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第8回 譲渡所得|所得税入門講座

所得税 入門講座|第8回(v4)

譲渡所得 ── 売って得た利益

「株や金を売って得た利益は、給与と合計するの?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第2回(非課税所得)・第3回(課税のしかた)条文:所得税法33条・38条、租税特別措置法31条・32条・37条の10・37条の11令和8年分の法令で計算
第1章 全体像123
第2章 所得の種類と金額45678
第3章 事業の所得と赤字910
第4章 所得控除と税額111213
第5章 納税と総合演習1415
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
譲渡所得土地・建物・株式・金地金などの資産を売ったり交換したりして得た所得
取得費売った資産を買ったときの代金や、その後の改良費など(建物などは減価償却の分を引いた額)
譲渡費用売るためにかかった費用(仲介手数料・売買手数料など)
短期・長期総合課税の資産は、買ってから売るまでの保有期間で短期と長期に分ける。長期は総所得金額に2分の1だけ入る
分離課税ほかの所得と合計せず、その所得だけに決まった税率をかける方法(土地・建物、株式等の譲渡)
特定口座証券会社が売買の損益を計算してくれる口座。「源泉徴収あり」なら税金も天引きされ、申告不要を選べる
申告不要源泉徴収で税金を納めたことにして、確定申告に入れないことを選べる仕組み。非課税とは違う
年分と数字この講座は令和8年分の法令で計算しています。税率などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
譲渡所得(資産を売って得た所得)が、何を売ったかで「総合課税」と「分離課税」の2つに分かれること、計算「収入−(取得費+譲渡費用)−特別控除」と、総合課税の短期・長期、土地建物・株式の分離課税、株式の申告不要の意味を、自分の言葉で説明できるようになること。
健太さんのY社株式:売却の利益30万円
→
特定口座(源泉徴収あり)で天引き60,945円
→
申告不要を選ぶこれで完結
由紀さんの自家用車(買い物用):売った金額80万円
→
生活用の動産の譲渡非課税
→
所得税かからない

※ 天引きされる額は、所得税と復興特別所得税 45,945円、住民税 15,000円 の合計です。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。

ハルカ先生、健太さんは株を売って利益が出たそうです。給与と同じように、確定申告で全部合計するんですか?
先生第3回で、株式の売却は申告分離課税だと見たね。健太さんは特定口座(源泉徴収あり)で売っているから、証券会社が税金を天引きしてくれるんだ。
ハルカ天引きされた金額は、いくらですか?
先生利益30万円に対して、所得税等45,945円と住民税15,000円、合わせて60,945円なんだ。健太さんは申告不要を選ぶから、これで終わりだよ。
ハルカ由紀さんも車を売ったと聞きました。そちらにも税金がかかりますか?
先生買い物に使っていた車を売ったお金は、非課税なんだ。第2回の非課税所得の復習だね。
ハルカ株と車で、ずいぶん扱いが違うんですね。課税される譲渡所得は、どれも同じ計算ですか?
先生譲渡所得は、何を売ったかで課税のしかたが2つに分かれるんだ。まずその違いを確かめてから、5つのステップに進もうか。

