MENU

第7回 相続税の総額|相続税入門講座

相続税 入門講座|第7回(v12)

相続税の総額はどう計算する?

「財産が1億円あったら、相続税はいくら?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第2回(相続人)・第6回(課税価格)条文:相続税法15条・16条
第1章 導入と民法123
第2章 財産から税額まで45678
第3章 特例と贈与91011
第4章 手続と総合演習1213
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
財産の合計本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で)
各人の課税価格1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与
課税価格の合計全員の課税価格を足したもの
課税遺産総額課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
相続税の総額課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額
算出税額相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計
納付税額算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額
相続税法ラボ会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。
所要時間各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
相続税の総額は、実際の分け方ではなく「法定相続分で分けたことにして」計算する――この仕組みを、図を見ながら自分の言葉で説明できるようになること。
課税価格の合計1億円
→
相続人配偶者+子2人
→
相続税の総額(家族全体)630万円
第6回:青山家の課税価格の合計1億4,790万円
→
基礎控除・法定相続分・速算表同じ5ステップ
→
青山家の相続税の総額1,448万2,500円

この「630万円」がどう出てくるのかを、まずこの1億円の例で、5つのステップで確かめます。
※ 630万円は、配偶者の税額軽減などを差し引く前の「家族全体の相続税の総額」です。実際に納める額は、各人に割り振って税額控除をした後に決まります(第8回)。

最小事例(第6・7・8回で共通):預金1億円だけ、相続人は配偶者と子2人、特例・贈与・債務なし。
第6回 課税価格の合計 1億円(配偶者5,000万・子2,500万×2)→ 第7回 相続税の総額 630万円 → 第8回 配偶者0円(税額軽減)・子 各157万5,000円、納付税額の合計315万円。
まずこの小さな事例で流れをつかみ、そのあと論点の多い青山家で確かめます。
ハルカ先生、親の財産が1億円あったら、相続税はいくらになるんですか?
先生第6回で見た「課税価格の合計」が1億円で、相続人が配偶者と子ども2人なら、家族全体の「相続税の総額」は630万円だよ。配偶者の税額軽減などを引く前の数字だから、実際に納める額とは違うことがあるんだ。
ハルカ1億円で630万円……。それって、どうやって出てくるんですか?
先生今日は、まずこの1億円の例で5つのステップを見て、そのあと講座の共通事例の青山家で確かめるよ。大事なのは1つだけで、「実際の分け方ではなく、法定相続分で分けたことにして計算する」なんだ。
ハルカ第6回で出した青山家の課税価格の合計1億4,790万円も、同じ5ステップで計算できるんですか?
先生そうなんだ。1億4,790万円から基礎控除を引いて、法定相続分で仮に分けて、速算表を当てると、総額は1,448万2,500円になるよ。左の2段目の流れを、今日1段ずつたどっていこうか。

図で見る:相続税の総額までの5ステップ

先生ここからが今日の本題だよ。最初は「課税価格1億円の例」で5ステップを通してみよう。左のボタンで「青山家」「講本の設例」にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」もあるんですね。数字を見ると、すぐ計算したくなります。
先生課税価格や子どもの数を変えると、下の図と会話の数字も一緒に変わるよ。自分で試すのは最後にとっておいて、まずはステップ1から順に進めていこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 課税価格を全部たす相続人などが取得した財産の課税価格を全員分たし合わせた金額からスタートします。(この例では、各人の内訳は省略)課税価格の合計1億円
課税価格の合計 = 1億円
ハルカ課税価格の合計が出ました。ここから、1人ずつ税額を計算するんですよね?
先生まず左の棒を見てほしいんだ。全員の課税価格を足した1億円が、今日のスタート地点だよ。
🤔 迷いポイント相続税は、財産をもらった人がそれぞれ自分の分だけ計算する?
ハルカあれ、これは相続税法ラボの基礎編 ↗でやりましたよね。「5段の流れ」で、家族全体の総額を出してから配るんでしたっけ?
先生よく覚えていたね。今日はその④「相続税の総額」を、数字で1段ずつ確かめていくんだ。
💡 そうだったのか!相続税は1人ずつではなく、まず全員の課税価格を合計した「1つの山」から計算を始める。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 課税価格をたす

