判定するんだ。行使で市場価格のある株式が交付される新株予約権であることが必要だよ(第34条第1項第2号ハ)。
💡 そうだったのか!
損金は
交付時の価額×解除数(行使数)、役員の課税は
解除日・行使日の株価が基礎。第54条の2は時期の規定で、損金になるかは第34条で判定します。
🌐 IFRS 2 ラボの図
数値比較 ── 権利確定後の失効で戻すか
権利確定までの費用(両基準)
252,000
@300 × 確定 840個。3年に配分
日本基準:失効時の戻入益
12,000
40個が権利不行使で失効(SO基準第9項)
IFRS第2号:失効時の戻し
0
費用は戻さない(IFRS 2.23)
| 年度 | 日本基準:費用の累計 | IFRS第2号:費用の累計 | 差 |
|---|
| 1年目 | 90,000 | 90,000 | 0 |
| 2年目 | 170,000 | 170,000 | 0 |
| 3年目 | 252,000 | 252,000 | 0 |
| 4年目(行使・失効) | 240,000 | 252,000 | ▲12,000 |
権利確定(3年目)までは、どちらも付与日の単価×見込数(1年目末 900個、2年目末 850個)で配分し、確定日に確定数 840個の 252,000 に合わせるので同じ。勤務条件による見込数の見直しは、IFRS第2号でも数に反映する(IFRS 2.19〜20)。
4年目に40個が行使されずに失効すると、日本基準は新株予約権 12,000 を戻入益にして純資産から利益へ振り替える。IFRS第2号は、権利確定後は資本の総額を修正しないので、費用はそのまま残る(資本の中で振り替えることはできる)。
法人税では、日本基準の戻入益は益金不算入(法人税法第54条の2第3項)。IFRS適用会社の連結財務諸表では、戻入益の有無が日本基準の個別財務諸表と異なる点に注意する。
権利確定前の失効(退任など)は、どちらも数の見直しで費用が減るので、差は出ない。
参考
IFRS第2号との違い ── 権利確定後の失効で戻すか
📍 ラボの場所:IFRSタブ 2 数値比較
ハルカ
A社のSOで、3年目までは日本基準もIFRSも累計252,000で同じ。4年目に40個が失効すると、日本基準は戻入益12,000で累計240,000、IFRSは252,000のままです。
先生
いちばん大きな違いがここなんだ。日本基準は権利不行使による失効で新株予約権を戻入益にするけれど(SO基準第9項)、IFRS第2号は権利確定後に資本の総額を修正しないので、費用を戻さないよ。
迷いポイント IFRS適用会社なら、法人税の損金の時期も変わる?
ハルカ
会計基準が変わるので、損金になる日も変わるのかと思っていました。
先生
法人税の扱いは会計基準で変わらないんだ。損金はRSの解除日・非適格SOの行使日で、税制適格SOは損金不算入だよ。連結でIFRSを適用する会社は、個別財務諸表の戻入益の取消しや税効果の測定方法の違いを調整することになるんだ。
💡 そうだったのか!
権利確定後の失効は、日本基準は
戻入益、IFRS第2号は
戻さない。法人税の損金の時期は、どちらの基準で費用にしても変わりません。
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。