利子・配当・一時所得 ── 預金・株・満期保険金のお金
「預金の利子、株の配当、満期保険金。どれも“受け取るお金”だけど、税金のかかり方は同じ?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 利子所得 | 預貯金・公社債の利子、合同運用信託・公社債投資信託の収益の分配などによる所得 |
| 配当所得 | 株式の剰余金の配当、投資信託(公社債投資信託などを除く)の収益の分配などによる所得 |
| 一時所得 | 懸賞の賞金、競馬の払戻金、自分で保険料を負担した満期保険金など、仕事や資産の売却の対価ではない一時のお金による所得 |
| 源泉分離課税 | 支払のときに一定の税率で源泉徴収され、それで課税が終わるしくみ。確定申告には入れない |
| 申告不要 | 源泉徴収された配当などを、確定申告に入れないことを選べるしくみ |
| 配当控除 | 総合課税で申告した配当について、税額から差し引ける控除(法人税との二重課税の調整。第13回) |
| 総所得金額 | 総合課税の所得を合計した金額。一時所得は2分の1にして合計する |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。税率などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
利子所得・配当所得・一時所得の中身と計算、そして課税のしかたの違い(利子は源泉分離課税、配当は申告のしかたを選べる、一時所得は総所得金額に2分の1で入る)を、自分の言葉で説明できるようになること。
※ 青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。預金の利子の額は、この回だけの設定です。
図で見る:利子・配当・一時所得の5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 利子所得
普通預金の利子 1,000円 → 源泉徴収 203円(20.315%)で課税が終わる(申告しない)
STEP 2 配当所得
配当所得 = 収入金額 − 元本を取得するための借入金の利子
STEP 3 配当の3つの選択
上場株式の配当 → 申告不要 / 総合課税(配当控除あり) / 申告分離課税 から選ぶ(比較は第13回)
STEP 4 一時所得の計算
一時所得 = 300万円 − 240万円 − 特別控除 50万円 = 10万円
STEP 5 総所得金額に1/2
総所得金額に入る額 = 10万円 × 1/2 = 5万円 → 健太さんの総所得金額 615万円
健太さんと修さんの1年(講座の共通事例)
主人公の健太さん(44歳・会社員)と、父の修さん(74歳・年金生活)の、今日の回に関係するお金です。
| 人 | 中身 | 金額 |
|---|---|---|
| 健太さん | 普通預金の利子(この回だけの設定) | 1,000円 |
| 生命保険の満期保険金(保険料は健太さん本人が負担) | 300万円 | |
| 払い込んだ保険料の総額 | 240万円 | |
| 修さん | 定期預金の利子(この回だけの設定) | 1万円 |
| X社株式(上場)の配当:12,000株×1株60円 | 72万円 | |
| 配当から源泉徴収された所得税・復興特別所得税 | 110,268円 |
※ 修さんは大口株主ではありません。健太さんのY社株式の売却は第8回、修さんの公的年金は第6回で扱います。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
健太さんと修さんの5ステップ
| ステップ | 健太さん・修さんの場合 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 利子所得 | 2人とも預金の利子 → 源泉徴収(20.315%)で終わり | 申告しない |
| ② 配当所得 | 修さん:X社株式の配当(借入金はない) | 72万円 |
| ③ 配当の選択 | 修さん:申告不要・総合課税・申告分離課税から選ぶ | 第13回で比べる |
| ④ 一時所得 | 健太さん:300万円−240万円−特別控除50万円 | 10万円 |
| ⑤ 総所得金額へ | 健太さん:一時所得の2分の1を、給与所得・雑所得と合計 | 5万円 |
やってみよう:満期保険金の一時所得
満期保険金と払い込んだ保険料を動かして、特別控除と「2分の1」の効き方を見てみましょう(保険料は本人が負担し、ほかに一時所得はない場合)。
※ 体験用の簡単な計算です。特別控除は、その年の一時所得をまとめて最高50万円です。
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 預貯金の利子の源泉徴収(所得税・復興特別所得税+住民税) | 20.315% | この回 |
| 上場株式等の配当の源泉徴収(所得税・復興特別所得税) | 15.315% +住民税 5% | この回 |
| 上の場合以外の配当の源泉徴収(所得税・復興特別所得税) | 20.42% | この回 |
| 非上場株式の配当で申告不要を選べる少額配当(1回に受け取る額) | 10万円×配当計算期間の月数÷12 以下 | この回 |
| 配当を申告分離課税にした場合の税率 | 15.315% +住民税 5% | 第13回 |
| 配当控除(総合課税・課税所得が一定以下の部分) | 配当の 10% | 第13回 |
| 一時所得の特別控除 | 最高 50万円 | この回 |
税率などの数字は、税制改正で変わることがあります。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。「一時所得は総所得金額に2分の1で入る」という仕組みは変わりません。
よくある間違い
① 預金の利子も確定申告で足す
預貯金の利子は、原則として源泉分離課税です。受け取るときの源泉徴収で課税が終わり、確定申告には入れません(国債・社債などの利子は別の扱いがあります)。② 満期保険金は全額が所得
一時所得は、受け取った額から払い込んだ保険料と特別控除(最高50万円)を引いた額です。さらに総所得金額には2分の1だけ入ります。③ 保険金はいつも所得税
保険料を誰が負担したかで変わります。自分で負担した満期保険金は所得税(一時所得)ですが、ほかの人が負担した保険料の保険金は贈与税や相続税の対象になることがあります。また、一定の一時払養老保険などで保険期間が5年以内のものは、差益に源泉分離課税が適用され、一時所得にはなりません。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 預貯金の利子は利子所得。原則として源泉徴収(20.315%)で課税が終わる源泉分離課税で、確定申告には入れない。
- 配当所得=収入金額−株などを取得するための借入金の利子。上場株式の配当は15.315%(ほかに住民税)が源泉徴収される。
- 上場株式の配当(大口株主を除く)は、申告不要・総合課税・申告分離課税から選べる。どれが有利かは、住民税や保険料への影響も含めて考える(第13回)。
- 一時所得=総収入金額−収入を得るために支出した金額−特別控除(最高50万円)。自分で保険料を負担した満期保険金は一時所得(一定の一時払養老保険などで保険期間が5年以内のものは、差益が源泉分離課税)。
- 一時所得は、総所得金額に合計するときに2分の1にする。健太さんは10万円→5万円。
参照条文・出典
参照条文:所得税法22条2項(一時所得の2分の1)、23条(利子所得)、24条(配当所得)、34条(一時所得)、92条(配当控除)、181条・182条(利子・配当の源泉徴収)、所得税法施行令183条・184条(保険の一時金)、租税特別措置法3条(利子所得の源泉分離課税)、8条の4(上場株式等の配当の申告分離課税)、8条の5(確定申告を要しない配当所得)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第3章第2節1・2・9(pp.15〜16、24)、第4章第1節1・2・9(pp.26、35〜36)、第4章第2節(p.41)、第4章第3節(pp.43〜49)、第6章第2節1(pp.124〜125)(講本PDF)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。配当の3つの選択の損得の比較は、第13回で扱います。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。