ハルカ課税価格の合計が出ました。ここから、1人ずつ税額を計算するんですよね?
先生まず左の棒を見てほしいんだ。全員の課税価格を足した1億円が、今日のスタート地点だよ。
🤔 迷いポイント相続税は、財産をもらった人がそれぞれ自分の分だけ計算する?
ハルカあれ、これは相続税法ラボの基礎編 ↗でやりましたよね。「5段の流れ」で、家族全体の総額を出してから配るんでしたっけ?
先生よく覚えていたね。今日はその④「相続税の総額」を、数字で1段ずつ確かめていくんだ。
💡 そうだったのか!相続税は1人ずつではなく、まず全員の課税価格を合計した「1つの山」から計算を始める。

課税価格の合計 = 1億円

STEP 2 基礎控除を引く

ハルカこの1億円の全部に、税金がかかるんですか?
先生その前に基礎控除を引くんだ。左の棒の灰色の部分だよ。3,000万円+600万円×法定相続人の数で、3人だから4,800万円。残りの5,200万円が「課税遺産総額」なんだ。
🤔 迷いポイント基礎控除の「人数」には、財産をもらった人を全員数える?
ハルカ財産をもらった人は、全員数えると思いました。
先生それが、そうではないのだよ。数えるのは法定相続人だけなんだ。遺言で財産をもらっただけの人は入らない。逆に、相続を放棄した人は数えるよ。
💡 そうだったのか!基礎控除の人数は「法定相続人の数」。遺贈を受けただけの人は数えず、放棄した人は数える。

3,000万円+600万円×3人=4,800万円 / 課税遺産総額 = 5,200万円

STEP 3 法定相続分で分ける

ハルカ次は、実際にもらった金額に税率をかけるんですよね?
先生そこが一番の落とし穴なんだ。左の図では、5,200万円を法定相続分で分けているよ。配偶者が1/2で2,600万円、子Aが1/4で1,300万円、子Bが1/4で1,300万円なんだ。
🤔 迷いポイント税率をかけるのは、各人の課税価格(実際に取得した分)?
ハルカ実際にもらった金額に税率をかけないと、不公平な気がします。
先生実際の分け方で計算すると、分け方しだいで家族全体の税額を動かせてしまうんだ。だから総額は、法定相続分どおりに分けたことにして計算するんだよ。
ハルカせっかく家族で話し合って分けたのに、ここでは使ってもらえないなんて……。少し切ないです。
先生使わないのは総額を出す段階だけだよ。実際の分け方は、次の割り振りでちゃんと出番があるんだ。
💡 そうだったのか!総額の計算では、実際の分け方ではなく、法定相続分で「仮に」分けた金額を使う。

配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円 子A:5,200万円×1/4=1,300万円 子B:5,200万円×1/4=1,300万円 (千円未満切捨て)

STEP 4 速算表を当てる

ハルカ分けた金額ごとに、税率はどう決まるんですか?
先生左の帯を見てほしいんだ。金額が大きい部分ほど、色が濃くて税率が高いよ。これが「超過累進税率」なんだ。配偶者の2,600万円なら、1,000万円までは10%、残りは15%になるよ。
🤔 迷いポイント2,600万円が15%の段に入ったら、全額に15%がかかる?
ハルカ2,600万円×15%で、390万円だと思いました。
先生15%がかかるのは、その段を超えた部分だけなんだ。だから速算表では、2,600万円×15%から控除額50万円を引くよ。答えは340万円なんだ。
ハルカ上の階ほど家賃が高いマンションみたいですね。最上階に住むと、1階の分まで高くなるのかと思っていました。
先生高い税率がかかるのは、上の階の部分だけだよ。1階の部分は、ずっと10%のままなんだ。
💡 そうだったのか!税率が上がるのは、その段を超えた部分だけ。速算表の控除額は、その差を調整するための金額。

配偶者 340万円 子A 145万円 子B 145万円

STEP 5 総額が出る

ハルカ3人分を足したら、それがこの家の払う相続税ですか?
先生足したものは「相続税の総額」で、630万円になるよ。各税額の合計から、100円未満を切り捨てているんだ。
🤔 迷いポイント相続税の総額=家族が実際に払う金額の合計?
ハルカ630万円を、みんなで払えば終わりだと思いました。
先生総額は、まだ「家族全体の税額の土台」なんだ。次は実際の取得割合で割り振るよ。そのあと2割加算や配偶者の税額軽減で、各人の納付額が決まるんだ。
💡 そうだったのか!相続税の総額は家族全体の土台。実際の取得割合で割り振り、加算・控除をしてから各人の納付額が決まる。

