所得税ってどんな税? ── 1年分を5ステップで
「年収750万円の健太さん、所得税はいくら?」に、計算の地図(5つのステップ)で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 収入(収入金額) | 給与・売上・家賃など、受け取った金額 |
| 所得(所得金額) | 収入から、所得の種類ごとに決まったもの(給与所得控除・必要経費など)を引いた金額 |
| 総所得金額 | 総合課税の所得金額を合計したもの(赤字の相殺=損益通算の後) |
| 合計所得金額 | 控除の判定に使う所得の合計。分離課税の所得も含む(第11回) |
| 所得控除 | 家族の状況や社会保険料・医療費の支払など、その人の事情を考えて所得から引くもの |
| 課税される所得金額 | 所得から所得控除を引いた残り(千円未満切捨て)。ここに税率をかける |
| 税額控除 | 税率をかけて出した税額から、直接引くもの(住宅ローン控除・配当控除など) |
| 源泉徴収・年末調整 | 給与などを払う人が所得税を天引きして納める仕組み。会社員は12月の年末調整で1年分を精算する |
| 確定申告 | 1年分の所得と税額を自分で計算して申告し、納付・還付で精算する手続 |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。控除額などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
所得税は「収入×税率」ではなく、①所得の種類に分ける → ②所得金額を出して合計 → ③所得控除を引く → ④税率をかけて税額控除を引く → ⑤すでに納めた税金と精算するの5ステップで計算する――この「計算の地図」を、自分の言葉で説明できるようになること。
※ シンプルな例は、給与収入500万円・社会保険料70万円(設定)・扶養する家族なし・ほかの所得なし。年末調整で精算が終わり、確定申告はしない場合です。
※ 金額は令和8年分の法令で計算した学習用の試算です。
図で見る:所得税の計算の地図(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 所得の種類に分ける
所得の種類:給与→給与所得
STEP 2 所得金額を出して合計
給与 356万円 = 総所得金額 356万円
STEP 3 所得控除を引く
356万円 − 所得控除 174万円 = 課税される所得金額 182万円 (千円未満切捨て)
STEP 4 税率と税額控除
算出税額 91,000円 + 復興 1,911円 = 92,911円
STEP 5 精算する
年末調整の年税額 92,900円(百円未満切捨て)で精算。確定申告は不要
青山家で確かめる(講座の共通事例)
相続税入門講座と同じ青山家です。この講座では、修さんが元気だったころの「ある年」の1年間を見ていきます。
| 人 | その年の主な収入 | 扱う回 |
|---|---|---|
| 健太 | 給与、ブログの広告収入(副業)、生命保険の満期保険金、上場株式の売却 | 全回 |
| 彩 | 3月末まで会社員(給与・退職金)、その後は働いていない | 第4・11・14回 |
| 修・美和 | 公的年金、上場株式の配当(修) | 第6・7・11・13回 |
| 由紀 | 料理教室(個人事業)、賃貸マンション1室 | 第5・9・10回 |
※ 青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。金額は令和8年分の法令で計算しています。
健太さんの5ステップ(第15回までの地図)
| ステップ | 健太さんの計算(くわしくは各回で) | 結果 |
|---|---|---|
| ① 所得の種類に分ける | 給与→給与所得、ブログ→雑所得、満期保険金→一時所得。上場株式の売却益は申告不要を選ぶ(第8回) | 3種類 |
| ② 所得金額を出して合計 | 給与所得 565万円+雑所得 45万円+一時所得の1/2 5万円(第4・6・7・10回) | 615万円 |
| ③ 所得控除を引く | 社会保険料・生命保険料・地震保険料・医療費・寄附金・配偶者・基礎控除 合計 244万3,000円(第11・12回) | 370万7,000円 |
| ④ 税率と税額控除 | 算出税額 31万3,900円 − 住宅ローン控除 17万5,000円 + 復興特別所得税 2,916円(第13回) | 141,816円 |
| ⑤ 精算する | 年末調整で納めた 82,100円 を引いて、確定申告で納める(百円未満切捨て。第14回) | 59,700円 |
やってみよう:計算の地図を順番に並べる
5枚のカードを、計算する順番にクリックしてください。
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 給与所得控除の最低保障額 | 74万円 | 第4回 |
| 基礎控除(合計所得金額489万円以下の場合) | 104万円 | 第11回 |
| 所得税の税率 | 5%〜45% | 第13回 |
| 復興特別所得税(基準所得税額に対して) | 2.1% | 第13回 |
| 会社員が確定申告をする目安(給与以外の所得) | 20万円超 | 第14回 |
控除額などの数字は、税制改正で変わることがあります。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。仕組み(5つのステップ)は変わりません。
よくある間違い
① 収入に税率をかける
「給与500万円×税率」とは計算しません。税率をかけるのは、所得から所得控除を引いた課税される所得金額です。② 所得控除と税額控除を混ぜる
所得控除は税率をかける前の所得から、税額控除は税率をかけた後の税額から引きます。同じ「控除」でも効き方が違います。③ 年末調整を受けたら確定申告は関係ない
年末調整で精算するのは給与の分だけです。給与以外の所得が20万円を超える人や、医療費控除を受けたい人などは確定申告をします(第14回)。※ 給与以外の所得が20万円以下なら確定申告が不要になるのは、一定の条件を満たす給与所得者についての所得税の取扱いです。住民税の申告が必要な場合や、医療費控除などを受けるために確定申告をする場合には注意が必要です。
ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 受け取ったお金を、10種類の所得に分ける。
- 種類ごとに決まったもの(給与所得控除・必要経費など)を引いて所得金額を出し、合計する。
- 家族や支払の事情に応じた所得控除を引く。残りが課税される所得金額。
- 段階的な税率をかけ、税額控除を引き、復興特別所得税を足す。
- 源泉徴収・年末調整で納めた税金と精算する。足りなければ確定申告で納め、多ければ戻ってくる。
参照条文・出典
参照条文:所得税法21条(課税標準・税額の計算の順序)、22条(課税標準)、89条(税率)、120条(確定所得申告)、190条(年末調整)、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条(復興特別所得税)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第1章(pp.1〜3)、第3章第1節3「所得税の計算の仕組み」(p.15)、第8章(pp.151〜)(講本PDF)/国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』pp.2〜4(令和8年度改正)/国税庁『令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A』
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ・給与所得控除の最低保障額の引上げ等。令和8年分から適用)は国税庁の上記資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。