所得控除① 家族と本人の控除 ── 「人の事情」を所得から差し引く
「妻と子がいる健太さんは、所得からいくら差し引ける?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 所得控除 | 家族構成や本人の事情などに応じて、所得から差し引く金額。全部で16種類ある |
| 合計所得金額 | 総所得金額に、分離課税の所得(特別控除前)などを足した金額。控除を受けられるかどうかの判定に使う(「収入」ではない) |
| 基礎控除 | 誰でも受けられる控除。本人の合計所得金額が大きくなると、段階的に少なくなる |
| 同一生計配偶者 | 生計を一にし、合計所得金額が一定額以下の配偶者(青色事業専従者などを除く) |
| 扶養親族 | 生計を一にし、合計所得金額が一定額以下の親族(配偶者を除く)。16歳未満は「年少扶養親族」で、扶養控除はない |
| 年齢の判定 | 家族の年齢や所得は、原則としてその年の12月31日の現況で判定する |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。控除額や所得の要件は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
所得控除のうち家族と本人の事情に関する控除(基礎控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除など)が、「収入」ではなく「合計所得金額」で判定されること、本人の所得が大きくなると控除が段階的に減ることを、自分の言葉で説明できるようになること。
※ 支出に関する控除(社会保険料控除・医療費控除など)は第12回で見ます。修さんの合計所得金額は、配当を確定申告しない場合です。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。
図で見る:家族と本人の控除の5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 所得控除とは
健太さん:総所得金額など 615万円 − 所得控除 = 課税される所得金額
STEP 2 基礎控除
合計所得金額 615万円(655万円以下の段)→ 基礎控除 67万円
STEP 3 配偶者の控除
彩さんの合計所得金額 16万円 → 配偶者控除 38万円
STEP 4 扶養控除
陽向さん(14歳)→ 年少扶養親族(控除なし) 0円
STEP 5 本人の事情
基礎控除 67万円 + 配偶者 38万円 + 扶養 0円 = 105万円
青山家の家族と控除
家族の控除は、家族それぞれの合計所得金額と、その年の12月31日の年齢で判定します。健太さんの家族と、修さん・美和さん夫婦を見てみましょう。
| 人(12月31日の年齢) | 合計所得金額 | 誰の、どの控除になるか |
|---|---|---|
| 健太さん(44歳) | 615万円 | 本人の基礎控除 67万円 |
| 彩さん(42歳・健太さんの妻) | 16万円 | 健太さんの配偶者控除 38万円 |
| 陽向さん(14歳・長男) | 0円 | 年少扶養親族(16歳未満)なので扶養控除はない |
| 修さん(74歳) | 130万円 | 本人の基礎控除 104万円 |
| 美和さん(71歳・修さんの妻) | 0円 | 修さんの配偶者控除(老人控除対象配偶者) 48万円 |
| 由紀さん(41歳・独身) | 261万円 | 本人の基礎控除 104万円 |
※ 彩さんは給与90万円(給与所得16万円)と退職金(退職所得0円・第4回)、美和さんは年金90万円(雑所得0円・第6回)です。修さんは配当を確定申告しない場合で、総合課税で申告しても合計所得金額は202万円なので、控除額は変わりません。
健太さんの5ステップ
| ステップ | 健太さんの場合 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 所得控除とは | 総所得金額 615万円(第10回)から、所得控除を差し引く。今日は家族と本人の控除 | 出発点 |
| ② 基礎控除 | 合計所得金額 615万円 は 489万円 を超えるので、1段下がる | 67万円 |
| ③ 配偶者控除 | 彩さんの合計所得金額 16万円 は 62万円 以下(70歳未満) | 38万円 |
| ④ 扶養控除 | 陽向さんは14歳(16歳未満) | 控除なし |
| ⑤ 本人の事情・合計 | 障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生には当たらない | 105万円 |
やってみよう:所得が変わると、控除はどう変わる?
