譲渡所得 ── 売って得た利益
「株や金を売って得た利益は、給与と合計するの?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 譲渡所得 | 土地・建物・株式・金地金などの資産を売ったり交換したりして得た所得 |
| 取得費 | 売った資産を買ったときの代金や、その後の改良費など(建物などは減価償却の分を引いた額) |
| 譲渡費用 | 売るためにかかった費用(仲介手数料・売買手数料など) |
| 短期・長期 | 総合課税の資産は、買ってから売るまでの保有期間で短期と長期に分ける。長期は総所得金額に2分の1だけ入る |
| 分離課税 | ほかの所得と合計せず、その所得だけに決まった税率をかける方法(土地・建物、株式等の譲渡) |
| 特定口座 | 証券会社が売買の損益を計算してくれる口座。「源泉徴収あり」なら税金も天引きされ、申告不要を選べる |
| 申告不要 | 源泉徴収で税金を納めたことにして、確定申告に入れないことを選べる仕組み。非課税とは違う |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。税率などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
譲渡所得(資産を売って得た所得)が、何を売ったかで「総合課税」と「分離課税」の2つに分かれること、計算「収入−(取得費+譲渡費用)−特別控除」と、総合課税の短期・長期、土地建物・株式の分離課税、株式の申告不要の意味を、自分の言葉で説明できるようになること。
※ 天引きされる額は、所得税と復興特別所得税 45,945円、住民税 15,000円 の合計です。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。
まず全体像:譲渡所得は「何を売ったか」で2つに分かれる
- 主な資産
- 金地金・ゴルフ会員権・美術品・事業で使っていた機械など(土地・建物・株式等以外)
- 計算
- 収入 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除(最高50万円)
- 短期・長期
- 買ってから売るまでの保有期間が5年超なら長期。長期は2分の1だけ総所得金額に入れる
- 税金
- 給与などと合計して、超過累進税率(5%〜45%)で計算
- 主な資産
- 土地・借地権などの土地の上の権利・建物
- 計算
- 収入 −(取得費+譲渡費用)。総合課税の特別控除(50万円)はない
- 短期・長期
- 売った年の1月1日で所有期間が5年超なら長期
- 税金
- その所得だけに決まった税率:長期20.315%、短期39.63%(所得税・復興特別所得税と住民税の合計)
- 主な資産
- 上場株式・株式投資信託・非上場株式など
- 計算
- 収入 −(取得費+譲渡費用)。特別控除はない
- 短期・長期
- 区別しない(持っていた期間に関係なく同じ税率)
- 税金
- 20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)
| 総合課税金地金・ゴルフ会員権など | 分離課税土地・建物等 | 分離課税株式等 | |
|---|---|---|---|
| ほかの所得と | 合計する | 合計しない | 合計しない |
| 特別控除 | 最高50万円 | なし | なし |
| 短期・長期 | 保有5年超で長期 → 2分の1だけ合計 | 1月1日で所有5年超なら長期 | 区別しない |
| 税金 | 超過累進税率 (5%〜45%) | 長期 20.315% 短期 39.63% | 20.315% |
| 例 | 金地金 → 34万円を給与と合計 | 自宅の特例などは応用講座で | 健太さんのY社株式 → 天引きで完結 |
✔ 分離課税の譲渡所得も、確定申告をすれば合計所得金額には入ります(配偶者控除などの判定に影響)。株式は、特定口座で申告不要を選ぶと入りません(ステップ⑤)。
図で見る:譲渡所得の5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 譲渡所得とは
Y社株式の売却 → 譲渡所得(分離課税) / 由紀さんの自家用車(生活用の動産)→ 非課税
STEP 2 計算式
130万円 −(98万円 + 2万円) = 30万円(株式は特別控除なし)
STEP 3 短期と長期
例)金地金 保有 7年 → 長期:総所得金額に入るのは 34万円
STEP 4 分離課税
株式等 → 分離課税(20.315%)。ほかの所得と合計しない
STEP 5 申告不要と申告
天引き 60,945円 → 申告不要を選んで完結(合計所得金額にも入らない)
健太さんと由紀さんの「売った」(講座の共通事例)
主人公の健太さん(44歳・会社員)は、数年前に買った上場会社Y社の株式を売りました。妹の由紀さんは、買い物に使っていた自家用車を買い替えのために売りました。
| 項目 | 中身 | 金額 |
|---|---|---|
| 健太さん:Y社株式 | 売った金額 | 130万円 |
| 取得費(買ったときの代金) | 98万円 | |
| 譲渡費用(売買手数料) | 2万円 | |
| 売却の利益 | 30万円 | |
| 特定口座(源泉徴収あり)→ 申告不要を選ぶ | 天引き 60,945円 | |
| 由紀さん:自家用車 | 買い物に使っていた車を売った金額 | 80万円 |
| 生活用の動産の譲渡 → 所得税は非課税(第2回) | 0円 |
※ Y社株式の売った金額・取得費・手数料と、由紀さんの車の金額は、この回のために設定した仮定の数値です。
健太さんの5ステップ
| ステップ | 健太さんの場合 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 譲渡所得とは | Y社株式は、売るために持つ商品でも生活用の動産でもない資産 | 譲渡所得 |
| ② 計算式 | 130万円−(98万円+2万円)。株式には総合課税の特別控除はない | 30万円 |
| ③ 短期・長期 | 総合課税の資産で使う区分。株式は分離課税なので使わない | ― |
| ④ 分離課税 | 株式等の譲渡は、ほかの所得と合計せずに 20.315% | 60,945円 |
| ⑤ 申告不要 | 特定口座(源泉徴収あり)で、申告不要を選ぶ → 合計所得金額にも入らない | 完結 |
やってみよう:長く持つと、総所得に入る額はどう変わる?
