相続時精算課税(暦年課税と比べる)
「2,500万円まで贈与税0円なら、得なだけ?」から、年110万円の基礎控除・累計2,500万円の特別控除・相続のときに足す額の3つを区別し、暦年課税と比べる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
相続時精算課税は、①毎年の基礎控除110万円、②累計2,500万円の特別控除(超えた分は20%)で贈与のときの税金を計算し、③相続のときに、贈与の時の価額から基礎控除を引いた額を足して精算するしくみ――この3つを区別し、健太の1,500万円で暦年課税と比べられるようになること。
※ 比較は、健太が暦年課税(特例税率)を選んでいた場合の仮の計算です。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
図で見る:相続時精算課税の3つの数字(5つのステップ)
区別する3つ
- ① 年110万円の基礎控除:毎年合計110万円(特定贈与者が2人以上なら贈与額で按分)。相続のときにも足さない
- ② 累計2,500万円の特別控除:使い切ると、超えた分に一律20%
- ③ 相続のときに足す額:贈与の時の価額 − 基礎控除(期間の制限なし)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 暦年課税と相続時精算課税
相続時精算課税:受贈者が贈与者ごとに選ぶ(60歳以上の父母・祖父母 → 18歳以上の子・孫)/ 届出は撤回できない
STEP 2 ① 年110万円の基礎控除
健太:1,500万円 − 基礎控除110万円 = 1,390万円(110万円の部分は相続のときにも足さない)
STEP 3 ② 累計2,500万円の特別控除
健太:1,390万円 ≦ 特別控除の枠2,500万円 → 贈与税 0円(枠の残り1,110万円)/ 超えた分は一律20%
STEP 4 ③ 相続のときに足す
相続のとき:贈与の時の価額 − 基礎控除 = 1,390万円を健太の課税価格に足す(期間の制限なし)
STEP 5 暦年課税と比べる
精算課税:贈与税0円・足す額1,390万円 / 暦年課税(仮):贈与税366万円・足す額1,500万円
青山家:健太の1,500万円を2つの方式で比べる
| (令和7年・父から1,500万円) | 相続時精算課税(実際) | 暦年課税(仮に選んでいたら) |
|---|---|---|
| 贈与の年の計算 | 1,500万 − 基礎控除110万 = 1,390万 特別控除 1,390万(枠の残り1,110万) | 1,500万 − 基礎控除110万 = 1,390万 1,390万 × 40% − 190万(特例税率) |
| 贈与税 | 0円 | 366万円 |
| 相続のときに足す額 | 1,390万円(期間の制限なし) | 1,500万円(3年以内なので全額) |
| 相続税から引く贈与税 | 0円(引ききれない分は還付あり) | 366万円(引ききれない分は還付なし) |
青山家の課税価格(第6回)・税額(第8回)は、実際に選んだ相続時精算課税で計算しています。暦年課税の列は比べるための仮の計算です。
やってみよう:同じ贈与を2つの方式で比べる
※ 父母から18歳以上の子への贈与で、受贈者は相続でも財産を取得する前提の簡易な比較です(暦年課税は特例税率、相続時精算課税は贈与者ごと)。贈与は令和6年以後の日付で入力してください(令和5年以前の贈与を含む「講本の設例」は、相続時精算課税の側だけを表示します。令和5年以前の精算課税の贈与には基礎控除110万円はありません)。同じ年のほかの人からの贈与、住宅取得等資金の特例などは入れていません。
よくある間違い
① 2,500万円までなら税金は0円で終わり
0円なのは贈与のときだけ。相続のときに、贈与の時の価額から基礎控除を引いた額を相続税の課税価格に足して精算します。② 合わなければ暦年課税に戻せる
選択届出書は撤回できません。その贈与者からの贈与は、届出をした年以後ずっと相続時精算課税です。③ 2つの110万円は同じ
暦年課税の110万円以下の贈与は、加算対象期間内なら相続のときに足す(第10回)。相続時精算課税の基礎控除110万円の部分は、相続のときにも足しません。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で、受贈者が贈与者ごとに選ぶ。届出は撤回できない。
- ① 基礎控除:毎年合計110万円(特定贈与者が2人以上なら贈与額に応じて按分)。この部分は相続のときにも足さない。
- ② 特別控除:累計2,500万円まで。超えた分は一律20%の贈与税。
- ③ 相続のとき:贈与の時の価額から基礎控除を引いた額を、期間の制限なく課税価格に足し、払った贈与税を引く(引ききれない分は、相続税の申告により還付を受けられる)。
- 暦年課税とは、110万円の扱い・加算の期間・還付の有無が違う。
参照条文・出典
参照条文:相続税法21条の9(相続時精算課税の選択)、21条の10(課税価格)、21条の11の2(基礎控除)、21条の12(特別控除)、21条の13(税率)、21条の15(相続税額)、21条の16(相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合)、27条3項・33条の2(還付)/租税特別措置法70条の2の6(孫への適用)・70条の3の2(基礎控除の特例)
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第5章 相続時精算課税制度 第1節(pp.64〜68)、第2節(pp.69〜70。【設例】p.70)、第3節(p.71)、第3章第5節 4 相続時精算課税の適用財産価額の加算等(p.30)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4103 相続時精算課税の選択
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。「講本の設例」プリセットは講本 p.70 の【設例】の数値を用い、TaxJudgeが図解・試算用に加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。