役員給与ラボ③【設例・要件判定・所得税・会社法編】|先生と一緒に図で学ぶ設例 基礎4〜6 業績連動給与・税制適格SO・総会議案
無料の学習ツール「役員給与ラボ③【株式報酬・会社法・会計編】」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、業績連動給与の要件判定・税制適格SOの所得税・株式報酬の総会議案の設例(設例・基礎4〜6)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・要件判定・所得税・会社法編で追う3つの設例(独自の数値)
| 設例・基礎4 | D社(上場・非同族)。業務執行取締役3名に、連結営業利益×0.5%(各人の上限3,000万円)の賞与。報酬諮問委員会に諮問して取締役会で決議 |
| 設例・基礎5 | E社(非上場)の取締役にSO 1,000個。行使価額500円(契約時の株価と同額)、行使日の株価1,500円、売却2,000円 |
| 設例・基礎6 | F社(上場・監査役会設置会社)。年額3億円の金銭報酬の枠に加え、RSを無償交付の形で導入 |
はじめに
今日の題材 ── 要件を判定し、役員の課税を比べ、議案を組み立てる
📍 ラボの場所:設例タブ 設例・基礎4〜6
ハルカ
先生、前回は仕訳と別表四でした。今日は数字の計算が少なそうですね。
先生
今日は「判定」が中心なんだ。業績連動給与の要件、税制適格かどうかで変わる役員の課税、総会と取締役会で決めることを、順に見ていくよ。
ハルカ
計算より判定の方が、あとで説明を求められそうです。
先生
そう、判定は資料で説明する場面が多いんだ。設例タブを開いて、設例・基礎4から読んでいこうか。
📘 設例・基礎4 ラボの画面
○
有報に記載される利益の指標連結営業利益(法人税法施行令第69条第10項)
○
確定額を上限各人3,000万円(法人税基本通達9-2-18)
○
3か月以内の適正な手続報酬諮問委員会に諮問した取締役会決議(令第69条第16項第3号)
○
1か月以内の支給指標が連結営業利益なので、確定日は連結計算書類の内容を定時総会へ報告した日。その翌日から1か月(令第69条第19項、法人税基本通達9-2-20(注)2)
業績連動給与として損金に算入できる
*指標確定日は、指標の数値を含む計算書類の承認日が原則。会計監査人設置会社で会社法第439条の特則が適用され総会で報告するだけの場合は、報告した日。連結計算書類の数値なら、連結計算書類の内容を総会に報告した日(法人税基本通達9-2-20(注)1・2)。
設例・基礎4
業績連動給与:8つの要件を1つずつ
📍 ラボの場所:設例タブ 設例・基礎4 ステップ①
ハルカ
D社は非同族の上場会社で、3名とも同じ算定方法、上限は各人3,000万円、報酬諮問委員会に諮問した取締役会決議、有報で開示。8つとも ○ です。
先生
上限を「経常利益の○%を限度」のように決めると、確定額の上限に当たらないんだ(法人税基本通達9-2-18)。D社は各人3,000万円と金額で決めているから大丈夫だよ。
迷いポイント 支払期限の1か月は、6月の総会で計算書類が承認された日から数える?
ハルカ
6月の定時総会の承認日に丸をつけて、そこから1か月と数えるつもりでした。
先生
D社の指標は連結営業利益だから、確定日は連結計算書類の内容を定時総会へ報告した日なんだ(基通9-2-20(注)2)。会社法第439条の特則で単体の計算書類を報告するだけの場合も、報告した日になるよ。
ハルカ
根拠の日を取り違えたまま、自信満々で議事録に付箋を貼るところでした。
先生
貼る前に気づけてよかったよ。同じ総会の日に承認と報告があることも多いけれど、根拠になる日を議事録で確かめておこうか。金銭はその翌日から1か月以内に払うんだ(施行令第69条第19項)。
💡 そうだったのか!
