遺言・遺産分割・相続放棄
「法定相続分ではこうなる。でも、実際の分け方はどう決まる?」を、青山家で確かめる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
🎧 動画で聞く遺産は法定相続分どおり?遺言・遺産分割・相続放棄の基本(8分)
第3回の先生とハルカの会話と図解を、そのまま講義動画にしました。遺言があるときの分け方、遺産分割協議、相続放棄の基本を扱います。クリックすると再生が始まります(YouTubeで開く)
はじめに:今日のゴール
相続が始まったら、財産・債務と遺言を確認しながら、原則3か月以内に承認・放棄を判断する。財産の分け方は遺言や遺産分割協議(相続人全員の合意)で決まり、協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停・審判に進む――この流れを、青山家を例に説明できるようになること。
※ 法定相続分は、遺言で相続分の指定がないときの「分け方の目安」です。全員が合意すれば、違う分け方ができます。
図で見る:実際の分け方が決まるまで(5つのステップ)
この回の青山家(共通事例シートより)
| 財産(相続税評価額・特例前) | 誰が取得 | 金額 |
|---|---|---|
| 自宅の土地・建物 | 母 美和(遺産分割協議) | 6,800万円 |
| 預金 | 美和3,000・健太2,000・由紀2,500(協議)/陽向500(遺言) | 8,000万円 |
| 上場株式 | 美和・健太・由紀 各1,000(協議) | 3,000万円 |
| 合計 | 1億7,800万円 |
※ 自宅の土地は小規模宅地等の特例を使う前の評価額(6,000万円)で示しています(特例は第9回)。死亡保険金(受取人:健太)は受取人固有の財産なので、遺産分割の対象ではありません(相続税ではみなし相続財産。第4回)。借入金・葬式費用はこの回では扱いません。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 決まり方の全体
原則3か月以内に承認・放棄を判断。分け方は遺言・全員の協議・家庭裁判所で決める
STEP 2 遺言
検認が要らないのは公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言。遺贈は相続人以外にもできる
STEP 3 遺産分割協議
青山家の協議:美和 1億800万円・健太 3,000万円・由紀 3,500万円(法定相続分どおりなら 8,650万円・4,325万円・4,325万円)
STEP 4 承認と放棄
限定承認・相続放棄は、知った時から3か月以内に家庭裁判所へ。分割で取得しないだけでは放棄ではない
STEP 5 遺留分と申告
遺留分(青山家):美和 1/4・健太 1/8・由紀 1/8/分割がまとまらなくても、法定相続分で期限内に申告
青山家の分け方のまとめ
| 決まり方 | 青山家では |
|---|---|
| 遺言 | 預金500万円を孫の陽向に遺贈(陽向は相続人ではない「受遺者」) |
| 遺産分割協議 | 残りの財産を、美和・健太・由紀の3人で合意して分けた(自宅は美和) |
| 相続放棄 | なし(3人とも相続した) |
| 分割の対象外 | 死亡保険金2,000万円(受取人の健太の固有の財産) |
| 遺留分 | 協議で全員が合意しているので、問題にならない |
青山家の数字は、講座の共通事例シートの値です。相続税の計算に使う課税価格(第6回)では、自宅の土地は特例後の1,200万円になり、保険金・生前贈与・債務も加わります。
やってみよう:分け方を比べる(青山家)
※ 遺留分の線は、生前贈与や債務を考えない簡略な目安です(遺留分算定の基礎=1億7,800万円)。実際の遺留分の計算では、一定の生前贈与を加え、債務を差し引きます。陽向への預金500万円の遺贈は、A・B・Dでは遺言どおり、Cでも遺言どおりとしています。
よくある間違い
① 何ももらわない=相続放棄
遺産分割で取得しなかっただけでは、法律上の相続放棄ではありません。放棄は3か月以内に家庭裁判所に申述する手続です。② 遺言があれば協議は一切不要
遺言に書かれていない財産は、相続人全員の遺産分割協議で分けます。青山家も、遺言は預金500万円の遺贈だけです。③ 死亡保険金も遺産分割で分ける
受取人が決まっている死亡保険金は、受取人の固有の財産です。ただし相続税では「みなし相続財産」になります(第4回)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 財産・債務と遺言を確認しながら、原則3か月以内に承認・放棄を判断。分け方は遺言や遺産分割協議(全員の合意)で決まり、まとまらなければ家庭裁判所へ。法定相続分は目安。
- 公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言以外は、家庭裁判所の検認が必要。
- 分け方は現物・代償・換価の3つ。合意したら遺産分割協議書を作る。
- 相続の放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ(先の順位の人が放棄して相続人になった人は、そのことを知った時から)。分割で取得しないことは放棄ではない。財産を処分すると、3か月の前でも単純承認とみなされることがある。
- 配偶者・子・直系尊属には遺留分がある(兄弟姉妹にはない)。分割がまとまらなくても、法定相続分で期限内に申告する。
参照条文・出典
参照条文:民法907条(遺産の分割の協議又は審判)、915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)、920〜922条(単純承認・限定承認)、938・939条(相続の放棄)、964条(包括遺贈及び特定遺贈)、968〜970条(遺言の方式)、1004条(遺言書の検認)、1042条(遺留分)、1046条(遺留分侵害額の請求)/相続税法55条(未分割遺産に対する課税)
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』(参考)民法の相続制度の概要 第4章〜第7章(pp.132〜141)(講本PDF)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。遺言の方式・分割の方法・遺留分の表は講本の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説であり、個別の相続については専門家にご確認ください。