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第5回 財産評価の基礎|相続税入門講座

相続税 入門講座|第5回(v11)

財産評価の基礎(入口だけ)

「財産は、いつの・いくらで数える?」から、土地・建物・上場株式・預金の評価の考え方を確かめる回です。

所要 15分前提:第4回(相続財産の3つの箱)条文:相続税法22条/財産評価基本通達
第1章 導入と民法123
第2章 財産から税額まで45678
第3章 特例と贈与91011
第4章 手続と総合演習1213
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
財産の合計本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で)
各人の課税価格1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与
課税価格の合計全員の課税価格を足したもの
課税遺産総額課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
相続税の総額課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額
算出税額相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計
納付税額算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額
相続税法ラボ会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。
所要時間各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
財産は相続開始の日の時価で評価し、具体的なやり方は財産評価基本通達で財産ごとに決まっている――土地は路線価、建物は固定資産税評価額、上場株式は4つの価格のうち最も低いもの、預金は残高。この4つの物差しで、青山家の財産を自分で評価できるようになること。
青山家の自宅の土地:何で測る?路線価方式
→
200,000円×補正率1.00×300㎡6,000万円
上場株式:亡くなった日の終値で計算すると3,240万円
→
相続税評価額(4つのうち最も低い価格)3,000万円

※ 青山家の路線価・株価などは、学習用に設定した仮定の数値です(令和9年分の路線価はまだ公表されていません)。

ハルカ先生、第4回の最後に「箱の中身が同じでも、金額はまだ評価していない」と言われたのが気になっていました。
先生今日はそこからなんだ。左の例を見てごらん。同じ株式でも、亡くなった日の終値で計算した金額と、相続税の評価額は同じではないんだよ。
ハルカ株式は3,240万円なのに、評価額は3,000万円なんですね。土地も、路線価という物差しで6,000万円と出ています。
先生そうなんだ。今日は、土地・建物・上場株式・預金が、それぞれどんな物差しで評価されるのか、入口を見ていこうか。

図で見る:財産ごとの4つの物差し(5つのステップ)

評価の3つの問い

  • いつ:相続開始の日(課税時期)。青山家は令和9年6月10日
  • いくら:時価(相続税法22条)
  • どうやって:財産評価基本通達が、財産の種類ごとに決めている
先生評価は「いつ」「いくら」「どうやって」の3つの問いで考えるんだ。左の3行がその答えだよ。
ハルカ財産の種類ごとに、使う物差しが違うんですね。
先生そのとおりなんだ。ステップ1から、青山家の4つの財産を順に評価していこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
いつ・いくら土地建物上場株式預金・その他いつ?相続開始の日(課税時期)青山家:令和9年6月10日いくら?時価(相続税法22条)多くの人が自由に売り買いしたら普通につく値段どうやって?財産評価基本通達財産の種類ごとに決まった方法財産ごとの物差し(このあとのステップ)土地路線価 × 補正率 × 面積建物固定資産税評価額 × 1.0上場株式4つの価格のうち最も低いもの預金相続開始の日の残高法律が直接、評価方法を決めているもの(法定評価):地上権・永小作権、配偶者居住権など、定期金に関する権利、立木(相続税法23条〜26条)。この講座では扱わない買ったときの値段・建てたときの値段は使わない。基準はいつも「相続開始の日」
評価の基準日:相続開始の日(青山家 令和9年6月10日)/ 物差し:時価(相続税法22条)→ 財産評価基本通達
ハルカ第4回で「金額はまだ評価していない」と言われました。財産は、いつの値段で数えるんですか?
先生亡くなった日、つまり相続開始の日の「時価」なんだ。青山家なら令和9年6月10日だよ。
🤔 迷いポイント相続税の評価は、亡くなった人が買ったときの値段で見る?
ハルカ父が土地を買ったときの値段を、そのまま書けばいいと思っていました。
先生見るのは相続開始の日の時価なんだ。時価は、たくさんの人が自由に売り買いしたら普通につく値段のことだよ。
ハルカあ、これは相続税法ラボの応用編 ↗で見ました。時価で評価して、具体的なやり方は財産評価基本通達で決まっているんでしたよね。
先生よく覚えていたね。相続税法には「時価による」としか書いていないから、実務では国税庁の通達のやり方で評価するんだ。
ハルカ財産評価基本通達……。名前に「基本」と付いているのに、中身はとても細かそうです。
先生名前は基本でも、土地・建物・株式など財産の種類ごとに、評価のやり方がくわしく決まっているんだよ。
💡 そうだったのか!財産は相続開始の日(課税時期)の時価で評価する(相続税法22条)。具体的なやり方は、財産評価基本通達が財産ごとに決めている。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 評価の原則

