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第9回 小規模宅地等の特例|相続税入門講座

相続税 入門講座|第9回(v11)

小規模宅地等の特例(自宅の土地は必ず80%減る?)

「自宅の土地なら、誰が相続しても80%減る?」から、対象になる土地・取得する人・減額できる面積・手続の4つで、特例を使えるかどうかを判断する回です。

所要 15分前提:第5回(評価)・第6回(課税価格)条文:租税特別措置法69条の4
第1章 導入と民法123
第2章 財産から税額まで45678
第3章 特例と贈与91011
第4章 手続と総合演習1213
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
財産の合計本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で)
各人の課税価格1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与
課税価格の合計全員の課税価格を足したもの
課税遺産総額課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
相続税の総額課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額
算出税額相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計
納付税額算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額
相続税法ラボ会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。
所要時間各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
小規模宅地等の特例は「自宅の土地なら自動で80%減額」ではなく、①対象になる土地か ②誰が取得するか(要件) ③どこまで減額できるか(限度面積) ④申告などの手続の4つを満たしたときに使える――この判断の順番を、青山家の自宅の土地で説明できるようになること。
自宅の土地の評価額(第5回)6,000万円
→
美和が取得:特例あり(80%減額)1,200万円
同じ土地を健太が取得した場合6,000万円のまま
→
課税価格の合計1億9,590万円
→
相続税の総額2,597万5,000円

※ 健太は別居で持ち家に住んでいる設定です(共通事例シート)。配偶者の美和がいるので、別居の子は原則として特例を使えません。総額はほかの財産・人数が同じとした場合の比較です。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ第6回で、自宅の土地の特例で4,800万円減ると聞きました。自宅の土地なら、誰が相続しても80%減るんですか?
先生そこを今日確かめるんだ。左を見てごらん。美和さんが取得すると1,200万円だけど、健太さんが取得すると6,000万円のままなんだよ。
ハルカ課税価格の合計も相続税の総額も、ずいぶん変わるんですね。
先生そうなんだ。今日は「80%」という数字よりも、使えるかどうかの判断を、土地・人・面積・手続の順に見ていこうか。

図で見る:特例を使えるかの判断(5つのステップ)

判断の順番

  • 土地:亡くなった人などが住んでいた(事業に使っていた)建物の敷地か
  • 人:取得した人が、その人に応じた要件を満たすか
  • 面積と手続:限度面積までの部分か、申告・分割・選択の同意があるか
先生判断の順番は、土地・人・面積と手続の3段なんだ。左の3行を先に見ておこうか。
ハルカいちばん迷いそうなのは「人」の段です。
先生そのとおりなんだ。ステップ1で全体像を見てから、順に確かめていこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
特例の全体像① 土地② 人③ 面積④ 手続と結果亡くなった人などが使っていた土地は、家族の生活や仕事の基盤 → 一定の要件で課税価格に入れる額を減らす土地の使い方(相続開始の直前)限度面積減額割合自宅(特定居住用宅地等)330㎡80%事業用(特定事業用宅地等など)400㎡80%貸付用(アパート・駐車場など)200㎡50%この講座では、いちばん身近な「自宅の土地(特定居住用宅地等)」を扱う① 土地:対象になる土地か② 人:誰が取得し、要件を満たすか③ 面積:限度面積までの部分か④ 手続:申告・分割・選択の同意があるか
自宅の土地(特定居住用宅地等):330㎡まで80%減額 / 事業用 400㎡まで80% / 貸付用 200㎡まで50%
ハルカ小規模宅地等の特例って、自宅の土地が80%安くなる特例ですよね?
先生大きく言えばそうなんだ。ただ、自宅のほかに事業用や貸付用の土地もあって、限度面積と減額割合がそれぞれ違うよ。
🤔 迷いポイント自宅の土地なら、何もしなくても自動で80%減る?
ハルカ評価額を出したら、自動的に8割引きになると思っていました。
先生自動ではないんだ。土地・人・面積・手続の4つを確かめて、満たしたときに使える特例なんだよ。
ハルカ8割引きのタイムセールみたいですね。
先生セールと違って、条件を満たした人しか使えないんだよ。
💡 そうだったのか!小規模宅地等の特例は自動ではない。土地・人・面積・手続の4つを満たしたときに、課税価格に入れる額を減らせる。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 特例の全体像