連結の指標なら、指標の確定日は
連結計算書類の内容を定時総会へ報告した日。金銭はその翌日から1か月以内に支給します。
📘 設例・基礎4 ラボの画面
損金不算入同族会社(非同族法人の100%子会社でない)は第3号の業績連動給与の対象外
中小企業の決算賞与は、業績連動給与としては損金になりません。事前確定届出給与の形(金額を事前に確定して届出)を使います(役員給与ラボ①)。
設例・基礎4
変えてみる:同族会社なら
📍 ラボの場所:設例タブ 設例・基礎4 ステップ②
ハルカ
「同族会社でない」に ✖ が付いただけで、結論が「不算入」です。ほかの7つは ○ のままなのに。
先生
同族会社は、非同族法人の100%子会社でない限り、業績連動給与の対象外なんだ(法人税法第34条第1項第3号)。1つ欠けると、全額が損金不算入だよ。
迷いポイント 中小企業でも、算定方法を事前に決めて開示すれば業績連動給与にできる?
ハルカ
①で習ったはずなのに、「事前に決めて開示すれば何とかなる」とまた思いかけていました。
先生
思い出してくれたならいいんだ。同族会社の決算賞与を損金にしたいなら、金額を事前に確定して届け出る事前確定届出給与の形を使うよ(役員給与ラボ①)。
💡 そうだったのか!
同族会社(非同族法人の100%子会社を除く)は
業績連動給与の対象外。事前確定届出給与の形を使います。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 基礎タブの基礎8の図の上のボタンで「同族会社(親が非同族でない)」を押す
👀 「同族会社でない」に ✖ が付き、結論が「1つでも欠けると損金不算入」に変わります。
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📘 設例・基礎5 ラボの画面
行使時の給与所得の収入金額 = (1,500 − 500) × 1,000株 = 1,000,000 売却時の譲渡所得 = (2,000 − 1,500) × 1,000 = 500,000
行使日の株価から行使価額を引いた額が給与所得の収入金額(所得税法施行令第84条第3項)。給与所得の金額は、給与所得控除などを考慮して計算する。
⚠ 会社の側:損金の時期は行使日(法人税法第54条の2第1項)だが、役員給与として第34条第1項の形に当たる必要がある。E社の株式には市場価格がないので、行使で交付される自社株式は市場価格のある株式ではない(適格新株予約権でない)。そのため、事前確定届出給与にも業績連動給与にも当たらない。非適格でも損金不算入(第34条第1項第2号ハ・第3号)。
行使時:課税なし 売却時の譲渡所得 = (2,000 − 500) × 1,000株 = 1,500,000
行使期間・年間の行使価額・行使価額が契約時の株価以上・譲渡禁止などの要件を満たせば、行使時の経済的利益に課税しない(租税特別措置法第29条の2第1項)。
年間の行使価額は原則1,200万円以下(設立5年未満の会社は2,400万円、設立5年以上20年未満の一定の会社は3,600万円)、行使期間は付与決議後2年〜10年(一定の会社は15年)。この設例は原則の枠で判定している。
会社の費用は損金不算入(法人税法第54条の2第2項)。E社は交付される自社株式に市場価格がないので、非適格でも第34条で損金にならない(ステップ①)。行使で市場価格のある株式が交付され、第34条の要件を満たす非適格SOなら行使日に損金になるので、役員の税負担と会社の損金がトレードオフになる。
💡 非適格の給与所得の収入金額1,000,000+譲渡所得500,000と、適格の譲渡所得1,500,000は、経済的利益の合計では同じ。ただし所得区分と課税時期が違うので、課税所得や税額が同じになるとは限らない。
設例・基礎5
税制適格SOと非適格SO:役員の所得税
📍 ラボの場所:設例タブ 設例・基礎5 ステップ①・②
ハルカ
非適格なら、行使時に(1,500−500)×1,000株で給与所得の収入金額1,000,000、売却時に譲渡所得500,000。税制適格なら、行使時は課税なしで、売却時に譲渡所得1,500,000です。
先生
給与所得控除などを考える前の経済的利益は、どちらも合計1,500,000だね。ただ、所得の種類と課税の時期が違うから、税額が同じになるとは限らないんだ。税制適格は、売るまで課税を待ってもらえる形だよ(租税特別措置法第29条の2第1項)。
迷いポイント 税制適格の年間の行使価額は、どの会社でも1,200万円まで?
