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第12回 申告・納税・延納・物納|相続税入門講座

相続税 入門講座|第12回(v10)

申告・納税・延納・物納(いつまでに、何を決める?)

「相続税は10か月以内に払えばいい?」から、相続開始後に何をいつまでに判断するのかをカレンダーで整理し、納付が難しいときの延納・物納の順番を確かめる回です。

必修 15分+発展 5分(発展:延納・物納)前提:第1回(期限)・第3回(放棄・分割)・第8回(納付税額)条文:相続税法27条・33条・34条・38条〜42条
第1章 導入と民法123
第2章 財産から税額まで45678
第3章 特例と贈与91011
第4章 手続と総合演習1213
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
財産の合計本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で)
各人の課税価格1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与
課税価格の合計全員の課税価格を足したもの
課税遺産総額課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
相続税の総額課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額
算出税額相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計
納付税額算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額
相続税法ラボ会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。
所要時間各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
相続開始から3か月(放棄・限定承認)→ 4か月(準確定申告)→ 10か月(相続税の申告と納付)の順に、何を決めるかを説明できること。納付は金銭で一括が原則、難しければ延納、延納でも難しければ物納――この順番で考えられるようになること。
相続開始令和9年6月10日
→
放棄・限定承認9月10日
→
準確定申告10月12日
→
相続税の申告・納付令和10年4月10日
青山家の納付税額(第8回)合計901万4,700円
→
各人が相続した預金から金銭で一括

※ 亡くなった日に相続を知った場合の期限です。準確定申告は、10月10日が日曜、11日がスポーツの日のため12日(火)。延納・物納は、財産のほとんどが不動産の「白石家」(教材用の別の家族)で考えます。

ハルカ第8回で、青山家4人の納付税額が901万4,700円と出ました。これは、いつまでにどう払うんですか?
先生今日はそこなんだ。期限を覚えるより、相続が始まってから「何を、いつまでに決めるか」を順に見ていくよ。
ハルカ左を見ると、3か月・4か月・10か月の順に期限が来るんですね。
先生そうなんだ。最後に、現金が足りない家のための延納と物納を、別の家族で見ていこうか。

図で見る:相続開始から納付まで(5つのステップ)

判断の順番

  • いつまでに:3か月・4か月・10か月の期限と、そのとき決めること
  • 申告:誰が・どこへ・0円でも必要なとき
  • 納付:金銭で一括 → 延納 → 物納 の順(延納・物納のステップ4・5は発展)
先生判断の順番は、いつまでに・申告・納付の3つなんだ。左の3行を先に見ておこうか。
ハルカ納付のところの「一括 → 延納 → 物納」は、順番が決まっているんですね。
先生そうなんだ。ステップ1のカレンダーから見ていこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
カレンダー申告納付延納物納青山家のカレンダー(相続開始 令和9年6月10日・その日に相続を知った場合)6/10相続開始死亡届(7日以内)・遺言の確認9/103か月相続の放棄・限定承認(家庭裁判所)10/124か月準確定申告(所得税)R10.4/1010か月相続税の申告・納付/延納・物納の申請遺産分割の話し合い(分割そのものに期限はないが、10か月の申告に間に合わせたい。相続登記などには別の期限がある)※ 期限の日が土日祝日なら翌日(準確定申告は10/10が日曜・10/11がスポーツの日 → 10/12)。放棄の期間は伸長を申し立てる制度がある
3か月(放棄・限定承認 令和9年9月10日)→ 4か月(準確定申告 10月12日)→ 10か月(申告・納付 令和10年4月10日)
ハルカ相続税は、10か月以内に払えばいいんですよね?
先生相続税はそうなんだ。ただ、その前に3か月と4か月の期限が来るよ。左のカレンダーで、それぞれ何を決めるかを見ていこうか。
🤔 迷いポイント相続の放棄は、相続税の申告期限までに決めればよい?
ハルカあ、これは相続税法ラボの応用編 ↗の手続の一覧で見ました。放棄は3か月、準確定申告は4か月、相続税の申告は10か月の順でしたよね。
先生よく覚えていたね。放棄するかどうかを決めるには、最初の1か月ほどで財産と借金の全体をつかむ必要があるんだ。
ハルカ「準確定申告」の「準」って、確定申告の補欠みたいな名前ですね。
先生補欠ではなく、亡くなった年の1月から亡くなった日までの所得を、相続人が代わりに申告するものなんだよ。
💡 そうだったのか!期限は3か月(放棄・限定承認)→ 4か月(準確定申告)→ 10か月(相続税の申告・納付)の順。放棄は申告期限よりずっと早い。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 期限のカレンダー