ハルカ第4回で「金額はまだ評価していない」と言われました。財産は、いつの値段で数えるんですか?
先生亡くなった日、つまり相続開始の日の「時価」なんだ。青山家なら令和9年6月10日だよ。
🤔 迷いポイント相続税の評価は、亡くなった人が買ったときの値段で見る?
ハルカ父が土地を買ったときの値段を、そのまま書けばいいと思っていました。
先生見るのは相続開始の日の時価なんだ。時価は、たくさんの人が自由に売り買いしたら普通につく値段のことだよ。
ハルカあ、これは相続税法ラボの応用編 ↗で見ました。時価で評価して、具体的なやり方は財産評価基本通達で決まっているんでしたよね。
先生よく覚えていたね。相続税法には「時価による」としか書いていないから、実務では国税庁の通達のやり方で評価するんだ。
ハルカ財産評価基本通達……。名前に「基本」と付いているのに、中身はとても細かそうです。
先生名前は基本でも、土地・建物・株式など財産の種類ごとに、評価のやり方がくわしく決まっているんだよ。
💡 そうだったのか!財産は相続開始の日(課税時期)の時価で評価する(相続税法22条)。具体的なやり方は、財産評価基本通達が財産ごとに決めている。

評価の基準日:相続開始の日(青山家 令和9年6月10日)/ 物差し:時価(相続税法22条)→ 財産評価基本通達

STEP 2 土地(路線価)

ハルカ土地の時価なんて、実際に売ってみないと分からないですよね?
先生そこで使うのが路線価なんだ。道路ごとに1㎡あたりの値段が毎年公表されていて、奥行きの長さで調整してから面積を掛けるよ。
🤔 迷いポイント土地は、どこでも路線価で評価する?
ハルカ全国のどの道路にも、路線価が付いていると思っていました。
先生路線価があるのは主に市街地なんだ。路線価のない地域では、固定資産税評価額に国税局長が定めた倍率を掛ける「倍率方式」を使うよ。
ハルカ道路に1㎡ごとの値段が付いているなんて、商店街の値札みたいですね。
先生値段が付いているのは道路そのものではなく、その道路に面した宅地の1㎡なんだよ。
💡 そうだったのか!宅地は路線価方式(路線価×奥行価格補正率など×面積)か、倍率方式(固定資産税評価額×倍率)で評価する。

路線価 200,000円 × 奥行価格補正率 1.00 × 300㎡ = 6,000万円(青山家の自宅の土地・特例前)

STEP 3 建物

ハルカ建物は、建てたときの値段で評価するんですか?
先生家屋は、固定資産税評価額に1.0を掛けた額なんだ。毎年届く固定資産税の納税通知書の「評価額」の欄で確かめるよ。「課税標準額」と取り違えないようにね。
🤔 迷いポイント人に貸している家も、自分で住んでいる家と同じ評価額?
ハルカ同じ建物なら、貸していても金額は変わらないと思っていました。
先生貸家は、借りている人の権利の分だけ低くなるんだ。自用家屋の評価額から、借家権割合30%に賃貸割合を掛けた分を引くよ。
ハルカ青山家の自宅は、建てたときは約2,500万円だったのに800万円……。なんだか寂しいです。
先生建てた値段ではなく、いまの固定資産税評価額で見る、というだけなんだよ。
💡 そうだったのか!家屋は固定資産税評価額×1.0。貸家は、自用家屋の評価額×(1−借家権割合30%×賃貸割合)で評価する。

固定資産税評価額 800万円 × 1.0 = 800万円(青山家の自宅の建物)