まず全体像:譲渡所得は「何を売ったか」で2つに分かれる

何を売った?同じ「売って得た利益」でも、資産の種類で課税のしかたが変わります
総合課税の譲渡所得ほかの所得と合計する
主な資産
金地金・ゴルフ会員権・美術品・事業で使っていた機械など(土地・建物・株式等以外)
計算
収入 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除(最高50万円)
短期・長期
買ってから売るまでの保有期間が5年超なら長期。長期は2分の1だけ総所得金額に入れる
税金
給与などと合計して、超過累進税率(5%〜45%)で計算
例:金地金を300万円で売った(7年保有)→ 譲渡所得68万円のうち34万円を給与と合計
分離課税:土地・建物等ほかの所得と合計しない
主な資産
土地・借地権などの土地の上の権利・建物
計算
収入 −(取得費+譲渡費用)。総合課税の特別控除(50万円)はない
短期・長期
売った年の1月1日で所有期間が5年超なら長期
税金
その所得だけに決まった税率:長期20.315%、短期39.63%(所得税・復興特別所得税と住民税の合計)
自宅を売ったときの特別控除などの特例は、応用講座で
分離課税:株式等ほかの所得と合計しない
主な資産
上場株式・株式投資信託・非上場株式など
計算
収入 −(取得費+譲渡費用)。特別控除はない
短期・長期
区別しない(持っていた期間に関係なく同じ税率)
税金
20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)
例:健太さんのY社株式 利益30万円 → 特定口座で60,945円を天引き
総合課税金地金・ゴルフ会員権など分離課税土地・建物等分離課税株式等
ほかの所得と合計する合計しない合計しない
特別控除最高50万円なしなし
短期・長期保有5年超で長期
→ 2分の1だけ合計
1月1日で所有5年超なら長期区別しない
税金超過累進税率
(5%〜45%)
長期 20.315%
短期 39.63%
20.315%
例金地金 → 34万円を給与と合計自宅の特例などは応用講座で健太さんのY社株式 → 天引きで完結
✔ 特別控除と「長期は2分の1」は、総合課税の譲渡所得だけのルールです。土地・建物は所有期間で税率が変わり、株式等は期間に関係なく同じ税率です。
✔ 分離課税の譲渡所得も、確定申告をすれば合計所得金額には入ります(配偶者控除などの判定に影響)。株式は、特定口座で申告不要を選ぶと入りません(ステップ⑤)。
ハルカ先生、同じ譲渡所得なのに、給与と合計するものと、しないものがあるんですか?
先生そうなんだ。分かれ目は「何を売ったか」だよ。大きく総合課税と分離課税の2つで、分離課税はさらに土地・建物等と株式等に分かれるんだ。
ハルカまず、総合課税になるのは、どんな資産ですか?
先生金地金・ゴルフ会員権・美術品などで、土地・建物・株式等以外の資産なんだ。給与などほかの所得と合計して、同じ税率表で計算するよ。
ハルカ分離課税の2つは、ほかの所得と合計しないんですね。
先生土地・建物等と株式等は分離課税で、その所得だけに決まった税率をかけるんだ。土地・建物は長期と短期で税率が違い、株式等は1つの税率だよ。
🤔 迷いポイント特別控除や「長期は2分の1」は、どの譲渡所得にも使える?
ハルカ特別控除と2分の1は、譲渡所得なら全部に使えると思っていました。
先生その2つは、総合課税の譲渡所得だけのルールなんだ。分離課税の土地・建物や株式等には使えないよ。
ハルカどのグループかを先に決めてから、計算に進めばいいんですね。
先生そのとおりだよ。5つのステップでは、③までで総合課税の計算を、④と⑤で分離課税を見ていくんだ。
💡 そうだったのか!譲渡所得は「何を売ったか」で分かれる。土地・建物・株式等以外は総合課税(特別控除・短期と長期あり)、土地・建物等と株式等は分離課税(ほかの所得と合計しない)。