金地金(金の延べ棒)を売ったとします(取得費 180万円・譲渡費用 2万円)。売った金額と保有期間を動かして、総所得金額に入る額を見てみましょう。
※ 体験用の簡単な計算です(総合課税の資産1つだけを売った場合)。保有期間は「買った日から売った日まで」で判定します。
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 譲渡所得の特別控除(総合課税) | 最高 50万円 | この回 |
| 長期譲渡所得になる保有期間(総合課税) | 5年超 | この回 |
| 取得費が分からないときの概算取得費 | 収入の 5% | 応用講座 |
| 土地・建物の分離課税(長期) | 20.315% | この回 |
| 土地・建物の分離課税(短期) | 39.63% | この回 |
| 株式等の分離課税(所得税等+住民税) | 20.315% | この回 |
分離課税の税率は、所得税・復興特別所得税・住民税の合計です。数字は税制改正で変わることがあり、この講座では年分ごとの数字を1か所で管理して差し替えます。「収入−(取得費+譲渡費用)」という仕組みは変わりません。
よくある間違い
① 売った金額=譲渡所得
譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算します。総合課税の資産なら、さらに特別控除を引き、長期なら総所得金額に2分の1だけ入ります。② 株の利益も給与と合計する
株式等の譲渡は分離課税で、給与などとは合計しません。特定口座(源泉徴収あり)なら、申告不要を選ぶこともできます。③ 申告不要でも合計所得金額に入る
申告不要を選んだ株式の利益は、合計所得金額に入りません。配偶者控除などの判定に使う合計所得金額にも影響しません。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 譲渡所得は、土地・建物・株式・金地金などの資産を売って得た所得。商品(棚卸資産)は事業所得、生活用の動産は原則として非課税。課税される譲渡所得は、何を売ったかで総合課税と分離課税に分かれる。
- 計算は収入−(取得費+譲渡費用)。総合課税の資産なら、さらに特別控除(最高50万円)を引く。
- 総合課税の資産は、保有期間で短期と長期に分け、長期は総所得金額に2分の1だけ入る。
- 土地・建物と株式等の譲渡は分離課税。土地・建物の長期・短期は、売った年の1月1日で判定する。
- 特定口座(源泉徴収あり)の株式の利益は、申告不要を選べば天引きで完結し、合計所得金額にも入らない。
参照条文・出典
参照条文:所得税法9条1項9号(生活用動産の譲渡の非課税)、22条2項(長期譲渡所得の2分の1)、33条(譲渡所得)、38条(取得費)、所得税法施行令25条、租税特別措置法31条(長期譲渡所得)、32条(短期譲渡所得)、37条の10・37条の11(株式等の譲渡)、37条の11の3〜37条の11の5(特定口座・源泉徴収選択口座)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第2章(非課税所得、p.5)、第3章第2節8「譲渡所得」(p.23)、第4章第1節8「譲渡所得の金額の計算」(pp.34〜35)、第4章第2節1「総所得金額」(pp.41〜42)、第4章第3節2「申告分離課税」(pp.44〜48)(講本PDF)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。特定口座の申告不要の説明は、入門向けに要約したものです。居住用財産の特別控除・軽減税率、取得費の概算などの特例は扱っていません。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。