ハルカ相続税は、10か月以内に払えばいいんですよね?
先生相続税はそうなんだ。ただ、その前に3か月と4か月の期限が来るよ。左のカレンダーで、それぞれ何を決めるかを見ていこうか。
🤔 迷いポイント相続の放棄は、相続税の申告期限までに決めればよい?
ハルカあ、これは相続税法ラボの応用編 ↗の手続の一覧で見ました。放棄は3か月、準確定申告は4か月、相続税の申告は10か月の順でしたよね。
先生よく覚えていたね。放棄するかどうかを決めるには、最初の1か月ほどで財産と借金の全体をつかむ必要があるんだ。
ハルカ「準確定申告」の「準」って、確定申告の補欠みたいな名前ですね。
先生補欠ではなく、亡くなった年の1月から亡くなった日までの所得を、相続人が代わりに申告するものなんだよ。
💡 そうだったのか!期限は3か月(放棄・限定承認)→ 4か月(準確定申告)→ 10か月(相続税の申告・納付)の順。放棄は申告期限よりずっと早い。

3か月(放棄・限定承認 令和9年9月10日)→ 4か月(準確定申告 10月12日)→ 10か月(申告・納付 令和10年4月10日)

STEP 2 相続税の申告

ハルカ相続税の申告書は、誰が出すんですか?
先生課税価格の合計が基礎控除を超えて、納付税額がある人なんだ。財産を取得した人が共同で1通にまとめて、亡くなった人の住所地の税務署に出せるよ。
🤔 迷いポイント遺産分割がまとまっていなければ、申告期限は延びる?
ハルカ分け方が決まらないと計算できないので、待ってもらえると思っていました。
先生期限は延びないんだ。法定相続分などで仮に計算して申告・納付して、分割が決まったら修正申告や更正の請求をするよ。
ハルカ美和さんは税額0円なのに申告しなければいけないなんて、ちょっと損した気分です。
先生申告することで、0円になる軽減や特例を受けられるんだよ。
💡 そうだったのか!申告期限は10か月以内。未分割でも延びない。配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例などを使う人は0円でも申告が必要。

申告:相続を知った日の翌日から10か月以内、亡くなった人の住所地の税務署へ / 配偶者の税額軽減などを使うなら0円でも申告

STEP 3 納付

ハルカ税金は、いつ、どうやって払うんですか?
先生申告期限と同じ日までに、各人が自分の税額を金銭で一括して払うのが原則なんだ。青山家は、相続した預金から払えるよ。
🤔 迷いポイント自分の分さえ払えば、ほかの人の相続税は関係ない?
ハルカ健太さんが払えば、由紀さんの分は由紀さんだけの問題だと思っていました。
先生同じ人から相続や遺贈で財産を取得した人どうしには連帯納付義務があって、ほかの人が払わないときは、受けた利益の範囲で払う責任があるんだ。陽向くんのような受遺者も入るよ。ただ、税務署から5年以内に通知がない場合などは負わないよ。
💡 そうだったのか!納付は申告期限までに金銭で一括が原則。相続や遺贈で財産を取得した人どうしには、受けた利益の範囲で連帯納付義務がある。

納付:申告期限までに金銭で一括が原則 / 青山家は各人が相続した預金で 901万4,700円

STEP 4 延納

ハルカ財産のほとんどが土地で、現金が足りない家はどうするんですか?
先生そのための制度が延納なんだ。左の白石家は、相続税4,860万円に対して、すぐ用意できる金銭が1,000万円しかないよ。
🤔 迷いポイント現金が足りなければ、いきなり土地で払える?
ハルカ土地しかないなら、最初から土地で払えばいいと思っていました。
先生順番があるんだ。まず金銭で一括、それが難しければ延納で分けて払う。延納でも払えない額だけが、次の物納の対象になるよ。
ハルカ延納って、税金の分割払いのローンみたいですね。
先生ローンと同じように利子税がかかって、原則として担保もいるんだよ。
💡 そうだったのか!延納は、税額10万円超・金銭で一括が困難・担保・納期限までの申請(税務署長の審査・許可)が要件。期間は原則5年、不動産が多いと最長20年。利子税がかかる。