図で見る:譲渡所得の5ステップ

先生ここからが今日の本題だよ。健太さんのY社株式で、5ステップを通してみよう。「自分で入力」では、金地金のような総合課税の資産で試せるんだ。
ハルカ売った金額や、持っていた年数を入れられるんですね。
先生売った金額・取得費・譲渡費用・保有期間を変えると、下の図と会話の数字も一緒に変わるよ。まずはステップ1から順に進めていこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 譲渡所得とは:資産を売って得た所得売った資産Y社株式商品・製品(棚卸資産)売るために持っているもの事業所得 など生活用の動産家具・衣服・買い物に使う車など非課税(第2回)それ以外の資産土地・建物・株式・金地金・ゴルフ会員権など譲渡所得は2つに分かれる総合課税(給与と合計)金地金・ゴルフ会員権など分離課税(合計しない)土地・建物等/株式等「譲渡」は売買のほか、交換・競売・収用など、資産の持ち主が変わる行為を広く含む。生活用の動産でも、高価な貴金属・書画・骨とうなどは課税されることがある。由紀さんの自家用車(買い物用)を80万円で売った → 生活用の動産なので非課税。
Y社株式の売却 → 譲渡所得(分離課税) / 由紀さんの自家用車(生活用の動産)→ 非課税
ハルカ健太さんがY社の株を売って得た利益は、どの所得になるんですか?
先生譲渡所得なんだ。土地・建物・株式・金地金など、資産を売って得た所得が譲渡所得だよ。売買のほか、交換などで持ち主が変わるときも「譲渡」になるんだ。
🤔 迷いポイント物を売って得たお金は、全部譲渡所得?
ハルカお店で商品を売ったお金も、譲渡所得だと思っていました。
先生商品のように、売るために持っているもの(棚卸資産)を売った所得は、事業所得なんだ。家具や衣服、買い物に使う車のような生活用の動産を売ったお金は、原則として非課税だよ。
ハルカ着なくなった服をフリマアプリで売っても、税金はかからないんですね。クローゼットを全部空にしたくなりました。
先生明日着る服は、残しておこうね。ただ、高価な貴金属や書画・骨とうなどは、生活用でも課税されることがあるんだ。
ハルカ課税される譲渡所得は、そのあとどう分かれるんですか?
先生図の右下のとおり、金地金などは給与と合計する総合課税、土地・建物と株式等は合計しない分離課税なんだ。健太さんのY社株式は、分離課税のグループだよ。
💡 そうだったのか!譲渡所得は、資産を売って得た所得。商品(棚卸資産)は事業所得、生活用の動産は原則として非課税。課税される譲渡所得は、何を売ったかで総合課税と分離課税に分かれる。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 譲渡所得とは

ハルカ健太さんがY社の株を売って得た利益は、どの所得になるんですか?
先生譲渡所得なんだ。土地・建物・株式・金地金など、資産を売って得た所得が譲渡所得だよ。売買のほか、交換などで持ち主が変わるときも「譲渡」になるんだ。
🤔 迷いポイント物を売って得たお金は、全部譲渡所得?
ハルカお店で商品を売ったお金も、譲渡所得だと思っていました。
先生商品のように、売るために持っているもの(棚卸資産)を売った所得は、事業所得なんだ。家具や衣服、買い物に使う車のような生活用の動産を売ったお金は、原則として非課税だよ。
ハルカ着なくなった服をフリマアプリで売っても、税金はかからないんですね。クローゼットを全部空にしたくなりました。
先生明日着る服は、残しておこうね。ただ、高価な貴金属や書画・骨とうなどは、生活用でも課税されることがあるんだ。
ハルカ課税される譲渡所得は、そのあとどう分かれるんですか?
先生図の右下のとおり、金地金などは給与と合計する総合課税、土地・建物と株式等は合計しない分離課税なんだ。健太さんのY社株式は、分離課税のグループだよ。
💡 そうだったのか!譲渡所得は、資産を売って得た所得。商品(棚卸資産)は事業所得、生活用の動産は原則として非課税。課税される譲渡所得は、何を売ったかで総合課税と分離課税に分かれる。

Y社株式の売却 → 譲渡所得(分離課税) / 由紀さんの自家用車(生活用の動産)→ 非課税

STEP 2 計算式

ハルカ譲渡所得は、売った金額そのものですか?
先生売った金額から、取得費(買ったときの代金など)と譲渡費用(手数料など)を引くんだ。健太さんなら、130万円から取得費98万円と手数料2万円を引いて、利益は30万円だよ。
🤔 迷いポイント買ったときの値段が分からないと、計算できない?
ハルカ何十年も前に買った物だと、買った値段は覚えていないと思いました。
先生取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費とする方法もあるんだ。概算取得費というよ。くわしくは応用講座で見ていこうか。
ハルカ総合課税の資産には特別控除があると聞きました。健太さんの株にも使えますか?
先生特別控除の最高50万円は、総合課税の資産だけなんだ。株式は分離課税だから、利益30万円がそのまま譲渡所得になるよ。
💡 そうだったのか!譲渡所得=収入−(取得費+譲渡費用)。総合課税の資産なら、さらに特別控除(最高50万円)を引く。