STEP 4 上場株式

ハルカ上場株式なら、亡くなった日の株価を見ればいいんですよね?
先生原則として、その日の終値と、その月・前月・前々月の終値の月平均の4つを並べて、最も低い価格を使うんだ。
🤔 迷いポイント上場株式は、亡くなった日の終値で評価する?
ハルカニュースで見る、その日の終値だけを見ればいいと思っていました。
先生青山家なら、6月10日の終値2,700円より、5月の月平均2,500円のほうが低いよね。だから2,500円×12,000株で3,000万円になるんだ。
ハルカ4つの中から、いちばん低い価格を選んでくれるなんて、やさしい制度ですね。
先生原則として4つのうち最も低い価格を使う、と決まっているんだよ。
💡 そうだったのか!上場株式は原則として、①その日の終値 ②その月 ③前月 ④前々月の終値の月平均のうち、最も低い価格で評価する。

2,500円(4つのうち最も低い5月の月平均)× 12,000株 = 3,000万円

STEP 5 預金・その他

ハルカ預金は、通帳の残高そのままでいいんですか?
先生基本は相続開始の日の残高なんだ。定期預金などは、その日までの利子から源泉税の分を引いた額も足すよ。
🤔 迷いポイント会社の株なら、上場していなくても同じように株価で評価する?
ハルカ社長さんの家の会社の株も、上場株式と同じやり方だと思っていました。
先生取引相場のない株式は、会社の規模や株主の立場で評価の方式が変わるんだ。くわしくは応用講座で見ていこうか。
ハルカ青山家の4つの財産を合わせると、1億7,800万円ですね。
先生そうなんだ。これが第4回の「本来の相続財産」の金額で、自宅の土地の特例はこのあとに使うんだよ。
💡 そうだったのか!預金は残高(定期預金などは既経過利子の税引後の額も足す)。取引相場のない株式は、会社の規模などで評価方式が違う。

土地6,000万円+建物800万円+預金8,000万円+上場株式3,000万円= 1億7,800万円(特例前)

青山家の財産を評価する

財産評価のしかた評価額
自宅の土地(300㎡)路線価方式:200,000円 × 奥行価格補正率1.00 × 300㎡6,000万円
自宅の建物固定資産税評価額800万円 × 1.0800万円
預金(普通預金)相続開始の日の残高8,000万円
上場株式(12,000株)4つの価格のうち最も低い2,500円(5月の月平均)× 12,000株3,000万円
本来の相続財産の評価額(特例前)1億7,800万円

この先の回で:自宅の土地は小規模宅地等の特例で6,000万円 → 1,200万円(第9回)。これは評価が終わったあとに使う特例です。第4回の保険金(非課税後500万円)などと合わせて、課税価格の合計 1億4,790万円(第6・7回)につながります。

ハルカ青山家の4つの財産を、評価のしかたと一緒に並べてみたいです。
先生左の表のとおりだよ。土地6,000万円、建物800万円、預金8,000万円、上場株式3,000万円で、合計1億7,800万円になるんだ。
ハルカ第4回で見た本来の相続財産の1億7,800万円は、この評価額の合計だったんですね。
先生そうなんだ。自宅の土地は第9回の小規模宅地等の特例でさらに下がるけれど、それは評価が終わったあとの話なんだよ。

やってみよう:路線価で土地を評価する

※ 普通住宅地区で、1本の道路だけに面した宅地の目安です(奥行距離は60m未満で計算)。角地の側方路線影響加算、間口狭小・不整形地などの補正、貸宅地などの権利の差し引き、小規模宅地等の特例(第9回)は入っていません。奥行価格補正率は財産評価基本通達の付表(普通住宅地区)の値です。

ハルカ路線価の計算を、自分でもやってみたいです。
先生左で路線価・奥行距離・面積を入れてみてね。普通住宅地区の奥行価格補正率が自動で入るよ。
ハルカ講本の設例1は奥行9mで0.97、青山家は奥行20mで1.00なんですね。
先生普通住宅地区では、奥行きが短すぎても長すぎても補正率が1.00より下がるんだ。表の値は、財産評価基本通達の付表で決まっているよ。

