相続税の総額はどう計算する?
「財産が1億円あったら、相続税はいくら?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
相続税の総額は、実際の分け方ではなく「法定相続分で分けたことにして」計算する――この仕組みを、図を見ながら自分の言葉で説明できるようになること。
この「630万円」がどう出てくるのかを、まずこの1億円の例で、5つのステップで確かめます。
※ 630万円は、配偶者の税額軽減などを差し引く前の「家族全体の相続税の総額」です。実際に納める額は、各人に割り振って税額控除をした後に決まります(第8回)。
第6回 課税価格の合計 1億円(配偶者5,000万・子2,500万×2)→ 第7回 相続税の総額 630万円 → 第8回 配偶者0円(税額軽減)・子 各157万5,000円、納付税額の合計315万円。
まずこの小さな事例で流れをつかみ、そのあと論点の多い青山家で確かめます。
図で見る:相続税の総額までの5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 課税価格をたす
課税価格の合計 = 1億円
STEP 2 基礎控除を引く
3,000万円+600万円×3人=4,800万円 / 課税遺産総額 = 5,200万円
STEP 3 法定相続分で分ける
配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円 子A:5,200万円×1/4=1,300万円 子B:5,200万円×1/4=1,300万円 (千円未満切捨て)
STEP 4 速算表を当てる
配偶者 340万円 子A 145万円 子B 145万円
STEP 5 総額が出る
相続税の総額 = 340万円+145万円+145万円 = 630万円(百円未満切捨て)
青山家で確かめる(講座の共通事例)
第6回までで、4人それぞれの課税価格が決まりました。今日はここからスタートします。
| 取得者 | 主な中身 | 課税価格 |
|---|---|---|
| 母 美和 | 自宅(特例後)・預金・株式−借入金・葬式費用 | 5,500万円 |
| 長男 健太 | 預金・株式・保険金(非課税後)・精算課税の贈与 | 4,890万円 |
| 長女 由紀 | 預金・株式・生前贈与加算 | 3,900万円 |
| 孫 陽向 | 遺言による預金の遺贈 | 500万円 |
| 合計 | 1億4,790万円 |
※ 金額は相続税評価額。内訳は第4回(財産の分類)・第5回(評価)・第6回(課税価格の計算)で確かめました。小規模宅地等の特例・生前贈与のくわしい計算は第9〜11回で扱います。
※ 令和8年1月1日現在の法令で計算し、相続開始(令和9年6月)までに改正がないものとしています。
青山家の5ステップ
| ステップ | 青山家の計算 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 課税価格をたす | 母5,500万+長男4,890万+長女3,900万+孫500万 | 1億4,790万円 |
| ② 基礎控除を引く | 3,000万円+600万円×3人=4,800万円 | 9,990万円 |
| ③ 法定相続分で分ける | 母 1/2 / 長男・長女 各1/4(千円未満切捨て) | 4,995万円 2,497万5,000円×2 |
| ④ 速算表を当てる | 母 4,995万円×20%−200万円 長男・長女 2,497万5,000円×15%−50万円 | 799万円 324万6,250円×2 |
| ⑤ 相続税の総額 | 799万円+324万6,250円+324万6,250円(百円未満切捨て) | 1,448万2,500円 |
やってみよう:分け方を変えると、総額は変わる?
青山家で、母が実際に取得する割合を動かしてみましょう(他の3人で残りを分けたとします)。
※ この体験は、課税価格の合計1億4,790万円と法定相続人の構成が変わらないことを前提にしています。実際には、誰が宅地を取得するかなどによって小規模宅地等の特例の適用が変わり、課税価格の合計や相続税の総額も変わる場合があります(第9回)。
よくある間違い
① 各人の課税価格に税率をかける
母の課税価格5,500万円×税率…と計算するのは誤り。税率をかけるのは法定相続分で分けた金額です。② 人数の数え方
遺贈を受けた孫は数えません。逆に、相続を放棄した人は数えます(放棄がなかったものとして計算)。養子の数には上限があります(第2回)。③ 端数処理と控除額
法定相続分で分けた金額は千円未満切捨て、総額は百円未満切捨て。速算表の控除額を引き忘れないこと。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 全員の課税価格を足して、1つの山にする。
- 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引く。残りが課税遺産総額。
- 課税遺産総額を法定相続分で分けたことにする(実際の分け方は使わない)。
- 分けた金額ごとに速算表で税額を出す。
- 足したものが相続税の総額。これを実際の取得割合で割り振るのが第8回。
参照条文・出典
参照条文:相続税法15条(遺産に係る基礎控除)、16条(相続税の総額)、17条(各人の相続税額)、相続税法基本通達16−1
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章第6節(pp.35〜38)、第7節の【設例】(p.40)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算・No.4155 相続税の税率
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。「講本の設例」プリセットは講本 p.40 の【設例】の数値を用い、TaxJudgeが図解・試算用に加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。