相続税の総額 = 340万円+145万円+145万円 = 630万円(百円未満切捨て)

青山家で確かめる(講座の共通事例)

被相続人(R9.6死亡)父 修 配偶者母 美和 長男健太 長女由紀 孫(遺贈を受けた)陽向 法定相続人=3人 (母・長男・長女)

第6回までで、4人それぞれの課税価格が決まりました。今日はここからスタートします。

取得者主な中身課税価格
母 美和自宅(特例後)・預金・株式−借入金・葬式費用5,500万円
長男 健太預金・株式・保険金(非課税後)・精算課税の贈与4,890万円
長女 由紀預金・株式・生前贈与加算3,900万円
孫 陽向遺言による預金の遺贈500万円
合計1億4,790万円

※ 金額は相続税評価額。内訳は第4回(財産の分類)・第5回(評価)・第6回(課税価格の計算)で確かめました。小規模宅地等の特例・生前贈与のくわしい計算は第9〜11回で扱います。
※ 令和8年1月1日現在の法令で計算し、相続開始(令和9年6月)までに改正がないものとしています。

先生1億円の例で、5ステップの流れが見えたね。ここからは講座の共通事例、青山家で確かめるよ。お父さんの修さんが、令和9年6月に亡くなったんだ。
ハルカ家族は、お母さんの美和さん、長男の健太さん、長女の由紀さん。それに孫の陽向くんですね。陽向くんも相続人なんですか?
先生健太さんが健在だから、陽向くんは相続人ではないんだ。法定相続人は美和さん・健太さん・由紀さんの3人だよ。ただ、遺言で預金500万円をもらったから、「受遺者」として計算に登場するんだ。
ハルカ「受遺者」……。遺言で選ばれし者、みたいで少しかっこいいですね。
先生呼び名は立派だけど、基礎控除の人数には入らないんだよ。そこが今日の大事なところなんだ。
ハルカ左の表の「課税価格」は、第6回で「足して、引いて、また足して」出した金額ですね。美和さんは債務と葬式費用を引いて5,500万円でした。
先生よく覚えていたね。その4人の合計1億4,790万円が、今日の5ステップの出発点なんだ。さっきの1億円の例と同じ順番で、もう一度たどってみようか。

青山家の5ステップ

ステップ青山家の計算結果
① 課税価格をたす母5,500万+長男4,890万+長女3,900万+孫500万1億4,790万円
② 基礎控除を引く3,000万円+600万円×3人=4,800万円9,990万円
③ 法定相続分で分ける母 1/2 / 長男・長女 各1/4(千円未満切捨て)4,995万円
2,497万5,000円×2
④ 速算表を当てる母 4,995万円×20%−200万円
長男・長女 2,497万5,000円×15%−50万円
799万円
324万6,250円×2
⑤ 相続税の総額799万円+324万6,250円+324万6,250円(百円未満切捨て)1,448万2,500円
ハルカ1億円のときと同じ順番で計算すればいいんですよね?
先生そうだよ。違うのは、課税価格の合計と、遺贈を受けた孫がいることなんだ。左の表が、青山家の5ステップの結果だよ。
ハルカ孫の陽向くんの500万円は①の合計に入るけれど、②の人数と③の法定相続分には出てこない……。表でもそうなっていますね。
先生よく読めているね。ボタンを押すと、上の図が青山家に切り替わるよ。1ステップずつ、数字を確かめてみようか。

やってみよう:分け方を変えると、総額は変わる?