130万円 −(98万円 + 2万円) = 30万円(株式は特別控除なし)

STEP 3 短期と長期

ハルカ健太さんの株とは別に、総合課税の資産には「短期」と「長期」があるんですよね。何が違うんですか?
先生持っていた期間で分けるんだ。保有期間が5年超なら長期、それ以外は短期だよ。左の図は、金地金を7年持って売った例なんだ。
🤔 迷いポイント長期なら、特別控除の前に半分にする?
ハルカ長期なら、売った利益をすぐに半分にするのかと思っていました。
先生特別控除まで引いた譲渡所得を、総所得金額に入れるときに2分の1にするんだ。金地金の例なら、譲渡所得68万円のうち、総所得金額に入るのは34万円だよ。
ハルカ長く持つほど優遇されるなら、買った物はずっと手放さないことにします。
先生優遇されるのは、長い年月で少しずつ増えた値上がり益が、売ったときに一度に出てくるからなんだ。累進税率の負担を和らげているんだよ。
💡 そうだったのか!総合課税の資産は、保有期間で短期と長期に分ける。長期は、総所得金額に2分の1だけ入る。

例)金地金 保有 7年 → 長期:総所得金額に入るのは 34万円

STEP 4 分離課税

ハルカ土地や建物、株を売ったときも、同じ計算ですか?
先生最初に見た2つのグループのうち、土地・建物と株式等は「分離課税」で、ほかの所得と合計せずに、決まった税率で計算するんだ。株式等は20.315%(所得税等と住民税の合計)だよ。
🤔 迷いポイント土地・建物の長期・短期も、売った日までの期間で決まる?
ハルカ総合課税と同じように、売った日まで何年持っていたかで決まると思っていました。
先生土地・建物は、売った年の1月1日の時点で所有期間が5年超かどうかで分けるんだ。長期は20.315%、短期は39.63%で、どちらも所得税・復興特別所得税・住民税の合計だよ。
ハルカ1月1日が基準なんですね。年が明けるのを待ってから売る人もいそうです。
先生数え方には気をつけたいね。自宅を売ったときの特別控除などの特例もあって、それは応用講座で見ていこうか。
💡 そうだったのか!土地・建物と株式等の譲渡は、ほかの所得と合計しない分離課税。土地・建物の長期・短期は、売った年の1月1日で判定する。

株式等 → 分離課税(20.315%)。ほかの所得と合計しない

STEP 5 申告不要と申告

ハルカ健太さんの株の税金は、確定申告で納めるんですか?
先生健太さんは特定口座(源泉徴収あり)を使っているから、証券会社が20.315%を天引きしているんだ。所得税等45,945円と住民税15,000円で、合わせて60,945円だよ。
🤔 迷いポイント申告不要を選んでも、合計所得金額には入る?
ハルカ利益が出たのだから、合計所得金額には入ると思っていました。
先生申告不要を選んだ株式の利益は、合計所得金額にも入らないんだ。だから健太さんの合計所得金額は、給与・ブログ・満期保険金だけで615万円になるよ。
ハルカ申告しなくていいなんて、株は楽ちんですね。私も明日から株主になります。
先生楽になるのは手続きのほうで、値下がりするリスクはあるんだ。損失が出た年は、確定申告をすると使える仕組みもあるよ。
💡 そうだったのか!特定口座(源泉徴収あり)の株式の利益は、申告不要を選べば天引きで完結し、合計所得金額にも入らない。

天引き 60,945円 → 申告不要を選んで完結(合計所得金額にも入らない)

健太さんと由紀さんの「売った」(講座の共通事例)

