総合演習:青山家の相続を最初から最後まで
今回はハルカが自分で解き、先生が確かめる回です。1枚の「計算マップ」を上から埋めて、財産 → 課税価格 → 相続税の総額 → 納付税額 → 申告・納付までを通します。最後に初めて見る事例を1題と、卒業テスト12問。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 財産の合計 | 本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産(評価額で) |
| 各人の課税価格 | 1人ずつ:取得した財産+精算課税の贈与−債務・葬式費用+加算する暦年贈与 |
| 課税価格の合計 | 全員の課税価格を足したもの |
| 課税遺産総額 | 課税価格の合計−基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて速算表を当て、足した家族全体の税額 |
| 算出税額 | 相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計 |
| 納付税額 | 算出税額に2割加算・税額控除をして、100円未満を切り捨てた各人が納める額 |
| 相続税法ラボ | 会話でハルカが「相続税法ラボで見ました」と言うのは、TaxJudgeの別の教材のことです。読んでいなくても、この講座だけで理解できます(リンク先は任意)。 |
| 所要時間 | 各回の「所要」は必修部分の目安です。「発展」と書いた部分や、体験・テストは時間に応じて取り組んでください。 |
はじめに:今日のゴール
青山家の相続税を、財産の合計 1億8,300万円 → 課税価格の合計 1億4,790万円 → 相続税の総額 1,448万2,500円 → 納付税額の合計 901万4,700円 → 令和10年4月10日の申告・納付まで、自分で通して説明できること。特に、財産の合計と課税価格、相続税の総額と納付税額を取り違えないこと。
※ 金額が4回変わります。それぞれ「なぜ変わるのか」を、ステップごとに確かめます。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
図で見る:計算マップを上から埋める(5つのステップ)
今日の進め方
- ハルカが解く:計算マップの行を、上から順に埋める
- 先生が確かめる:合っているか、どの回の知識かを確認
- 右の列:迷ったら戻る回
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 財産を集める
財産の合計 = 1億7,800万円 + 保険金2,000万円 − 非課税1,500万円 = 1億8,300万円
STEP 2 課税価格の合計
課税価格の合計 = 1億8,300万円 − 特例4,800万円 − 債務・葬式費用500万円 + 贈与1,790万円 = 1億4,790万円
STEP 3 相続税の総額
1億4,790万円 − 基礎控除4,800万円 = 9,990万円 → 法定相続分で仮に分けて速算表 → 総額 1,448万2,500円
STEP 4 各人の納付税額
総額を課税価格の割合で割り振り → 2割加算・贈与税額控除・配偶者の税額軽減 → 納付税額の合計 901万4,700円(各人ごとに端数処理)
STEP 5 申告・納付
令和10年4月10日(月)までに、4人で1通の申告書を出し、各人が金銭で一括して納付
青山家の計算マップ(完成形)
| 計算の段階 | 青山家 | 戻る回 |
|---|---|---|
| ① 本来の相続財産 | 土地6,000万+建物800万+預金8,000万+株式3,000万 = 1億7,800万円 | 第4・5回 |
| ② 死亡保険金(みなし) | +2,000万円(受取人 健太) | 第4回 |
| ③ 保険金の非課税 | ▲1,500万円(500万円×法定相続人3人) | 第4回 |
| ④ 小規模宅地等の特例 | ▲4,800万円(美和が取得、300㎡×80%) | 第9回 |
| ⑤ 債務・葬式費用 | ▲500万円(美和が負担) | 第6回 |
| ⑥ 生前贈与の加算 | +1,790万円(由紀400万+健太の精算課税1,390万) | 第10・11回 |
| 課税価格の合計 | 1億4,790万円(美和5,500/健太4,890/由紀3,900/陽向500) | 第6回 |
| ⑦ 基礎控除 | ▲4,800万円(3,000万+600万×3人)→ 課税遺産総額 9,990万円 | 第2・7回 |