よくある間違い

① 買ったとき・建てたときの値段で書く

評価の基準は相続開始の日の時価です。取得したときの価格は使いません。建物は固定資産税評価額×1.0です。

② 土地はどこでも路線価

路線価があるのは主に市街地です。路線価のない地域は倍率方式(固定資産税評価額×国税局が定める倍率)で評価します。

③ 上場株式は亡くなった日の終値だけ

その日の終値と、その月・前月・前々月の終値の月平均の4つのうち、最も低い価格で評価します。
ハルカ①は、ステップ1の前の私そのものです。
先生買った値段や建てた値段は、評価では使わないんだ。基準はいつも相続開始の日だよ。
ハルカ③も、その日の終値だけを見て安心するところでした。
先生月平均も3か月分並べるんだ。左の3つは、どれも「いつの・どの物差しか」を確かめれば防げるよ。

ミニテスト(3問)

Q1. 父が令和9年6月10日に亡くなった。相続税で、父の財産を評価する基準の日は?
Q2. 普通住宅地区で、路線価300,000円、奥行価格補正率0.97、面積100㎡の宅地(一方のみ道路に面する)。評価額は?
Q3. 上場株式。亡くなった日の終値1,000円、その月の月平均980円、前月の月平均1,020円、前々月の月平均950円。1株の評価額は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 財産は相続開始の日(課税時期)の時価で評価する(相続税法22条)。
  2. 具体的なやり方は財産評価基本通達が、財産の種類ごとに決めている。
  3. 宅地は路線価方式(路線価×奥行価格補正率など×面積)か倍率方式(固定資産税評価額×倍率)。
  4. 家屋は固定資産税評価額×1.0。貸家は借家権割合30%×賃貸割合の分を引く。
  5. 上場株式は原則としてその日の終値と3か月分の月平均のうち最も低い価格(その日に取引がない場合や権利落ちなどは別に確かめる)。預金は残高(定期預金などは既経過利子の税引後の額も足す)。
先生今日のまとめだよ。財産は相続開始の日の時価で評価し、具体的なやり方は財産評価基本通達が財産ごとに決めているんだ。土地は路線価、建物は固定資産税評価額、上場株式は4つのうち最も低い価格だよ。
ハルカ相続税の評価額は、売ったらいくらかとは別の、決められた物差しで測った金額なんですね。
先生そこは少しだけ言い直そうか。評価額も時価を測ったもので、通達の物差しは、その時価を誰でも同じように測るためのものなんだ。
ハルカこれからは財産の一覧を見たら、金額の横に「どの物差しで測ったか」を書き込みます。
先生それがいちばん確かな確かめ方だよ。次の第6回では、評価した財産から借入金や葬式費用を引いて、課税価格を計算していこうか。

参照条文・出典

参照条文・通達:相続税法22条(評価の原則)、23条〜26条(地上権・永小作権、配偶者居住権等、定期金に関する権利、立木の評価)/財産評価基本通達1(評価の原則)、7・7-2(土地の評価上の区分・評価単位)、11・13〜21-2(路線価方式・倍率方式)、89・93・94(家屋・貸家・借家権割合)、169(上場株式)、203(預貯金)

参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第11章 財産の評価(pp.102〜120。路線価方式の【設例1】p.112)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4604 路線価方式による宅地の評価(同Q&A)・No.4606 倍率方式による土地の評価/国税庁 財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。路線価方式の設例の数値(講本p.112)と奥行価格補正率(講本p.110)は、講本の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令・通達に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の路線価・株価・建築時の価格等は、学習用に設定した仮定の数値です(令和9年分の路線価は未公表。実際には公表後に評価します)。

ハルカ今日の内容は、条文ではどこで確かめられますか?
先生評価の原則は相続税法22条、地上権や配偶者居住権などの法定評価は23条から26条だよ。相続税法ラボ ↗では、財産の評価の切り口からも引けるんだ。
ハルカこの講座のもとになった資料も知りたいです。
先生税務大学校の講本『相続税法(基礎編)令和8年度版』の第11章を参考に、TaxJudgeが独自に組み立てているよ。出典は左にまとめてあるんだ。
相続税 入門講座 第5回|taxjudge.com
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