延納:税額10万円超・金銭納付が困難・担保・納期限までの申請と審査・許可 / 白石家 3,000万円を20年で(仮定)

STEP 5 物納

ハルカ白石家は、延納でも860万円が残ってしまいますね。
先生その860万円が、物納を検討する対象になるんだ。物納は、相続した土地などの財産そのもので納める相続税だけの制度だよ。実際に物納できる額は、収入や生活費などもふまえた決められた計算で判断するんだ。
🤔 迷いポイント物納なら、どの財産でも好きなものを選んで納められる?
ハルカいちばん使っていない財産を選んで納めればいいと思っていました。
先生物納できる財産には順位と条件があるんだ。第1順位は不動産や上場株式などで、担保に入っている土地のような「管理処分不適格財産」は納められないよ。
ハルカ物納って、土地さんが自分で税務署に税金を払いに行くみたいですね。
先生土地が払うのではなく、国が土地を受け取って、その価額を税金に充てるんだよ。
💡 そうだったのか!物納は、延納でも金銭で払えない額について、相続財産で納める相続税だけの制度。財産には順位と条件があり、納期限までの申請と税務署長の審査・許可が必要。

物納:延納でも払えない額を相続財産で(相続税だけ) / 白石家 860万円は物納の検討対象(仮定の残額)

青山家:10か月のあいだに決めること

期限決めること・すること青山家では
令和9年9月10日(金)
3か月
相続を放棄するか、限定承認するか(家庭裁判所)借入金300万円に対して財産が十分なので、相続人3人(美和・健太・由紀)は単純承認。陽向は相続人ではなく受遺者
令和9年10月12日(火)
4か月
亡くなった人の所得税の準確定申告(必要な場合)修の令和9年1月〜6月10日の所得を申告。納める所得税があれば相続税の債務として引ける(青山家は、準確定申告による追加の納付・還付はない設定)
令和10年4月10日(月)
10か月
遺産分割・相続税の申告書の提出・納付4人で1通の申告書を出す。美和は0円でも申告(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例)
同日(納付)各人が自分の納付税額を金銭で納める健太478万8,300円・由紀363万8,900円・陽向58万7,500円を、相続した預金から一括で

※ 青山家の遺産分割は申告期限までにまとまった前提です(第3回)。まとまらない場合は、法定相続分などで期限内に申告し、分割後に修正申告・更正の請求をします。期限後3年以内に分割すれば、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を使えるよう「申告期限後3年以内の分割見込書」を出します。準確定申告の所得の内容は教材用の想定です。

ハルカ青山家が10か月のあいだにすることを、表で確かめたいです。
先生左の表のとおりだよ。3か月で放棄しないことを確かめ、4か月で準確定申告、10か月で分割をまとめて4人で1通の申告書を出すんだ。
ハルカ準確定申告の所得税は、相続税の計算では債務になるんですね。第6回で見た「未払の税金」です。
先生よくつながったね。亡くなった年の所得税は、死亡の時に金額が決まっていなくても債務として引けるんだ。青山家は、準確定申告で追加に納める税金も還付もない設定にしているよ。

やってみよう:納付の方法を、順番に判断する

※ 判断の順番を見るための簡易な目安です。延納の利子税、延納期間の上限(原則5年。不動産などの割合が大きいと最長20年)、生活費などの「金銭納付を困難とする事由」の細かい計算、物納できる財産の条件は、実際には別に確かめます。

ハルカ納付の方法を、自分で判断してみたいです。
先生左で「白石家」を押してみてね。金銭で一括、延納、物納の順に、どこまで使うかが出るよ。
ハルカ1,000万円を一括、3,000万円を延納、残りの860万円が「物納の検討対象」になりました。
先生順番どおりなんだ。ただ、860万円は簡単な仮定で出した額で、実際に物納できる額は決められた計算で判断するよ。「税額が小さい例」では、延納の担保がいらない場合も確かめてみようか。