主人公の健太さん(44歳・会社員)は、数年前に買った上場会社Y社の株式を売りました。妹の由紀さんは、買い物に使っていた自家用車を買い替えのために売りました。

項目中身金額
健太さん:Y社株式売った金額130万円
取得費(買ったときの代金)98万円
譲渡費用(売買手数料)2万円
売却の利益30万円
特定口座(源泉徴収あり)→ 申告不要を選ぶ天引き 60,945円
由紀さん:自家用車買い物に使っていた車を売った金額80万円
生活用の動産の譲渡 → 所得税は非課税(第2回)0円

※ Y社株式の売った金額・取得費・手数料と、由紀さんの車の金額は、この回のために設定した仮定の数値です。

先生今日の主役は健太さんと、妹の由紀さんだよ。2人とも「売った」ものがあるんだ。
ハルカ健太さんは株、由紀さんは車ですね。同じ「売った」でも、扱いは違うんですか?
先生健太さんの株は譲渡所得で、由紀さんの車は生活用の動産だから非課税なんだ。左の表に、2人の数字をまとめておいたよ。
ハルカ売った金額の大きさではなく、何を売ったかで決まるんですね。
先生そのとおりだよ。図の5ステップで、順番に確かめていこうか。

健太さんの5ステップ

ステップ健太さんの場合結果
① 譲渡所得とはY社株式は、売るために持つ商品でも生活用の動産でもない資産譲渡所得
② 計算式130万円−(98万円+2万円)。株式には総合課税の特別控除はない30万円
③ 短期・長期総合課税の資産で使う区分。株式は分離課税なので使わない―
④ 分離課税株式等の譲渡は、ほかの所得と合計せずに 20.315%60,945円
⑤ 申告不要特定口座(源泉徴収あり)で、申告不要を選ぶ → 合計所得金額にも入らない完結
ハルカ健太さんの株を、表で通して見られるんですね。
先生そうだよ。株式は分離課税だから、特別控除も短期・長期の区分も使わないんだ。
ハルカ③が「―」になっているのは、そういう理由なんですね。
先生短期・長期は、総合課税の資産で使う区分だよ。下の体験で、金地金を使って試してみようか。

やってみよう:長く持つと、総所得に入る額はどう変わる?

金地金(金の延べ棒)を売ったとします(取得費 180万円・譲渡費用 2万円)。売った金額と保有期間を動かして、総所得金額に入る額を見てみましょう。

総所得金額に入る額:

※ 体験用の簡単な計算です(総合課税の資産1つだけを売った場合)。保有期間は「買った日から売った日まで」で判定します。

ハルカ金地金を持つ年数を変えると、何が変わるんですか?
先生左のスライダーで、保有期間を動かしてみよう。線を越えて長期になると、総所得金額に入る額が2分の1になるよ。
ハルカ1年違うだけで、こんなに変わるんですね。
先生長期になると2分の1になるから、境目の前後で大きく変わるんだ。売る日を決める前に、保有期間を確かめることが大事だよ。

令和8年分の数字(この回で使ったもの)

項目令和8年分くわしくは
譲渡所得の特別控除(総合課税)最高 50万円この回
長期譲渡所得になる保有期間(総合課税)5年超この回
取得費が分からないときの概算取得費収入の 5%応用講座
土地・建物の分離課税(長期)20.315%この回
土地・建物の分離課税(短期)39.63%この回
株式等の分離課税(所得税等+住民税)20.315%この回

分離課税の税率は、所得税・復興特別所得税・住民税の合計です。数字は税制改正で変わることがあり、この講座では年分ごとの数字を1か所で管理して差し替えます。「収入−(取得費+譲渡費用)」という仕組みは変わりません。

ハルカ特別控除の額や税率も、改正で変わることがあるんですか?
先生税制改正で変わることはあるんだ。左の表は令和8年分の数字だよ。
ハルカ取得費や譲渡費用を引く仕組みのほうは、変わらないんですか?
先生売った金額から取得費と譲渡費用を引く仕組みは、変わらない土台なんだ。数字が変わっても、当てはめるだけだよ。