ハルカ小規模宅地等の特例って、自宅の土地が80%安くなる特例ですよね?
先生大きく言えばそうなんだ。ただ、自宅のほかに事業用や貸付用の土地もあって、限度面積と減額割合がそれぞれ違うよ。
🤔 迷いポイント自宅の土地なら、何もしなくても自動で80%減る?
ハルカ評価額を出したら、自動的に8割引きになると思っていました。
先生自動ではないんだ。土地・人・面積・手続の4つを確かめて、満たしたときに使える特例なんだよ。
ハルカ8割引きのタイムセールみたいですね。
先生セールと違って、条件を満たした人しか使えないんだよ。
💡 そうだったのか!小規模宅地等の特例は自動ではない。土地・人・面積・手続の4つを満たしたときに、課税価格に入れる額を減らせる。

自宅の土地(特定居住用宅地等):330㎡まで80%減額 / 事業用 400㎡まで80% / 貸付用 200㎡まで50%

STEP 2 対象になる土地

ハルカまず、どんな土地なら対象になるんですか?
先生亡くなった人などが住んでいた建物の敷地なんだ。青山家なら、修さんが美和さんと住んでいた自宅の土地だよ。
🤔 迷いポイント亡くなった人が持っていた土地なら、どれでも対象?
ハルカ別荘の土地や畑も、全部まとめて80%減ると思っていました。
先生対象は、住まいや事業に使っていた建物の敷地なんだ。住んでいない別荘や、農地は入らないよ。
ハルカ「小規模」という名前なのに、330㎡まで使えるんですね。私の1Kのアパートが何部屋入るんでしょう。
先生名前は小規模でも、自宅の土地なら330㎡までなんだよ。
💡 そうだったのか!対象は、亡くなった人などが住んでいた(事業に使っていた)建物の敷地。減るのは課税価格に入れる額で、評価額そのものではない。

① 対象:亡くなった人などが住んでいた建物の敷地 → 青山家の自宅(300㎡・評価額6,000万円)は ○

STEP 3 取得する人の要件

ハルカ同じ土地なら、誰が取得しても80%減るんですよね?
先生そこが今日いちばん大事なところなんだ。取得する人によって、求められる要件が違うよ。
🤔 迷いポイント自宅の土地なら、誰が相続しても80%減額される?
ハルカあ、これは相続税法ラボの応用編 ↗の迷いポイントでした。配偶者は取得者の要件なしで、同居の親族は住み続けるのが条件、でしたよね。
先生よく覚えていたね。ここは亡くなった人本人の自宅の場合だよ。別居の親族は、いわゆる家なき子として、配偶者も同居の相続人もいないときに限って、持ち家がないなどの要件で使えるんだ。青山家は美和さんがいるから、別居で持ち家に住む健太さんが取得すると使えないよ。
ハルカ同じ土地なのに、取る人しだいで4,800万円も変わるなんて……。ドキドキします。
先生だから、遺産分割で誰が取得するかを決める前に、要件を確かめるんだよ。
💡 そうだったのか!亡くなった人本人の自宅なら、配偶者は取得者としての要件なし。同居親族は申告期限まで住み続け・持ち続ける。別居親族(家なき子)は、配偶者も同居の相続人もいない場合に限られる。

② 人(本人の自宅):配偶者は取得者の要件なし(美和 ○)/ 同居親族は住み続け・持ち続け / 別居親族は限られた場合だけ(健太 ×)

STEP 4 限度面積と減額

ハルカ美和さんが取得すると、土地全部が80%減るんですか?
先生自宅の土地は330㎡までなんだ。青山家は300㎡だから全部が入って、6,000万円の80%、4,800万円が減るよ。
🤔 迷いポイント広い自宅でも、土地全部が80%減る?
ハルカ400㎡の家なら、400㎡全部が8割減ると思っていました。
先生減るのは330㎡までの部分なんだ。400㎡なら330/400の部分だけ80%減額して、残り70㎡分はそのままだよ。
ハルカ特例が「ここから先はおまかせできません」と線を引いているみたいですね。
先生その線が330㎡で、線より外は通常の評価額のままなんだよ。
💡 そうだったのか!特定居住用宅地等は330㎡まで80%減額。減額 = 評価額 × 限度面積までの面積 ÷ 土地の面積 × 80%。

