総合演習・卒業テスト ── 健太さんの1年を最初から最後まで
第1回の「計算の地図」の5つのステップで、健太さんの令和8年分の所得税を通しで計算し、卒業テスト12問で全体を確かめる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 総所得金額 | 総合課税の所得を、損益通算したあとに合計した金額(一時所得などは2分の1にして足す)。所得控除を引く出発点 |
| 所得控除 | 家族構成や支出など、人の事情を考えて所得から差し引くもの(第11・12回) |
| 課税総所得金額 | 総所得金額から所得控除を引いた金額(千円未満切捨て)。ここに税率をかける |
| 税額控除 | 計算した税額から直接差し引くもの(住宅ローン控除・配当控除など。第13回) |
| 年調年税額 | 年末調整で計算した1年分の税額。給与からの源泉徴収はこの額で精算される(第14回) |
| 申告納税額 | 確定申告で計算した税額から、源泉徴収税額などを引いた、納める額(百円未満切捨て) |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。控除額などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
健太さんの令和8年分の所得税を、計算の地図の5つのステップ(所得の区分 → 所得金額と合計 → 所得控除 → 税額 → 精算)で最初から最後まで通して計算し、確定申告で納める額までたどれるようになること。
※ 第1回で「ゴール」として見せた金額です。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。
図で見る:計算の地図の5ステップで通す
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 所得の区分
給与所得・雑所得・一時所得(総合課税)/ 譲渡所得(株式・分離課税、申告不要で完結)
STEP 2 所得金額と合計
565万円 + 45万円 + 5万円 = 総所得金額 615万円
STEP 3 所得控除
所得控除の合計 244万3,000円(人の事情と支出の控除)
STEP 4 税額の計算
370万7,000円 × 20% − 42万7,500円 − 175,000円 + 復興 = 141,816円
STEP 5 精算
141,816円 − 82,100円 → 納付 59,700円
青山家のほかの人たち(講座のふりかえり)
健太さん以外の家族も、それぞれの回で計算してきました。結果だけを並べてみます。
| 人 | 主な所得と手続 | 結果 | ふりかえり |
|---|---|---|---|
| 由紀さん(妹・41歳) | 料理教室(事業所得・青色申告)とマンション(不動産所得の赤字を損益通算)。総所得金額 261万円 | 納付 54,600円 | 第5・9・10回 |
| 修さん(父・74歳) | 公的年金の雑所得と上場株式の配当。配当を総合課税で申告すると、所得税が0円になり源泉徴収税額が戻る | 還付 110,268円 | 第6・7・13回 |
| 美和さん(母・71歳) | 公的年金だけで、公的年金等控除を引くと所得は0円 | 所得 0円 | 第6回 |
| 彩さん(妻・42歳) | 年の途中で退職(年末調整なし)。退職所得は0円、給与の源泉徴収税額を還付申告で取り戻す | 還付 16,800円 | 第4・14回 |
※ 修さんの還付額は、配当の源泉徴収(所得税・復興特別所得税)だけを考えた簡単な計算です(年金の源泉徴収や、住民税・国民健康保険料への影響は含めていません。第13回)。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
健太さんの通し計算(令和8年分)
やってみよう:数字が変わると、納める額はどう変わる?
健太さんの数字を4つだけ動かしてみましょう。ほかの数字(社会保険料・生命保険料・満期保険金・家族・住宅ローンなど)はそのままで、5つのステップを全部計算し直します。
令和8年分の数字(この講座で使った主なもの)
| 項目 | 令和8年分 | 回 |
|---|---|---|
| 給与所得控除の最低額 | 74万円 | 第4回 |
| 一時所得の特別控除 | 最高 50万円 | 第7回 |
| 基礎控除(合計所得金額489万円以下) | 104万円 | 第11回 |
| 扶養親族などの所得要件(合計所得金額) | 62万円以下 | 第11回 |
| 医療費控除の足切り(総所得金額等の5%と比べて少ないほう) | 10万円 | 第12回 |
| 寄附金控除で差し引く額 | 2,000円 | 第12回 |
| 所得税の税率 | 5%〜45% | 第13回 |
| 復興特別所得税 | 基準所得税額の2.1% | 第13回 |
| 会社員が確定申告をする線(給与所得・退職所得以外の所得金額の合計) | 20万円超 | 第6・14回 |
| 確定申告の期間 | 令和9年2月16日(火)〜令和9年3月15日(月) | 第14回 |
決まっている次の改正(この講座の年分ファイルに記録)
控除額などの数字は、税制改正で変わることがあります。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。5つのステップの順番は変わりません。
講座全体のよくある間違い
① 税率を収入にかける
税率をかけるのは、収入ではなく課税総所得金額(所得から所得控除を引いた額)です。さらに超過累進なので、高い税率は高い部分にだけかかります。② 所得控除と税額控除を混同する
所得控除は所得から、税額控除は税額から差し引きます。同じ金額でも、税額控除のほうが税金を大きく減らします。③ 年末調整で全部終わったと思う
年末調整に入らない医療費控除・寄附金控除や、給与以外の所得は確定申告で精算します。給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると、原則として申告が必要です。卒業テスト(12問)
おわりに ── 講座全体のふりかえり
- 所得を10種類に分ける。種類ごとに、総合課税・分離課税などの課税のしかたが決まる(第1〜3回)。
- 種類ごとに所得金額を出す。給与は給与所得控除、事業・不動産は必要経費、一時所得は特別控除と2分の1。赤字は4つの所得だけ損益通算(第4〜10回)。
- 総所得金額から、家族や支出の事情を考えた所得控除を引く。判定は収入ではなく合計所得金額で(第11・12回)。
- 課税総所得金額に超過累進税率をかけ、税額控除を引き、復興特別所得税を足す(第13回)。
- 源泉徴収・年末調整で納めた分と確定申告で精算する。申告が必要な人と、還付申告で得をする人は別(第14回)。
申告書のどこに何を書くかは、確定申告の動画(手引きの公表後に公開)で扱います。年末調整のしくみと書類は、年末調整ラボ・書類の書き方ラボで確かめられます。
参照条文・出典
参照条文:所得税法21条(所得税額の計算の順序)、22条(課税標準)、69条(損益通算)、72〜86条(所得控除)、89条(税率)、92条(配当控除)、120条(確定所得申告)、121条(確定所得申告を要しない場合)、190条(年末調整)、租税特別措置法41条(住宅借入金等特別控除)、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条(復興特別所得税)ほか、各回の参照条文
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』全体(特に第1章「所得税の計算のしくみ」p.15)、『令和8年分 年末調整のしかた』、『令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A』(講本PDF)
本教材は、上記資料を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。申告書(第一表など)への記入のしかたは扱っていません(確定申告の動画で扱います)。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。