ハルカ
1,200万円という数字だけを覚えていました。
先生
1,200万円は原則なんだ。設立5年未満の会社は2,400万円、設立5年以上20年未満の一定の会社は3,600万円まで広がるよ。行使期間も、一定の会社は10年でなく15年まで延びるんだ。
ハルカ
税制適格だと会社の費用は損金にならないから、非適格にすれば、少なくとも会社の損金にはなりますよね。
先生
E社では、そうはならないんだ。E社の株には市場価格がないから、行使で市場価格のある株が交付されず、第34条の形に当たらないので、非適格でも損金不算入だよ(第34条第1項第2号ハ)。
ハルカ
E社の場合は、交付される自社株に市場価格がないことが、損金の扉を閉めていたんですね。
先生
扉が開くかは、交付される株に市場価格があるかで決まるんだ。その要件を満たす場合に、役員の税負担と会社の損金を並べて比べようか。
💡 そうだったのか!
税制適格SOは行使時に課税されず、売却時に
譲渡所得。年間の行使価額は
原則1,200万円で、設立間もない一定の会社は2,400万円・3,600万円です。市場価格のない自社株式を交付するSOは、非適格でも原則として会社の損金になりません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 基礎タブの基礎10の図の上のボタンで「SO(税制適格)」を押す
👀 行使時は「課税なし」になり、売却時の譲渡所得が (2,000−500)×1,000株 = 1,500,000 と表示されます。
ラボを開く ▶
📘 設例・基礎6 ラボの画面
○
募集株式の数の上限例:年10万株以内(第361条第1項第3号)
○
譲渡制限の事由の概要例:退任までは譲渡禁止(会社法施行規則第98条の2第1号)
○
無償で譲り渡す事由の概要例:任期中の自己都合退任(同条第2号)
○
相当とする理由の説明議案を出す取締役が説明(第361条第4項)
○
決定方針の改定株式報酬(非金銭報酬等)の内容・数の算定方法などを方針に入れる(第361条第7項、会社法施行規則第98条の5第3号)
○
募集事項無償である旨と割当日を定める(第202条の2第1項)
○
会計の確認実務対応報告第41号の事前交付型として処理(基礎⑥)
💡 法人税の形(事前確定届出給与の届出不要の要件)は、総会の時期と交付の時期で決まる。決議日と交付日をそろえて設計する(基礎⑦)。
設例・基礎6
RSを導入する総会議案と取締役会
📍 ラボの場所:設例タブ 設例・基礎6 ステップ①・②
ハルカ
総会で決めるのは、募集株式の数の上限(例:年10万株以内)、譲渡制限の事由の概要、無償で譲り渡す事由の概要、割当ての条件の概要。それに相当とする理由の説明です。
先生
数の上限は第361条第1項第3号、3つの概要は会社法施行規則第98条の2なんだ。議案を出す取締役は、相当とする理由を説明するよ(第361条第4項)。
迷いポイント 年額3億円の金銭報酬の枠があれば、株を渡すときも新しい決議はいらない?
ハルカ
3億円の枠の範囲内なら、株で払っても足りると思っていました。
先生
株で払う報酬は、金銭の枠とは別に、第3号で数の上限などを決めるんだ。取締役会では、決定方針に株式報酬を入れて、無償である旨と割当日を募集事項で定めるよ(第202条の2第1項)。
ハルカ
招集通知に書くことがこんなにあるなんて。議案の説明だけで、総会が終わってしまいそうです。
先生
求められているのは「概要」だから、そこまで長くはならないよ。それより、決議日と交付日を法人税の届出不要の要件に合わせて設計しようか。
💡 そうだったのか!
RSの導入は、総会で
数の上限と3つの概要を決め、取締役会で決定方針と募集事項を決めます。金銭の枠とは別の決議です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 基礎タブの基礎2の図の上のボタンで「上場会社の株式報酬」を押す
👀 6つの号の表の下に、第202条の2(株式の無償での発行・処分)と第236条第3項(行使時の払込みを要しないSO)が出ます。
ラボを開く ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。