青山家で、母が実際に取得する割合を動かしてみましょう(他の3人で残りを分けたとします)。

相続税の総額:

※ この体験は、課税価格の合計1億4,790万円と法定相続人の構成が変わらないことを前提にしています。実際には、誰が宅地を取得するかなどによって小規模宅地等の特例の適用が変わり、課税価格の合計や相続税の総額も変わる場合があります(第9回)。

ハルカ先生、それならお母さんに全部寄せたら、総額は減りますか?
先生左のスライダーを動かしてみてほしいんだ。母の割合を10%にしても90%にしても、総額は1,448万2,500円のままだよ。
ハルカ実は、お母さんに寄せて総額を減らす「裏ワザ」を探していました……。
先生課税価格の合計が同じなら、分け方を変えても相続税の総額は変わらないんだ。ただし、誰が自宅の土地を取得するかで小規模宅地等の特例の使える・使えないが変わると、課税価格の合計も変わるから別だよ。
ハルカじゃあ、分け方は何にも影響しないんですか?
先生配偶者には税額軽減の特例があるから、家族が実際に払う合計額は分け方で変わるんだ。それは次の第8回で見ていこうか。

よくある間違い

① 各人の課税価格に税率をかける

母の課税価格5,500万円×税率…と計算するのは誤り。税率をかけるのは法定相続分で分けた金額です。

② 人数の数え方

遺贈を受けた孫は数えません。逆に、相続を放棄した人は数えます(放棄がなかったものとして計算)。養子の数には上限があります(第2回)。

③ 端数処理と控除額

法定相続分で分けた金額は千円未満切捨て、総額は百円未満切捨て。速算表の控除額を引き忘れないこと。
ハルカ①は、まさに私がやりかけた間違いです。
先生実務家でも間違いやすいところなんだよ。税率をかけるのは、法定相続分で分けた金額だったね。
ハルカ相続税法ラボ ↗を読む前は、もらった人ごとに計算すると思っていました。今は、総額を先に出す理由まで分かります。
先生それが一番大事な進歩だね。②の人数と③の端数処理も、ステップ2と5で見たとおりなんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 法定相続人が配偶者と子3人、課税価格の合計が9,000万円。遺産に係る基礎控除額はいくら?
Q2. 子のうち1人が相続を放棄しました。相続税の総額を計算するときの扱いは?
Q3. 遺言で孫(法定相続人ではない)に500万円を遺贈しました。相続税の総額の計算での扱いは?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 全員の課税価格を足して、1つの山にする。
  2. 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引く。残りが課税遺産総額。
  3. 課税遺産総額を法定相続分で分けたことにする(実際の分け方は使わない)。
  4. 分けた金額ごとに速算表で税額を出す。
  5. 足したものが相続税の総額。これを実際の取得割合で割り振るのが第8回。
先生今日のまとめだよ。全員の課税価格を足し、基礎控除を引き、法定相続分で「仮に」分けて速算表を当てる。足したものが相続税の総額なんだ。
ハルカ家族全員のお会計を、いったん1枚の伝票にまとめてから割り勘する感じですね。
先生いい練習だね。ただ、割り勘の比率は人数で等分ではなく、実際に取得した割合なんだ。そこが次回の主役だよ。
ハルカこれからレシートを見るたびに、法定相続分で仮に分けたくなりそうです。
先生それだけ身についたなら頼もしいね。次の第8回では、総額を4人に割り振って、2割加算と配偶者の税額軽減を見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:相続税法15条(遺産に係る基礎控除)、16条(相続税の総額)、17条(各人の相続税額)、相続税法基本通達16−1

参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章第6節(pp.35〜38)、第7節の【設例】(p.40)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算・No.4155 相続税の税率

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。「講本の設例」プリセットは講本 p.40 の【設例】の数値を用い、TaxJudgeが図解・試算用に加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生相続税法15条が基礎控除、16条が相続税の総額、17条が次回の各人の税額だよ。相続税法ラボ ↗の「条文から」タブで引けるんだ。
ハルカこの講座のもとになった資料も知りたいです。
先生税務大学校の講本『相続税法(基礎編)令和8年度版』を参考に、TaxJudgeが独自に組み立てているよ。出典は左にまとめてあるよ。最後に、サイト内の関連リンクもまとめておいたんだ。
相続税 入門講座 第7回|taxjudge.com
→ / スペースで次の発言(最後の発言のあとは次のステップ)/ ← で戻る / Esc で閉じる
このテーマで、まだ知りたいことはありませんか?
他社事例、自社の場合の迷い、追加で見たいデータなどを教えてください。多くの実務家に共通する課題は、データ・記事・ツールの形で調査し公開します。