③ 減額:6,000万円 × 300㎡/300㎡ × 80% = 4,800万円(330㎡を超える部分は減額なし)

STEP 5 手続と結果

ハルカ要件を満たしたら、あとは何もしなくていいんですか?
先生申告書を出して、初めて使える特例なんだ。申告期限までに分割することも必要だよ。対象になり得る土地を何人かで取得したときは、どの土地に使うかに、関係する取得者全員の同意がいるんだ。
🤔 迷いポイント特例で税額が0円になるなら、申告はいらない?
ハルカ税金がかからないなら、申告しなくてもいいと思っていました。
先生この特例は申告しないと使えないんだ。第8回の配偶者の税額軽減と同じだよ。
ハルカ美和さんの土地は1,200万円で課税価格に入って、第6回の5,500万円につながるんですね。
先生そのとおりなんだ。今日の4,800万円が、第6回の橋渡しの「自宅の土地の特例」だったんだよ。
💡 そうだったのか!特例は申告書の提出が必要。原則、申告期限までの分割と、関係する取得者全員の同意(どの土地に使うか)も必要。青山家の土地は1,200万円で課税価格に入る。

④ 申告・分割・同意 → 課税価格に入れる額 6,000万円 − 4,800万円 = 1,200万円

青山家:美和が取得するか、健太が取得するか

確認すること美和(配偶者)健太(別居・持ち家)
① 対象になる土地か○ 父・修が住んでいた自宅の敷地(300㎡)○ 同じ土地
② 取得する人の要件○ 配偶者は要件なし× 同居していない。配偶者がいるので「持ち家のない別居の親族」の扱いも使えない
③ 限度面積300㎡ ≦ 330㎡ → 全部(②で使えない)
④ 手続申告書の提出・分割済み―
課税価格に入れる額6,000万円 − 4,800万円 = 1,200万円6,000万円
課税価格の合計/相続税の総額1億4,790万円/1,448万2,500円1億9,590万円/2,597万5,000円

※ 配偶者に要件がないというのは、住み続けることや持ち続けることなど、取得者ごとの要件がないという意味です。土地そのものの要件や申告手続は必要です。
※ 健太の列は、ほかの財産・人数を変えずに土地の取得者だけを入れ替えた比較です。実際には、各人の取得額や配偶者の税額軽減なども変わります。

ハルカ美和さんと健太さんで、表を並べて比べてみたいです。
先生左の表のとおりだよ。①の土地は同じでも、②の人の段で結果が分かれるんだ。美和さんは配偶者だから要件なし、健太さんは別居で持ち家に住んでいるから使えないよ。
ハルカ健太さんが取得すると、課税価格の合計が1億9,590万円、総額が2,597万5,000円になるんですね。
先生第7回で見た総額の計算に、課税価格の合計が入るからなんだ。ほかの財産を変えない比べ方だから、実際の分け方を決めるときは全体で考えるよ。

やってみよう:この自宅の土地、特例は使える?

※ この判定ツールでは、亡くなった人が住んでいた一般的な自宅の土地(特定居住用宅地等)だけを扱います。二世帯住宅、老人ホーム入所中の自宅、生計を一にする親族の自宅、事業用・貸付用の土地などは、このツールの判定対象外です。これらも一定の要件を満たせば特例の対象になる場合があります。実際の判定には、ほかにも細かい要件があります。

ハルカ取得する人を変えて、使えるかどうかを試してみたいです。
先生左のボタンで美和さん・健太さん・同居していた子を切り替えてみてね。「400㎡の例」では、330㎡の線も確かめられるよ。
ハルカ同居していた子で「住み続ける」のチェックを外すと、使えなくなりました!
先生同居の親族は、申告期限まで住み続けて持ち続けるのが要件だからなんだ。配偶者だけは、その要件がないよ。