| 相続税の総額 | 1,448万2,500円(法定相続分で仮に分けて速算表) | 第7回 |
| ⑧ 各人の加算・控除 | 陽向 2割加算+97,920円/由紀 贈与税額控除▲18万円/美和 配偶者の税額軽減▲5,385,649円 | 第8回 |
| 納付税額の合計 | 901万4,700円(美和0/健太4,788,300/由紀3,638,900/陽向587,500) | 第8回 |
| ⑨ 申告・納付 | 令和10年4月10日(月)まで。4人で1通、金銭で一括 | 第12回 |
やってみよう:計算マップの空欄を自分で埋める
上の表を見ずに、青山家の数字を入れて「答え合わせ」を押してください。
※ 金額は数字だけで入力します(カンマなしでも可)。間違えた行には、戻る回を表示します。
初めて見る事例:緑川家を自分で解く
緑川家(教材用の別の家族):父が亡くなった。相続人は母と長女の2人。
・預金6,000万円:母3,000万円・長女3,000万円
・自宅の土地(評価額2,000万円):父と同居していた母が取得。小規模宅地等の特例で80%減額
・葬式費用100万円:母が負担。生前の贈与・保険金・遺贈はなし
一条件だけ変えたら?(考えてから開く)
① 母が自宅の土地ではなく預金を多くもらい、土地は別居で持ち家に住む長女が取得したら?
配偶者も同居の相続人(母)もいるので、別居の長女は特定居住用宅地等の特例を原則として使えません。土地は2,000万円のまま入り、課税価格の合計は7,900万円、相続税の総額は大きくなります(第9回)。
② 父から長女への暦年贈与(父が亡くなった年の3月に300万円)があったら?
相続で財産を取得する長女が、相続開始の年に受けた贈与には贈与税はかからず、300万円を長女の課税価格に足します(第10回)。
③ 長女が死亡保険金1,000万円(保険料は父が負担)を受け取り、相続を放棄していたら?
保険金は遺贈で取得したものとみなされて相続税の対象ですが、放棄した人は保険金の非課税(500万円×法定相続人の数)を使えません。法定相続人の数(2人)は放棄がなかったものとして数えます(第2・4回)。
よくある間違い(講座全体から)
① 財産の合計=課税価格の合計
財産を集めたあと、特例・債務・生前贈与で金額が動きます。青山家は1億8,300万円 → 1億4,790万円。② 相続税の総額=家族が納める額
総額は法定相続分で仮に分けて計算した土台。実際の取得割合で割り振り、2割加算・税額控除のあとが納付税額。1,448万2,500円 → 901万4,700円。③ 税額が0円なら手続は終わり
配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は申告して初めて使える。期限は10か月、その前に3か月・4か月の期限もある。卒業テスト(12問)
おわりに ── 講座のふりかえり
- 財産を集める:本来の相続財産+みなし相続財産−非課税(第4・5回)。
- 課税価格:特例・債務・葬式費用・生前贈与で1人ずつ足し引きし、合計する(第6・9・10・11回)。
- 相続税の総額:基礎控除を引き、法定相続分で仮に分けて速算表(第2・7回)。
- 納付税額:課税価格の割合で割り振り、2割加算・税額控除(第8回)。
- 手続:3か月・4か月・10か月の期限。申告して初めて使える特例がある(第1・3・12回)。
参照条文・出典
参照条文:相続税法3条・11条の2・12条・13条・15条〜19条の2・19条・21条の15・22条・27条・33条/租税特別措置法69条の4/民法900条・915条(各回の参照条文を参照)
参考資料:税務大学校『相続税法(基礎編)令和8年度版』第3章(相続税の課税価格と税額)、第5章(相続時精算課税制度)、第6章(申告)、第7章(納付)、第11章(財産の評価)(講本PDF)/国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の記述・数値を利用した箇所は、公共データ利用規約(第1.0版)に基づきTaxJudgeが編集・加工しています。出典:国税庁(税務大学校)「相続税法(基礎編)令和8年度版」
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年1月1日現在の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です(相続開始 令和9年6月までに改正がないものとします)。