誰に、何に課税する? ── 納税義務者と非課税所得
「親からもらったお金にも、所得税はかかる?」に、納税義務者の区分と非課税所得の考え方で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 納税義務者 | 所得税を納める義務がある人。原則として個人(法人も利子・配当などの源泉徴収の場面では納税義務者になる) |
| 住所 | その人の生活の本拠。客観的な事実で判定する |
| 居所 | 住所ではないが、相当の期間続けて住んでいる場所 |
| 居住者 | 国内に住所がある個人か、現在まで引き続いて1年以上国内に居所がある個人 |
| 非永住者 | 居住者のうち、日本の国籍がなく、過去10年以内に国内に住所・居所があった期間の合計が5年以下の個人 |
| 非居住者 | 居住者以外の個人 |
| 国内源泉所得 | 日本国内で生じた所得(国内の勤務による給与、国内の不動産の賃料など) |
| 非課税所得 | 法律で、所得税を課さないとされている所得。原則として手続なしで課税の対象から外れる |
| 申告不要 | 所得税はかかるが、源泉徴収で納税が済んでいるので、確定申告に含めなくてよい扱い(第1回の株式) |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
所得税を納めるのは誰か(居住者・非永住者・非居住者)と、それぞれ課税される所得の範囲、そして法律で課税しないとされている非課税所得があることを、自分の言葉で説明できるようになること。
※ 由紀さんがもらった200万円は、所得税はかかりませんが、贈与税の対象になります(相続税入門講座 第10回)。健太さんの満期保険金のくわしい計算は第7回で扱います。
図で見る:「誰に」「何に」課税するかの5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 納めるのは個人
所得税の納税義務者は、原則として個人(会社のもうけには法人税)
STEP 2 居住者の判定
居住者=国内に住所がある、または現在まで引き続いて1年以上居所がある個人
STEP 3 課税される範囲
非永住者以外の居住者はすべての所得、非居住者は国内源泉所得だけに課税
STEP 4 非課税所得
所得税がかからないもの:通勤手当(電車・月1万円)、使わなくなった家具・衣服の売却、自宅の火事で受け取った火災保険金、親からもらったお金、宝くじの当せん金
STEP 5 非課税と申告不要
非課税=所得税がかからない / 申告不要=源泉徴収で所得税を払い終えている
青山家で確かめる(講座の共通事例)
青山家の6人は、全員が日本に住所がある居住者(非永住者以外)です。だから、国内・国外を問わずすべての所得が課税の対象になります。そのうえで、受け取ったお金ごとに「所得税がかかるか」を見ます。
| 人 | 受け取ったお金 | 所得税 |
|---|---|---|
| 健太 | 給与 750万円 | かかる |
| 健太 | ブログの広告収入 60万円 | かかる |
| 健太 | 生命保険の満期保険金 300万円(保険料は健太が負担) | かかる |
| 健太 | 上場株式の売却益 30万円(特定口座・源泉徴収あり) | かかる(申告不要を選べる) |
| 由紀 | 父の修さんからの贈与 200万円 | かからない(贈与税の対象) |
※ 青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
健太さんの地図はどう変わる?
| 確かめること | 健太さんの場合 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 個人か | 会社員として給与を受け取る個人 | 所得税の納税義務者 |
| ② 居住者か | 日本に住所がある | 居住者 |
| ③ 課税範囲 | 日本国籍があるので非永住者ではない | すべての所得 |
| ④ 非課税所得はあるか | 給与・ブログ・満期保険金・株式の売却益は、どれも非課税所得に当たらない | なし |
| ⑤ 申告不要 | 株式の売却益は所得税がかかるが、源泉徴収で済んでいるので申告不要を選ぶ | 第1回の地図の①へ |
やってみよう:所得税はかかる? かからない?
それぞれのお金について、所得税がかかるかを選んでください(会社員・居住者の場合)。
3つ目=所得税はかからない(非課税)が、かわりに相続税・贈与税の対象になるもの
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 居住者になる居所の期間(国内に住所がない場合) | 現在まで引き続いて1年以上 | この回 |
| 非永住者の判定(日本の国籍がない居住者) | 過去10年以内に住所・居所の期間が合計5年以下 | この回 |
| 非課税の通勤手当(電車・バスなどの交通機関を使う人) | 月15万円まで | この回 |
| 上場株式の売却益(特定口座・源泉徴収あり)の源泉徴収 | 20.315%(住民税を含む) | 第8回 |
控除額などの数字は、税制改正で変わることがあります。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。
よくある間違い
① 国籍で居住者かどうかが決まる
居住者かどうかは、住所(生活の本拠)や居所で判定します。国籍を見るのは、居住者のうち「非永住者」に当たるかどうかを判定するときです。② 親からもらったお金は、税金がかからない
個人からの贈与で取得したものは、所得税は非課税です。ただし、贈与税の対象になります。所得税と贈与税・相続税が二重にかからないようにしているのです。③ 「非課税」と「申告不要」を混ぜる
非課税は所得税がそもそもかからないこと。申告不要は、所得税はかかるが源泉徴収で納税が済んでいるので申告に含めなくてよいことです。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 所得税を納めるのは、原則として個人。会社のもうけには法人税がかかる。
- 国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上居所がある個人が居住者。それ以外は非居住者。
- 課税される範囲は、非永住者以外の居住者はすべての所得、非永住者は国外源泉所得以外と国内払い・国内送金の分、非居住者は国内源泉所得だけ。
- 通勤手当(月15万円まで)・生活用の動産の譲渡・損害保険金や見舞金・宝くじの当せん金・相続や個人からの贈与で取得したものなどは非課税所得。
- 非課税は所得税がかからないこと、申告不要は所得税は源泉徴収で済んでいること。
参照条文・出典
参照条文:所得税法2条1項3号〜5号(居住者・非永住者・非居住者)、5条(納税義務者)、7条(課税所得の範囲)、9条(非課税所得)、所得税法施行令20条の2(非課税とされる通勤手当)、当せん金付証票法13条(宝くじの当せん金)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第1章第3節「非課税所得」(pp.4〜7)、第2章第1節「納税義務者及び課税所得の範囲」(pp.8〜9)(講本PDF)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の解説であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。