よくある間違い

① 自宅の土地なら誰が取得しても80%減

配偶者は要件なしですが、同居していた親族は申告期限まで住み続け・持ち続けることが必要です。別居の親族は、配偶者も同居の相続人もいない場合に限り、持ち家がないなどの要件を満たせば使えます。

② 土地全部が80%減

特定居住用宅地等は330㎡まで。それを超える部分は減額されません(400㎡なら330㎡分だけ)。

③ 特例で税額0なら申告はいらない

この特例も申告書の提出が必要です。申告期限までに分割されていない土地には原則として使えません(申告期限から3年以内に分割すれば使える手続あり)。
ハルカ①は、今日の最初の私そのものです。
先生自宅の土地でも、取得する人で要件が変わるんだ。遺産分割を決める前に確かめるところだよ。
ハルカ③の「0円でも申告が必要」は、第8回の配偶者の税額軽減と同じですね。
先生そうなんだ。特例や軽減は、申告して初めて使えるものが多いんだよ。

ミニテスト(3問)

Q1. 亡くなった父の自宅の土地を、父と同居していた長男が取得した。特定居住用宅地等として80%減額を受けるための要件は?
Q2. 自宅の土地500㎡(評価額1億円)を配偶者が取得した。特定居住用宅地等の減額はいくら?
Q3. 小規模宅地等の特例を使うと、相続税が0円になった。申告は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 小規模宅地等の特例は、土地・人・面積・手続の4つを満たしたときに、課税価格に入れる額を減らす特例。
  2. 亡くなった人の自宅の土地(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%減額。事業用は400㎡まで80%、貸付用は200㎡まで50%。
  3. 亡くなった人本人の自宅の場合、配偶者は取得者としての要件なし。同居親族は申告期限まで住み続け・持ち続ける。別居親族(家なき子)は配偶者も同居の相続人もいない場合だけ(持ち家なしなど)。生計を一にしていた親族の自宅は別の要件で判定する。
  4. 限度面積を超える部分は減額されない。
  5. 申告書の提出が必要。原則として申告期限までに分割され、対象になり得る土地を複数の人が取得したときなどは、関係する取得者全員の同意で選ぶ。
先生今日のまとめだよ。小規模宅地等の特例は、土地・人・面積・手続の4つを満たしたときに使えるんだ。自宅の土地なら330㎡まで80%減額で、配偶者は取得者としての要件なし、同居親族は住み続けて持ち続けるのが要件だよ。
ハルカ自宅の土地は、80%減るかどうかより、誰が取得するかが先なんですね。
先生そのとおりだね。1点だけ足すと、使えても申告書を出さないと減らないんだ。
ハルカ次に「80%減るから大丈夫」と聞いたら、「誰が取得しますか?」と聞き返します。
先生いい聞き返しだね。次の第10回では、由紀さんの暦年贈与が加算された、生前贈与加算のしくみを見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:租税特別措置法69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例:1項 減額の割合、2項 限度面積、3項 特定居住用宅地等などの定義、4項 未分割、7項 申告書の記載)/租税特別措置法施行令40条の2/租税特別措置法関係通達69の4-1〜69の4-39

参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章第5節 3 課税価格の計算の特例 ⑴ 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(pp.26〜29)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。宅地等の区分・限度面積・減額割合の表、特定居住用宅地等の取得者の要件は、講本 pp.26〜29 の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字・家族の住まいは学習用に設定した仮定です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。

ハルカ今日の内容は、条文ではどこで確かめられますか?
先生小規模宅地等の特例は、相続税法ではなく租税特別措置法69条の4なんだ。相続税法ラボ ↗では、特例の切り口からも引けるよ。
ハルカこの講座のもとになった資料も知りたいです。
先生税務大学校の講本『相続税法(基礎編)令和8年度版』の第3章第5節を参考に、TaxJudgeが独自に組み立てているよ。出典は左にまとめてあるんだ。
相続税 入門講座 第9回|taxjudge.com
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