暦年贈与と生前贈与加算(3年から7年へ)
「生前に贈与した財産は、相続税と関係ない?」から、加算する人・加算する期間(経過措置)・延長期間の100万円控除を、日付入りのタイムラインで確かめる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった人から暦年課税で受けた贈与のうち、加算対象期間のものは相続税の課税価格に加算する。3年以内は全額、延長された期間の分はその期間の合計から100万円を1回だけ控除――この区別を、青山家の令和9年6月10日を基準にしたタイムラインで説明できるようになること。
※ 相続開始は令和9年6月10日。加算対象は令和6年1月1日以後の贈与です(経過措置)。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
図で見る:生前贈与加算のしくみ(5つのステップ)
確かめる順番
- 誰の贈与か:相続や遺贈で財産を取得した人が受けた暦年課税の贈与
- いつの贈与か:相続開始日で決まる加算対象期間(経過措置)
- いくら足すか:3年以内は全額、延長期間は合計から100万円を控除
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 贈与税のしくみ
贈与税(暦年課税):(1年の贈与の合計 − 基礎控除110万円) × 速算表の税率 − 速算表の控除額 / 由紀:90万円 × 10% − 0円 = 9万円 × 2年
STEP 2 誰の贈与を足すか
加算するのは、相続・遺贈で財産を取得した人の暦年贈与(110万円以下でも)/ 青山家では 由紀の400万円
STEP 3 加算対象期間(経過措置)
相続開始 令和9年6月10日 → 加算対象は 令和6年1月1日以後の贈与(経過措置)
STEP 4 タイムラインで判定
3年以内(令和6年6月10日〜)は全額 / 延長部分は合計から100万円を1回だけ控除 → 由紀 400万円
STEP 5 加算のあと
由紀:課税価格 3,900万円 → 算出税額 3,818,914円 − 贈与税額控除 180,000円 = 3,638,914円
青山家:由紀の贈与をタイムラインで確かめる
| 贈与 | 期間の判定(相続開始 令和9年6月10日) | 加算額 |
|---|---|---|
| 令和7年3月 200万円 | 3年以内(令和6年6月10日〜) | 200万円 |
| 令和8年3月 200万円 | 3年以内 | 200万円 |
| 由紀の加算額 | 延長期間の贈与はないので、100万円の控除もない | 400万円 |
| (仮に)令和6年3月 200万円 | 延長期間(令和6年1月1日〜6月9日)→ 合計200万円 − 100万円 | 100万円 |
| (仮に)令和5年10月 200万円 | 令和5年以前の贈与 → 加算対象期間の外 | 0円 |
「(仮に)」の2行は、期間の違いを見るための仮の贈与です。青山家の実際の贈与は令和7年・令和8年の2回だけです。贈与税は (200万円 − 110万円) × 10% = 9万円(特例税率)×2年 = 18万円。
やってみよう:この贈与は加算される?
※ 亡くなった人から暦年課税で受けた贈与だけを扱う簡易な判定です(金額は贈与税の課税価格)。相続時精算課税の贈与(第11回)、贈与税の配偶者控除の部分、教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の残額などは扱いません。延長期間の100万円控除は、その期間の贈与の合計から1回だけ(0円が下限)。2月29日の相続で3年前・7年前に同じ日がないときは、2月28日(その月の末日)を基準日として扱っています。
よくある間違い
① 110万円以下の贈与は加算されない
贈与税がかからなかった贈与でも、加算対象期間内なら加算します。110万円は贈与税の基礎控除で、相続税の加算とは別の話です。② 100万円は毎年控除される
100万円の控除は、延長された期間(3年より前)の贈与の合計から1回だけ。3年以内の贈与からは控除しません。③ 贈与を受けた人なら誰でも加算
加算するのは、相続や遺贈で財産を取得した人(みなし相続財産を含む)の贈与だけ。何も取得しなかった孫などの贈与は、原則として加算しません。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 暦年課税の贈与税は、1月〜12月の贈与の合計から基礎控除110万円を引いて計算する。
- 相続や遺贈で財産を取得した人が、加算対象期間に亡くなった人から受けた暦年贈与は、相続税の課税価格に加算する(110万円以下でも)。
- 加算対象期間は相続開始日で決まる:令和8年までの相続は3年、令和9年〜12年の相続は令和6年1月1日以後、令和13年以後の相続は7年。
- 3年以内は全額、延長された期間の分はその合計から100万円を1回だけ控除。
- 加算した贈与の贈与税は、贈与税額控除で相続税から引く(第8回)。
参照条文・出典
参照条文:相続税法19条(相続開始前7年以内に贈与があった場合の相続税額)、21条の2第4項(相続開始年の贈与)、21条の5(贈与税の基礎控除)、21条の7(贈与税の税率)/租税特別措置法70条の2の4(基礎控除の特例)・70条の2の5(直系尊属から贈与を受けた場合の税率の特例)/所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)附則19条(加算対象期間の経過措置)
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章第5節 6 相続開始前7年以内に被相続人から贈与を受けた者の課税価格(pp.33〜34。加算対象期間の表 p.34)、第8節 2 暦年課税分の贈与税額控除(p.42)、第4章 贈与税の税率(pp.53〜54)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。加算対象期間の表は講本 p.34 の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。