副業と雑所得・公的年金 ── 「その他」の所得の受け皿
「ブログの広告収入と、親の年金。どちらも雑所得? 確定申告はいる?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 雑所得 | ほかの9種類の所得のどれにも当たらない所得。公的年金等・業務に係るもの・その他の3つに分けて計算する |
| 公的年金等 | 国民年金・厚生年金などの公的な年金や、企業年金(確定給付企業年金など)、恩給など |
| 業務に係る雑所得 | 副業の原稿料・講演料やブログの広告収入など、事業といえる規模に至らない仕事による所得 |
| 公的年金等控除 | 公的年金等の収入から差し引く控除。収入と年齢(12月31日現在で65歳以上か)で決まる |
| 確定申告 | 1年分の所得と税額を自分で計算して、翌年に申告すること(くわしくは第14回) |
| 還付申告 | 納めすぎた税金を返してもらうための申告。医療費控除を受けるときなど |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。控除額などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
雑所得(ほかの9種類に当たらない所得)の3つの箱と、副業が事業所得か雑所得かの線引き、公的年金等の計算、確定申告が必要になる線を、自分の言葉で説明できるようになること。
※ 青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。年齢は12月31日現在です。
図で見る:雑所得と公的年金の5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 3つの箱
健太さんのブログ → 業務に係る雑所得
STEP 2 事業か雑か
健太さんのブログ:帳簿書類を保存していなければ、原則として 業務に係る雑所得
STEP 3 収入−必要経費
健太さんのブログ 60万円 − 15万円 = 45万円
STEP 4 公的年金等
修さん 240万円 − 110万円 = 130万円 / 美和さん 90万円 − 90万円 = 0円
STEP 5 申告が必要?
健太さん:確定申告が必要
健太さんと両親の1年(講座の共通事例)
会社員の健太さん(44歳)は、休日にブログを書いて広告収入を得ています。帳簿はつけていません。父の修さん(74歳)と母の美和さん(71歳)は、年金で暮らしています。
| 人 | 収入 | 金額 |
|---|---|---|
| 健太さん | 給与(年末調整を受けている。給与所得は 565万円・第4回) | 750万円 |
| ブログの広告収入 | 60万円 | |
| ブログの必要経費(サーバー代・ドメイン代など) | 15万円 | |
| 修さん | 公的年金等(老齢年金) | 240万円 |
| 上場株式の配当(第7回) | 72万円 | |
| 美和さん | 公的年金等(老齢年金) | 90万円 |
※ 健太さんには、生命保険の満期保険金(一時所得・第7回)もあります。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
青山家の5ステップ
| ステップ | 青山家の場合 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 3つの箱 | 健太さんのブログ → 業務に係る雑所得 修さん・美和さんの年金 → 公的年金等 | 雑所得 |
| ② 事業か雑か | ブログは帳簿書類を保存していない副業 | 業務に係る雑所得 |
| ③ 収入−必要経費 | ブログ 60万円−15万円 | 45万円 |
| ④ 公的年金等 | 修さん 240万円−110万円 美和さん 90万円−90万円 | 130万円 0円 |
| ⑤ 申告が必要? | 健太さん:給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える 修さん・美和さん:年金の全部が源泉徴収の対象で、年金収入400万円以下、年金以外の所得なし(配当は申告しない方を選んだ場合) | 健太さん:必要 両親:不要 |
やってみよう:副業でいくら稼ぐと確定申告?
健太さん(年末調整を受けた会社員)のブログで、広告収入と必要経費を動かしてみましょう。給与・退職以外の所得がこのブログだけだとして、確定申告が必要になる線(20万円)を見ます。
※ 体験用の簡単な判定です(給与収入が2,000万円以下で、1か所から給与を受けて年末調整を受けている場合)。実際の健太さんは満期保険金の一時所得もあり、給与・退職以外の所得は50万円です(第7回)。申告が不要でも、還付申告をするなら副業の所得も含めます。住民税の申告は別に考えます。
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 公的年金等控除の最低額(65歳以上) | 110万円 | この回 |
| 公的年金等控除の最低額(65歳未満) | 60万円 | この回 |
| 会社員が申告不要となる給与所得・退職所得以外の所得金額の合計 | 20万円以下 | 第14回 |
| 年金の人が申告不要となる公的年金等の収入(公的年金等の全部が源泉徴収の対象の場合) | 400万円以下 | 第14回 |
| 業務に係る雑所得になりやすい収入の目安(国税庁の通達の取扱い) | 例年300万円以下 | この回 |
公的年金等控除は、公的年金等以外の所得の合計所得金額が1,000万円以下の場合の額です。控除額などの数字は、税制改正で変わることがあります。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。「雑所得は3つの箱で計算する」という仕組みは変わりません。
よくある間違い
① 副業20万円以下なら何もしない
20万円以下で不要になるのは、所得税の確定申告です。医療費控除などで還付申告をするなら副業の所得も含めて申告し、住民税の申告は原則として別に必要です。② 副業の赤字で給与の税金が減る
雑所得の赤字は、ほかの所得と相殺(損益通算)できません。損益通算できるのは、原則として不動産・事業・山林・譲渡の4つの所得の赤字です(第10回)。③ 年金は全額が所得
公的年金等は、収入から公的年金等控除を引いた金額が雑所得です。控除の最低額は、12月31日現在で65歳以上か未満かで変わります。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 雑所得は、ほかの9種類に当たらない所得の受け皿。公的年金等・業務・その他の3つの箱に分けて計算する。
- 副業が事業所得か雑所得かは、規模や継続性などで総合的に判断する。帳簿書類を保存していなければ、原則として業務に係る雑所得。
- 業務・その他の雑所得は総収入金額−必要経費。赤字になっても、ほかの所得とは相殺できない。
- 公的年金等は収入−公的年金等控除。控除の最低額は、65歳以上が110万円、65歳未満が60万円。
- 年末調整を受けた会社員は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると原則として確定申告が必要。年金の人は、公的年金等の全部が源泉徴収の対象で、年金収入400万円以下かつ年金以外の所得20万円以下なら、原則として所得税の確定申告は不要。還付申告と住民税の申告は別に考える。
参照条文・出典
参照条文:所得税法35条(雑所得)、69条(損益通算)、121条(確定所得申告を要しない場合)、租税特別措置法41条の15の3(65歳以上の公的年金等控除の特例)、所得税基本通達35-2(業務に係る雑所得の例示と、事業所得との区分)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第3章第2節10「雑所得」(p.25)、第4章第1節10「雑所得の金額の計算」(pp.36〜39)、第8章第3節1「確定所得申告」(pp.157〜159)(講本PDF)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。事業所得と業務に係る雑所得の線引き(帳簿書類の保存の有無と収入の目安)は、国税庁の通達の取扱いを入門向けに要約したもので、実際には個々の事実関係で総合的に判断されます。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。