健太さんの家族の数字から始めます。本人・配偶者・子の合計所得金額と子の年齢を動かしてみましょう。
※ 体験用の簡単な計算です(配偶者は70歳未満、子は1人、障害者控除などはなしとして計算)。
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 基礎控除(合計所得金額 489万円 以下の場合) | 104万円 | ステップ② |
| 基礎控除の本則(所得税法の額。上乗せは租税特別措置法の特例) | 62万円 | ステップ② |
| 配偶者・扶養親族の所得要件(合計所得金額) | 62万円 以下(給与だけなら収入 136万円 以下) | ステップ③④ |
| 配偶者控除(一般/70歳以上の老人控除対象配偶者) | 38万円/48万円 | ステップ③ |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額 | 133万円 以下 | ステップ③ |
| 扶養控除(一般/特定扶養親族/老人扶養親族/同居老親等) | 38万円/63万円/48万円/58万円 | ステップ④ |
| 特定親族特別控除(最高。親族の合計所得金額 123万円 以下まで) | 63万円 | ステップ④ |
| 障害者控除(障害者/特別障害者/同居特別障害者) | 27万円/40万円/75万円 | ステップ⑤ |
| 寡婦控除/ひとり親控除(いずれも本人の合計所得金額500万円以下) | 27万円/35万円 | ステップ⑤ |
| 勤労学生控除(本人の合計所得金額 89万円 以下など) | 27万円 | ステップ⑤ |
基礎控除・所得要件などは令和8年度改正後の数字です。参考にした講本(令和8年1月1日現在)には改正前の数字が載っています。控除額などは税制改正で変わることがあり、この講座では年分ごとの数字を1か所で管理して差し替えます。「合計所得金額で判定する」という仕組みは変わりません。
よくある間違い
① 「年収」で判定する
配偶者や扶養親族に当たるかは、合計所得金額で判定します。給与だけの人なら、給与所得控除を引いたあとの金額です(収入136万円以下なら所得62万円以下)。② 子どもなら誰でも扶養控除
16歳未満の子(年少扶養親族)には扶養控除はありません。19歳以上23歳未満は特定扶養親族で63万円になります。③ 基礎控除はみんな同じ額
基礎控除は本人の合計所得金額で段階的に決まります。副業などで所得が増えると、年末調整のときより段が下がることがあります。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 所得控除は16種類。今日は、家族構成や本人の事情に関する控除(基礎控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・特定親族特別控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除)。
- 控除を受けられるかは、「収入」ではなく「合計所得金額」で判定する。家族の年齢は、原則として12月31日の現況で判定する。
- 基礎控除は本人の合計所得金額で段階的に決まり、489万円以下なら104万円。所得が増えると段が下がる。
- 配偶者控除は配偶者の合計所得金額が62万円以下のとき。それを超えても133万円以下なら配偶者特別控除。どちらも本人の合計所得金額が大きいと減り、一定額を超えるとなくなる。
- 扶養控除は16歳以上の扶養親族が対象(16歳未満はなし)。19歳以上23歳未満は特定扶養親族、70歳以上は老人扶養親族で額が大きい。
参照条文・出典
参照条文:所得税法2条1項(定義:同一生計配偶者・扶養親族など)、79条(障害者控除)、80条(寡婦控除)、81条(ひとり親控除)、82条(勤労学生控除)、83条(配偶者控除)、83条の2(配偶者特別控除)、84条(扶養控除)、84条の2(特定親族特別控除)、85条(扶養親族等の判定の時期等)、86条(基礎控除)、租税特別措置法41条の16(扶養控除の特例)、41条の16の2(基礎控除の特例)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第5章第1節「所得控除の種類」・第2節8〜16(pp.105〜113)(講本PDF)、国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』(令和8年度改正の基礎控除・所得要件・配偶者特別控除の表)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本は令和8年1月1日現在の法令によるため、基礎控除の額や扶養親族等の所得要件などは、令和8年度改正後の数字に置き換えています。障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生の要件は入門向けに要約しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。