各人の税額と税額控除(2割加算・配偶者の税額軽減)
「相続税の総額は、家族でどう分けて払う?」から、割り振り・2割加算・贈与税額控除・配偶者の税額軽減を経て、4人の納付税額まで進む回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
相続税の総額を課税価格の割合で割り振り、1人ずつ2割加算と税額控除をして納付税額を出す――特に、配偶者の税額軽減は「1億6,000万円を税額から引く」のではなく、配偶者が取得した課税価格が1億6,000万円(または法定相続分)までなら、その分の税額がかからないしくみだと説明できるようになること。
※ 割り振りは課税価格の割合どおりに計算し、各人の税額は円未満切捨て、納付税額は100円未満切捨てで表示しています。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
第6回 課税価格の合計 1億円(配偶者5,000万・子2,500万×2)→ 第7回 相続税の総額 630万円 → 第8回 配偶者0円(税額軽減)・子 各157万5,000円、納付税額の合計315万円。
まずこの小さな事例で流れをつかみ、そのあと論点の多い青山家で確かめます。
図で見る:総額から納付税額まで(5つのステップ)
計算の順番
- 割り振る:相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計(算出税額)
- 足す:配偶者・一親等の血族以外は2割加算
- 引く:贈与税額控除(暦年課税分)→ 配偶者の税額軽減 → 未成年者控除など → 精算課税分の贈与税相当額
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 割り振り(算出税額)
算出税額 = 総額14,482,500円 × 各人の課税価格 ÷ 1億4,790万円 / 美和 5,385,649円・健太 4,788,331円・由紀 3,818,914円・陽向 489,604円
STEP 2 2割加算
陽向:489,604円 + 2割加算 97,920円 = 587,524円(代襲相続人でない孫)
STEP 3 贈与税額控除(暦年分)
由紀:3,818,914円 − 贈与税額控除 180,000円 = 3,638,914円
STEP 4 配偶者の税額軽減
美和:5,385,649円 − 配偶者の税額軽減 5,385,649円 = 0円(課税価格5,500万円が1億6,000万円以下)
STEP 5 控除と納付税額
納付税額(100円未満切捨て):美和 0円/健太 4,788,300円/由紀 3,638,900円/陽向 587,500円 = 9,014,700円
青山家4人の納付税額
| (円) | 美和 | 健太 | 由紀 | 陽向 |
|---|---|---|---|---|
| 課税価格 | 5,500万 | 4,890万 | 3,900万 | 500万 |
| 割合(約) | 37.19% | 33.06% | 26.37% | 3.38% |
| 算出税額 | 5,385,649 | 4,788,331 | 3,818,914 | 489,604 |
| 2割加算 | 97,920 | |||
| 贈与税額控除 | ▲180,000 | |||
| 配偶者の税額軽減 | ▲5,385,649 | |||
| 納付税額(100円未満切捨て) | 0 | 4,788,300 | 3,638,900 | 587,500 |
4人の納付税額の合計:901万4,700円(相続税の総額1,448万2,500円との差は、主に美和の税額軽減)。算出税額の合計は14,482,498円で、円未満切捨ての分だけ総額より2円少なくなります。
※ 実務では、財産取得者全員が選択した方法により、あん分割合を小数点以下2位で調整して合計を1.00とすることも認められています(相続税法基本通達17-1)。この教材は割合どおりに計算しています。
やってみよう:配偶者の取得額を動かして、税額軽減を見る
※ 相続人が配偶者と子2人(法定相続人3人)の場合の目安です。配偶者に贈与税額控除などはないものとし、遺産分割で配偶者が実際に取得した財産として計算します。子などの2割加算・税額控除は入れていません。
よくある間違い
① 配偶者は税額から1億6,000万円を引ける
引くのは税額ではありません。配偶者が取得した課税価格が、1億6,000万円か法定相続分相当額の多い方までなら、その分の税額がかからないしくみです。超えた部分に対応する税額はかかります。② 孫はいつも2割加算
親が亡くなっていて代襲相続人となった孫は対象外です。反対に、孫養子(代襲相続人でない孫を養子にした場合)は対象になります。③ 税額が0円なら申告はいらない
配偶者の税額軽減は、0円になる場合でも申告書の提出が必要です。申告期限までに分割されていない財産には、原則として使えません(3年以内に分割すれば使える手続あり)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 各人の算出税額 = 相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計。
- 配偶者・一親等の血族(代襲相続人の孫を含む)以外は、算出税額の2割を加算。孫養子は加算の対象。
- 加算した暦年課税分の贈与税は、贈与税額控除でここで相続税から引く。精算課税分の贈与税は、ほかの税額控除のあとで引く。
- 配偶者の税額軽減:配偶者の課税価格が1億6,000万円か法定相続分相当額の多い方までなら、その分の税額がかからない。税額0でも申告が必要。
- 未成年者控除・障害者控除は法定相続人だけ。納付税額は100円未満切捨て。
参照条文・出典
参照条文:相続税法17条(各相続人等の相続税額)、18条(相続税額の加算)、19条(相続開始前7年以内に贈与があった場合の相続税額)、19条の2(配偶者に対する相続税額の軽減)、19条の3(未成年者控除)、19条の4(障害者控除)、20条(相次相続控除)/相続税法基本通達17-1(あん分割合の端数調整)
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章第7節 各相続人等の相続税額(pp.39〜40。【設例】p.40)、第8節 各相続人等の納付すべき相続税額(pp.41〜44)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算・No.4157 相続税額の2割加算・No.4158 配偶者の税額の軽減
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。2割加算の対象者、配偶者の税額軽減の計算順序は、講本 pp.41〜43 の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。