課税価格の計算(足して、引いて、また足す)
「評価した財産の合計が、そのまま相続税の対象?」から、借入金・葬式費用を引き、生前の贈与を足して、各人の課税価格を出す回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
各人の課税価格 = 取得した財産(本来+みなし、非課税を除く)+ 相続時精算課税の贈与 − 債務・葬式費用(マイナスなら0円)+ 7年以内の暦年贈与。この「足して、引いて、また足す」の順で、青山家4人の課税価格と合計 1億4,790万円 を自分で出せるようになること。
計算済みの条件として使う数字:自宅の土地の特例後1,200万円(第9回)、由紀の暦年贈与の加算400万円(第10回)、健太の相続時精算課税の加算1,390万円(第11回)。しくみはそれぞれの回で学びます。今日は「足して、引いて、また足す」の順番に集中します。
第6回 課税価格の合計 1億円(配偶者5,000万・子2,500万×2)→ 第7回 相続税の総額 630万円 → 第8回 配偶者0円(税額軽減)・子 各157万5,000円、納付税額の合計315万円。
まずこの小さな事例で流れをつかみ、そのあと論点の多い青山家で確かめます。
図で見る:課税価格の5つのパーツ(5つのステップ)
計算の順番
- 足す:取得した財産(本来+みなし、非課税は除く)、相続時精算課税の贈与
- 引く:亡くなった人の債務、葬式費用(原則として相続人・包括受遺者が負担した分)
- また足す:加算対象期間内(7年へ延長中・経過措置あり)の暦年課税の贈与(債務は引けない)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 課税価格の式
各人の課税価格 = 取得した財産 + 精算課税の贈与 − 債務・葬式費用(マイナスなら0円)+ 7年以内の暦年贈与 / 青山家の合計 1億4,790万円
STEP 2 取得した財産
取得した財産(特例後・非課税後):美和6,000万円/健太3,500万円/由紀3,500万円/陽向500万円 = 1億3,500万円
STEP 3 債務控除
債務:借入金 300万円(美和が負担)→ 美和の取得した財産から引く
STEP 4 葬式費用
葬式費用 200万円(美和が負担)+ 債務300万円 = ▲500万円 → 美和 6,000万円 − 500万円 = 5,500万円
STEP 5 生前贈与の加算
加算:由紀の暦年贈与 400万円(3年以内・全額)/健太の精算課税 1,390万円(1,500万円 − 基礎控除110万円)
青山家4人の課税価格
| (万円) | 美和 | 健太 | 由紀 | 陽向 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 本来の財産・遺贈財産 | 6,000 | 3,000 | 3,500 | 500 | 13,000 |
| みなし相続財産(保険金・非課税後) | 500 | 500 | |||
| 相続時精算課税の贈与(基礎控除後) | 1,390 | 1,390 | |||
| 債務・葬式費用 | ▲500 | ▲500 | |||
| 7年以内の暦年贈与の加算 | 400 | 400 | |||
| 各人の課税価格 | 5,500 | 4,890 | 3,900 | 500 | 14,790 |
美和の6,000=土地1,200(特例後)+建物800+預金3,000+上場株式1,000。健太の3,000=預金2,000+株式1,000、由紀の3,500=預金2,500+株式1,000、陽向の500=遺言による預金の遺贈。各人の課税価格は1,000円未満切捨てですが、青山家はすべて万円単位なので端数は出ません。
やってみよう:1人分の課税価格を計算する
※ 一般的な相続人と、特定の財産だけを遺贈された受遺者を比べるための目安です(日本に住む人が前提。包括受遺者・相続を放棄した人・相続時精算課税の適用者の細かい扱いは対象外)。
※ 暦年贈与の加算は、原則として被相続人から相続・遺贈などで財産を取得した人が対象です。相続時精算課税の適用者には別の取扱いがあります。この計算機は、加算の対象となる人について、加算額が確定していることを前提にしています(3年より前の分は、その合計額から100万円を引いた残額。0円が下限)。
※ 各人の課税価格は1,000円未満切捨て。
よくある間違い
① 香典返しや法要の費用も葬式費用
香典返し・墓石や墓地の購入・初七日などの法要の費用は、葬式費用として引けません。通夜・本葬・火葬・納骨・お布施などが対象です。② 借入金なら誰でも引ける
債務控除ができるのは、原則として相続人と包括受遺者(相続時精算課税の適用者を含む)。特定の財産だけを遺贈された人(青山家の陽向など)は引けません。相続を放棄した人も、実際に負担した葬式費用は例外的に引けます。お墓の未払い代金のように非課税財産のための債務も引けません。③ 加算した贈与からも債務を引ける
債務が財産より多くても、暦年贈与の加算額からは債務を引けません。財産から債務を引いてマイナスなら0として、そこに加算額を足します。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 課税価格は1人ずつ計算し、合計して「課税価格の合計額」にする。
- 足す:取得した財産(本来+みなし、非課税は除く)と相続時精算課税の贈与(基礎控除後)。
- 引く:亡くなった人の確実な債務(借入金・未払の税金など)と葬式費用。引けるのは原則として相続人と包括受遺者(相続時精算課税の適用者を含む。放棄した人が負担した葬式費用は例外的に引ける)。
- 葬式費用に香典返し・墓石・法要の費用は入らない。非課税財産のための債務も引けない。
- また足す:相続開始前7年以内の暦年贈与(期間は経過措置あり)。加算した額から債務は引けない。
参照条文・出典
参照条文:相続税法11条の2(相続税の課税価格)、13条(債務控除:1項1号 債務、2号 葬式費用、3項 非課税財産に係る債務)、14条(控除すべき債務)、19条(相続開始前7年以内に贈与があった場合の相続税額)、21条の15(相続時精算課税に係る相続税額)/相続税法基本通達13-1(相続を放棄した者等の債務控除)、13-4・13-5(葬式費用)/令和5年改正法附則19条(加算対象期間の経過措置)
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章第5節 相続税の課税価格の計算(pp.25〜34。1 相続税の課税価格 p.25、5 債務控除 pp.31〜33、6 相続開始前7年以内の贈与 pp.33〜34)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4126 相続財産から控除できる債務・No.4129 相続財産から控除できる葬式費用・No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。課税価格の計算の図、葬式費用に入るもの・入らないものの一覧は、講本 pp.25・31〜32 の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。