申告・納税・延納・物納(いつまでに、何を決める?)
「相続税は10か月以内に払えばいい?」から、相続開始後に何をいつまでに判断するのかをカレンダーで整理し、納付が難しいときの延納・物納の順番を確かめる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
相続開始から3か月(放棄・限定承認)→ 4か月(準確定申告)→ 10か月(相続税の申告と納付)の順に、何を決めるかを説明できること。納付は金銭で一括が原則、難しければ延納、延納でも難しければ物納――この順番で考えられるようになること。
※ 亡くなった日に相続を知った場合の期限です。準確定申告は、10月10日が日曜、11日がスポーツの日のため12日(火)。延納・物納は、財産のほとんどが不動産の「白石家」(教材用の別の家族)で考えます。
図で見る:相続開始から納付まで(5つのステップ)
判断の順番
- いつまでに:3か月・4か月・10か月の期限と、そのとき決めること
- 申告:誰が・どこへ・0円でも必要なとき
- 納付:金銭で一括 → 延納 → 物納 の順(延納・物納のステップ4・5は発展)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 期限のカレンダー
3か月(放棄・限定承認 令和9年9月10日)→ 4か月(準確定申告 10月12日)→ 10か月(申告・納付 令和10年4月10日)
STEP 2 相続税の申告
申告:相続を知った日の翌日から10か月以内、亡くなった人の住所地の税務署へ / 配偶者の税額軽減などを使うなら0円でも申告
STEP 3 納付
納付:申告期限までに金銭で一括が原則 / 青山家は各人が相続した預金で 901万4,700円
STEP 4 延納
延納:税額10万円超・金銭納付が困難・担保・納期限までの申請と審査・許可 / 白石家 3,000万円を20年で(仮定)
STEP 5 物納
物納:延納でも払えない額を相続財産で(相続税だけ) / 白石家 860万円は物納の検討対象(仮定の残額)
青山家:10か月のあいだに決めること
| 期限 | 決めること・すること | 青山家では |
|---|---|---|
| 令和9年9月10日(金) 3か月 | 相続を放棄するか、限定承認するか(家庭裁判所) | 借入金300万円に対して財産が十分なので、相続人3人(美和・健太・由紀)は単純承認。陽向は相続人ではなく受遺者 |
| 令和9年10月12日(火) 4か月 | 亡くなった人の所得税の準確定申告(必要な場合) | 修の令和9年1月〜6月10日の所得を申告。納める所得税があれば相続税の債務として引ける(青山家は、準確定申告による追加の納付・還付はない設定) |
| 令和10年4月10日(月) 10か月 | 遺産分割・相続税の申告書の提出・納付 | 4人で1通の申告書を出す。美和は0円でも申告(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例) |
| 同日(納付) | 各人が自分の納付税額を金銭で納める | 健太478万8,300円・由紀363万8,900円・陽向58万7,500円を、相続した預金から一括で |
※ 青山家の遺産分割は申告期限までにまとまった前提です(第3回)。まとまらない場合は、法定相続分などで期限内に申告し、分割後に修正申告・更正の請求をします。期限後3年以内に分割すれば、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を使えるよう「申告期限後3年以内の分割見込書」を出します。準確定申告の所得の内容は教材用の想定です。
やってみよう:納付の方法を、順番に判断する
※ 判断の順番を見るための簡易な目安です。延納の利子税、延納期間の上限(原則5年。不動産などの割合が大きいと最長20年)、生活費などの「金銭納付を困難とする事由」の細かい計算、物納できる財産の条件は、実際には別に確かめます。
よくある間違い
① 放棄は相続税の申告期限までに決めればよい
相続の放棄・限定承認は、原則3か月以内に家庭裁判所へ。10か月の申告期限よりずっと早く来ます(期間の伸長を申し立てる制度あり)。② 遺産分割がまとまらないと申告期限が延びる
未分割でも、10か月以内に申告と納付が必要です。法定相続分などで仮に計算し、分割後に修正申告や更正の請求をします。③ 払えなければ、すぐ物納できる
原則は金銭で一括。それが難しいとき延納、延納でも金銭で払えない額について物納を申請します。どちらも納期限までに申請書を提出し、税務署長の審査・許可を受けます。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 期限は3か月(放棄・限定承認)→ 4か月(準確定申告)→ 10か月(相続税の申告・納付)の順に来る。
- 申告書は、相続を知った日の翌日から10か月以内に、亡くなった人の住所地の税務署へ。共同で1通にできる。
- 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例などを使うときは、0円でも申告が必要。未分割でも期限内に申告する。
- 納付は申告期限までに金銭で一括が原則。同じ人から相続や遺贈で財産を取得した人どうしには、一定の範囲で連帯納付義務もある。
- 金銭で一括が難しいとき延納(10万円超・担保・利子税)、延納でも難しい額は物納(相続税だけ・財産の順位あり)。どちらも納期限までに申請し、税務署長の審査・許可を受ける。
参照条文・出典
参照条文:相続税法27条(相続税の申告書)、19条の2第3項(配偶者の税額軽減の申告要件)、33条(納付)、34条(連帯納付の義務)、38条〜40条(延納)、41条〜48条の3(物納)、52条(延納の利子税)、55条(未分割の場合の課税価格)/民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)/所得税法125条(準確定申告)/租税特別措置法69条の4第7項
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第6章第1節 相続税の申告(pp.74〜76)、第7章 税金の納付と延納及び物納(pp.82〜85)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税・No.4211 相続税の延納・No.4214 相続税の物納
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。延納の要件・物納の要件と財産の順位は、講本 pp.83〜85 の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家・白石家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。