小規模宅地等の特例(自宅の土地は必ず80%減る?)
「自宅の土地なら、誰が相続しても80%減る?」から、対象になる土地・取得する人・減額できる面積・手続の4つで、特例を使えるかどうかを判断する回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
小規模宅地等の特例は「自宅の土地なら自動で80%減額」ではなく、①対象になる土地か ②誰が取得するか(要件) ③どこまで減額できるか(限度面積) ④申告などの手続の4つを満たしたときに使える――この判断の順番を、青山家の自宅の土地で説明できるようになること。
※ 健太は別居で持ち家に住んでいる設定です(共通事例シート)。配偶者の美和がいるので、別居の子は原則として特例を使えません。総額はほかの財産・人数が同じとした場合の比較です。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
図で見る:特例を使えるかの判断(5つのステップ)
判断の順番
- 土地:亡くなった人などが住んでいた(事業に使っていた)建物の敷地か
- 人:取得した人が、その人に応じた要件を満たすか
- 面積と手続:限度面積までの部分か、申告・分割・選択の同意があるか
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 特例の全体像
自宅の土地(特定居住用宅地等):330㎡まで80%減額 / 事業用 400㎡まで80% / 貸付用 200㎡まで50%
STEP 2 対象になる土地
① 対象:亡くなった人などが住んでいた建物の敷地 → 青山家の自宅(300㎡・評価額6,000万円)は ○
STEP 3 取得する人の要件
② 人(本人の自宅):配偶者は取得者の要件なし(美和 ○)/ 同居親族は住み続け・持ち続け / 別居親族は限られた場合だけ(健太 ×)
STEP 4 限度面積と減額
③ 減額:6,000万円 × 300㎡/300㎡ × 80% = 4,800万円(330㎡を超える部分は減額なし)
STEP 5 手続と結果
④ 申告・分割・同意 → 課税価格に入れる額 6,000万円 − 4,800万円 = 1,200万円
青山家:美和が取得するか、健太が取得するか
| 確認すること | 美和(配偶者) | 健太(別居・持ち家) |
|---|---|---|
| ① 対象になる土地か | ○ 父・修が住んでいた自宅の敷地(300㎡) | ○ 同じ土地 |
| ② 取得する人の要件 | ○ 配偶者は要件なし | × 同居していない。配偶者がいるので「持ち家のない別居の親族」の扱いも使えない |
| ③ 限度面積 | 300㎡ ≦ 330㎡ → 全部 | (②で使えない) |
| ④ 手続 | 申告書の提出・分割済み | ― |
| 課税価格に入れる額 | 6,000万円 − 4,800万円 = 1,200万円 | 6,000万円 |
| 課税価格の合計/相続税の総額 | 1億4,790万円/1,448万2,500円 | 1億9,590万円/2,597万5,000円 |
※ 配偶者に要件がないというのは、住み続けることや持ち続けることなど、取得者ごとの要件がないという意味です。土地そのものの要件や申告手続は必要です。
※ 健太の列は、ほかの財産・人数を変えずに土地の取得者だけを入れ替えた比較です。実際には、各人の取得額や配偶者の税額軽減なども変わります。
やってみよう:この自宅の土地、特例は使える?
※ この判定ツールでは、亡くなった人が住んでいた一般的な自宅の土地(特定居住用宅地等)だけを扱います。二世帯住宅、老人ホーム入所中の自宅、生計を一にする親族の自宅、事業用・貸付用の土地などは、このツールの判定対象外です。これらも一定の要件を満たせば特例の対象になる場合があります。実際の判定には、ほかにも細かい要件があります。
よくある間違い
① 自宅の土地なら誰が取得しても80%減
配偶者は要件なしですが、同居していた親族は申告期限まで住み続け・持ち続けることが必要です。別居の親族は、配偶者も同居の相続人もいない場合に限り、持ち家がないなどの要件を満たせば使えます。② 土地全部が80%減
特定居住用宅地等は330㎡まで。それを超える部分は減額されません(400㎡なら330㎡分だけ)。③ 特例で税額0なら申告はいらない
この特例も申告書の提出が必要です。申告期限までに分割されていない土地には原則として使えません(申告期限から3年以内に分割すれば使える手続あり)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 小規模宅地等の特例は、土地・人・面積・手続の4つを満たしたときに、課税価格に入れる額を減らす特例。
- 亡くなった人の自宅の土地(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%減額。事業用は400㎡まで80%、貸付用は200㎡まで50%。
- 亡くなった人本人の自宅の場合、配偶者は取得者としての要件なし。同居親族は申告期限まで住み続け・持ち続ける。別居親族(家なき子)は配偶者も同居の相続人もいない場合だけ(持ち家なしなど)。生計を一にしていた親族の自宅は別の要件で判定する。
- 限度面積を超える部分は減額されない。
- 申告書の提出が必要。原則として申告期限までに分割され、対象になり得る土地を複数の人が取得したときなどは、関係する取得者全員の同意で選ぶ。
参照条文・出典
参照条文:租税特別措置法69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例:1項 減額の割合、2項 限度面積、3項 特定居住用宅地等などの定義、4項 未分割、7項 申告書の記載)/租税特別措置法施行令40条の2/租税特別措置法関係通達69の4-1〜69の4-39
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章第5節 3 課税価格の計算の特例 ⑴ 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(pp.26〜29)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。宅地等の区分・限度面積・減額割合の表、特定居住用宅地等の取得者の要件は、講本 pp.26〜29 の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字・家族の住まいは学習用に設定した仮定です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。