よくある間違い

① 放棄は相続税の申告期限までに決めればよい

相続の放棄・限定承認は、原則3か月以内に家庭裁判所へ。10か月の申告期限よりずっと早く来ます(期間の伸長を申し立てる制度あり)。

② 遺産分割がまとまらないと申告期限が延びる

未分割でも、10か月以内に申告と納付が必要です。法定相続分などで仮に計算し、分割後に修正申告や更正の請求をします。

③ 払えなければ、すぐ物納できる

原則は金銭で一括。それが難しいとき延納、延納でも金銭で払えない額について物納を申請します。どちらも納期限までに申請書を提出し、税務署長の審査・許可を受けます。
ハルカ①の放棄の期限は、相続税の申告期限と混ざりやすいです。
先生放棄は家庭裁判所への手続で、3か月なんだ。相続税の10か月よりずっと早いよ。
ハルカ②の「未分割でも期限は延びない」は、第3回の分割見込書の話とつながりますね。
先生そのとおりなんだ。期限内に仮の計算で申告して、3年以内に分割できれば特例を使えるようにしておくんだよ。

ミニテスト(3問)

Q1. 青山家(相続開始 令和9年6月10日、その日に相続を知った)の相続税の申告期限は?
Q2. 配偶者の税額軽減で、美和の納付税額は0円になった。相続税の申告は?
Q3. 相続税を金銭で一括して納めることが難しく、延納によっても納めることが難しい額がある。納期限までに申請を検討する制度は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 期限は3か月(放棄・限定承認)→ 4か月(準確定申告)→ 10か月(相続税の申告・納付)の順に来る。
  2. 申告書は、相続を知った日の翌日から10か月以内に、亡くなった人の住所地の税務署へ。共同で1通にできる。
  3. 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例などを使うときは、0円でも申告が必要。未分割でも期限内に申告する。
  4. 納付は申告期限までに金銭で一括が原則。同じ人から相続や遺贈で財産を取得した人どうしには、一定の範囲で連帯納付義務もある。
  5. 金銭で一括が難しいとき延納(10万円超・担保・利子税)、延納でも難しい額は物納(相続税だけ・財産の順位あり)。どちらも納期限までに申請し、税務署長の審査・許可を受ける。
先生今日のまとめだよ。期限は3か月・4か月・10か月の順で、相続税は10か月以内に申告して、金銭で一括して納めるのが原則なんだ。難しければ延納、延納でも難しい額は物納だよ。
ハルカ相続税の手続は、10か月のゴールに向けて、早い期限から順に片付けていくものなんですね。
先生そのとおりだね。1点だけ足すと、延納も物納も、納期限までに申請書を出して、税務署長の審査・許可を受ける必要があるんだ。
ハルカ次に相続の相談を聞いたら、まずカレンダーに3つの期限を書き込みます。
先生いい段取りだね。次の第13回では、青山家の相続を最初から最後まで、通しで計算していこうか。

参照条文・出典

参照条文:相続税法27条(相続税の申告書)、19条の2第3項(配偶者の税額軽減の申告要件)、33条(納付)、34条(連帯納付の義務)、38条〜40条(延納)、41条〜48条の3(物納)、52条(延納の利子税)、55条(未分割の場合の課税価格)/民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)/所得税法125条(準確定申告)/租税特別措置法69条の4第7項

参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第6章第1節 相続税の申告(pp.74〜76)、第7章 税金の納付と延納及び物納(pp.82〜85)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税・No.4211 相続税の延納・No.4214 相続税の物納

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。延納の要件・物納の要件と財産の順位は、講本 pp.83〜85 の記述をもとにTaxJudgeが編集・加工しています(公共データ利用規約(第1.0版)に基づく加工)。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家・白石家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。

ハルカ今日の内容は、条文ではどこで確かめられますか?
先生申告は相続税法27条、納付は33条、連帯納付義務は34条、延納は38条から、物納は41条からだよ。相続税法ラボ ↗の「条文から」タブで引けるんだ。
ハルカこの講座のもとになった資料も知りたいです。
先生税務大学校の講本『相続税法(基礎編)令和8年度版』の第6章と第7章を参考に、TaxJudgeが独自に組み立てているよ。出典は左にまとめてあるんだ。
相続税 入門講座 第12回|taxjudge.com
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