よくある間違い

① 売った金額=譲渡所得

譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算します。総合課税の資産なら、さらに特別控除を引き、長期なら総所得金額に2分の1だけ入ります。

② 株の利益も給与と合計する

株式等の譲渡は分離課税で、給与などとは合計しません。特定口座(源泉徴収あり)なら、申告不要を選ぶこともできます。

③ 申告不要でも合計所得金額に入る

申告不要を選んだ株式の利益は、合計所得金額に入りません。配偶者控除などの判定に使う合計所得金額にも影響しません。
ハルカ②と③は、今日の健太さんの話そのものですね。
先生申告不要は、税金がかからないという意味ではないんだ。天引きで納め終わっているということだよ。
ハルカ①の「売った金額=譲渡所得」は、私も最初はそう思っていました。
先生取得費と譲渡費用を引くのが出発点だったね。総合課税なら特別控除と2分の1も忘れずにいこうか。

ミニテスト(3問)

Q1. 買い物に使っていた自家用車を、買ったときより安く売った。この売却について、所得税の扱いとして正しいものは?
Q2. 金地金を8年持って売り、譲渡益(収入−取得費−譲渡費用)が160万円だった。ほかに譲渡はない。総所得金額に入る額は?
Q3. 特定口座(源泉徴収あり)で上場株式を売り、申告不要を選んだ。その利益の扱いとして正しいものは?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 譲渡所得は、土地・建物・株式・金地金などの資産を売って得た所得。商品(棚卸資産)は事業所得、生活用の動産は原則として非課税。課税される譲渡所得は、何を売ったかで総合課税と分離課税に分かれる。
  2. 計算は収入−(取得費+譲渡費用)。総合課税の資産なら、さらに特別控除(最高50万円)を引く。
  3. 総合課税の資産は、保有期間で短期と長期に分け、長期は総所得金額に2分の1だけ入る。
  4. 土地・建物と株式等の譲渡は分離課税。土地・建物の長期・短期は、売った年の1月1日で判定する。
  5. 特定口座(源泉徴収あり)の株式の利益は、申告不要を選べば天引きで完結し、合計所得金額にも入らない。
先生今日のまとめだよ。譲渡所得は、資産を売って得た所得で、売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算するんだ。
ハルカまず何を売ったかで2つに分ける。総合課税の資産は特別控除を引いて、長期なら2分の1。土地・建物と株式等は分離課税でしたね。
先生そのとおりだよ。株式は、特定口座で申告不要を選べば天引きで完結して、合計所得金額にも入らないんだ。
ハルカ由紀さんの車のように、生活用の物を売ったお金は非課税、も覚えておきます。
先生いいまとめだね。次の第9回では、必要経費・減価償却・青色申告を見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:所得税法9条1項9号(生活用動産の譲渡の非課税)、22条2項(長期譲渡所得の2分の1)、33条(譲渡所得)、38条(取得費)、所得税法施行令25条、租税特別措置法31条(長期譲渡所得)、32条(短期譲渡所得)、37条の10・37条の11(株式等の譲渡)、37条の11の3〜37条の11の5(特定口座・源泉徴収選択口座)

参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第2章(非課税所得、p.5)、第3章第2節8「譲渡所得」(p.23)、第4章第1節8「譲渡所得の金額の計算」(pp.34〜35)、第4章第2節1「総所得金額」(pp.41〜42)、第4章第3節2「申告分離課税」(pp.44〜48)(講本PDF)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。特定口座の申告不要の説明は、入門向けに要約したものです。居住用財産の特別控除・軽減税率、取得費の概算などの特例は扱っていません。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生所得税法33条が譲渡所得、38条が取得費、22条2項が長期の2分の1だよ。土地・建物は租税特別措置法31条・32条、株式等は37条の10と37条の11にあるんだ。
ハルカこの講座のもとになった資料も知りたいです。
先生税務大学校の講本『所得税法(基礎編)令和8年度版』を参考に、TaxJudgeが独自に組み立てているよ。出典は左にまとめてあるんだ。
所得税 入門講座 第8回|taxjudge.com
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